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マイナビ将棋BOOKS 神速!角換わり▲2五歩型 必勝ガイド |
[総合評価] A 難易度:★★★★☆ 図面:見開き4枚 内容:(質)A(量)A レイアウト:A 解説:A 読みやすさ:B 有段〜高段者向き |
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【著 者】 長岡裕也 | ||||
【出版社】 マイナビ出版 | ||||
発行:978-4-8399-6797-0 | ISBN:978-4-8399-6797-0 | |||
定価:1,663円(8%税込) | 214ページ/19cm |
【本の内容】 | ||||||||
◆内容紹介 |
【レビュー】 |
角換わり▲2五歩型の最新形を徹底解説した本。 2018年は、プロ公式戦で角換わりが大流行した。居飛車党同士の対戦では、横歩取りは青野流と勇気流の隆盛で後手が避ける傾向があり、さらに矢倉は後手急戦が研究されて先手が避けるようになって、自然と角換わりに戦型が集中するようになっている。 現在の角換わりで最も多く見かけるのは「▲4八金-2九飛型vs△6二金-8一飛型の先後同形」であるが、先手が右桂を早く跳ねて速攻を狙う形は、相腰掛け銀の駒組みに影響を与えるため、その成否は重要となる。 本書は、早い段階で▲2五歩と突き越し、先手が先攻を狙う形に限定して、角換わりの最先端を解説していく。 各章の内容を図面を添えて紹介していこう。(なお、チャートは最後にまとめて掲載する。超長いのでご注意ください。分かる範囲でプロ実戦例も添えてみました。) |
第1章は、「先手急戦形」。 (1) 角換わりに進むまで 現在では▲4八金(+2九飛)型が優秀と見られるようになり、右四間の含みがないため、飛を2筋で使うために▲2五歩を早く突き越すようになっている。また、後手の雁木への変化を封じるために、早く▲2五歩と突く意味もある。 よって、〔右図〕のような、▲2六歩△8四歩▲2五歩△8五歩の相掛かり模様から▲7六歩として、角換わりを目指すオープニングが急増している。(ただしこの場合、後手が横歩取りを志向したら避けることは難しいが、2018年12月の出版時点では横歩取りの後手番が苦戦しているため、角換わりになりやすい) |
左銀の上がり方は、▲8八銀・▲7八銀・▲6八銀の3つある。角交換になってしまえば同じだが、本書では▲7八銀を本線とする。 ▲7八銀は、1手でスキが少なく、思い切った指し方(例えば飛車切り)が可能で、後手は角不換の早繰り銀などにはしづらい。(※ただし、2018年12月時点では、棋譜中継で最も多く見かけるのは▲6八銀である) |
右銀の上がり方は▲3八銀・▲4八銀があるが、本書では▲4八銀に絞り、▲4八銀ならではの速攻を多く扱っていく。例えば、居玉でも将来△1五角の王手飛車がない、などの利点がある。 |
本書は〔右図〕を基本図とし、第1章の大半は、「▲4八銀+居玉+▲7八金省略で、▲3五歩〜▲4五桂の仕掛け」をテーマとしている。後手が△7四歩か△6四歩かで仕掛けの成否も変わってくる。 この仕掛けを後手が警戒するなら、〔右図〕で△5二金と構えることになり、駒組みが制限される。例えば、好形とされる△6二金・8一飛型を手損なしで組めなくなる(ただし損得は微妙なところ)。この形は第2章で扱っていく。 |
(2) △7四歩型 対
急戦 後手の早繰り銀狙いに対し、先手がそれを許さない方針に絞って解説していく。(※実際のプロの実戦では、先手が仕掛けを見送っているケースも多い) 単に▲4五桂の仕掛けは、△4四銀なら有力だが、△2二銀で攻め切れない。 ▲3五歩△同歩と3筋を突き捨ててから▲4五桂の仕掛けが有力。今度は△2二銀は攻めが続く。 △4四銀〜△2二歩だと先手の猛攻は無理攻めになるので、持久戦気味に移行する。後手としては、2二のスキは少ないが、▲2四角や▲1五角の筋には注意が必要となる。 全体としては、△7四歩型では先手良し。 |
(3) △6四歩型 対 急戦 △6四歩は△7四歩型よりスキは少ないが(例えば飛のコビンが空いていない)、それでも先手が仕掛ける手はある。 後手は△6四歩が速攻を意識した手ではないので、攻め合いではなく受けに回る。 やはり▲3五歩△同歩▲4五桂の仕掛けが有力で、△2二銀はギリギリ先手の攻めがつながりそう。 △4四銀もいろいろ攻めはあるが、一気には決まらず、いったん駒組みを進める展開となる。 総合的には先手が押し気味か。この仕掛けの成否は、第2章の腰掛け銀の駒組みにも影響を与える。 |
第2章は、「腰掛け銀」。第1章の仕掛けが成立するときに、先後の駒組みがどのように変化していくかを扱っており、非常にプロ的要素が高い話になっている。 (1) 先手▲4八金・▲2九飛型 第1章の「▲3五歩〜▲4五桂の仕掛け」を警戒するなら、後手は速めに△5二金と上がる〔右図〕ことになり、駒組みを制限される。例えば、スムーズに△6二金・8一飛型に組むことができない。 ただし、△5二金と▲6八玉の交換が入っても、△7四歩なら第1章と同様に、▲3五歩〜▲4五桂の仕掛けがある。 △6四歩なら軽い仕掛けは難しく、腰掛け銀模様に落ち着いていく。 後手は、一手損でも△6二金・8一飛型にして、千日手を狙うのが有力となる。 |
(2) 先手▲5八金型 後手に△5二金と指させてから▲5八金とするのが長岡の推奨手。〔右図〕から△8一飛でも△3一玉でも▲5八金と上がる。 ▲5六銀△7三桂を決めさせたことに意味があり、従来▲有望とされていた形に持ち込める可能性が高くなる。 難解ではあるが、やや先手ペースになりやすいか。 |
〔総評〕 アマでも角換わりになりやすくなった現在、形を限定させてすばやく仕掛けられる本書の形は非常に有力で、得意戦法にしてみるにも面白い。 ただし、仕掛けてからはかなり難解で、技を駆使したり、飛を切っていく展開も多いため、しっかり研究できていないと綻びを生じやすい戦型でもある。 なお、後手がやや妥協してきたときには、通常の角換わり腰掛銀の知識と経験が必要となるため、ひと潰しにしてやろうと思っている人には不向き。激しい一方で、非常に玄人好みの戦型と言っていいだろう。 今年2018年9月の王座戦五番勝負でも本書の形が2局登場しているなど、今後はプロ公式戦の登場頻度が上がりそうな予感もある。最先端の将棋に感度の高い人は、ぜひ本書で急所を押さえておきたい。 また、さまざまな攻め手筋が登場するので、この戦型を指す機会がない人にとっても、攻めの教科書として面白いと思う。難解ではあるが、力は付きそうだ。 (2018Dec30) |
※誤字・誤植等(初版第1刷で確認): p9下段 ×?「もちろん▲2六歩▲4八金型にも利点はある」 ○「もちろん▲2六歩▲5八金型にも利点はある」 p33下段 ×「▲3四飛△2三歩▲3四飛」 ○「▲2四飛△2三歩▲3四飛」 |
〔チャート〕(第1章〜第3章を一括で。分かる範囲でプロ実戦例も添えてみました。) |