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将棋の教科書 対振り急戦 | [総合評価] B 難易度:★★ 〜★★★☆ 図面:見開き3枚 内容:(質)A(量)B レイアウト:A 解説:A 読みやすさ:A 初級〜上級向き |
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【著 者】 阿久津主税 | ||||
【出版社】 日本将棋連盟/発行 マイナビ/販売 | ||||
発行:2012年11月 | ISBN:978-4-8399-4466-7 | |||
定価:1,575円(5%税込) | 224ページ/19cm |
【本の内容】 | ||||||||||||
・【コラム】(1)反則について
(2)居飛車急戦の魅力 (3)将棋上達の方法 |
【レビュー】 |
四間飛車と三間飛車に対する居飛車急戦の戦い方を解説した本。 角道クローズのノーマル振飛車に対する居飛車の戦法は、現在では居飛車穴熊が全盛である。居飛車急戦も以前は多く指され、山田道美や青野照市らにより優れた定跡書も多く遺されている。 急戦は玉が薄くて実戦的な勝ちづらさがあるものの、作戦自体は成立しているし、非常に多くの手筋を学べたり、勉強した局面が実戦に出やすいなど、アマにとって有利な側面も多い。「穴熊もいいけど、まず急戦を覚えた方がよい」といわれる所以である。 本書は、初段を目指す級位者を対象に、▲居飛車急戦vs△ノーマル振飛車の勝ち方を指南する本である。 シリーズ共通の特徴として、〔右図〕のような縦串・横串の構造がある。(〔右図〕は『将棋の教科書 振り飛車急戦』(鈴木大介,2012.09)のものだが、基本的な構造は同じ) 通常の本では、「四間飛車を序盤から終盤まで解説してから、三間飛車を序盤から終盤まで解説する」という構造を採る。 一方、本書では四間飛車・三間飛車をちゃんぽんにして、序盤・中盤・終盤の3つに章を分けている。序・中・終盤のそれぞれのステージでは考え方が似ているので、戦法で分けるよりもステージで分けた方が理解しやすいというわけだ。 本書の内容は、チャート化すると〔下図〕のようになる。序・中・終盤で章が違うので、左端に色帯を付けてみた。なお、終盤編の指し手は一例であり、定跡ではないので、網掛けを施してある。 内容を以下に補足しておく。 〔共通〕 ・対四間と対三間の急戦の考え方の違いを明示している。(特にp22、p30) 「なぜ対三間急戦では5七銀左型にしない(ことが多い)のか?」が分かる。 ・飛車交換に応じられるときの条件も何度か解説。 ・「急戦は逆転負けを喫しやすいので、優勢を意識したら早めに受ける姿勢が肝心。」(p221) 〔対四間〕 ・斜め棒銀では、準急戦(▲3五歩と押さえて▲3六銀型を作る形)は目指さない。 ・斜め棒銀で、△4五歩が▲4六銀に当たっている局面では▲8八角と▲5七銀引のどちらが正しいのか迷いやすいが、p60が分かりやすい。 ・棒銀で▲3五歩を打ってはいけないことを何度も強調。 ・四間飛車の終盤編は、9九に馬を作られている形なので、結構難しい。急所は端攻めと8五。 〔対三間〕 ・攻略の基本は、角交換して飛車先突破。 ・2筋突き捨てのタイミングは、対四間のときと違うので注意。 2筋突き捨てと4筋攻めがワンセット。(ただし、△2二飛型では手順に注意) ・互いに片方の金が囲いを離れて4筋の三段目に上がる動きがよく現れる。 ・三間飛車使いがマスターしている定跡(△2二飛と備える)はp142〜p147。 ・対三間飛車の終盤戦は、端の突き合いをしていないことが多いので、横からの攻めが多くなる。 急戦の振り飛車破りは、過去に良書が何冊も出版されているので、好みで選べばよい。本書は、級位者の将棋で現れやすい展開も、本筋の定跡の展開も丁寧に書かれているし、考え方の記述も多く、なかなか良い。 本書は、特に終盤戦に特徴があるかもしれない。級位者向けの本にしては珍しく、居飛車がギリギリの攻防で勝つ展開になっていて、リアリティが高い分、難易度は高め。基本的な美濃崩しの手筋をマスターしておく必要があるので、居飛車急戦で勝ちたい人は、まず易しい囲い崩しの本を一冊読んでから本書に取り組むとよいだろう。(2013Mar04) ※誤字・誤植等(初版第1刷で確認): p20で「舟囲い基本形から▲5七銀〜▲6八銀上とした形」(図左)が「菱矢倉」と解説されているが、一般的な菱矢倉は「総矢倉から右銀を6六に上げた形」(図右)である。 そもそも序盤から狙って作れる形ではないので、「菱矢倉」という名称が載っている棋書も少ないが、例えば『序盤戦!! 囲いと攻めの形』(横田稔,塚田泰明監修,高橋書店,1990)のp31に図右の形が書かれている。図左を菱矢倉と呼んでいる棋書は、少なくともわたしは見たことがない。古い棋書にはある? p179左下イラストせりふ ×「相手の狙い筋に周囲して…」 ○「相手の狙い筋に注意して…」 p213 A図 ▲8二銀が抜けている。 |