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■横歩取り超急戦のすべて

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横歩取り超急戦のすべて
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横歩取り超急戦のすべて [総合評価] A

難易度:★★★★

図面:見開き4枚
内容:(質)A(量)A
レイアウト:A
解説:A
読みやすさ:A
上級〜有段向き

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【著 者】 飯島栄治
【出版社】 日本将棋連盟/発行 マイナビ/販売
発行:2014年3月 ISBN:978-4-8399-5080-4
定価:1,617円(5%税込) 224ページ/19cm


【本の内容】
【構成】 鈴木宏彦
序章  横歩取り裏定跡の入口   6p
第1章 △3三角戦法   38p
第2章 △4四角戦法   40p
第3章 △4五角戦法 第1節 △4五角戦法の前に
第2節 △4五角戦法の入り口
第3節 △4五角戦法本編
104p

・【巻末付録】戦法をマスターするための次の一手(18問)、チャート=8p

◆内容紹介
横歩取りのハメ手定跡においてはこれが最終形と自負している」(まえがきより)

先手が▲3四飛と横歩を取った局面。それが横歩取り戦法の基本図です。ここで何も考えずに△3三角と上がっている方が多いのではないでしょうか?

しかし、実はその局面からは
(1)△8八角成▲同銀△3三角(△3三角戦法)
(2)△8八角成▲同銀△3八歩▲同銀△4四角(△4四角戦法)
(3)△8八角成▲同銀△2八歩▲同銀△4五角(△4五角戦法)
など、さまざまな可能性があり、そこには後手が勝つ変化も大量に含まれています。

△3三角しか知らない相手に、このような戦法をぶつけてみたらどうなるでしょうか。
アマ四段レベル同士の方の対戦なら、十中八九、研究している方が勝つ」と飯島七段は言っています。

後手にはあの手この手の罠があり、先手が勝つにはそれらに対してすべて正解手で答える必要があります。しかもその中には、一見危険に見える受けや、守りの金を取らせる手など、初見ではまず指せないという手も多く含まれています。これならアマチュアなら知っているほうが勝つ、というのもうなずける話です。

本書は後手番での心強い即戦力を提供するものです。
ぜひネット対局や将棋大会で使って、気分良く勝ってください。


【レビュー】
横歩取り・超急戦の定跡書。「将棋世界」に2011年12月号から連載された「今日から指せる!横歩取り裏定跡の研究」を加筆・修正し、再構成したもの。

プロで指されている横歩取りは、そのほとんどが▲3四飛に△3三角と上がって局面を穏やかにし、ある程度は駒組みしてから戦いを始めるものである。その代表例が△8五飛戦法だ。

一方、横歩取りには居玉のまま(またはほとんど玉を囲わずに)後手から超急戦を仕掛けるものがいくつかある。いずれも「やや無理仕掛け」というのがプロの認識ではあるが(そのため「ハメ手」扱いされる)、少しでも先手が間違えれば後手が一方的に攻めることができる。

本書は、そのような横歩取りの超急戦をまとめたものである。

本書に載っている超急戦は、△3三角戦法、△4四角戦法(△3八歩戦法とも)、△4五角戦法の3つ。その他に△4一玉戦法や相横歩取りもあるが、これらは続刊に掲載される予定とのころ。

この3戦法のうち、△3三角戦法と△4五角戦法は、沢田多喜男氏の著作で詳しく検証されている。本書は「沢田さんの研究をさらに深く追究したもの」(まえがき)という位置づけだ。

また、△4四角戦法は、単行本では『B級戦法の達人』(週刊将棋編,MYCOM,1997)にて「横歩取り素抜きトリック」という名で紹介された。



各章の内容を、チャートを添えながら紹介していこう。

第1章は、△3三角戦法。△8五飛戦法の下地となっている△3三角戦法とは別物で、▲3四飛と横歩を取られた瞬間に角交換から△3三角と打つ。次に△8八角成からの二枚替えを狙うと同時に、先手からの▲2二歩や▲2二角などを防いでいる。

江戸時代からある戦法で、近代の棋書では『横歩取りは生きている』(沢田多喜男,将棋天国社,1981)でリバイバルして12pの解説がある。その後はいくつかの本にチラチラと載っただけなので、本格的に解析したのは本書が初めてといえるかもしれない。

第2章の△4四角戦法のベースとなる戦法だが、実はかなりあなどれない。ほとんどの変化で後手は互角以上に戦うことができる。p26からの飯島研究も、後手の攻撃力を後押しするものだ。

では、この戦法がなぜプロで指されないか。それは、下記チャートの黄色の帯を施した部分。これらの変化で、△3八歩(銀頭のタタキ)が入らないのである。(もっとも、初見でこのタタキを見破るのは困難で、金銀をタダ取りさせる順は相当に指しにくい。ある程度知名度の高い△4四角戦法よりも、本戦法の方がハマりやすいのではないだろうか。)

この「△3八歩」を確実に入るタイミングで入れようとしたのが、次章の△4四角戦法ということになる。

  【第1章の結論】 △3三角に ▲7七桂 or ▲7七角〜▲8七銀 で先手良し。




第2章は、△4四角戦法。「△3八歩戦法」ともいわれる。『B級戦法の達人』で紹介され、『郷田真隆の指して楽しい横歩取り』(郷田真隆,フローラル出版,2002)などにも登場した。

△4四角戦法は、第1章の△3三角戦法の改良版で、入れたかった△3八歩を先に指し、▲3四飛の横利きを遮って△4四角と打つ。

狙いは△3三角戦法とほとんど同じだが、わずかな違いが大違いで、第1章で先手の有力手段だった▲7七桂と▲7七角〜▲8七銀の変化をつぶすことができる。ただし、いいことばかりではなく、別の変化では結論が変わってくる。

「将棋世界」の人気連載「イメージと読みの大局観」(イメ読み)で羽生が指摘したという▲7五角についても詳しく検証されている。なお、イメ読みの既刊3冊にはこの▲7五角は掲載されていないようだ。

本戦法の着地点は、多くの場合【右図】になる(下記チャートの緑字の部分)。飛の素抜きから間接王手飛車、そして飛角の取り合いという派手な立ち回りの結果が【右図】だが、以下▲2四歩△1五歩▲2三歩成△同金のあと、難しい手将棋になりやすい。

本書も含めて「後手互角以上」という評価が多いが、実戦的には陣形が乱れている後手の方がまとめにくいのではないかと思う。わたしも後手を持って何局か指したことがあるが、あまり上手くいったことがない。

なお、【右図】の後の展開は、本書よりも『B級戦法の達人』の方が詳しく、「1筋の歩が伸びて将来の△1六歩▲同歩△1八歩▲同香△1九飛を狙える」というのが△有望の理由となっている。


  【第2章の結論】 △4四角に ▲7七桂は後手良し。▲7七角 or ▲8七歩 は先手指せる。羽生新手は難解。




第3章は、△4五角戦法。有名な超急戦で、1980年前後にプロアマ総がかりで研究が行われたことがある。後手からの強烈な手が多いのが特徴で、この戦法が嫌で横歩取りを指さない人もいるぐらいだ。

角交換して△2八歩と捨て、△4五角と打つ。この角は両取りではないが、次に△6七角成!▲同金△8八飛成が狙い。もし相手がこの戦法を知らなければ、この狙いだけで何勝も稼げるかもしれない。

第1節 △4五角戦法の前に

 ・△2八歩の意味
 ・△2八歩の利かしは本当に入っているのか?
 ⇒実は△2八歩▲7七角でほぼ互角である。先手で△4五角戦法に自信がなければ、ここだけを研究しておくのもアリ。

第2節 △4五角戦法の入り口
 本筋(△4五角に▲2四飛△2三歩▲7七角)以外の変化について。

 ・△4五角に▲3五飛
 ⇒『定跡外伝2』(週刊将棋編,MYCOM,2002)で紹介された裏ワザ。ちゃんと知っていれば後手良し。
 ・△4五角に直ちに▲7七角
 ・△2三歩に▲8七歩

第3節 △4五角戦法 本編
 本筋の変化だけに、『横歩取りガイド』(週刊将棋編,所司和晴協力,MYCOM,1988)や『羽生の頭脳 10 最新の横歩取り戦法』(羽生善治,日本将棋連盟,1994)、『横歩取り道場 第三巻 4五角戦法,』(所司和晴,MYCOM,2002)などでよく知られている。

第1節と第2節は本書で研究が進んだ部分。第3節はこれまでの本とあまり変わりがない。






本書の3戦法は、いずれも「正確に指せば先手良し」というのが現在の結論である。それゆえに「ハメ手」扱いなのだが、実戦的な工夫の余地は十分にある。たとえば、有名な変化にはあえて誘導せず、やや不利かもしれないが、本にはあまり載ってなくて相手が間違えやすい変化に持ち込む、など。

また、先手側の対策として、自分が指しこなせそうな変化を一つは用意しておきたい。どちらかといえば、先手でハマらないために読んでおきたい一冊だ。(2014May03)

※誤字・誤植等(第1版第1刷で確認):
まえがき ×「さらに深く追及したもの」 ○「さらに深く追究したもの」 「追及」は人or責任を追い詰める意味。

〔2014Jun14追記、初版第1刷〜第2刷で確認〕
p57 ×「△8八角成▲同銀△同飛成」 ○「△8八角成▲同金△同飛成」 ※名無しさんご指摘thx!



【関連書籍】

[ジャンル] 
横歩取り
[シリーズ] 
[著者] 
飯島栄治
[発行年] 
2014年

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