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■孤高の大木 千駄ヶ谷市場2

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孤高の大木 千駄ヶ谷市場2
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孤高の大木
千駄ヶ谷市場2
[総合評価] B

難易度:★★★☆
   〜★★★★

図面:随時
内容:(質)A(量)B
レイアウト:A
解説:B
読みやすさ:A
中級〜有段向き

【著 者】 先崎学
【出版社】 日本将棋連盟/発行 マイナビ/販売
発行:2012年4月 ISBN:978-4-8399-4260-1
定価:1,470円(5%税込) 224ページ/19cm


【本の内容】
第1章 さわやかな将棋 将棋とは、時に信じられないような手が出ることがある。その典型がこの△4四角だろう。千葉も控室もあっといったのだった。

・一人一教
・さわやかな将棋
24p
第2章 地味な大熱戦 呆れ果てるほどの熱戦である。百六十七手も指して、はっきりとした悪手が一手もないのだ。
 
・十秒将棋
・相穴熊の大熱戦
・フレッシュな対決
28p
第3章 物量作戦 「この金を取る筋が見えていないんだからひどい。でもその後に手があって……」つづくことばは幸運だっただろう。

・コンピュータの威力
・勢いのある人
・高橋の笑顔
30p
第4章 築地市場 棋士の存在理由とは、一にも二にも将棋が強いことである。他の理屈もあるのかもしれないが、取りあえずはそれだ。もちろんこのぐらいの理屈は若手棋士たちもきちんと分っている。そして彼らには、青春を担保にして将棋に賭けたものとしての誇り、矜持がある。だからどんなにフランクになっても、アマプロ公式戦は特別なのである。

・アマプロ戦今昔
・築地市場
・午後の部開幕
28p
第5章 棋史に残る珍局 夜になり控室に入って来た棋士が皆頭を抱え、そして必ず笑う。原因はいうまでもなく先手陣の形である。局面だけ見れば、覚えたばかりの初心者のようだ。今、並べ返しても愉快な気持ちになる。

・熊本へ
・棋士に残る一局
24p
第6章 本局は名局である。なにより勝浦修という棋士の個性がいかんなく出ている。ちょっと気の抜けたような手を指し、油断させ(本人はそういうつもりではないだろうが)終盤で、カミソリ流と謳われた一発を出すのである。

・サラリーマン化
・カミソリ流の芸
・明暗分けた打ち歩詰め
・昔と今
28p
第7章 恥と思うこと プロである以上、勝てば勝つほど相手は強くなり、負けることが多くなる。数多く指し、数多く負ければ、ポカなんて年柄年中である。そのたびに恥ずかしい思いをする。そのかわり、我々は飯を食うことができるのである。

・藤井システムの親玉
・竜王戦挑戦者は佐藤
・日本一優秀な検討陣
・恥と思うこと
24p
第8章 孤高の大木 清水ほど、誤解されている棋士はいない。若くして、しかも可愛い女の子がスターになることへの、まわりの嫉妬は大変なものがあったろう。清水はそれらに対し、沈黙を通すことで自分を守り抜いてきた。素の清水は、やんちゃで明るい女の子である。それが、いつの間にか孤高の人みたいなイメージになってしまった。いや、あれよあれよという間にさせられてしまった。

・若手女流棋士に求めるもの
・女流新棋戦
・孤独なんかじゃない
28p

◆内容紹介
どれだけ時代が変わっても、盤上に没頭する棋士の姿は変わりません。
棋士の真情を語らせたら棋界随一の先崎学が、極限状態の棋士が見せる色とりどりの姿を真正面から描いた「千駄ヶ谷市場」待望の第2弾です。
本書ではトップ棋士、ベテラン棋士、若手、女流、アマチュアとさまざまな棋士にスポットを当て、立場は違えどやはり一様に盤上に打ち込む様子を愛情豊かに表現しています。
表題作の「孤高の大木」は、長年にわたり女流棋界を牽引してきた清水の矜持と苦悩に迫った一編です。


【レビュー】
現役棋士によるプロ将棋観戦記+エッセイ。『千駄ヶ谷市場』(2011.07)の続編。

普通、観戦記といわれるものは、ある特定の一局を集中して記述するものである。本書では、著者は基本的に控え室(将棋会館で対局のない棋士が検討を行っている場所)で、同日に行われている複数の将棋を並行して観ている。同時進行のため、通常の観戦記よりも「ライブ感」が非常に高い。

本書の内容は2007年3月〜10月に書かれたもの。各章のエッセイのエッセンスと、対局者名を挙げてみよう。なお、解説・検討は基本的には[途中図]からスタート。ほとんどの将棋は「日付」「棋戦名」「持時間」などは記載されておらず、棋譜(総譜)もない。総譜が付いているのは5局のみ。(緑字)はわたしのミニ感想。

第1章
 (エッセイ)初心者に将棋を教えるときのコツ=とにかく何回でも負けてあげる!
 ▲森内俊之△佐藤康光(棋王戦4)[棋譜あり],▲千葉幸生△深浦康市,▲鈴木大介△羽生善治,▲中田宏樹△片上大輔,▲勝又清和△矢内理絵子

第2章
 (エッセイ)控え室で流行っていた10秒将棋が廃れたのは鈴木大介のせい?!
 (前半)▲石川陽生△飯島栄治,▲郷田真隆△中原誠,▲佐藤紳哉△屋敷伸之,▲深浦康市△佐藤康光
 (後半)▲上野裕和△伊藤真吾,▲田中寅彦△矢内理絵子

第3章
 (エッセイ)コンピュータの発達によって、詰将棋の余詰めが簡単に見つかるようになった。
 (前半)▲森下卓△鈴木大介,▲千葉涼子△大平武洋,▲阿久津主税△深浦康市
 (後半)▲井上慶太△北浜健介,▲中川大輔△森下卓,▲高橋道雄△渡辺明

第4章
 (エッセイ)アマプロ戦の今と昔
 (前半)朝日杯のアマプロ一斉対局(午前の部)
  ▲瀬川晶司△山田洋次アマ,▲佐藤天彦△相良剛史アマ(「だいたい」で勝つ天彦のすごさ!),▲山田敦幹アマ△伊藤真吾,▲中村太地△加藤幸男アマ
 (後半)朝日杯のアマプロ一斉対局(午後の部)
  ▲稲葉聡アマ△戸辺誠,▲ア一生△菊田公毅アマ,▲遠藤正樹△遠山雄亮,▲金井恒太△桐山隆

第5章
 (エッセイ)日本シリーズ(JT杯)の解説のため熊本へ。
 (前半)▲鈴木大介△深浦康市(JT杯)[棋譜あり]
 (後半)▲久保利明△森内俊之(ひょっとしたら先手の一段目がすべて初形に戻って終局するかもしれなかった),▲長岡裕也△飯塚祐紀

第6章
 (エッセイ)
 (前半)▲藤倉勇樹△中田功,▲村中秀史△勝浦修(勝浦の勝ち方が「芸」)
 (中)▲木村一基△行方尚史,▲北浜健介△中川大輔,▲森下卓△島朗
 (後半)▲深浦康市△羽生善治(王位戦6)[棋譜あり]

第7章
 (前半)▲石川陽生△藤井猛
 (中)▲佐藤康光△木村一基
 (後半)▲郷田真隆△羽生善治
 (エッセイ)清水vs里見戦が、里見のポカで終わってしまったこと

第8章
 (エッセイ)2007年時点の若手女流棋士(連載から5年経過し、先崎の求めていた状況になってきていると思う)
 (前半)マイナビ一斉対局
  ▲笠井アマ△古河,▲山下△小野アマ,▲藤田綾△伊藤,▲林△中倉彰,▲蛸島△室田,▲北尾△野田澤,▲小野アマ△高群,▲中倉宏△船戸,▲坂東△貞升,▲中村桃△岩根,▲貞升△中村桃,▲安食△早水,▲松尾△上田,▲熊倉△中村真
 (後半)▲清水市代△石橋幸緒(女流王位戦5)[棋譜あり],▲石橋幸緒△清水市代(女流王位戦6)[棋譜あり](本書タイトルの「孤高の大木」は、清水の女流棋界での立ち位置について書いたもの)


個人的に面白かったエピソードを一つ紹介。

「ところで控室ではこの銀が見えておらず、しきりに「名手だ」といっている。自分が見えなかった手はとかく好手に映るのだ。
タイトル戦などの記事を読むと、好手かどうか、あるいは名手かどうかは控室で見えていたかどうかで決まるところがある。…(中略)…
ちなみに感想戦では、羽生は「まっ、こうですよね」といってさっと銀を置いた。そういわれてみると「
まっ、こうだよな」と見えてくるから不思議なものである。」

第7章 「恥と思うこと」 p184より

囲碁には「岡目八目」という言葉があるが、将棋では「まっ、こうだよな」を流行らせてみたい(笑)。


先ちゃんの文章は、淡々と書かれているようでところどころにキレがあって面白い。元A級棋士で棋力も高いためか、指摘も的確だなぁとおもう。この先「老害」にならないように気をつければ、稀代の観戦記者になると思う(その前に、対局でもう一花以上咲かせてほしいのだが)。

ただ、連載から単行本化まで5年はちょっと長い。今読むと、「懐かしいなぁ」と思うものもあるし、背景を憶えていないせいか「ん?」と思うこともある。当時を知らない新しいファンのためにも、せめて多少の注釈(掲載年月、季節、流行戦法の背景など)はほしかったところ。というか、単行本から2年くらいで実現してほしい。5年も経つと「文庫本」的な位置になってしまう。

いや、むしろ「マイナビ将棋文庫」シリーズとして400pくらいで出すのはどうだろう?8か月分では物足りないので、ボリュームupして1年分くらいは一気に読んでみたい。そういう風に感じた一冊でした。(2012Jun02)

※誤植・誤字等(初版第1刷で確認):
p49 ×「香を打って△6二歩」 ○「香を取って△6二歩」



【関連書籍】

[ジャンル] 
観戦記 エッセイ
[シリーズ] 
[著者] 
先崎学
[発行年] 
2012年

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