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マイナビ将棋BOOKS 受けが弱いと将棋は勝てない 今泉流受けの極意 |
[総合評価] A 難易度:★★ 〜★★★ 前半=見開き1問 後半=見開き2問 内容:(質)A(量)A レイアウト:A 解説:A 読みやすさ:A 初級〜中級向き |
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【著 者】 今泉健司 | ||||
【出版社】 マイナビ出版 | ||||
発行:2019年11月 | ISBN:978-4-8399-7123-6 | |||
定価:1,694円(10%税込) | 280ページ/19cm |
【本の内容】 |
第1章 受けが弱いと将棋は勝てない トレーニング編
(108問) 第2章 受けが弱いと将棋は勝てない 実戦編 (54問) ◆内容紹介 アマ・プロ問わず早い仕掛け、駒損をいとわない速攻が流行している昨今ですが、そんな中でアマチュアが勝ちやすい将棋とはどんな将棋でしょうか?それは受け将棋です。 プロとアマの将棋の大きな違いの一つにプロは攻め方を間違えないが、アマはよく間違える、ということがあります。つまりアマチュアだと「相手が攻め間違えて勝つ」というパターンが多くなり、下手に攻めるより受けていたほうが勝率が高くなる傾向があります。特に軽い仕掛けや桂損の速攻などは絶好のカモといえるでしょう。 実際、アマ強豪と言われる方たちは皆さん受けが強い方たちばかりです。 本書著者の今泉健司四段はアマチュアから編集試験を通過してプロになった棋士ですが、アマ時代から受けの力が飛び抜けており、プロになっても受け主体のスタイルを続けており、好成績を残しています。 本書にはそんな「今泉流の受けの極意」が詰め込まれています。重要なのは受けの手筋を暗記することではなく、「受けの感覚」をつかむことです。自陣のキズに対して「生理的な気持ち悪さ」や「嫌な予感」を感じ、考えて指すのではなく、「無意識」に、「指が勝手にそこにいく」感覚を体得してください。本書はその感覚を養う絶好の教材となります。 本書を読み終える頃にはあなたの受けの力が格段にアップしていることでしょう。 |
【レビュー】 |
受けの考え方を解説した本。 将棋で「受け」とは、「守る力」のことを示す。将棋では攻めてばかりで勝てることは稀なので、勝つためには受けの力も必要となってくるが、級位者の頃は特に「攻め>受け」となっている人が多いと思う。 「受け」は、相手が何を狙っているかを把握したうえで、それに対応する手を指していくので、相手の手を読み切るとなると難しい面が確かにある。ただし、「受け」は読み切りで指すとは限らず、「読み切ってなくても感覚的に正しい受け」というものが存在する。 本書は、読みや理屈ではなく、「受け」の感覚を身につけ、指が自然とそこに行くことを目標とする本である。 基本的には、次の一手形式で受けの感覚を学んでいく。問題図では、その局面の絶対的な正解を答えるというよりは、問題図に添えられた「ポイント」(ヒント的なもの)を読んで、方針に沿った手がひと目で見えるようにしたい。 まずは、冒頭の「今泉流 受けの極意五箇条!」をしっかり頭に入れよう。 ・数を足して受ける ・美しい形を保つ ・自陣のキズを消す ・単純に成駒を作らせない ・駒損をしない これらは、本書の全体に流れる基本的な「受けの思想」となっており、本書で一番大事なところだ。極端にいえば、この五箇条をしっかりと会得するために、残りのページがあるといっても過言ではない。 第1章は、「受けが弱いと将棋は勝てない トレーニング編」と題し、部分図で108問。全体的に主に初心者〜中級者向けの内容で、本サイトの難易度でいえば★2〜★3くらい。 問題図には、「ポイント」として、状況説明やヒント、やるべきことや考え方が添えられている。200字程度でかなり詳しめ。使う手筋は問題タイトルに書かれていることが多いので、他の手筋本などで見たことがある手筋なら、難易度はさらに下がる。 解説は250字〜300字程度で、図面は2枚。ちゃんと受けないとどういう不都合があるか、正解手にはどのような効果があるかが書かれており、とても分かりやすい。 問題のレベルや内容は、以下のような感じになる。 第1問〜: 最初は角頭のケア(相手の飛先)をしっかりとするといったところから。初心者向け。 第5問くらい: 3手答える問題が登場。初級者向けくらい。 第9問くらい: 中級者向けくらい。 第17問〜: 囲いの進展、端歩の考え方など 第31問〜: 端攻めの対応。 美濃囲いの端攻め対応や、位の考え方には、人によって見解の相違があったりするが、そういうケースでは今泉の信念や考え方を重視する。例えば、美濃囲いに対する端攻めは、今泉流では「読まなくても取る一手」となる。 第35問〜: 陣形の整備、囲いの修復など 第37問〜: 駒損しない、駒得を目指す、など その他: 力を溜める手、駒があることは惜しみなく使う、勝ちに行くより負けにくい将棋、1手前に受ける、最終盤で1手稼ぐ手筋、囲いに入城することの重要性、など。 第2章は、「受けが弱いと将棋は勝てない 実戦編」と題し、全体図で54問。今泉の公式戦から受けの一手を出題する。問題によっては、相手の受けの好手を問う問題もある。 第1章と構成が異なり、見開き2問、ヒントは20字程度。棋戦名、対局者名、対局日が添えられているが、棋譜はない。2019年8月までの公式戦からちょっとずつ遡って2016年7月まで。一部前後しているものもある。(今泉のプロ入りは2015年4月付なので、最初の1年間強の将棋は載っていない) 本章もやはり、その局面での「絶対的な正解手」や「最善手」を答えるわけではなく、「今泉らしい受けの一手」を選んでいく。プロの実戦なので、第1章がちょうどよい難易度だった人にはやや難しい問題もある。一方、例えば「端歩の対応」や「空間に駒を埋める手」のように、第1章を読んできた人であれば、「今泉流なら何を指すか」を考えて、局面を深く読まなくても正解手に目が行く問題も多い。 第34問の「自陣のキズを丁寧に消していく」、第35問・第36問の「駒損でも相手の攻めの主軸を断つ」、第41問の「自陣の嫌味を徹底的に消す」などは非常に実戦的で、級位者から有段者まで参考になりそうだ。 〔総評〕 前半だけでほぼ普通の棋書1冊分のボリュームがあり、前半をしっかりと取り組むだけでも「受けとはこういうもの」ということを感じることができる。(事前の発表では222pの本だったはずだが、実際は第1章だけで1冊分で、全体では280pになっていた)) 特に「受けって難しいよね」「受けが苦手なんだよね」と思っている級位者の方には超オススメ。読みではなく、感覚でこのような手が指せたとき、「自分は少し強くなったかも」と思えるに違いない。 有段者にとっては、ほぼ会得できている(はずの)内容なので、マストで読む必要はなさそう。敢えて言えば、「自分の感覚と合っているな」「自分はこの局面では手抜きするけど、このように手を入れてくる人も多いのだな」ということを確認しながら読めば糧になる。 後半部分は、問題図の局面はやや難しいところもあるが、解説を読むことを重視すれば級位者でも大丈夫。プロの実戦でも、基本がしっかりと使われていることを知るだけでも十分だ。 ※誤字・誤植等(初版第1刷で確認): p124上段 ×「△8六歩成」 ○「△8七歩成」 |