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扶桑社新書 将棋「観る将になれるかな」会議 |
[総合評価] B+ 難易度:★★ 図面:随時挿入 内容:(質)A(量)B レイアウト:A 解説:A 読みやすさ:A 初級〜、または 観る将向き |
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【著 者】 高野秀行 岡部敬史 さくらはな。/ イラスト | ||||
【出版社】 扶桑社 | ||||
発行:2019年6月 | ISBN:978-4-594-08237-6 | |||
定価:994円(8%税込) | 175ページ/18cm |
【本の内容】 | ||||||||||||||||||||
◆内容紹介 |
【レビュー】 |
将棋の雑学を解説した本。 「観る将」(みるしょう)とは、「観る将棋ファン」、つまり「あまり自分では将棋を指さないが、観戦することをメインとした将棋ファン」のことである。昔から存在していたが、その存在が強く意識されるようになったのは、プロの対局がWEB中継されるようになったここ十数年くらいになる。 ところで、野球ファンやサッカーファンなどと同様、「観る将」でプロ将棋を楽しむなら、多少の棋力は必要で、さらに雑学はたくさんあった方が面白くなる。また、将棋界の仕組みや棋戦のシステムなど、「観る将」になってから疑問に思い始めたこともたくさんあると思う。 本書は、「観る将」にとって必要な将棋の雑学や薀蓄(うんちく)を解説した本となる。 基本的に、プロ棋士(高野)+編集者(岡部)+イラストレーター(さくら)の3人での鼎談形式を採用し、観る将級位者の様々な素朴な疑問をプロ棋士に質問して、プロが丁寧に答えていく。 本書の位置づけは、『将棋「初段になれるかな」会議』(2018.02)の後継本。鼎談形式はほぼ同じスタイル。『初段に〜』は、将棋で初段を目指す人のために、上達法や勉強法のコツを示した本だったが、「初段を目指す級位者」と、将棋観戦に興味を持ち始めた「観る将上級者を目指す人」は結構重なっている。なので、『初段〜』がちょうど良かった人にはオススメできる一冊となっている。 各章の内容をピックアップしていこう。 第1章は、「「棋風」って何?〜将棋番組のわからないことば その1〜」。NHK杯などの将棋番組でよく出てくる、「棋士に関することばで、一般人にはよく分からないもの」を扱う。 ・棋風について −まず居飛車党か、振り飛車党 −攻め将棋か、受け将棋か −「居飛車本格派」、「生粋の振り飛車党」、「規格外」、「型破り」、「異才」 −それぞれ該当する棋士を鼎談内で紹介する。 −「○○流」のあれこれ ・関東所属、関西所属の意味とそれぞれの利点 ・プロ棋士の出身都道府県と、地元での普及活動 ・イケメン棋士 ⇒現代では、イケメン棋士の話題はOKだが、美少女・美人棋士の話題は採り上げにくくなっているような気がします。 第2章は、「「味がいい」ってどういう意味?〜将棋番組のわからないことば その2〜」。同じく将棋番組などで解説者がよく言う、「専門用語ではないが、将棋の場合は少し独特な意味を持つ言葉」を扱う。 ・捌く ・手順に ・格調が高い ・ねじりあい ・手厚い ・嫌味をつける ・余す ・味がいい ・勝負手 第3章は、「なぜ「竜王戦」と「名人戦」は特別か?〜タイトル戦について〜」。たくさんある「タイトル」の違いや意味合いについて。 ・賞金、契約金 ・竜王戦と名人戦は特別扱い ・順位戦B級1組はなぜ13人か ⇒残念ながら本書では不明とのこと。 ・各棋戦の仕組み、特徴 ・将棋はなぜ畳に座って戦うのか ⇒囲碁は現在ではほぼ椅子対局なので、不思議ですよね。 第4章は、「「女流棋士」と「棋士」はどう違う?〜安食総子女流初段インタビュー〜」。安食総子(あじきふさこ)女流初段に、女流棋士のリアルを訊いていく。 ・「棋士」との違い ・LPSA ・女流育成会 ・女流は振り飛車党が多い ・タイトル戦の違い ・対局時に持参するもの ・女流の昼食事情 ・「聞き手」の仕事 ・「解説」の棋士あれこれ ・普及活動 →個人的には、「女流の昼食事情」が一番面白かったです。『将棋めし』みたいなところもあるし、男性棋士は黙って食べているが、女流棋士は談笑しているとか。「やまがそばの親子丼」を浮かれて写真を取ろうとしたクダリは最高(笑) 第5章は、「対局に遅れたらどうなるの?〜気になるあれこれ〜」。プロの対局だけでなく、これまでの章に入らなかったものをここで雑多に質問していく。 ・棋士がときどき盤の前から離れることがあるが、何をしているのか ・対局時に持参するもの ・対局室の温度調節 ⇒ひふみんの「エアコンバトル」も書かれてます。 ・対局の遅刻 ・対局前の所作 ・駒の並べ方 ・対局者で交互に並べるのは羽生以降 ⇒ひふみんは待ってくれません(笑) ・指導対局で駒を落とす理由 ・適正な手合割が分からないときの伝え方 ⇒私は、イベントでの指導対局時に「いつもは中田(章道)先生に角落ちで教えてもらってます」と伝えています。 ・将棋のイベントあれこれ ・人間将棋 ・東京各地の各種イベント ・こども大会 ・指し初め式 ・藤井聡太七段の強さ ・〔告知〕2020年2月に、順位戦C級1組で藤井vs高野の対局カードが組まれている 他に、ときどき挿入されている四コマ漫画「気になるアノカタ」(さくらはな。)では、気になる棋士を紹介(?)していく。 ・高野智史 ・窪田義行 ・強い棋士に共通(?)の、正座での手の付き方 ⇒これは気づきませんでしたわ! ・戸辺誠 ・山本真也 ・佐々木大地 ・加藤一二三 ・山口絵美菜 ・横山泰明 ・上野裕和 ・伊藤沙恵 ・趙治勲(囲碁棋士) ・渡部愛 ・安食総子 ・竜王戦 控室ツアー 〔総評〕 本書では、初級者〜中級者の「将棋の疑問あるある」をスッキリ解決している。 また、上級者〜有段者も、かつてはきっと「なぜ?」と思っていたことが満載なので、特に将棋ファンでない人からの質問や、級位者からの質問にスッキリ答えられるようになりそう。場面によって、答の長さを変えておけるとさらに良いかも。 ただし、将棋用語や雑学を書いた本は他にも詳しいものがあるし、最近はムック形式でもっと詳細に書かれた本もあるので、総合評価は少し抑え気味のB+とした。本書はそれらの本の補完としても良いし、逆に本書が将棋雑学に興味を持つ入口になるとも思います。 |