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マイコミ将棋BOOKS 西川流振り飛車 居飛車穴熊破り |
[総合評価] B 難易度:★★★★ 図面:見開き4〜5枚 内容:(質)A(量)A レイアウト:A 解説:A 読みやすさ:B 上級〜有段向き |
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【著 者】 西川和宏 | ||||
【出版社】 毎日コミュニケーションズ | ||||
発行:2011年4月 | ISBN:978-4-8399-3855-0 | |||
定価:1,470円(5%税込) | 224ページ/19cm |
【本の内容】 | ||||||||||||||||||||
・【コラム】(1)得意戦法 (2)思い出の一局 |
【レビュー】 |
ノーマル三間飛車or矢倉流中飛車vs居飛車穴熊の定跡書。 西川は、戦後初めての「現役親子棋士」。父は西川慶二七段である。まだ目立った活躍はないが、現代では少数派となっている「角道を止める振り飛車」を愛用する一人である。本書のコラムには、奨励会時代には相穴熊(振飛車側)を得意にしていたとの記載がある。 本書は、その西川Jr.が「角道を止める振り飛車で居飛車穴熊に対抗する作戦」を書いた本である。 各章の内容を、チャートと図面を添えて紹介していこう。 第1章は、▲三間飛車。「▲三間飛車には急戦が効かない」というのが一般的なため、高い確率で後手は居飛車穴熊になる。本章では、石田流本組への組み替え、▲5六銀から角頭への急襲、ダイヤモンド美濃への組み替えなどが対抗手段となっていて、真部流や中田功XPなどは書かれていない。 第2章は、△矢倉流中飛車。矢倉流中飛車は、矢倉規広六段が得意としている戦法で、中飛車の一種。矢倉戦から派生する「矢倉中飛車」とは別物である。 矢倉中飛車は、以下のような特徴がある。 (1)まず△4四歩と角道を止めて中飛車に構える。 (2)左銀を△6四銀まで持っていく。先手も同じように右銀を▲6六銀に持っていく。 (3)△4二飛+△4五歩と、薄くなった4筋に狙いを帰る。 (4)後手番なので、場合によっては千日手も視野に入れる。 また、本書によれば、△4四歩型中飛車に急戦はやりづらいため(1980年代まではプロでもたくさん指されていたので、有力ではある)、居飛穴などの持久戦になりやすく、かなり研究しやすいとのこと。 本章では、後手が美濃囲いの場合を扱う。ただし、△7二銀のタイミングは難しく、自然なタイミングではなかなか後手が良くならないため、先に△5一金左で穴熊の余地を残すなど、工夫が必要。本章後半は、詰むや詰まざるやの詳しい研究を披露している。 〔必修手筋〕: ・△4二飛型から (1)△4五歩▲2六飛△4四角▲3六飛 (※先後逆の場合は▲6六角に△8二飛で千日手を狙われる) (2)△3二飛〜△3五歩▲2六飛△3六歩 ・石田流+△4四角から△2四歩▲同歩△3六歩 ・▲7五銀 (銀をぶつけながら角交換を要求する) 〔コツ〕: ・「▲9八香を見て△4五歩から仕掛けを目指す」(p90) ・「△5一金型は飛車交換に強く、△5二金型は角交換に強い」(p104) また、第3章前半では△矢倉中飛車での相穴熊を扱う。先手が隙を見せない場合は、堅さ負けしないように相穴熊にする。▲佐藤康光vs△森内俊之(棋聖戦,2004)がベースになっている。また、『下町流三間飛車〜居飛穴攻略の新研究』(小倉久史,MYCOM,2006)を改良した変化も登場する。 〔必修手筋〕: ・△5六歩〜△6六角(角を切って銀を取る)→△5七歩成 〔コツ〕: ・「▲7八金右と△7二金左の交換は振り飛車側が損をすることが多い」(p143) ・「△6四銀と上がっている場合、△7四歩は非常に大きな一手だ」(p144) ・「相穴はと金を金駒に換えさせないように指す」(p219) 第2章と第3章前半はリンクしているので、チャートは一枚にまとめておく。 第3章の後半は、▲矢倉流中飛車で最初から相穴熊を目指す場合について。アマ大会によく出るらしい。著者は奨励会時代にこの戦法で8割の高勝率を挙げたらしいが、先手番の得はなく、「うまく待たれたら仕掛けが難しい」(p179)とのこと。ただし、アマはそれを気にするより、自分の土俵で戦える方が良いかもしれない。手損の関係で、△矢倉中飛車の相穴熊と同一局面になるので、経験値の高い局面にしやすい。先手番なので、千日手に陥らないように注意が必要。 第4章は実戦編3局。対局相手は若手ばかりだが、稲葉・佐藤天彦・横山とかなりハイレベルな相手に勝っている。3局目(vs横山戦)p216の△1二飛は才能を見せた一手だ。 なお、本書のレイアウトはいつもどおりのマイコミ将棋BOOKSスタイルだが、図面のフォントや線が従来より細くなっているため、慣れるまで少し見づらい感じがするかもしれない。 参考までに、1つ前のマイコミ将棋BOOKSである『乱戦!横歩取り』(北島忠雄,MYCOM,2011.02)と比較しておく。 ・全体的に文字の縦の線が細い。 ・枠線、罫線も1dot程度細くなっている。 ・数字フォントは幅広になった。 今後発行されるMYCOMの棋書もこのフォントを継続するかどうかは、今のところ不明。 さて、本書は次のような振飛車党の方にオススメの一冊だと思う。 ・角道を止めない振飛車は上手く指しこなせない ・藤井システムはしんどい ・主導権は握りたい ・相穴熊は嫌いではない 結構条件は多いが(笑)、該当する方も多いのではないだろうか。(2011May16) ※誤植・誤字等(初版第1刷で確認): p112 ×「A図(57ページ、第1図)以下の指し手」 ○「A図(61ページ、第1図)以下の指し手」 p142 ×「基本図以下の指し手C」 ○「基本図以下の指し手D」 ※p125の▲4六金は研究手順だと思われるが、すぐに切られてしまうのでどうだろうか?飛を見捨てて▲6一と〜▲6二金ではダメだろうか? |