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木村の矢倉 3七銀戦法最新編 |
[総合評価] A 難易度:★★★★☆ 図面:見開き4枚 内容:(質)A(量)A レイアウト:A 解説:A 読みやすさ:A 有段向き |
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【著 者】 木村一基 | ||||
【出版社】 日本将棋連盟/発行 マイナビ/販売 | ||||
発行:2013年6月 | ISBN:978-4-8399-4742-2 | |||
定価:1,575円(5%税込) | 224ページ/19cm |
【本の内容】 | ||||||||||||
【編集協力】 鈴木宏彦
◆内容紹介 |
【レビュー】 | |||
矢倉▲4六銀-3七桂の定跡書。「木村の矢倉」シリーズの3冊目(最終巻)。「将棋世界」誌に連載された「これで矢倉は指せる」を加筆修正し、再構成したもの。 前作の『木村の矢倉 3七銀戦法基礎編』(2012.12)では、矢倉▲4六銀-3七桂の最新形に至るまでの変化について、詳しく解説された。そしていよいよ、本書では本丸が登場する。 現代矢倉は、43手目の基本図まではほぼ一直線。後手が44手目に選べるのは二択である。 (1)玉頭に圧力をかける△8五歩 └→先手は穴熊に潜ってから総攻撃。 └→最近は、基本図の前に後手が変化し、「銀損定跡」に進むこともある。(※1) (2)先手の穴熊を警戒する△9五歩 └→▲6五歩(宮田新手) └→後手はさらに△8五歩の待機 └→先手の総攻撃に対し、後手は△3七銀と飛先を止める └→「91手組」へ 本書は、この2つの攻防を詳しく解説した本である。 各章の内容を、チャートを添えて紹介していこう。 第1章は、△8五歩型。玉頭に圧力をかけた手で、将来の継ぎ歩攻めや△8六桂のブチ込みを見ている。先手はすぐに仕掛けていくのは無理気味なので、穴熊に潜って自玉を遠くしてから仕掛けていく。 後手も徹底抗戦するので、先手も攻めきるのは大変である。△8五歩型は、「先手も大変な将棋である。大変でも挑むか。それとも、その前に変化するか。今の矢倉はその二者択一を迫られている。」(p56)という木村の言葉に集約されている。 第2章は、△9五歩型。△9三桂〜△8五桂を見せることで先手の穴熊を牽制している。 『現代矢倉の思想』『現代矢倉の闘い』(森下卓,河出書房新社,1999)では「森内流」と呼ばれて非常に有力視されており、先手も仕掛けの手を探すがあまりうまくいかず、「一瞬、先手の手が行き詰った状況だった」(p82)。 それを打破したのが宮田新手▲6五歩(第3節)。『矢倉の急所 【4六銀・3七桂型】』(森内俊之,浅川書房,2008)にて、森内はこの手を初めて見たとき、「なんだこれは!」と思ったという。一見意味が分かりづらいが、将来▲6六角を実現したいという手で、第1節にその伏線があることが紹介されている。 宮田新手が登場してから10年余り、いろいろ試行錯誤されてきたが、最近は後手は△8五歩と自然に待機し(第6節)、先手に仕掛けさせて銀交換してから、△3七銀と飛先を止める(第8節)変化が主流になってきている。 主流どころか、2012年度の後半からは、プロではこの変化の91手目までほとんどノータイムで進める「91手組定跡」が流行。この形の結論が注目されている。 第3章は、自戦解説と参考棋譜。自戦解説は、一局4〜6p程度でサラッと。参考棋譜は、一局1〜2pで、急所の手に短い解説が付いている。本編の内容を補完しているので、ぜひ盤に並べてみてほしい。負け棋譜がかなり多いのが木村らしい(笑)。 本書は矢倉の最新形を解説しているので、プロ観戦ガイドとして使いたい人は三部作の中で本書が最優先となる。特に宮田新手が登場してからの攻防については、非常に詳しく書かれている。 プロの矢倉を観戦していて、「91手組って何だろう」「何で91手目まで一気に進むんだろう」など、91手組に関する疑問を持っている人にはオススメの一冊である。 ※誤字・誤植等(初版第1刷で確認): p137 ×「先手は▲6五飛と回るの面白い手だ」 ○「先手は▲6五飛と回るのが面白い手だ」 p150 参考図が前後のどの変化にも該当しない。代わりに途中図(▲3三歩)が必要。(2013Oct27名無しさんご指摘thx!) ※ ^ 2013年7月現在で、「91手組」と並んでよく将棋メディアに登場する「銀損定跡」は、本書ではまったく触れられていない。「銀損定跡」は、△7三角と引かず、△6四角型のまま△4二銀(引)とするため、本書では基本図の時点ですでに違っている。今のところ、「銀損定跡」を詳解した単行本はないようなので、解説本の登場が待たれる。 ※棋書ミシュランでは、次の手順を「銀損定跡」だと考えています。思い違いがあれば、掲示板にてご指摘ください。
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