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振り飛車新世紀(2) 久保流四間飛車(上) ──棒銀撃破! |
[総合評価] B 難易度:★★★★ 図面:見開き4枚 内容:(質)A(量)B レイアウト:A 解説:B 読みやすさ:B 上級〜有段向き |
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【著 者】 久保利明 | ||||
【出版社】 毎日コミュニケーションズ | ||||
発行:1997年9月 | ISBN:4-89563-682-8 | |||
定価:1,200円 | 223ページ/19cm |
【本の内容】 | ||||||||
◆内容紹介 |
【レビュー】 |
四間飛車vs棒銀の定跡書。 本書は、現代振飛車の大家・久保利明九段(出版当時は五段)による、四間飛車vs棒銀の定跡書である。 当時の久保は、〔右図〕のように△3二銀型(先手なら▲7八銀型)を好んで指していた。そして、▲5七銀左に対しては△1二香と待つ。いわゆる「最強1二香」(『東大将棋ブックス』シリーズでの命名)である。これに対して最有力なのは鷺宮定跡とされるが、棒銀ももちろん有力で多く指されている。 こういった事情から、久保は対棒銀の経験値が高い。本書では、基本定跡をベースに久保好みの指し方を提示し、また先後での細かな違いについて解説している。 解説自体は割とサラッとしていて、特に難解な書き方はされていないが、逆に言えば、ある程度の基礎知識が頭に入っているのが前提かと思われる。要求レベルは『羽生の頭脳(1) 四間飛車破り』くらいか。下記のチャートの図面を見て、半分くらいは「ああ、この局面ね」と思えるくらいなら大丈夫。 レイアウトはオーソドックスな「見開き4図面型」だが、構成の都合なのか、現ページの図面と関連のない解説(「前ページの○○では△△も有力」…など)がしばしば現れるため、やや読み進めづらい部分がある。 定跡編の各章の内容を、チャートを添えながら紹介していこう。 第1章は、△四間飛車vs▲棒銀。先手が攻めの形を作ってきたときの後手の受け方は、大雑把にいえば、以下の4つ。 (1)△6四歩を突かずに△5一角〜△6二角〜△4二金と整える 3筋・4筋を厚くする。かなり有力な棒銀対策。 (2)△6四歩を突いて、△5一角〜△6二角 一番オーソドックスで多く指されている手。基本定跡といえる。 (3)△6四歩を突いて、△4二角〜△6五歩 次に△6五歩とスペースを開け、△6四角型を実現させる狙い。 (4)△6四歩を突いて、さらに△6五歩 久保の当時の愛用手。将来(角交換後に)△6四角と打つ狙い。 また、角交換の▲3三角成に△同飛〜(将来の)△6三飛も含みにしている。 どれも少しずつ狙いが違っているので、四間飛車側は好みで選ぼう。居飛車棒銀党はすべて知っている必要がある。 第2章は、▲四間飛車vs△棒銀。振飛車側の基本的な考え方は△四間飛車のときと変わらず、部分的な変化もあまり違いはないが、先後の一手の違いがどこに現れてくるかは常に留意しておく必要がある。基本的には、振飛車側に▲3六歩or▲4七金が入ることになる。 以下は、先後の違いの例。 ・▲3六歩の一手が入っていると、▲3五歩と玉頭を反撃できることがある。 ・▲3六歩の一手が入っているせいで、△2四桂が先手で入ったり、玉のコビンが空いているために▲4五歩が突きにくかったりすることもある。 ・▲6八金と寄って受ける手のときは、先後の違いで▲4六歩の一手が入っている。 ・▲3六角(p142)は、▲4六歩が入っている効果。場合によって▲4七角と引くこともできる。 棋力が上がってくるほど、細かな形の違いによる結論の変化は気になってくる。本書の難易度は「★4.0」としたが、そういう意味では「★4.5〜」向けの本だといえる。 四間飛車vs棒銀の先後の違いについて書かれた本は他にもいくつかあるので、それぞれを見比べて、見解の違いを把握するための一助としてほしい。(2016May27) ※誤字・誤植等(第1刷で確認): 特に見つかりませんでした。 |