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マイナビ将棋BOOKS 堅陣で圧倒! 対中飛車 一直線穴熊 |
[総合評価] B 難易度:★★★★ 図面:見開き4枚 内容:(質)A(量)B+ レイアウト:B 解説:A 読みやすさ:B 上級〜有段向き |
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【著 者】 長谷部浩平 | ||||
【出版社】 マイナビ出版 | ||||
発行:2020年5月 | ISBN:978-4-8399-7173-1 | |||
定価:1,649円(10%税込) | 224ページ/19cm |
【本の内容】 | ||||||||
・【コラム】栃木について |
【レビュー】 |
対中飛車の一直線穴熊の戦術書。 対中飛車の作戦はいろいろあるが、玉を固めたい人にオススメなのがこの「一直線穴熊」。ゴキゲン中飛車に対しては穴熊に潜りにくい…とされていたのを、脇目も振らずに穴熊に潜れるようになった画期的な作戦の一つだ。 従来の居飛穴と違う点は、右銀は4八→5九→6八のルートで使うことや、玉を潜っても▲8八銀のハッチを閉めず、▲8八角と引く余地を残しておくことなど。これらの工夫によって、存分に堅さを発揮できるようになった。 この一直線穴熊が登場しておよそ10年。本書は、先手でも後手でも使える一直線穴熊の戦い方を解説していく本である。 各章の内容をチャートを添えながら紹介していこう。 |
第1章は、「先手一直線穴熊」。 第1節は、「基本図まで」。 ・相手がゴキゲン中飛車なら、その作戦に関わらず、一直線穴熊に組むことができる。 ・居飛穴に潜ったら、▲8八銀よりも▲6六歩〜▲6七金を優先する。(一直線穴熊では、▲8八角と引く余地を残しておく) 第2節は、「vs袖飛車」。 ・△袖飛車では、△6四銀型から△7二飛で角頭を狙ってくる。先手番の一直線穴熊では浮き飛車作戦が有力策。 |
第3節は、「相四枚穴熊」。 ・後手が左金をそのままにして、浮き飛車から飛交換を目指してくる形には注意。 ・互いに四枚穴熊まで組んだ場合は、▲3五角の配置を狙っていこう。角切りを含みに、技がかかりやすくなる。 ・△5一角が手ごわい手で、2筋の当たりを避けている。▲4六角として、△4四歩と反発させて攻め合いに持ち込もう。 |
第2章は、「後手一直線穴熊」。 第1節は「駒組み」、第2節は「▲5六銀型」。 ・▲美濃囲い+▲5六銀型は結構優秀だが、扱う本は少ない。 ・▲5六銀に対して△5一銀がオススメ。▲6五銀速攻に対して、△4二銀右と5三をカバーできる。 ・先手が高美濃に組むときは、居飛穴を固め切る前に(5三に2枚利いているタイミングで)△6四歩として、▲6五銀を防いでおくのが急所。 |
第3節は、「袖飛車型」。 ・相穴熊での▲袖飛車には、やはり2二にスペースを空けて、角を引けるようにしておく。 ・後手番の一直線穴熊では、1手の違いに注意。例えば、第1章のような浮き飛車作戦は、先手の受けが間に合ってくる。 |
第4節は、「▲4六銀・3五歩型」。 ・▲4六銀・3五歩型は、先手が先に袖飛車にするのではなく、左銀で3筋の歩を交換してくる作戦。結果的には袖飛車の形になりやすいが、第3節とは少し形が異なる。 |
第5節は、「▲4八銀・5六飛型」。 ・▲4八銀・5六飛型は、先手が銀を下げて玉を固め、浮き飛車から軽い捌きを目指す作戦。駒が偏りやすい一直線穴熊を咎めようとしている。後手は、右辺でキメ細かい対応が必要。 |
第6節は、「▲4六銀・5六飛型」。 ・▲4六銀・5六飛型は、先手がディフェンスラインを上げた状態で捌きを目指す。後手が△5四歩と反発した時に5五が厚いのが特徴。後手は△8四飛と守るべき。 |
第7節は、「▲5六銀〜▲4七銀型」。 ・▲5六銀〜▲4七銀型は、左銀を3七へ運ばずに、4七に活用する。▲5六飛〜▲6六飛の揺さぶりと、▲3六銀〜▲4五歩の攻めなど複数の狙いを持って、柔軟な構えになる。 ・後手は角頭を攻められないので、早めに△2二銀とハッチを閉めておく。 ・端を受けるのも大事。 ・▲6六飛対策のため、左金は保留する。 ・本節は特に、実戦譜に近い進行なので、我々の実戦で同一局面が出る可能性は低い。全体的な流れや感覚を掴むようにしよう。 |
【総評】 対中飛車の一直線穴熊の本は、本書が初めてではないため、本書はやや応用編という位置づけのように思う。一直線穴熊をある程度指している人には、自分の修正点を見つけるためにちょうど良い本になりそう。基本から学びたい人は、過去の本を探してみるのが良い。(例:『中飛車破り 一直線穴熊徹底ガイド』(高見泰地,マイナビ,2013)など) 本書のレイアウトは、〔右図〕のように、本線の棋譜を細かく分け、1ページ内で[棋譜]→[解説]→[棋譜]→[解説]→…という構成を採用している。(※よくあるのは、1ページ内で[棋譜]→[解説]の1サイクルにするパターン) これ自体は、[棋譜]と[解説]が近くにあるので良い工夫だと思う。ただし、本書では図面がやや不足しているのと、[棋譜]のフォントが明朝体を太字にしているだけなので、本文との境目が分かりづらく、読みづらかったのが残念。 [棋譜]前後の行間を空けたり、ゴシック体の太字にしたり、[棋譜]に網掛けを施すなどの一工夫があれば、もっと読みやすかったかと思う。 戦型の基本的な思想のおさらいや、レイアウト的なもうひと工夫があれば、かなり良い本になったのに、ちょっと惜しいなぁ…と思った一冊。 (2020Jun23) ※誤字・誤植等(初版第1刷・電子版ver1.00で確認): p77下段 「△3一銀右…▲5四歩」が太字になっていない。 p128下段 「第16図以下の指し手@」 図面の第16図と繋がらない。p132との関連があるので、図面の修正ではなく、棋譜の「△4六歩」の前に「第16図以下の指し手@」を持ってくるのが正しそう。 |