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■5五の龍

< | No.0848 | >

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(オリジナル版)
5五の龍(1)
ヒットコミックス
5五の龍
全10巻
[総合評価] S

絵:B
ストーリー:A
構成:A
キャラ:A

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【著 者】 つのだじろう
【出版社】 少年画報社
発行:1978年〜1981年 ISBN:
定価:各350円 ページ/18cm
5五の龍(1)
≪1巻≫
「奇手鬼殺しの章」
1978年
5五の龍(2)
≪2巻≫
1978年
5五の龍(3)
≪3巻≫
1978年
5五の龍(4)
≪4巻≫
1979年
5五の龍(5)
≪5巻≫
1979年
5五の龍(6)
≪6巻≫
「穴熊虎五郎の章」
1979年
5五の龍(7)
≪7巻≫
1980年
5五の龍(8)
≪8巻≫
「飛騨の中飛車の章」
1980年
5五の龍(9)
≪9巻≫
「嵐飛車の章」
1980年
5五の龍(10)
≪10巻≫
1981年


(愛蔵版・上)
愛蔵版
5五の龍
上、下巻
[総合評価] S

絵:B
ストーリー:A
構成:A
キャラ:A

(愛蔵版コミックセット)
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【著 者】 つのだじろう
【出版社】 中央公論社
発行:(上)1989年4月
    (下)1989年5月
ISBN:上)4-12-001790-7
    (下)4-12-001816-4
定価:各1,262円 984ページ/21cm
5五の龍(上)(愛蔵版)
≪愛蔵版上巻≫
1989年5月
5五の龍(下)(愛蔵版)
≪愛蔵版下巻≫
1989年5月


(文庫版)
5五の龍(1)(文庫版)
5五の龍
全6巻
[総合評価] S

絵:B
ストーリー:A
構成:A
キャラ:A

(文庫版コミックセット)
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【著 者】 つのだじろう
【出版社】 中央公論社
発行:(1巻〜3巻)1995年11月
   (4巻〜6巻)1995年12月
ISBN:
定価:各583円 ページ/cm
5五の龍(1)(文庫版)
≪文庫版1巻≫
1995年11月
5五の龍(2)(文庫版)
≪文庫版2巻≫
1995年11月
5五の龍(3)(文庫版)
≪文庫版3巻≫
1995年11月
5五の龍(4)(文庫版)
≪文庫版4巻≫
1995年12月
5五の龍(5)(文庫版)
≪文庫版5巻≫
1995年12月
5五の龍(6)(文庫版)
≪文庫版6巻≫
1995年12月


【本の内容】
◆あらすじ
中学1年の駒形竜の父は元奨励会二段の真剣師。竜は、ろくに家に金を入れない父が嫌いだった。ある日、竜の家に虎斑の駒を持った男が現れる。男は父のライバルで、5年ごとに百万円の真剣を申し込むのだ。父と男の壮絶な真剣勝負が始まる。
あるきっかけで、竜は奨励会に入り、プロを目指すことに。そこで出会ったさまざまな奨励会員のライバルたち、あるいはプロ棋士、真剣師たち・・・。


【レビュー】
奨励会を舞台にした将棋漫画。「週刊少年キング」に1978年から1980年まで連載されたものを単行本化。

わたしが初めてこの漫画に出会ったのは、高二のときだった。当時、クラスメートと将棋を指すことに熱中していたわたしは、本屋で分厚い愛蔵版を見つけた。当時は『ドカベン』や『ブラックジャック』の豪華版(ハードカバー)が盛んに発売され、厚い漫画も見慣れ始めていたが、百科事典並みの分厚さの本書には度肝を抜かれた。

本の表紙から、明らかに将棋漫画であることは分かるのだが、フィルムがかかっていて中が見られない。一冊1,200円という定価は高校生のわたしにとって決して安い値段ではなく、中身を見ずに買うのは勇気が要った。それでも清水の舞台から飛び降りた気持ちで(今思えば大仰である)、Rocky少年は上巻をレジへ持っていった。

帰宅後、1,000ページ近くにも及ぶ上巻を一気に読みきった。読み出したら止まらなかった。序盤こそ、竜の性格が悪いせいか(というか、他の登場人物もやや性悪気味に描かれている)、「失敗したか?」と思ったが、上巻を読み終えるころにはすっかり虜になったRocky少年は、翌日迷うことなく下巻を購入した。

という訳で、本作はわたしが初めて読んだ将棋漫画である。(そのため、レビュー・評価にはいつも以上に思い入れバイアスがかかっていることをご了承ください)

●ストーリー(題名はわたしが勝手につけたものです)
〔愛蔵版・上巻〕
プロローグ/5年ぶりの訪問者/将棋部対抗戦/平手香の将棋入門/駒形竜馬vs虎斑桂介、無制限の死闘/指し掛け/角道道夫と早石田弘/プロを目指す決意/穴熊虎五郎/中学生名人戦/竜vs穴熊虎五郎/竜vs棒銀三郎/棒銀三郎vs角道道夫とミスタイガー/虎斑桂介死す/竜vs虎斑桂の100万円真剣/師匠探し/大道詰将棋と酔っ払い/奨励会入会試験/竜vs虎斑桂/虎斑桂の盤外戦術/竜vs棒銀三郎(香落)/竜vs竜馬/小将棋の駒/奨励会試験2日目/不合格/自殺未遂/高美濃弘/面接と合格/竜vs高美濃/竜vs歩月五級/虎斑桂3連勝/虎斑桂昇級/独立?/六級のB/同居解消/と金道場/東立大将棋部の児玉/5五の位は天王山!5五龍中飛車誕生/A復帰/東立大のリベンジ/戦型予告/完勝!5五龍中飛車
〔愛蔵版・下巻〕
5五龍中飛車旋風/竜vs金田五級/昇級/竜vs佐倉四級/竜vs菱湖三級(香落、上手ひらめ戦法)/穴熊逝く/竜vs段須三級/竜vs高美濃/竜vs棒銀三郎(香落)/四級へ/穴熊の幽霊?/将棋大天狗/竜vs梅木六級/退会の約束/変則将棋三番勝負/飛騨の中飛車/飛騨とプロ棋士5番勝負/飛騨vs中川四段/飛騨vs芦川八段/飛騨の中飛車・合掌造り!!/3連続タダ捨て/竜vs山越三級/高美濃退会/竜vs虎斑桂「見せ槍銀」/記録係/竜vs伊沢六級「袖飛車奇襲」/高美濃の葛藤/淡島六段vs芦川八段/角道の苦悩/高美濃、真剣詐欺?/後輩の奨励会試験/竜vs端歩朝三、棒銀vs嵐飛車元太郎/三級へ!/竜vs穴熊虎六/飛車落ち定跡/高美濃、足を洗う/高美濃復帰/竜vs大橋四級/角道、遭難/稽古将棋/竜vs桑野舞子/竜vs両角三級/竜vs虎斑桂/千日手指し直し/二級!!/エピローグ

●覚えられる将棋知識(登場順)
段級の水準/先後の決め方(振り駒)/棋譜の読み方/鬼殺し/定跡とは、囲いとは/居飛車と振飛車/将棋会館の紹介/必死とは/プロ棋士の収入/早石田/鬼殺し破り/角頭歩戦法/棒銀vs向飛車/プロ棋士系統図/大道詰将棋とは/ひねり飛車/香落ち戦の下手穴熊/将棋のルーツと小将棋/礼儀、作法/駒の並べ方/昇級基準/感想戦とは/四間飛車vs山田定跡/玉頭銀/秒読みの数え方/六枚落ち定跡/降級規定/四枚落ち定跡/魔の一間飛車/取らずの駒並べ/一番手直り/5五龍中飛車/中飛車奇襲/ひらめ戦法/ダンスの歩/手裏剣の歩/香落・下手卍飛車/駒落ちの意義/二枚落ち・下手二歩突っ切り/二枚落ち・下手銀多伝/曲詰め/八方桂/反射角/獅子王/真剣師とイカサマ/番太郎駒/飛騨の中飛車合掌造り/5五の位の取り方/相中飛車/記録係の仕事と手当て/居飛車穴熊/つのだ流飛車落ち定跡/お城将棋、太閤将棋、将棋所/角落ち定跡/千日手と持時間の規定

●主な登場人物
駒形竜
(こまがた・りゅう)
主人公。奨励会くずれで真剣師の父が嫌いだったが、虎斑桂との代理真剣をきっかけにプロを目指す。筋が悪いため、師匠探しも奨励会試験も苦労してしまう。
ちょっとお調子者だが、素直なところもあり憎めない性格。運もいい。
棒銀三郎
(ぼうぎん・さぶろう)
竜の奨励会同期で、出世頭。棒銀戦法が得意だが、何をやらせても強い。仲間からも一目置かれている。モデルは若き日の真部一男か?それにしてもなんつー苗字だ。
虎斑桂
(とらふ・かつら)
竜の奨励会同期。紅一点で注目を集める。竜馬のライバルだった虎斑桂介の娘。父同士の真剣を引き継いだ代理真剣で竜と戦って以来、竜の第一のライバル。
角道道夫
(かくみち・みちお)
竜の奨励会同期。強気な棋風で、練習将棋なら棒銀君に参ったといわせるほどの力があるが、昇段の一番でなかなか勝てない勝負弱さに悩む。
穴熊虎五郎
(あなぐま・とらごろう)
竜の奨励会同期。東北出身。巨体。入会後はなかなか成績が伸びず、悩む。そして…
高美濃弘
(たかみの・ひろし)
竜の奨励会同期で、同門。サル顔。筋が良く将来を期待されるが、実家の暮らしを支えるために奨励会をやめることに…。
駒形竜馬
(こまがた・りょうま)
竜の父。元奨励会二段で、退会後は真剣師に。虎斑桂介との戦いに苦しむが、倒れた後はすっぱり真剣師を辞め、道場の雇われ席主をやっている。
虎斑桂介
(とらふ・けいすけ)
竜馬のライバル。5年ごとに百万円を賭けた勝負をし、竜馬を苦しめてきた(全勝?)。
芦川八段 一時は名人候補とも言われたプロ棋士。酔って大道将棋士をからかい、ヤクザに追われたところを竜に助けられる。その縁から竜の師匠となる。
前半はいい加減な師匠ぶりだが、後半は一流棋士の存在感たっぷり。飛騨の中飛車との対局は必見!3連続タダ捨てカッコいい!
将棋大天狗 元プロ棋士。連盟幹部との対立し、プロをやめて全国行脚をしている。竜に「飛騨の中飛車」を紹介した。
飛騨の中飛車 中飛車オンリーの元真剣師。足を洗って飛騨の山奥で猟師をやっていたが、将棋への未練を断ち切れず、竜を介してプロに勝負を挑む。「飛騨の中飛車・合掌造り」は本書の最大の見所。竜の第二の師匠ともいえる存在。



本作の基本ラインは、竜の成長。家庭を顧みない真剣師の父への嫌悪感や金にガメつい性格などが、奨励会でさまざまな事件や仲間に揉まれるうちに、竜が立派に成長していくところが見どころ。ラストは竜がプロになれたのかどうか分からない終わり方なのは残念ではある(打ち切りなのか、当初からの予定なのかは不明)。

本作の特徴は以下のような感じ。

 ・作中の将棋の内容を盤面図でしっかり解説。単なる指し手だけでなく、戦法の狙いや潜んでいるワナなども分かる。
 ・空きスペースに詰将棋(3手・5手詰)、次の一手(主に必至問題)がある。(※愛蔵版だけかもしれません)
 ・さまざまな本格戦法を自然に覚えられる。平手だけでなく、駒落ち定跡(六枚落ち〜香落ち)までも覚えることができる。
 ・オリジナル戦法(?)がすごい。「5五龍中飛車」「飛騨の中飛車・合掌造り」にシビれる。
 ・キャラ設定が深い。家庭環境や将棋を指す意味がキャラごとにしっかりしている。
 ・将棋界に詳しくなる。プロ棋士や奨励会のシステムだけでなく、真剣師や大道将棋などの「裏・将棋界」にも精通。
 ・奨励会で勝って得るもの、負けて失うものの描写は見事。
 ・将棋漫画なのに死人が出るところはちょっと引くかも?
 ・作者の得意分野は恐怖漫画なので、最初は画風が気になるかも?


本作のすごいところは、棋力がたいしたことがない人でも、将棋界にかなり詳しくなり、さらに棋力も上昇するところ。「本格将棋漫画」の名に恥じない内容だ。人気作『月下の棋士』や『ハチワンダイバー』は、将棋を知らない人でも雰囲気を楽しめるし、将棋マニアも盤面やエピソードでニヤリとできる漫画ではあるが、両者の垣根が取り払われることはない。その点、本作は将棋をトータルに理解し、初心者を立派な将棋ファンへ引き上げることができているのである。

かくいうわたしは、本作に出てくる「合掌造り」を一時期得意戦法としていたし、「棒銀vs向飛車」の変化を応用して24竜王戦で1勝を挙げたこともあった。

本作を読まなかったら、わたしが今こうやって棋書レビューを書くほど将棋にはまることもなかったと思う。将棋倶楽部24との出会いと並び、わたしにとって大事なマイルストーンである。

●これが「5五龍中飛車」だ!
5五龍中飛車作中の中盤で登場する戦法。道場破りに現れた大学生との決戦において駒形が使用した。

初手から
▲9六歩△3四歩▲5六歩△8四歩▲5八飛△8五歩
▲9七角△4二銀▲5五歩△6二銀▲6八銀△9四歩
▲5六飛△4四歩▲5七銀△4三銀▲6六銀△5二金右
▲4六歩△4二金上▲6五銀△4一玉▲3八銀△3二玉
▲3六歩△9五歩▲同歩△同香▲9六歩△8六歩
▲同角△8八歩▲9五角△8七飛成▲7六銀△8三龍
▲8四歩△7四龍▲9七桂△8九歩成▲6六歩△6四歩
▲8五銀△6三龍▲8三歩成△6五歩▲8六角△7四歩
▲8四と 以下、駒形の圧勝

▲6六銀のときに△9五歩は対策がある。(本編参照)
▲3六歩に対し、放置して高美濃に組み上げられると厄介と見た白銀四段は△9五歩と開戦!
▲8七飛成(右図)以下、駒形の研究どおりの展開で龍のタコ踊りが始まる。

負けを認めた白銀四段、潔くてカッコいいぜ!…と思ったのもつかの間、児玉三段にそそのかされてあっという間にダークサイドに堕ちてしまう白銀四段!(笑)


●これが「飛騨の中飛車・合掌造り」だ!
飛騨の中飛車・合掌造り作中の終盤で登場する戦法。真剣師・飛田中太郎(「飛騨の中飛車」)が芦川八段との対局で使用した。

5筋位取り中飛車から向飛車へ転進し、図のような形になれば「飛騨の中飛車・合掌造り」が完成。劇中では「これはっ!! これはすごい戦型だっ! 完璧な布陣だっ!!」とプロ・奨励会員が揃って声を挙げる。図から▲9七香と上がれば、遊び駒がなく、すべての駒が連携しており、「並みの相手ならまず完勝の態勢だっ」とのこと。

単に駒組みが良いというだけでなく、ここからの仕掛けもテクニカル。▲5七金〜▲6八飛から6筋攻めを見せて△7三桂を強要し、そこで▲9七香として▲9五歩〜▲9八香の9筋攻めを狙う。

わたしもこの作戦は24の級位者時代にかなり試していますが、実際は▲5六銀と▲6七金が中途半端な駒になりやすく、さほど勝率は良くありませんでした…orz



【関連書籍】

[ジャンル] 
将棋コミック
[シリーズ] 
[著者] つのだじろう
[発行年] 
1978年〜 1989年 1995年

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