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マイナビ将棋BOOKS 進化する角換わり▲4五桂 |
[総合評価] A 難易度:★★★★☆ 図面:見開き4枚 内容:(質)A(量)A レイアウト:A 解説:A 読みやすさ:A 有段者向き |
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【著 者】 北島忠雄 | ||||
【出版社】 マイナビ出版 | ||||
発行:2021年7月 | ISBN:978-4-8399-7706-1 | |||
定価:1,694円(10%税込) | 240ページ/19cm |
【本の内容】 | |||||||||||||||
◆内容紹介 |
【レビュー】 |
角換わり▲4五桂速攻をメインとした、角換わり全般の戦術書。 角換わり▲4五桂速攻は、ここ数年で現れた作戦。形によっては、桂と歩の攻めで仕掛けが成立することが分かったため、角換わりの戦術全体に影響を与えている。 特に先手居玉型の変化は『神速!角換わり▲2五歩型 必勝ガイド』(2018.12)などで詳しく解説されていたが、その後、後手にも有力な指し方が見つかり、先手居玉型はあまり指されなくなっている。しかし、仕掛け筋自体は互いの陣形によっては成立するため、さまざまな形での仕掛けが試されている。 また、この▲4五桂速攻を警戒しながら駒組みを進めて相腰掛け銀にしたり、▲4五桂速攻を嫌って△早繰り銀で攻め合いにしたりと、▲4五桂速攻の仕掛けが発生しないパターンも出ている。 各章の内容をチャートを添えながら紹介していこう。 |
第1章は、「先手居玉型」。 本章では、序盤で早めに1筋の端歩の交換を入れてから、居玉・一段金での▲4五桂速攻を解説する。後手は△6四歩型。 (※端歩の交換を入れない型の▲4五桂速攻は『神速!角換わり▲2五歩型 必勝ガイド』を参照) ・端歩の交換を入れておくと、1筋を絡める攻め筋が生じる。 −また、早繰り銀の含みもある。後手は1筋の手抜きはしにくい。 ・▲4五桂に対し、△4四銀は安定感のある受け方。 先手は2筋歩交換をして▲2九飛と引いておく。対して、後手の反撃筋は4つ。 (1)△5五角には先手は適当な受けはない。▲3四角からノーガードの殴り合いになる。これは先手が良くなりそう。 (2)△3六歩▲3八金の交換を入れてから△5五角は後手の工夫。▲3四角は上手くいかない。先手は局面を収めに行って、一局の将棋。 (3)△3六歩▲3八金の交換を入れてから△6五角は、より攻撃的な手。▲3八金と8七の地点を狙っている。 (4)△3六歩▲3八金の交換を入れてから△3五銀は、後手が丁寧に受ける順。 ⇒∴▲4五桂に△4四銀は、先手が有望な変化が多い。 ・▲4五桂に△2二銀には、先手は1筋を絡めて攻めていく。 −▲1五歩に△4四歩は、▲2四歩以下先手の攻めがつながる。 −▲1五歩△同歩に▲2四歩が本線。先手は急がないと△4四歩で桂を取られて不発になる。 後手の受け方は3つある。 (1)△6三銀と6筋の歩を守るのは、▲1五香と走って攻めがつながる。 (2)△2三銀と飛に当てるのは、▲6四飛から暴れて、飛を逃げずに猛攻が入る。 (3)△2三歩とおとなしく受けたとき、先手は▲6四飛か▲3四飛か。 −▲6四飛は先手が指せる変化が多いが、結論としては一局の将棋。 −▲3四飛も先手が指せる変化が多いが、最終的には難解。 |
第2章は、「先手▲3八銀・6八玉型」。 先手が自陣に手を入れてから仕掛ける形。▲3八銀〜▲6八玉まで囲っておき、両端の交換も入れておく。 後手も手が進むので、△6四歩は浮いていない。 攻め筋は居玉急戦と同じで、▲3五歩△同歩▲4五桂となる。 ・△2二銀に▲1五歩△4四歩と桂を取りに行くのは、難解ながら先手が指せる。 ・△2二銀に▲1五歩△同歩と端の面倒を見るのは、7筋に戦線拡大しする。 ⇒∴▲4五桂に△2二銀は、1筋を絡めて先手が主導権を握る変化が多い。 ・△4四銀は、十字飛車の筋を封じることができる半面、1筋・2筋が薄く▲3四角が厳しくなりやすい。 −▲4五桂をすぐに歩で取られることがないので、先手は駒組みを整えてから第二次仕掛けを目指す。 −後手の受け、反撃のパターンは4つ。 (1)△3一玉として、玉自ら2筋の補強に行く。 (2)△2二金として、▲3四角には△3二玉を用意するとともに、将来の△3一飛を見る。(▲4五桂速攻での特有の受けの形) (3)△3六歩とプレッシャーをかけ、次に△4五銀と桂をむしって△3七桂を見せる。 (4)△5二金と離れ駒をなくす。 ・△3四銀と立って、次に△4四歩(桂取り)を見せる手もある。 −▲5六角と設置して攻めがつながりそうだが、局面自体は一局の将棋か。 |
第3章は、「先手▲4八銀・5八金型」。 先手陣の金銀を密集させ、両端の交換も入れた形から仕掛ける。玉の堅さと攻めのスピードを両立させた作戦になる。 △8一飛のタイミングで▲3五歩△同歩▲4五桂と仕掛ける。 一段飛車が守りに利いているが、二段目の利きは弱くなっている。その違いがどうなるか? ・△2二銀には、7筋と1筋を絡ませて仕掛ける。 ・△4四と銀は、7筋を絡めた十字飛車の筋を封じている。半面、やはり1筋・2筋は薄い。 先手が2筋で歩交換をして、▲2九飛と引いたところで、後手の指し手は5種類。 (1)△3八角は、飛をいじめようとしている手だが、この形では空振りになりそう。 (2)△4五銀は、桂をむしって△4六桂と打ち、△3八桂成ともたれておく狙い。しかし▲5六角が好位置で、▲2三角成を狙いながら成桂に当たる。 (3)△6二金は受けの形だが、▲1五歩△同歩と突き捨てて▲3四角の攻めが刺さる。 (4)△3六歩と伸ばしておくのは、(2)の△4五銀〜△4六桂の筋の威力を上げる狙い。激しい寄せ合いになるが、先手に分があるか。 (5)△2二金は、第2章にも出てきた、▲4五桂急戦に対する特有の受け方。▲3四角に△3二玉を用意し、△3一飛の転回もある。先手は陣形を整えて決戦に備える。 ・仕掛けの▲3五歩を取らず、△6二金と整えるのも有力。 |
第4章は、「先手▲4八金・2九飛型」。 相腰掛け銀の基本形といわれる形からの、▲4五桂の仕掛け筋を解説する。 ・▲4八金-▲2九飛型を作り、両端を突き合って、互いに腰掛け銀にする。 ・後手は△4四歩を突かず、4筋に争点ができないようにするのが現在の相腰掛け銀の基本形。 ・後手が△5二玉〜△4二玉の往復運動や、△6三銀と一度出た銀を引くなど、争点を作らずに待機をしてきたときに発生する仕掛けになる。 ・ここまで手が進んでいる場合は、十字飛車の筋は狙いにくいので、仕掛けは(▲3五歩と突かず)単に▲4五桂と跳ねていく。 ・▲4五桂に対して、やはり△4四銀と△2二銀の2通りの応手がある。 ・△4四銀のときは、先手は2筋の歩を交換に行く。 −後手は△2三歩と飛を引かせてから△6五歩と反撃するか、2筋歩交換(▲2四飛)のタイミングで△1三角と反発して打つか。 −彼我の陣形によって、成否は少しずつ異なる。 ・△2二銀が多い対応。△4四歩の桂取りを狙っているので、先手は急いで攻める必要がある。 −7筋を絡めて▲5三桂成と成り捨てる筋や、3筋を突いていく筋がある。 |
第5章は、「▲4五桂対早繰り銀」。 後手が▲4五桂速攻を嫌って、△早繰り銀で攻め合う。 第70期王将戦(渡辺明vs永瀬拓矢)の第5局、第6局で立て続けに現れ、注目されている戦型。 王将戦第5局の棋譜中継のコメントでは、△7三銀に対して「え、銀上がったの!?」と驚きの声が挙がっており、互いに突っ張った戦いになりやすい。 ・この場合は、▲3五歩の突き捨ては入れず、単に▲4五桂と跳ねる。 ・▲4五桂に△2二銀は、▲5五角や▲6六角の筋で先手の攻めがつながりやすい。 ・▲4五桂に△4四銀〜△2二歩がこの形での受け方。壁になっているが、先手からの▲2二歩を封じており、守りが堅い。 −先手は▲3四飛と横歩を取っていくと、後手のカウンターが速い。 −▲3七銀と上がって、後手の攻撃に備えることになる。 ・後手の反撃は、以下の3種類。 (1)△6四角と設置して、次に△4五銀▲同歩△3七角成と、△8六歩▲同歩△同角の飛先突破の2つを狙う。 (2)△8六歩▲同歩△7五歩▲同歩△8七角から、馬を作る。 (3)△6四銀〜△7五歩と、早繰り銀の意思を一貫させる。 ・序盤の早い段階での端の打診▲1六歩に対し、後手が手抜いて早繰り銀に出る指し方もある。 −先手は1筋の位を取り、腰掛け銀で迎え撃つ戦いになる。 |
〔総評〕 本書は、角換わりのうち「▲4五桂速攻」とされるものだけでなく、▲4五桂跳ねから仕掛けが始まるもの全般を扱った一冊だった。そのうち、1筋の交換を入れない▲4五桂速攻についてはほぼ触れていない(『神速!角換わり▲2五歩型 必勝ガイド』で詳解されているため)ので、注意が必要だ。 すでに▲4五桂の仕掛けの意図は知っているという前提になっており、考え方よりも読み筋が重視されている。ちょっとした彼我の陣形によって成否が変わりやすい戦型で、特に▲4五桂に対して△2二銀と△4四銀のどちらがより有力なのかは難しいが、本書では主要な筋は網羅されているので、カタログ的に使うと良いだろう。本ページのチャートも活用してください。 角換わりを指す人のうち、先手番で▲4五桂の仕掛け筋を狙う人や、腰掛け銀との両天秤で指している人、また角換わりの後手番を持つ人には必読の一冊です。 (2021Jul21) ※誤字・誤植等(初版第1刷・電子版ver1.00で確認): p25下段 △「△4五歩に変えて△1二歩…」 ○「△4五歩に替えて△1二歩…」 p135上段棋譜 ×「△3三同玉」 ○「△3二同玉」 |