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■逆転のメカニズム

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逆転のメカニズム
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マイナビ将棋BOOKS
逆転のメカニズム
[総合評価] A

難易度:★★★☆

図面:見開き7~8枚
内容:(質)A(量)A
レイアウト:A
解説:A
読みやすさ:A
上級~有段向き

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【著 者】 山崎隆之
【出版社】 マイナビ
発行:2013年1月 ISBN:978-4-8399-4576-3
定価:1,575円(5%税込) 224ページ/19cm


【本の内容】
第1章 居飛車を惑わす! 1 取られる駒をエサにして食らいつけ
2 大差なら決めにくるまで死んだフリ
3 大胆に誘ってワナを仕掛けろ
4 無謀な戦線拡大からウラをかけ
・参考棋譜(1)~(4)
38p
第2章 振り飛車を手玉に取る 5 遊び駒をオトリに手を稼げ
6 逃亡を図ってカク乱しろ
7 ハッタリかまして気合を通せ
8 ジッと辛抱、破綻を誘え
9 開き直ってゲタを預けろ
・参考棋譜(5)~(9)
36p
第3章 相掛かりで煙に巻く 10 イヤミな利かしで一杯食わせろ
11 ソデの下をちらつかせて揺さぶれ
12 タヌキ寝入りでチャンスをうかがえ
13 クサビを打って行く手を阻め
・参考棋譜(10)~(13)
38p
第4章 角換わりでたぶらかす 14 にらみ合いではイチャモンをつけろ
15 イカク射撃でリズムを乱せ
16 ウラ口から刺客を送り込め
17 そしらぬ顔でコケオドシ
18切り込み隊長で攻め合いを目指せ
・参考棋譜(14)~(18)
46p
第5章 相矢倉でかき乱す 19 のらりくらりと高みの見物
20 チョッカイを出して寄り道させろ
21 ドスをきかせて二の足を踏ませろ
22 火種を仕込んで絡みつけ
・参考棋譜(19)~(22)
38p
第6章 力将棋ではぐらかす 23 押し売り攻勢でムダ足を踏ませろ
24 あの手この手でひっかきまわせ
25 ヒラリとかわして空を切らせろ
・参考棋譜(23)~(25)
28p

・逆転のメカニズムまとめ=6p
・【コラム】(1)私の逆転負け (2)NHK放送時の思い出 (3)将棋の魅力

◆内容紹介
NHK将棋講座「山崎隆之のちょいワル逆転術」が待望の書籍化!!

本書は独特の粘りと、逆転術で知られる山崎隆之七段が将棋の醍醐味である「逆転」について、その仕組みを実戦例を元に解説したものです。

現在の将棋書籍は互角の状況(初手)から序盤で作戦勝ちを目指すもの、あるいは有利な局面を勝ちにつなげるものですべてを占められているといってもいいでしょう。
しかし、実戦の将棋を見てみれば、なんと逆転の多いことか。アマチュア同士では一局の間に何回起きているか分かりません。
それなのにこの「逆転」に関する書籍が出ていないのはなぜでしょうか?
それは「逆転」を技術としてとらえ、それを体系立てて説明するのが難しいこと。不利な局面では盤上の真理としての「正解手」はすでになく、厳密性に欠けることなどがあげられます。

本書は、この重要であるものの未開だった「逆転」の分野に山崎七段が果敢に挑んだ野心作です。どのページにも、不利な局面における考え方、有力な手筋が数多く散りばめられています。山崎七段が解明に挑んだ「逆転」の世界、ぜひご堪能ください。


【レビュー】
逆転術について解説した本。NHK将棋講座2011年4月号~9月号に掲載された「山崎隆之のちょいワル逆転術」を再編集したもの。

将棋は、互いにできるだけ「最善を尽くすゲーム」である。自分にだけ都合のよい「読み」は意味をなさず、相手も最善で来ることを前提として読みを進めていく。そして、本当に最善手を指し続けられるなら、いったん不利になった局面が逆転することはないハズである。

しかし、将棋は「逆転のゲーム」でもある。「最後に悪手を指した方が負ける」と言われるくらいで、トッププロレベルでも日常茶飯事で逆転が起こっている。

ところで、不利な局面から逆転を狙う場合は、最善手を指していても逆転する可能性は低い。逆転するには、ちゃんと思想に則って、相手のミスを誘うような手を指していく必要がある。これまでは、例えば「不利なときは戦線拡大」などの格言があったり、逆転術の本がいくつかあったものの、「逆転狙いの思想」を明快に解きほぐした本はあまりなかった。

そこで本書は、逆転術の考え方をシステマティックに解説した本になっている。


本書の題材は、山﨑プロの実戦25局。各局の解説は、以下のような構成になっている。

(1)テーマ図+「ちょいワル度」の算出 (1p)
テーマ図はすでに劣勢になった局面で、まず「駒の損得」「駒の働き」「玉の堅さ」+「手番」でオーソドックスな形勢判断を行う。そこから「ちょいワル度」(劣勢具合)を算出し、どのように逆転を狙っていくかの方針を決めるための材料とする。

この「ちょいワル度」は著者独特の計算方法を用いている。「ちょいワル度」という名称からは、一昔前に流行った「ちょいワルおやじ」のような少しフザけた感じがするが、実はいたって真面目なモノで、逆転狙いのためには重要なパラメータとなる。

まずは、テーマ図と「ちょいワル度」を見て、自分だったらどう指すかを考えてみよう。そして、2p後の「ちょいワル凡プレー」で、自分の選択した手が載っているか確認しよう。なお、テーマ図はもともと形勢不利なので、起死回生の一発があるわけではない。

(2)「テーマ図までの流れ」 (1p)
テーマ図に至るまでの、直前20~30手くらいの指し手の流れを検証する。激しく攻められているのか、ジワジワと圧迫されているのか。または、自分がどのような構想を描いていて、どのようなミスがあって形勢が悪化したのか。これらも逆転を目指す手を決めるための判断材料になる。

(3)「ちょいワル凡プレー」 (1p)
逆転の可能性がなくなるような、ダメな手を検証する。

正確に対応されたらどの手もダメなのだが、その中でも最も相手のミスを誘いやすい手が次項の「ちょいワル好判断」となる。実戦では、「凡プレー」でも逆転することはあるし、「好判断」でもそのまま押し切られることもある。

(4)「ちょいワル好判断」 (3p強)
実際に著者が選んだ手で、逆転を狙う指し手と、どういう考え方でこの手を選ぶことになったかを解説していく。

(5)「ちょいワル心理作戦」 (約1/3p、約150字)
どのような実戦心理や盤面状況(局面の読みにくさなど)で逆転しやすいのかを、囲み欄で解説。

(6)「ちょいワル王子の逆転ホームラン」 (約1/3p、約120字)
逆転を狙うときの実戦心理や心構えについてのミニコラム。

(7)「逆転勝利への道」 (囲み図、約1/8p)
逆転の流れを「A→B→C」という三段論法的な順序でまとめてある。

(8)「ちょいワル+α」 (約1.5p)
逆転した後の指し方を、局面がハッキリするまで解説。


以下、気づいたことを箇条書きしてみる。

・各章のタイトルは「惑わす」とか「たぶらかす」とかなんだかインチキくさい(笑)が(さらに各局のタイトルも輪をかけて胡散臭いが)、内容はいたって「真摯に逆転の可能性を探る」というもの。
・戦型ごとに章が分けられているが、テーマ図は中終盤なので、戦型による差はあまり大きくない。
・個人的には、各章末の棋譜を先に並べてしまうのがオススメ。テーマ図で山﨑が選んだ手がネタバレしてしまうことになるが、もともと絶対的な正解があるわけではないので、全体の流れを把握しておいた方が理解しやすいと思う。



かつて、谷川浩司が『光速の終盤術』(日本将棋連盟,1988/2011)を上梓して、終盤の考え方や読みの精緻さを披露した。そして、それを読んで育った若手たちによって、将棋界全体の終盤力が大きく底上げされた。すると、「みんなの終盤力が高いので、中終盤までに不利になると逆転は難しい」という状況が生まれ、序盤の研究が加速していった。

本書も、逆転術という分野において、『光速の終盤術』と同じように、将棋界の流れに影響するようなポテンシャルを持っていると思う。ただし、逆転するための考え方が広く知られることで、将棋界にどのような変化が生まれるかは未知数。個人的には、有利不利を自覚するのが早まり、より混戦に持ち込まれるような将棋が増えてくるだろうと予想している。


序中盤はあまり気にせず、多少不利でも中終盤の力で勝負したい」という人や、逆に「序中盤は有利になるのに、いつも逆転負けしてしまう」という人には必読の一冊である。(2013May01)



※誤字・誤植等(初版第1刷で確認):
p53 ×「▲8九玉は△8八銀▲7九玉は△8八角で」 ○「▲8九玉は△8八銀、▲7九玉は△8八角で」 読点が足りない。
p66 ?「ツラッとした顔で」→おそらく「シラッとした顔で」または「シレッとした顔で」が正しい。



【関連書籍】

[ジャンル] 
勝負手・逆転術
[シリーズ] マイナビ将棋BOOKS
[著者] 
山﨑隆之
[発行年] 
2013年

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