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快勝!スーパー穴熊 | [総合評価] B 難易度:★★★★ 図面:見開き4枚 内容:(質)A(量)A レイアウト:A 解説:B 読みやすさ:A 上級〜有段向き |
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【著 者】 小林健二 | ||||
【出版社】 毎日コミュニケーションズ | ||||
発行:1998年2月 | ISBN:4-89563-698-4 | |||
定価:1,400円 | 263ページ/19cm |
【本の内容】 | ||||||||
◆内容紹介 |
【レビュー】 |
振飛車穴熊の定跡書・解説書。 小林は、「スーパー四間飛車」によって「四間飛車再興の祖」として知られる棋士である。当初は「穴熊嫌悪症の影」(まえがき)があって、振り穴を指していなかったが、他の振飛車も指すうちにバリエーションを広げ、ついには振り穴についてもいくつかの「小林流」といえそうな作戦を編み出している。1996年末ごろから穴熊を組み入れたことで、指し手から単調さが消えたという。 本書は、小林が振飛車穴熊の基本定跡と新しい指し方を提案する本である。 各章の内容を、チャートを添えながら紹介していこう。 |
第1章は、四間飛車穴熊vs居飛車急戦。 居飛車急戦は、駒組みに手間のかかる形では穴熊を完成されて強く戦われてしまうので、スピードを付けた山田定跡型(△7五歩▲同歩△6四銀)にほぼ限定される。 ▲四間飛車の場合は、後手の仕掛け直前で指せる手は、(1)▲6七銀(角頭に備える)、(2)▲3九金(穴熊を固める)、(3)▲3六歩(後手の玉頭を狙う)、の3つある。このうち、小林のオススメは(3)。「将来3筋からの反撃を狙った面白い一着」。仕掛けられた後に、常に▲3五歩と玉頭攻めを意識しておく。「居飛車急戦に対しては、左辺の戦いでいくらか不利になるのは仕方ない」という考え方で戦う。 |
△四間飛車の場合は、振飛車が指せる手は▲四間飛車の場合よりも1手少ない。よって、▲四間飛車のときは、△5三銀左の時点で、▲6七銀、▲3九金、▲3六歩のいずれかを選べたが、△四間飛車ではどれも指せない。 山田流の仕掛けに対し、▲3五銀の瞬間に角道を開ける。(1)▲3三角成と角交換してくる手、(2)▲5五歩と角交換を拒否する手、にはそこそこ戦えるが、(3)▲6六歩、と低く角交換を拒否する手にはどうするか。この手は、▲5五歩よりも伸び過ぎでなく、王手飛車の筋にならない。また、△7二飛の玉頭攻めに▲6七金と守れるという利点がある。 小林のオススメは、▲6六歩に△6四歩。一見、忙しい局面でボンヤリしているが、先手玉のコビンを狙って急所となる。 また、序盤の9筋の打診には手抜いて、その一手を将来の△7一金や△7四歩or△4三銀に回す。 |
第2章は、中飛車穴熊。急戦の▲3八飛戦法と、持久戦の△左美濃〜銀冠を扱う。本章は、定跡というより、指し方のサンプルを挙げている感じ。 急戦に対しては、角交換を狙われている場合(序盤の▲4六歩など)には△3二金とガッチリ備える。穴熊が薄くなって指しにくいようだが、△中飛車に対する▲5七銀右からの急戦は、△四間飛車に対する▲5七銀左よりも足が速いことがあるので、守るべきところは守るようにする。 持久戦のときは、先手は「攻める中飛車」を考える。▲4六銀〜▲5五歩の歩交換や、▲4六銀〜▲3六歩〜▲3八飛の角頭攻めを狙う。先手の左金の使い方によって、展開が全く違ってくるが、小林流では左金を攻撃力upに使う。これは「福崎感覚」のアレンジで、「攻めは飛角金銀」。穴熊は2枚あれば十分だという考え方だ。小林流では、玉頭攻めは常に狙っておきたい。また、持久戦になると、▲5八飛が邪魔になるので、飛を別の筋に移動して左金の動きを楽にする。 |
第3章は、相穴熊。▲四間飛車穴熊に対して、後手が普通に居飛穴にする場合と、銀冠を構築してから穴熊に組み替える場合を解説する。 相穴熊については、現代も研究が進んでいる(広瀬流の駒組みなど)ので、ここでは当時の流行形などを学ぶとよい。居飛車側も「これは使えるのでは?」という手があるだろう。 例えば、▲四間が角頭を狙って▲5六銀と上がったとき、現代では△4四歩と△4四銀の二択だが、当時は△5五歩や△3二金も考えられていた(形にもよるが)。 また、「まず銀冠に組んでから穴熊」というのが当時の流行形で、実戦譜にも3局(第2部の9局中で最大)も登場する。これは、居飛車の方がより堅い穴熊を目指している。振飛車側は、四角い穴熊では囲いは良いが自分から動くのが難しくなるので、▲4七金型から玉頭戦を仕掛けたい。 |
第4章は、陽動振り穴。通常の振り穴は、飛の位置を決めたら一直線に穴熊に潜る(現代では潜る前に左銀が出て牽制する)が、本作戦では、穴熊に組む前に居飛車を揺さぶる。 居玉のまま、▲4六歩〜▲3六歩〜▲4七金がポイント。後手が居飛穴を急げば、居玉のまま▲3七桂と跳ねて居飛穴を牽制する。袖飛車を見せて、後手玉を矢倉型にさせたあと、自分だけ穴熊に潜る。藤井システムの振り穴版のような感じで、名前は付いていないが、これぞ「小林流スーパー穴熊」と呼べる戦型なのでは。 囲うときは、▲4八玉〜▲3七玉!とする。▲3七玉は、後手が急戦に来た時に▲3八銀と美濃で急場を凌ぐ手を用意したもの。後手の応接次第では、先手が穴熊に囲う前に戦いが起こることもあり得るので、指しこなすには経験と力も必要だが、いつもの囲い合いに飽きた人にはオススメ。 また、本章後半では、▲2八玉までは指すものの、美濃か穴熊か態度を決めずに▲4六歩〜▲3六歩と突いておく指し方を提示。居飛車急戦に対しては、すぐに玉頭から反撃できる利点がある。ただし、囲っている暇がないので、穴熊党にとっては戦いにくい作戦かも。 第1章を除くと、「指し方の一例」という感じが多いのでBとしているが、得られる示唆はいくつもある。また、実戦譜9局もなかなか並べ甲斐がある。現在振り穴を指していて、いろいろ迷いや悩みが生じている人は、変化を付けるために一読してみるとよいだろう。 ※誤字・誤植等(第1刷で確認): p22 ×「後手が△8八角成▲同銀」 ○「後手が△7七角成▲同銀」 p31棋譜 ×「▲8四飛」 ○「▲8四歩」 |