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マイナビ将棋文庫 3手詰修了検定 |
[総合評価] A 難易度:★★★ 〜★★★★☆ 見開き1問 内容:(質)A(量)A レイアウト:A 解答の裏透け:不明 解説:B 中級〜有段向き |
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【著 者】 伊藤果 | ||||
【出版社】 マイナビ出版 | ||||
発行:2019年11月 | ISBN:978-4-8399-7129-8 | |||
定価:1,474円(10%税込) | 440ページ/15cm |
【本の内容】 |
第1章 上段問題50 (第1問〜第50問) 第2章 中段問題60 (第51問〜第110問) 第3章 下段問題60 (第111問〜第170問) 第4章 双玉問題10 (第171問〜第180問) 第5章 3×3マス30 (第1問〜第30問) ◆内容紹介 本書は「3手詰は何をもってして卒業といえるのか」をテーマにした詰将棋書籍です。 ・いつ5手詰にステップアップすれば良いのか分からない ・5手詰で躓く事が多い ・3手詰が得意 という方におすすめです。 上段玉・中段玉・下段玉・双玉問題などあらゆるパターンを完全網羅することで、「すべての問題が解けたら3手詰は卒業」といえる内容になっています。 そのため少し難しい問題もありますが「これらが解けないのならば、5手詰に進むべきでは無い」という作者の意図のもと作られていますので乗り越えて下さい。 |
【レビュー】 |
3手詰専門の詰将棋問題集。(おまけで7手以上あり) 1手詰で詰みの形を覚えたら、次は3手詰、5手詰…と、だんだん手数が長いものに挑戦していくのが一般的だ。その中で、3手詰は「初級向けの詰将棋」という位置づけだと思う。 本レビューをご覧の方は、5手詰以上も解いている人は多いと思うが、さて、あなたは本当に「3手詰なら解ける」のだろうか。 本書は、「すべての問題が解けたら3手詰は卒業」(=「3手詰なら解ける」と言ってよい)をテーマとした、かなり難度の高い3手詰め問題集である。 裏表紙に「今後、本書を上回る3手詰の書籍は現れないと思っています」とあるように、本書は「3手詰の最高水準問題集」だといってよい。 〔問題の傾向〕 ・問題図では図面のみ。ヒント、難易度表示などは一切なし。 ・解説は、正解手順、ショートコメント、[変化]、[紛れ]が書かれている。全ての変化が網羅されているわけではないので、省略されている部分は自力で考えよう。 ・解いてみた印象では、3手詰の難易度が10段階だとした場合、Lv.5〜Lv.10の高難度だった。玉の位置によって[上段]・[中段]・[下段]と章が分かれているが、難易度の差は特にない感じ。 ・打歩詰め打開は3手詰め編ではなし。 ・森信雄の3手詰(代表作=『あっと驚く三手詰』(2000))のような大駒をぶん回したり、香をちょっとずつ動かすようなものはときどきあるが、森信雄ほどは多くない感じ。 ・合い利かずの詰みは割と多い。一見合い駒で手数が伸びそうな場合でも、無駄合いは手数に含まれないことには要注意。3手詰の本ながら初心者向けの位置づけではないためか、その辺の言及はほとんどない。パッと見では無駄合いかどうか分からないものもある。 ・同手数の駒余りの変化は、解答としては不正解なので要注意。本書では、駒余りにならないように玉方の対応を問うことそのものがテーマになっている問題がかなり多い。ちゃんと数えたわけではないが、3〜4割くらいあるイメージ。 ⇒なので、2手目の玉方の対応はしっかりと読もう。解説の[変化]で「駒余り」と書かれたものは不正解になる。(駒余りでなければOK) 詰めの方向性が合っていても、本書の趣旨では解けたことにはならない。 ・双玉問題では、特に2手目の玉方の対応を慎重に読もう。必ず逆王手や玉を素抜かれる筋が仕込まれているので要注意。 〔実際に解いてみた〕 電子書籍版で解いてみました。なお、わたしの「詰め棋力」は、甘く見積もって三段、厳しく見れば初段くらいです。(指し将棋全体の棋力よりもかなり劣ります(汗)) ●「ひと目で解けた!」(Lv.1〜4相当)=ゼロ。皆無。「焦点に捨てて、ハイ、一丁上がり」なんてものはほぼなし。 ●変化も含めて10秒以内で確認終了(Lv.5〜Lv.6)=49問、約27%。 ●正解だったが難しく感じた(Lv.9〜10相当)=2問。第110問と第164問。 ⇒おそらく本書での最高難度は第110問。〔右図〕 ●間違えた=8問。約4%。 ⇒3手詰を卒業できませんでした…orz 全く解けなかった訳ではなく、駒余りになる変化を見落としたパターンでした。 3問連続で間違えたときは、絶望感でいっぱいでした… 〔3手詰以外〕 第5章の「3×3マス」はおまけ要素で、初形が盤上右上の3×3に収まっている、という趣向。9マス全部が駒で埋まっていると、まるでルービックキューブのようです(笑) 詰め手順中では3×3以外の符号も出てくるが、たまに1四X、2四X、4三Xがあるくらいで、ほとんどの符号は3×3で完結している。 また、3手詰編では現れなかった打歩詰め打開なども登場する。 3×3で一見易しそうだが、7手詰〜最長23手詰なので油断しないように。 わたしは3手詰編をパーフェクトクリアできなかったのに、どんな顔で本章に取り組めばいいのか…(泣) と思ったら、3×3なので近接密着型の手が多くて考えやすく、またよく見れば序盤は必然手が続く問題も多かったので、わたしレベルの詰め棋力でも結構解けました。15手詰などがポンポン解けて、嬉しかったです。(最後の3問はわたしには難しすぎましたけどね) 〔総評〕 3手詰編では自信を打ち砕かれ、3×3マス編では自信を取り戻すという、ちょっと不思議な一冊でした。 高負荷の筋トレをした後に、ちょっと休んでから低負荷の中距離をジョギングしたら、あまり息が切れずに走れちゃった、そんな感じでしょうか。 本書の煽りコピーには「本書の3手詰が解けなければ5手詰に進むべきではありません」とありますが、卒業要件がパーフェクトクリアというのはさすがに厳しすぎで、本書の3手詰がだいたい解ければ、5手詰に進んでよいかと思います。 ただし、「本書の3手詰が、解答を見てもすぐに理解できないのであれば、5手詰に進むべきではありません」とは思います。(2019Nov16) ※誤字・誤植等(初版第1刷で確認): p312 正解図 ×「△5九と」 ○「△4九と」 △5九とだと▲同飛で駒余りになってしまう。 |