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スーパー将棋講座 後手番一手損角換わり戦法 一気に敵陣撃破! |
[総合評価] B 難易度:★★★★☆ 図面:見開き4枚 内容:(質)A(量)B レイアウト:A 解説:A 読みやすさ:B 有段向き |
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【著 者】 青野照市 | ||||
【出版社】 創元社 | ||||
発行:2009年7月 | ISBN:978-4-422-75114-6 | |||
定価:1,260円(5%税込) | 224ページ/19cm |
【本の内容】 | ||||||||||||||||
◆内容紹介 |
【レビュー】 |
△一手損角換わり(相居飛車)の定跡書。 「△一手損角換わり」とは、後手がわざわざ手損をして角交換の将棋にする戦法のこと。通常の角換わり(いわゆる「純正角換わり」では、△8五歩▲7七角の交換をしてから△7七角成とするため、互いに手損はない(先手が角を上がる手と後手が角交換する手が見合い)。しかし一手損角換わりでは先手が角を動かしていない状態で後手から角交換するため、後手が一手損をするのである。 従来は、「手損したほうが形勢も損ねている」という考え方だったため、この戦法は単なる奇襲、目くらましの類と思われた。しかし、「手損よりも△8五歩を決めない得(△8五桂と跳べる余地がある)の方が大きい」という考え方が広がり、居飛車党の後手番での閉塞感や角交換振り飛車の流行との相乗効果もあって、近年は大流行している。 本書は、△一手損角換わり・相居飛車の初めての専門書となる。 ※部分的に△一手損角換わりが載っている棋書は、本書以前に4冊ある。 ・『アマの知らない最新定跡』,村山慈明,MYCOM,2008.12 (早繰り銀、▲右玉) ・『最新戦法の話』,勝又清和,浅川書房,2007.04 (この時点では後手の勝率は低かった) ・『最新戦法必勝ガイド』,村山慈明,MYCOM,2006.11 (早繰り銀、棒銀、腰掛銀) ・『最前線物語(2)』,深浦康市,浅川書房,2006.08 (早繰り銀、棒銀、腰掛銀、▲右玉) 第1章は相腰掛け銀。純正角換わり相腰掛け銀と違って、△8五桂と跳べるのが大きなポイント。この章では、ほとんどの変化の結果が後手良しになっているが、なかなか難しい部分もある。この戦型を指す人にとって必読なのは、p64からの9筋と3筋を絡ませる攻め方。単に△8五桂の反撃と違って、相当な威力がある。 第2章は早繰り銀。▲3六歩〜▲4六銀から▲3五歩と攻めていく戦型だが、純正角換わりでは△3五同歩▲同銀のときに△8六歩からの継ぎ歩攻めがあって、先手難しいとされている。一手損角換わりでは、後手の飛車先が遅れているので早繰り銀は有効だろうと考えられ、2008年〜2009年ではタイトル戦にもたびたび登場した。本章では、竜王戦(第21期第3局、渡辺vs羽生)や王位戦(第49期第7局、羽生vs深浦)などに現れた変化も網羅してあり、この戦型の最新版といえる内容。また先後とも互いに対策を繰り出しており、一方的な後手視点ではない。 第3章は棒銀。純正角換わり▲棒銀では「▲6六角+▲8四香」の攻め方が有名な定跡であるが、一手損角換わりでは△8五歩としていないためにこの筋がなく、主に盤の右側での攻防がメインになる。本章ではほとんどの変化が後手良しになっているのは、「先手の攻め筋が限定されている分、先手の急戦棒銀は怖くない」という基本スタンスのため。 基本的には「△一手損角換わりを後手番で指しこなすための本」なので、本書ではすべて先後逆表記となっている(実戦編も先後逆)。後手番での感覚を形でつかみやすい半面、よくプロの棋譜を並べている人は指し手を符号で覚えてしまっているので、慣れるまではちょっと読みづらいかもしれない。 また、このシリーズとしては比較的難易度は高め。いつもと違って、復習問題も割愛されている。もともとアマにとってはマニアックな戦型だし、トッププロの最新型もたびたび登場するので、難しいのも当然か。少なくとも、「早繰り銀では▲1六歩または▲6八玉の一手が必要だが、棒銀は居玉で攻められる」「相腰掛銀で△8五桂と跳ねる余地がある」と聞いて、何のことか分からない人は避けたほうが良いだろう。 有段者向けの割には相変わらず目次が貧弱で、見たい変化を探しにくいのが欠点。自作チャートを添付しておくので、参考にしてください。(2009Sep15) |
【他の方のレビュー】(外部リンク) ・トマト王国 ・適当将棋ノート ・Amazon.co.jp: カスタマーレビュー |