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■三浦の矢倉研究 脇システム編

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三浦の矢倉研究 脇システム編
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マイナビ将棋BOOKS
三浦の矢倉研究 脇システム編
[総合評価] C

難易度:★★★★

図面:見開き4枚
内容:(質)B(量)B
レイアウト:A
解説:B
読みやすさ:A
上級〜有段向き

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【著 者】 三浦弘行
【出版社】 マイナビ
発行:2014年5月 ISBN:978-4-8399-5194-8
定価:1,717円 224ページ/19cm


【本の内容】
序章 脇システムの優秀性 ・脇システム三つの魅力 6p
第1章 相矢倉の基本 ・後手からの急戦策 24p
第2章 脇システム△7三銀型 ・角交換から端攻めが狙い 46p
第3章 脇システム△7三角型 ・角交換を強要する△7三角 20p
第4章 実戦編 (1)△7三銀型(▲1五歩△同歩▲同香)
  (▲三浦△飯塚祐紀, 2000.05.09)
(2)△7三銀型(▲1五歩△同歩▲同香)
  (▲三浦△先崎学, 2002.10.10)
(3)△7三銀型(▲1五歩△同歩▲同香)
  (▲三浦△阿部隆, 2002.11.25)
(4)△7三銀型(▲1五歩△同歩▲同銀)
  (▲三浦△飯塚祐紀, 2000.02.24)
(5)△7三銀型(△9五歩▲同歩△同銀)
  (▲三浦△真田圭一, 1999.02.02)
(6)△7三銀型(▲4八飛)
  (▲三浦△森内俊之, 2003.07.23)
(7)△7三銀型(▲1六歩△1四歩▲6八角)
  (▲三浦△松本佳介, 2001.12.10)
(8)△7三銀型(▲3五歩△同歩▲同角)
  (▲三浦△行方尚史, 2007.06.04)
(9)△7三銀型(▲3五歩△同歩▲同角)
  (▲三浦△佐藤康光, 2007.06.19)
(10)△7三角型(▲6一角△5三銀)
  (▲三浦△小野修一, 1999.09.10)
(11)△7三角型(▲6一角△5三銀)
  (▲三浦△富岡英作, 2003.03.28)
(12)△7三角型(▲6一角△5三銀)
  (▲三浦△富岡英作, 2004.02.19)
114p
終章 GPS新手とその可能性 ・GPS将棋が切り開いた可能性 6p

◆内容紹介
将棋界一の研究家として知られる三浦弘行九段による待望の戦術書が完成!

私も自分の土俵で戦える戦法を持ちたいと思い、脇システムに着目したのが研究する原点である」(まえがきより)
本書は三浦九段が得意戦法である脇システムについて、その研究を惜しみなく披露したものです。脇システムは矢倉戦で角が向かい合う先後同形から斬り合う、巌流島の決戦のような将棋です。

スペシャリストだけの世界のように感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、三浦九段は脇システムこそアマチュアの方が使いやすい戦法だといいます。
まず、駒組みが簡単なこと。そして自分が目指せば高い確率で誘導できること。そして何より、知識の差がそのまま勝敗に直結すること。
本書には相矢倉の基礎知識から始まり、脇システムの戦い方、さらに三浦九段の実戦解説を収録。この一冊で脇システムの知識については確実に棋友に差をつけることができます。

本書をマスターして、矢倉戦での後手の常套手段△6四角に対して、堂々と▲4六角とぶつけてください。そこからはもう、あなたの土俵になるはずです。


【レビュー】
矢倉脇システムの解説書。

脇システムは、矢倉の中で現在でも有力視されている戦法の一つである。その歴史は非常に古く、原始的な形はすでに昭和の中期からあったとされる。それを現代矢倉に昇華させたのが脇謙二で、『単純明快 矢倉・脇システム』(脇謙二,週刊将棋編,MYCOM,1994)に詳細が記されている。

しかし、脇システムは矢倉の歴史においてずっと傍流だった。それが、2013年1月に棋王戦挑決で指され、急に最注目されるようになった。矢倉では、△4五歩反発が大大復活して、▲4六銀-3七桂が急速にしぼむ中で、脇システムは先手の有力策のトップグループに躍り出たのである。

そんな中、2013年4月、電王戦で現役A級の三浦弘行が、コンピュータのGPS将棋に脇システムで敗れた。しかも、後手のGPS将棋が仕掛けの新手を出して、である。この将棋は、対コンピュータの価値観を大きく変化させるとともに、脇システムを見直すきっかけとなった。

そういった背景の中、出版されたのが本書である。



先に言っておこう。本書は、期待を大きく裏切っている。正直に言って、ガッカリした。

脇システムの定跡部分の解説は想像以上に少ない。先行して発行されている『単純明快 矢倉・脇システム』(1994)や『矢倉道場 第四巻 新3七銀』(所司和晴,MYCOM,2002)よりも少なく、更新された部分があまりない。

実戦解説集としての位置づけもいまひとつ。最新の棋譜でも2007年で、2013年以降の再流行で進化した部分にはほぼ触れられていない。

そして、もっとも期待された「GPS新手」に関する見解は、6pで「ちょっと長いコラム」レベル。棋譜もなく、指されたときの心情・動揺や、そのときにどう読んだか、もほとんどない。書かれているのは「GPS新手は成立している」「GPS新手の仕掛けが浸透しており、将棋の可能性を広げた」ということくらい。

棋譜解説12局はそれなりに並べ甲斐はあり、決して「買って損した」などとは思わないが、「思ってたんと違う」感がハンパなかった。



さて、気を取り直して(?)、各章の内容を紹介していこう。

序章は、脇システムの優秀性について。本章の「三つの魅力」とは、(1)駒組みが簡単 (2)先手が望めば高確率で誘導できる (3)研究量が多い方が勝つ、となる。基本的な狙いは、角交換して棒銀から端攻め。角が常に向かい合っているので、角は潜在的な持駒となり、攻め始めた時の互いの攻撃力が高い。例として▲三浦△稲葉(2012.07.24)と▲南△羽生が挙げられているが、棋譜はなし。


第1章は、相矢倉の基本。脇システムは矢倉▲3七銀戦法の一つであるが、組み上がるまでに後手からいろいろな急戦があるので、知識として知っておこう、という話。後手急戦の本は、もっと詳しい本が何冊か出ているので、そちらを参照したほうが良い。サラッと流そう。


第2章は、脇システム△7三銀型。もっとも基本となる型なので、しっかり変化を確認しよう。端歩の関係はいろいろあるが、本章では「両端突き合い型」と「両端突き越し型」を扱う。

終章のGPS新手は「1筋突き合い型」だが、チャートはここで統合しておいた。


第3章は、脇システム△7三角型。脇システムでは角が向かい合っているので、いつ角交換になるかが難しい(そこが初級者が参入しにくい点でもある)が、角が向かい合ったらすぐに△7三角と引くことで角交換を強要できる。

後手を持つ人で、先手の研究範囲に嵌まるのが嫌ならば、△7三角型で形を決めてしまうのも一法だろう。


第4章は、実戦編。三浦の実戦から、1999年〜2007年のものを解説。GPS新手が2013年、本書の出版が2014年なので、題材としてはかなり古め。序盤は定型になるためか、各実戦の第1図までの棋譜は省略されている。

これらの実戦譜は、可能な限り第2章・第3章のチャートに取り込んでおいたので、参考にしてほしい。


終章は、将棋ソフト「GPS将棋」の新しい攻め筋について。△7三銀型から、△7五歩▲同歩△8四銀が新機軸(第2章のチャートに記入した)。この筋は、のちのプロの実戦でも何度も現れ、有力視されている。

三浦が第2回電王戦第5局で「GPS将棋」と戦ったことは詳しく書かれていないので、時間が経過すると何の事だかわからなくなるかもしれない。



タイトルの「矢倉研究」、オビの「将棋界一の研究家が伝授」のいずれも、掲げた看板が大きすぎる一冊だった。(2016Jun01)

※誤字・誤植等(初版第1刷で確認):
p160上段 ×「▲3二金の1手詰だ」 ○「▲3二金打の1手詰だ」
p218 ×「(p40参照)」 ○「(p46参照)」



【関連書籍】

[ジャンル] 
矢倉
[シリーズ] マイナビ将棋BOOKS
[著者] 
三浦弘行
[発行年] 
2014年

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