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マイナビ将棋BOOKS 角交換振り飛車破りの決定版! 地下鉄飛車徹底ガイド |
[総合評価] B 難易度:★★★★ 図面:見開き4枚 内容:(質)A(量)B+ レイアウト:A 解説:A 読みやすさ:B 上級〜有段向き |
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【著 者】 北島忠雄 | ||||
【出版社】 マイナビ出版 | ||||
発行:2020年5月 | ISBN:978-4-8399-7289-9 | |||
定価:1,694円(10%税込) | 224ページ/19cm |
【本の内容】 | ||||||||||||||||
◆内容紹介 |
【レビュー】 |
対△角交換振り飛車の、▲地下鉄飛車作戦の戦術書。 角交換振り飛車に対して、オーソドックスに銀冠や居飛穴に組むのは有力ではあるが、駒組みに制約が多くて手詰まりになりやすい。千日手は後手の望むところだし、無理に仕掛けるのも後手が待ち受けるところで、動くのが難しい。 そこで、「地下鉄飛車作戦」が有力になる。先手陣も一段飛車でバランスが良い構えを作ることで、先手が自分から動いていくことができる。 本書で解説される地下鉄飛車の基本的な駒組みと狙いは、以下の通り。 ・左金は▲7八金 ・玉は▲6八玉(手詰まり模様では▲5八玉など移動も可) ・右辺は▲4七銀-▲3八金 ・左辺は▲6六銀-▲7七桂が汎用性が高い。 ・地下鉄飛車にして、8筋や7筋で歩や桂を交換すると、手が作りやすい。 各章の内容を、チャートを添えながら紹介していこう。 |
第1章は、「居飛車穴熊絶対阻止の△8八角成型」。 ・居飛車が▲6八玉の瞬間に後手から△8八角成と角交換し、▲8八同銀に限定させて、居飛穴に囲いにくくする作戦。 ・先手は地下鉄飛車を目指すなら、▲7八金〜▲3八金と陣形のバランスを取り、▲2九飛と下段飛車に構える。 ・一気に攻めつぶすというよりは、8筋や7筋で歩や桂を交換して、じっくり攻めるイメージになる。 ・持久戦になれば地下鉄飛車側が指しやすいので、振り飛車側から急戦があり得る。バリエーションが多いので、対応をしっかり覚えよう。 |
第2章は、「積極策▲3三角成型」。 ・後手から△8八角成は手損なので、△3三角と上がって。先手からの角交換を誘ってくる作戦がある。 ・先手は▲3三角成と誘いに乗り、第1章と同様に、金開きから地下鉄飛車を目指す。 ・後手が持久戦を避け、4筋から仕掛けてくる順は警戒が必要。 ・後手の仕掛けがイヤなら、▲4六歩保留の駒組みが有力。 |
第3章は、「押さえておきたい10の作戦」。 ・これまでの第1章〜第2章の作戦以外で、角交換振り飛車系の作戦への対応策を解説していく。 ・基本的には先手はすべて地下鉄飛車を目指すが、後手の対応によっては地下鉄飛車が実現しない場合もある。 第1節は、「△3二金型」。 ・△3二金型は、後手が飛を4筋のままに置いて▲4六歩を牽制するために、左金で2筋に備えている。 |
第2節は、「△7二玉型」。 ・△7二玉型は、後手が玉型を美濃囲いにせずに△6三銀-△6二金を基本とし、風車ライクな柔軟性のある陣形を目指している。 |
第3節は、「ノーガード戦法」。 ・ノーガード戦法は、角交換できるうちは、後手が2筋を徹底して受けない作戦。 |
第4節は、「後手穴熊」。 ・角交換振り飛車穴熊(通称「レグスペ」)は、堅さ重視の作戦。 ・ただし後手が何もしないと、地下鉄飛車の格好のマトになるので、どこかで△5四歩と勝負してくる展開になる。 |
第5節は、「△3三角+穴熊」。 ・後手が手損せずに、先手から角交換させて穴熊を目指す作戦。 ・ただし、角交換後に△3三桂型になるので、後手は飛をしばらく2筋に置いておく必要がある。 |
第6節は、「後手立石流」。 ・角道オープン四間飛車の派生で、△立石流がある。 ・地下鉄飛車を目指した▲7八金型の場合は、▲7七玉〜▲8八玉と深く囲いたい。 |
第7節は、「ダイレクト向かい飛車」。 ・△ダイレクト向かい飛車に対しては、逆棒銀の急戦が気になるので、▲2五歩を保留して駒組みを進めたい。 |
第8節は、「△9五歩型」。 ・△9五歩型は、後手が9筋の位を取ってからダイレクト向かい飛車にする作戦。 ・先手は片銀冠から端に反発して「ダイレクト地下鉄飛車」を狙うのがオススメ。 ・後手が端を強化して銀冠にするなら、臨機応変に8筋を狙おう。 |
第9節は、「ゴキゲン中飛車からのダイレクト向かい飛車」。 ・出だしは▲7六歩△3四歩▲2六歩△5四歩と△ゴキゲン中飛車模様で、後手から角交換してダイレクト向かい飛車にする作戦。 ・4手目に△5四歩を突いているので、「▲6五角問題」がない。 ・先手は基本通りの地下鉄飛車で持久戦にすれば、作戦勝ちが望めそう。 ・△2五歩への対応をマスターしよう。 |
第10節は、「△3三角戦法」。 ・4手目△3三角戦法で、角交換から向かい飛車にする作戦。 ・後手が最小限の駒組みから△5四銀型にすると、先手が地下鉄飛車にする前に△6四角から手を作られてしまう。 ・そこで、先手は▲6六銀〜▲5五銀と出て、△5四銀を牽制しておきたい。 ・なお、角交換後に▲7八金としておけば、ダイレクト向かい飛車をそのものを阻止することができる。(△2二飛に▲6五角と打ったとき、△4五桂が利かなくなるため) |
【総評】 本書の解説では、大半の変化が「一局の将棋」と結論付けられているので、本戦法をもって「角交換振り飛車を殲滅」という訳ではないが、ジックリとした駒組みでバランスを取りつつ、主導権を握りたい人にはオススメの作戦だろう。 また、おおむね同じ考え方で戦えるので、「角交換振り飛車に対してどう戦えばいいか分からない」という人にも、試す価値がありそうだ。 全体的に棋譜や本文の読みやすさは特に問題ないが、「ここでこの図面が欲しいなぁ」という局面と、実際に載っている図面がときどきズレている印象があったので、頭の中だけで読み進めるのは少し大変かもしれない。盤駒か棋譜並べのできるソフトを使って、並べながら読むのを推奨。 なお、本作戦の変化は多く、同一局面になることは少ないと思う。暗記するというよりは、指しこなし方や考え方を修得するのに役立ててほしい一冊。 (2020Jul04) ※誤字・誤植等(初版第1刷・電子版ver1.00にて確認): p118上段 ×「後手の△2二飛で…」 ○「後手の△2一飛で…」 p166上段 ×「▲2四角成以外に△2二角成も…」 ○「▲2四角成以外に▲2二角成も…」 |