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■杉本流四間飛車 ──封殺!居飛車穴熊

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杉本流四間飛車 ──封殺!居飛車穴熊
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振り飛車新世紀(6)
杉本流四間飛車
──封殺!居飛車穴熊
[総合評価] B

難易度:★★★★

図面:見開き4枚
内容:(質)A(量)B+
レイアウト:A
解説:A
読みやすさ:A
上級〜有段向き

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【著 者】 杉本昌隆
【出版社】 毎日コミュニケーションズ
発行:1998年12月 ISBN:4-8399-0033-7
定価:1,200円 222ページ/19cm


【本の内容】
第1部 定跡編 序章 穴熊とは 6p
第1章
 パートT・急戦穴熊封じ
 パートU・陽動居飛車
78p
第2章 相穴熊 42p
第2部 実戦編 ・「居玉急戦の会心譜」 対△福崎文吾八段
・「自戒の一局」 対▲佐藤康光八段
・「杉本流の振り飛車穴熊」 対▲畠山成幸六段
・「相穴熊の熱戦譜」 対▲森内俊之八段
・「最強の相手と戦う」 対△羽生善治四冠
89p

◆内容紹介
現在、プロ間における四間飛車対策は、やはり居飛車穴熊が主流。“玉の堅さ”が何より評価される時代なのである。

本書では穴熊崩しに徹底的にこだわり、二通りの対策を解説している。実戦例も多い居玉急戦。“目には目を”的発想の相穴熊。必ず実戦で役立つことと思う。

また、穴熊を攻略するには、穴熊の感覚を知ることが必要になる。本書ではそこに重点を置いている。


【レビュー】
四間飛車vs居飛車穴熊の定跡書。四間飛車側の作戦は、藤井システムと相穴熊。

杉本は、相振り飛車本の大家としても知られているが、若手時代は有望な四間飛車使いでもあった。その杉本が当時たどり着いた穴熊対策は、先手では「居飛穴に組ませない藤井システム」。後手では、「藤井システムからの居飛車へのスイッチ」と「相穴熊」となった。

また、「穴熊を攻略するには、穴熊の感覚を知ることが必要」(まえがき)として、定跡研究だけではなく、穴熊という囲いの性質を解説することにも力を入れている。(このような構成は、『相振り革命』シリーズでも多く取り入れられている)


各章の内容を、チャートを交えながら紹介していこう。



第1部・序章では、穴熊の特長と、その対策の考え方を解説。概要は、以下のようになる。

〔穴熊の特長〕
 @玉が堅い
 A玉が遠い
 BZを作りやすい
 ⇒無理攻めが利くことがある

・美濃囲いの桂香は守備駒の一部
 ⇒藤井システムでは、桂香は攻め駒専用にできる

・3手目▲1六歩の意味
 穴熊を打診する、△8四歩を突かせる

・▲四間飛車で▲6七銀型が多い理由
 ⇒△4二角〜△8六歩に備える




第1部・第1章パートTは、「急戦穴熊封じ」として、▲四間飛車藤井システムを解説。

藤井システムは、四間飛車でありながら居玉で居飛穴玉を攻める戦法であり、「穴熊対策」ではなく、「穴熊封じ」といえる。「振り飛車がこの戦法を指す場合、何の代償もなく穴熊に組まれることだけは絶対に避けなければいけない。序盤で失敗して穴熊にされたら、半分負けを覚悟するくらいの気持ちが必要な戦法である」(p139)

居飛穴に潜ろうとする△1一玉には、居玉急戦が炸裂する。△3二玉〜△2二銀なら一気にはつぶせないが、居飛穴にさせなかったことで十分という考え方。

また、藤井システムで右銀を▲4七銀と上がる手があるが、これは「羽生新手」と呼ばれたもの。中央を厚くして、次に何でも▲2五桂を狙う。後発の藤井システム定跡本だと、もはや常識としてサラッと流されていることもあるので、手の意味が分からなかった方は要チェックだ。

細かいところだが、▲3六歩を先に突くのが杉本流。▲4六歩が先だと、△2四角(歩取り)の余地がある。



第1部・第1章パートUは、「陽動居飛車」。これは、後手で四間飛車藤井システムの構えを取るが、状況次第で右四間飛車やスズメ刺しなど居飛車型の攻撃形を構築し、玉は雁木や矢倉など居飛車の構えを取るというもの。

杉本流穴熊封じでは、右四間に構え直して、自玉は雁木で戦う。また、あえて居飛穴を誘った上で、スズメ刺し+矢倉の構えを構築する例もある。後者はスーパー四間飛車(小林健二)の影響がありそうだ。



第2章は、相穴熊。

以前は手詰まりになりやすいという理由で振り飛車穴熊は居飛車穴熊より劣ると見られていた。(中略)現在では居玉急戦と並ぶ有力な居飛車穴熊対策とされている。」(p94)という、当時の認識がある。

一方、将棋世界2016年10月号の穴熊特集によれば、固め合いではどうしても居飛穴の方が堅くなるため、振り穴からどれだけ攻められるかがポイントの一つ。先手番ではあまり面白くない、とされる。ただし、後手番では千日手を視野に入れた戦術が進んできて、ある程度有力視されている。

相穴熊の序盤はこのころには確立されてきており、特に「▲9八香に△5四銀は非常に重要な一手」という認識が完成している。相穴熊では、振り穴側は常にこの銀で居飛穴の駒組みを牽制していく必要がある。

対する居飛車の3つの指し手(▲5五歩、▲6六銀、▲6六歩)は相穴熊の基本といえる。後の組み方には少し変化してきているが、本書で基本の攻防を学んでおくのも良いだろう。特に、▲6六歩(穏やかに玉を囲おうとする手)に対して△6四歩から△6五歩を急ぐのが鈴木大介、杉本の得意手段。



本書のサブタイトルにある様な「封殺!居飛車穴熊」とまでは行っていない印象だが、「藤井システムと相穴熊のしっかりした本」として丁寧に書かれた本だと思う。(2016Sep12)



※誤字・誤植等(第1刷で確認):
p58 ×「第42図以下の指し手@」 ○「第42図以下の指し手」
p182 ×「居飛車を同じように…」 ○「居飛車と同じように…」



【関連書籍】

[ジャンル] 
四間飛車vs持久戦系
[シリーズ] 
振り飛車新世紀
[著者] 
杉本昌隆
[発行年] 
1998年

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