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■武市流力戦筋違い角の極意

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武市流力戦筋違い角の極意 プロの将棋シリーズ(4)
武市流力戦筋違い角の極意
[総合評価] C

難易度:★★★☆

図面:見開き4枚
内容:(質)B(量)B
レイアウト:A
解説:B
読みやすさ:A
中級〜有段向き

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【著 者】 武市三郎
【出版社】 毎日コミュニケーションズ
発行:2003年5月 ISBN:4-8399-1093-6
定価:1,300円 222ページ/19cm


【本の内容】
  プロローグ   6p
第1章 △5五歩型 (1)▲6七角型 (2)三間飛車転換型 (3)向飛車型 34p
第2章 歩越し△5四銀型 (1)先手高美濃型 (2)△4五歩位取り-△2二玉型
(3)△4五歩位取り-△4四銀型
34p
第3章 相筋違い角型 (1)△5五歩位取り型 (2)後手左銀繰り出し型 (3)△4五歩位取り型 34p
第4章 その他の型 (1)歩を取らない筋違い角 (2)△筋違い角 (3)△6二飛〜△4二飛型 30p
第5章 実戦編 自戦記=6局 73p

◆内容紹介(MYCOMホームページより)
序盤の一歩得。これがささいであるわけない。「先に角を手放して損」という人もいるが、「持ち駒は遊び駒」というプロ棋士も少なくはない。


【レビュー】
筋違い角の戦法解説書。

一口に筋違い角といっても、いろいろある。【第1図】筋違い角基本図

 (1)角換わりからの筋違い角(手損なし)
  ▲7六歩△8四歩▲2六歩△3二金▲2五歩△8五歩▲7七角△3四歩▲8八銀△7七角成▲同銀△2二銀▲4五角
 (2)3手目角交換からの筋違い角(先手が手損)
  ▲7六歩△3四歩▲2二角成△同銀▲4五角
【第1図】

この「3手目角交換」の方は、誰もが初心者のころにやられた経験があるはずである。序盤で1歩の損得ができるので、これがイヤで角道を開けなかった人も多いだろう。しかし、棋力が上がるにつれ、だんだんと遭遇する機会が少なくなる戦法でもある。とある本には、「筋違い角が通用するのはせいぜいアマ二段まで」と書いてあった。

また、▲3四角と1歩をかすめたあとの展開もいろいろある。

 (1)角を右に引くか左に引くか
 (2)居飛車から振飛車か


本書は、プロの実戦で筋違い角を60局以上指している著者が、プロにも通用する筋違い角戦法を解説したものである。

【第1図】筋違い角基本図本書では、3手目角交換の筋違い角から振飛車(主に▲6七角型四間飛車【第2図】))に絞って研究されている。

第1章は、△5五歩型。第2図のように、後手が5五の位を取り、△5四銀型をすばやく作って、4五の位も取り、筋違い角の利きを遮断してしまおうというもの。わたしが最初に読んだ入門書にもこのような筋違い対策が書かれていたし、プロの実戦でも一番多いそうだ。しかし、本書の▲6七角型四間飛車では、基本的に先手は7五の位を取って7六〜8七のラインで角を活用することが多いので、この指し方は比較的組し易いらしい。

第2章は、歩越し△5四銀型、すなわち腰掛銀である。歩を伸ばすと5四銀が浮き駒となりやすいので、そうならないように腰掛銀で角の圧迫を目指す。ただし、5筋からの反撃が全くないので一長一短である。

第3章は相筋違い角。普通に指せば先後が逆転した形になるので、わたしも相筋違い角が最有力の対策だと思っていた。しかし本章では、先後同型にしないように、▲5六角〜▲8八飛と向飛車にする対策が研究されている。また、この相筋違い角はオープニングが3パターンある。

 (1)3手目角交換後、▲4五角△5二金右▲3四角△6五角
 (2)3手目角交換後、▲4五角△5四角
 (3)3手目角交換後、▲4五角△8五角


どれも互いに歩を取り合って落ち着いてしまえば似たような展開となるが、(2)の方は▲同角△同歩▲5三角から「馬vs2手得」の対抗にする選択権が先手にある。(3)は▲7八飛△3三銀など歩を取らない展開にする権利が先手にある(これは第4章パート1で詳解されている)。(2)(3)は金を上がらずに済ませ、場合によっては後手振飛車を視野に入れた手と思われるが、普通の筋違い角以上に難しい手将棋になるだろう。本書では歩を取り合って元の変化に合流させている。

第4章はその他の形。パート1の「歩を取らない型」は、第3章のパターン3で△8五角のあと▲7八飛△3三銀と歩を守りあう形。お互いに主張点が難しい力戦になりやすい。パート2の「△筋違い角」は、▲7六歩△3四歩▲2六歩から角交換の筋違い角。▲2六歩の一手が入っているため、先手版とは微妙に違ってくるし、明らかに損だとは思うが、力戦に持ち込みたいのなら有効。多くの人が見慣れていないため、戸惑いも大きいだろう。パート3の「△6二飛〜△4二飛」は、▲4五角のあと、△6二飛▲3四角△4二飛と強引に飛車を振ろうというもの。後手が純粋振飛車党の場合に採用するかも。

以下、メモ。

・「角は自玉の逆方向へ居座るのが無難」(p11)
・「筋違い角は手の損得などそれほど気にしてはいけない戦法」(p12)
・「開戦前の後手の歩切れというのが筋違い角の大きな利点」(p30)
・「「筋違い角四間飛車」の飛車は、玉が安定するまでは左銀同様に守りの軸駒だが、囲い終了からは7、8筋に振る活用する意識が大切だ」(p33)
・「筋違い角側は、相手の角打ちには全身全霊の気配りを欠いてはいけない。」(p50)
・「筋違い角側にとっての急務は▲7七銀型の完成で、この銀が後手の速い動きを封じるわけだ。」(p63)
・「相筋違い角は「生角」の勝負である。…とくに攻めの銀を臨機応変に活用しなくてはいけないわけだ。」(p103)
・「筋違い角を指す以上、五分の分かれでも大満足しなくてはいけない」(p55)やっぱり筋違い角は奇襲戦法で、どちらかといえば不利な戦法なの?
・「この変化(間接王手飛車)には目をつぶってもらうしかない。」(p16) ▲4五角以下△5四歩▲6六歩(角の引き場所を作る)△8四角(6六歩を狙う)▲6八飛(歩を守るならこの一手)△9五角(間接王手居飛車)という変化。実は筋違い角対策として最有力?実戦編でも複数回登場する。



通しで読んでみたが、実は、あまりこの戦法を採用する気にならなかった。理由はいくつかあって、まず、本戦法は持久戦での駒組み勝ちを目ざしたものであり、自角の運用と敵角の打ち込みに非常に気を使う。その割には序盤の速攻や破壊力のある攻めがないので、あまりアマチュア向きではないと思う。次に、著者の筋違い角の勝率が五分五分程度であること(著者の通算勝率から見れば、五分なら優秀かもしれないが…)。そして、自戦記6局がなんと著者の2勝4敗なのである。これでは採用する気にならない。

あとは、著者の文章のクセ。「〜なはずだ。」がかなりの頻度(2〜3ページに1回くらい)で使用されているので、局面の判断自体にあまり自信がもてないのかな、と思えた。また、あまり関係ないが、「〜だが」の意味で「〜も」が多用されているのは、単行本の文章としては気になった。

「相手も自分も未知の土俵で戦いたい、構想力の差で勝ちたい」という人には、イバラの道ながらやる価値のある戦法だと思う。(2008Sep02)

※「〜も」の例:p89「角が手持ちとなって筋違い角とは無縁の世界、ここから先は…」
※『
新版 奇襲大全』(または旧版の『奇襲大全』)に載っている山岡流筋違い角四間飛車は、よく似た戦法だが▲7八角が定位置とされているので少々異なる。『筋違い角と相振り飛車』の「筋違い角振り飛車編 持久戦型」はかなりよく似た展開。


【他の方のレビュー】(外部リンク)
棋書解説&評価委員会
白砂青松の将棋研究室
9x9=81
Amazon.co.jp: カスタマーレビュー




【関連書籍】

[ジャンル] 
ユニーク戦法
[シリーズ] 
プロの将棋シリーズ
[著者] 
武市三郎
[発行年] 
2003年

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