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■進化する角換わり▲4五桂

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進化する角換わり▲4五桂
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マイナビ将棋BOOKS
進化する角換わり▲4五桂
[総合評価]
A

難易度:★★★★☆

図面:見開き4枚
内容:(質)A(量)A
レイアウト:A
解説:A
読みやすさ:A
有段者向き

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【著 者】 北島忠雄
【出版社】 マイナビ出版
発行:2021年7月 ISBN:978-4-8399-7706-1
定価:1,694円(10%税込) 240ページ/19cm


【本の内容】
第1章 先手居玉型 60p
第2章 先手▲3八銀・6八玉型 42p
第3章 先手▲4八銀・5八金型 40p
第4章 先手▲4八金・2九飛型 60p
第5章 ▲4五桂対早繰り銀 30p

◆内容紹介
「主導権の争奪」。現代将棋は、この一言に尽きるのではないでしょうか。堅陣で先攻するのは、勝つうえでの理想と言えます。

昨今の序盤戦の変化は著しいですが、とりわけ将棋の速度を格段に上げたのが「角換わり▲4五桂速攻」です。最小限の駒組みで仕掛けて攻勢を取り続けることができるのが魅力で、短手数で決着することも珍しくありません。

さらに端歩を突く形での研究が進み、攻撃の手段が広がりました。しかし、単調な攻めでは受け切られる恐れもあります。どのように指せばよいのでしょう。

第1章では、先手居玉型での仕掛けを解説しています。▲4五桂速攻の代表的な形ですので、まずは基本的な狙い筋を覚えましょう。
第2章では、先手▲3八銀・6八玉型での攻防を見ていきます。後手の攻めも厳しく、激しい終盤戦が展開されます。
第3章では、先手▲4八銀・5八金型で、持久戦を含みにした戦い方を紹介します。間合いをはかりながら、好機の仕掛けを目指します。
第4章では、腰掛け銀の主流である▲4八金・2九飛型での指し方を解説しています。お互いに駒組みが済んで、不満のない陣形で戦いが起こります。
第5章では、後手が▲4五桂速攻を嫌って、早繰り銀で攻め合いに持ち込んできた場合の対策を紹介します。これはプロ間でも見られる戦型で、まだ見ぬ鉱脈が眠っているかもしれません。

様々なパターンでの仕掛けを習得し、積極的に指し続けましょう。瞬間の堅さと一瞬の切れ味で一手勝ち。本書を読んで、格上に一発入れる武器を身につけてください。


【レビュー】
角換わり▲4五桂速攻をメインとした、角換わり全般の戦術書。


角換わり▲4五桂速攻は、ここ数年で現れた作戦。形によっては、桂と歩の攻めで仕掛けが成立することが分かったため、角換わりの戦術全体に影響を与えている。

特に先手居玉型の変化は『神速!角換わり▲2五歩型 必勝ガイド』(2018.12)などで詳しく解説されていたが、その後、後手にも有力な指し方が見つかり、先手居玉型はあまり指されなくなっている。しかし、仕掛け筋自体は互いの陣形によっては成立するため、さまざまな形での仕掛けが試されている。

また、この▲4五桂速攻を警戒しながら駒組みを進めて相腰掛け銀にしたり、▲4五桂速攻を嫌って△早繰り銀で攻め合いにしたりと、▲4五桂速攻の仕掛けが発生しないパターンも出ている。


各章の内容をチャートを添えながら紹介していこう。



第1章は、「先手居玉型」
本章では、序盤で早めに1筋の端歩の交換を入れてから、居玉・一段金での▲4五桂速攻を解説する。後手は△6四歩型。
(※端歩の交換を入れない型の▲4五桂速攻は『神速!角換わり▲2五歩型 必勝ガイド』を参照)

・端歩の交換を入れておくと、1筋を絡める攻め筋が生じる。
−また、早繰り銀の含みもある。後手は1筋の手抜きはしにくい。

・▲4五桂に対し、△4四銀は安定感のある受け方。
先手は2筋歩交換をして▲2九飛と引いておく。対して、後手の反撃筋は4つ。
(1)△5五角には先手は適当な受けはない。▲3四角からノーガードの殴り合いになる。これは先手が良くなりそう。
(2)△3六歩▲3八金の交換を入れてから△5五角は後手の工夫。▲3四角は上手くいかない。先手は局面を収めに行って、一局の将棋。
(3)△3六歩▲3八金の交換を入れてから△6五角は、より攻撃的な手。▲3八金と8七の地点を狙っている。
(4)△3六歩▲3八金の交換を入れてから△3五銀は、後手が丁寧に受ける順。
⇒∴▲4五桂に△4四銀は、先手が有望な変化が多い。

・▲4五桂に△2二銀には、先手は1筋を絡めて攻めていく。
−▲1五歩に△4四歩は、▲2四歩以下先手の攻めがつながる。
−▲1五歩△同歩に▲2四歩が本線。先手は急がないと△4四歩で桂を取られて不発になる。
後手の受け方は3つある。
(1)△6三銀と6筋の歩を守るのは、▲1五香と走って攻めがつながる。
(2)△2三銀と飛に当てるのは、▲6四飛から暴れて、飛を逃げずに猛攻が入る。
(3)△2三歩とおとなしく受けたとき、先手は▲6四飛か▲3四飛か。
−▲6四飛は先手が指せる変化が多いが、結論としては一局の将棋。
−▲3四飛も先手が指せる変化が多いが、最終的には難解。



第2章は、「先手▲3八銀・6八玉型」
先手が自陣に手を入れてから仕掛ける形。▲3八銀〜▲6八玉まで囲っておき、両端の交換も入れておく。
後手も手が進むので、△6四歩は浮いていない。
攻め筋は居玉急戦と同じで、▲3五歩△同歩▲4五桂となる。

・△2二銀に▲1五歩△4四歩と桂を取りに行くのは、難解ながら先手が指せる。
・△2二銀に▲1五歩△同歩と端の面倒を見るのは、7筋に戦線拡大しする。
⇒∴▲4五桂に△2二銀は、1筋を絡めて先手が主導権を握る変化が多い。

・△4四銀は、十字飛車の筋を封じることができる半面、1筋・2筋が薄く▲3四角が厳しくなりやすい。
−▲4五桂をすぐに歩で取られることがないので、先手は駒組みを整えてから第二次仕掛けを目指す。
−後手の受け、反撃のパターンは4つ。
(1)△3一玉として、玉自ら2筋の補強に行く。
(2)△2二金として、▲3四角には△3二玉を用意するとともに、将来の△3一飛を見る。(▲4五桂速攻での特有の受けの形)
(3)△3六歩とプレッシャーをかけ、次に△4五銀と桂をむしって△3七桂を見せる。
(4)△5二金と離れ駒をなくす。

・△3四銀と立って、次に△4四歩(桂取り)を見せる手もある。
−▲5六角と設置して攻めがつながりそうだが、局面自体は一局の将棋か。



第3章は、「先手▲4八銀・5八金型」
先手陣の金銀を密集させ、両端の交換も入れた形から仕掛ける。玉の堅さと攻めのスピードを両立させた作戦になる。
△8一飛のタイミングで▲3五歩△同歩▲4五桂と仕掛ける。
一段飛車が守りに利いているが、二段目の利きは弱くなっている。その違いがどうなるか?

・△2二銀には、7筋と1筋を絡ませて仕掛ける。
・△4四と銀は、7筋を絡めた十字飛車の筋を封じている。半面、やはり1筋・2筋は薄い。
 先手が2筋で歩交換をして、▲2九飛と引いたところで、後手の指し手は5種類。
(1)△3八角は、飛をいじめようとしている手だが、この形では空振りになりそう。
(2)△4五銀は、桂をむしって△4六桂と打ち、△3八桂成ともたれておく狙い。しかし▲5六角が好位置で、▲2三角成を狙いながら成桂に当たる。
(3)△6二金は受けの形だが、▲1五歩△同歩と突き捨てて▲3四角の攻めが刺さる。
(4)△3六歩と伸ばしておくのは、(2)の△4五銀〜△4六桂の筋の威力を上げる狙い。激しい寄せ合いになるが、先手に分があるか。
(5)△2二金は、第2章にも出てきた、▲4五桂急戦に対する特有の受け方。▲3四角に△3二玉を用意し、△3一飛の転回もある。先手は陣形を整えて決戦に備える。

・仕掛けの▲3五歩を取らず、△6二金と整えるのも有力。



第4章は、「先手▲4八金・2九飛型」
相腰掛け銀の基本形といわれる形からの、▲4五桂の仕掛け筋を解説する。

・▲4八金-▲2九飛型を作り、両端を突き合って、互いに腰掛け銀にする。
・後手は△4四歩を突かず、4筋に争点ができないようにするのが現在の相腰掛け銀の基本形。
・後手が△5二玉〜△4二玉の往復運動や、△6三銀と一度出た銀を引くなど、争点を作らずに待機をしてきたときに発生する仕掛けになる。
・ここまで手が進んでいる場合は、十字飛車の筋は狙いにくいので、仕掛けは(▲3五歩と突かず)単に▲4五桂と跳ねていく。
・▲4五桂に対して、やはり△4四銀と△2二銀の2通りの応手がある。

・△4四銀のときは、先手は2筋の歩を交換に行く。
−後手は△2三歩と飛を引かせてから△6五歩と反撃するか、2筋歩交換(▲2四飛)のタイミングで△1三角と反発して打つか。
−彼我の陣形によって、成否は少しずつ異なる。

・△2二銀が多い対応。△4四歩の桂取りを狙っているので、先手は急いで攻める必要がある。
−7筋を絡めて▲5三桂成と成り捨てる筋や、3筋を突いていく筋がある。



第5章は、「▲4五桂対早繰り銀」
後手が▲4五桂速攻を嫌って、△早繰り銀で攻め合う。
第70期王将戦(渡辺明vs永瀬拓矢)の第5局、第6局で立て続けに現れ、注目されている戦型。
王将戦第5局の棋譜中継のコメントでは、△7三銀に対して「え、銀上がったの!?」と驚きの声が挙がっており、互いに突っ張った戦いになりやすい。

・この場合は、▲3五歩の突き捨ては入れず、単に▲4五桂と跳ねる。
・▲4五桂に△2二銀は、▲5五角や▲6六角の筋で先手の攻めがつながりやすい。
・▲4五桂に△4四銀〜△2二歩がこの形での受け方。壁になっているが、先手からの▲2二歩を封じており、守りが堅い。
−先手は▲3四飛と横歩を取っていくと、後手のカウンターが速い。
−▲3七銀と上がって、後手の攻撃に備えることになる。
・後手の反撃は、以下の3種類。
(1)△6四角と設置して、次に△4五銀▲同歩△3七角成と、△8六歩▲同歩△同角の飛先突破の2つを狙う。
(2)△8六歩▲同歩△7五歩▲同歩△8七角から、馬を作る。
(3)△6四銀〜△7五歩と、早繰り銀の意思を一貫させる。

・序盤の早い段階での端の打診▲1六歩に対し、後手が手抜いて早繰り銀に出る指し方もある。
−先手は1筋の位を取り、腰掛け銀で迎え撃つ戦いになる。



〔総評〕
本書は、角換わりのうち「▲4五桂速攻」とされるものだけでなく、▲4五桂跳ねから仕掛けが始まるもの全般を扱った一冊だった。そのうち、1筋の交換を入れない▲4五桂速攻についてはほぼ触れていない(『神速!角換わり▲2五歩型 必勝ガイド』で詳解されているため)ので、注意が必要だ。

すでに▲4五桂の仕掛けの意図は知っているという前提になっており、考え方よりも読み筋が重視されている。ちょっとした彼我の陣形によって成否が変わりやすい戦型で、特に▲4五桂に対して△2二銀と△4四銀のどちらがより有力なのかは難しいが、本書では主要な筋は網羅されているので、カタログ的に使うと良いだろう。本ページのチャートも活用してください。

角換わりを指す人のうち、先手番で▲4五桂の仕掛け筋を狙う人や、腰掛け銀との両天秤で指している人、また角換わりの後手番を持つ人には必読の一冊です。

(2021Jul21)


※誤字・誤植等(初版第1刷・電子版ver1.00で確認):
p25下段 △「△4五歩に変えて△1二歩…」 ○「△4五歩に替えて△1二歩…」
p135上段棋譜 ×「△3三同玉」 ○「△3二同玉」



【関連書籍】

[ジャンル] 角換わり
[シリーズ] マイナビ将棋BOOKS
[著者] 北島忠雄
[発行年] 2021年

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