zoom |
マンガで覚える図解 将棋の基本 | [総合評価] E 難易度:★〜★☆ 図面:適宜 内容:(質)C(量)B レイアウト:A (2色刷り、ルビ付き) 解説:C 読みやすさ:A 入門〜初心向き |
||
【監 修】 矢内理絵子 | ||||
【出版社】 土屋書店 | ||||
発行:2009年11月 | ISBN:978-4-8069-1108-1 | |||
定価:1,260円(5%税込) | 143ページ/21cm |
(新訂版) zoom |
マンガで覚える図解
将棋の基本 (新訂版) |
[総合評価] D 難易度:★〜★☆ 図面:適宜 内容:(質)C(量)B レイアウト:A (フルカラー、ルビ付き) 解説:C 読みやすさ:A 入門〜初心向き |
||
【監 修】 矢内理絵子 | ||||
【出版社】 土屋書店 | ||||
発行:2011年3月 | ISBN:978-4-8069-1170-8 | |||
定価:1,260円(5%税込) | 143ページ/21cm |
(再新訂版) zoom |
マンガで覚える図解
将棋の基本 (再新訂版) |
|||
【監 修】 矢内理絵子 | ||||
【出版社】 滋慶出版/土屋書店 | ||||
発行:2014年10月 | ISBN:978-4-8069-1455-6 | |||
定価:1,382円 | 143ページ/21cm |
(四訂版) zoom |
マンガ図解
将棋の基本 (四訂版) |
|||
【監 修】 矢内理絵子 | ||||
【出版社】 滋慶出版/土屋書店 | ||||
発行:2016年8月 | ISBN:978-4-8069-1584-3 | |||
定価:1,382円 | 144ページ/21cm |
【本の内容】 | ||||||||||||||||||||
◆内容紹介 |
【レビュー】 |
将棋入門書。 Amazonのレビューに「誤植が多すぎる」と書いてあった。誤植の多い棋書といえば、『電撃!! イナズマ流次の一手200題』(森けい二,里見香奈,日東書院,2009)などが思い浮かぶ。それくらいを想像していたのだが……予想をはるかに超えていた。 はっきり言って、「誤植っていうレベルじゃねーぞ」。正誤表の添付などで対応できるようなレベルではなく、返金または回収・交換が必要なレベルだ。わたしがこれまで読んだ棋書の中で最悪クラスだと思う。 見つけた誤りを列記しておく。 〔致命的な誤植・誤記・不備等〕 p33 下段の上図 △2二飛は不要。 p35 図(3つとも) 2四歩の向きが逆。図では▲2四歩と△5一玉に対して▲3三角と打ち、「王手歩兵取り」と書かれているが、もちろん自分の駒は取れない。 p44 問題2 ×「△2一桂」 ○「△2一金」 問題不成立。 p45 問題3,4 どちらも△2二合で詰まない。玉方の持駒がなしなら詰んでいるが、持駒の有無は書かれていない。 p45 問題4 ×「△2一角」 ○「△2一金」 p47 問題9 △4一合で詰まない。玉方の持駒がなしなら詰んでいるが、持駒の有無は書かれていない。 p51 図1 打歩詰めの解説図だが、(1)詰んでいない(△5三玉と逃げられる)、(2)二歩!、(3)右上の3x3マス内の駒群が意味不明 p76 図1 △2一桂がない。 p78 図1 2四歩の向きが逆。図面のままでは、頭金がブラ(ヒモがついていない)で、詰んでいない。 p87 図3 △2三歩がない。図では王手放置になっている。 p87 図4 ▲2八飛は不要(飛が3枚ある)。また持駒「▲歩二 △歩」は「▲歩 △歩二」が正しい。 p106 図6 △1一香は不要(香が5枚ある)、▲1二歩を追加。 p115 図1 △3三角は不要(角が3枚ある)。 第4章 詰将棋で、なんと持駒が書かれていない!! 持駒が必要な問題は、問(1)、(11)、12、(13)、(14)、15、(16)、17、18。( )付きの問題は、一応ヒントに持駒が示唆されてはいる。 〔重大な誤植・誤記・不備等〕 [全体] 駒の価値についてまったく書かれていない。(駒の価値が分からなければ、手筋などを使って駒得を目指すのも理解不能になる) [全体] 「後手△の…」 → 本書全体にある不思議な書き方。どうやら仕様らしいが、一般的ではない。また、統一されていない。 [全体] 書名が「マンガで覚える…」とあるのに、マンガは各章冒頭のプロローグと挿入イラストだけで、マンガで解説したところはほとんどない。 p15 駒の持ち方で、イラスト1と2が逆。本書の順序では、指を伸ばした後、指を曲げて盤上に着地することになる。指を伸ばして着地するのが正しい。 p40 ×「1人が続けて手を打つ」 → 将棋では通常は「指す」と言う。持駒を使うときのみ「打つ」を用いる。 p44 問題1,3,5,8,9 解説がおかしい。詰んだ状態で「△1三玉に逃げれば▲1三同桂成で詰み」など、玉が取られることを詰みとしている。「どう対応しても次に玉が取られてしまう」のが詰み。 p47 問題10 ×「3三金は取れない」 ○「玉で3三金は取れない」 p77 「この一手で後手△の玉は詰みます」 → 必至はかかるが詰まない。 p86 ×「【図3】」 ○「【図1】」 p86 右図 ×「1七歩」 ○「1六歩」 p92 「定跡とは…“必勝戦術”じゃ」 → 定跡は、互いに最善と思われる手順を検討したもので、詰みまで確定しているものもあるが、必勝戦術ではない。また、定跡と部分手筋が混同されている。 p101 美濃囲いの説明で、相振飛車ではあまり見られない、と書かれているが、本書が出版された2009年時には相振りの囲いは美濃囲いが全盛。美濃囲いが少なかったのは10年以上前の話。 p108 横歩取り△2三歩型で、先手が▲3二飛成とせずに▲3六飛とすると先手不利、と書かれているが、少なくとも1990年代以降は「先手も指せる」とされている。「▲3六飛は先手不利」は20年以上前の定説。 p115 対三間飛車には速攻せよ、と書かれているが、現在は居飛穴で対抗するのが主流。 p116 向飛車は持久戦狙い、と書かれているが、最近30年くらいの向飛車はほとんどが飛先逆襲の急戦狙い。 p116 図2 ×「▲6六玉」 ○「▲6八玉」 p120 詰将棋のルール説明がかなり誤解を招きそうな書き方。例えば「持駒は使い切らなければならない」は、出題者側の問題である。解答者側としては、「玉方の対応によって持駒が余る・余らないが変わる場合は、玉方は攻め方に駒を使わせるように対応する」が妥当。 〔軽微な誤植・誤記・不備等〕 [全体] 先後のマークが「▲△」となっているが、棋書では駒形のマークを使うのが一般的。「▲△」は、WEB上の慣例である。WEBでは駒形の記号は画像でしか表示できないので、▲△で代替している。 [全体] 大部分で駒名が「角行」「歩兵」などと書かれている(「角行で歩兵を取る」など)。統一されておらず、「角」「歩」となっていることもある。もちろん「角行」「歩兵」は正式名称だが、実用上フルネームで呼ぶことがあるのは「飛車」「桂馬」「香車」くらいで、他の駒は略称で呼ばれる。棋書では一文字の略称が一般的。 p10 「女性棋士として活躍している人もたくさんいる」 → 「女流棋士」と「女性棋士」は別物。棋士(日本将棋連盟の正会員、原則として奨励会を突破した四段以上の棋士)で女性なのが女性棋士。2011年5月現在、女性棋士はいない。 p29 ×「p33参照」 ○「p34参照」(「打つ」が出てくるのはp34) p30 「成らずに飛車・王手取りとしたほうが…」 → 「飛車・王手取り」という言い方は通常しない。「王手飛車取り」または「王手飛車」が正しい。 p33 一番下の図 持駒が「▲歩角 △歩銀」 → 価値の高い駒を先に書くのが慣例。 p45 ×「図は△1二玉たが」 ○「図は△1二玉だが」 p49 3枚の駒が行方不明。(飛1、銀1、歩1) p50 「勝負が着かん」 → 「勝負がつかん」が一般的。 p50 ×「やむえない」 ○「やむをえない」 p51 ×「▲9五歩とでも打つ」 ○「▲9五歩とでも指す」 (もともと9六歩が盤上にある) p65 「▲1三歩」のルビ ×「さんぽ」 ○「さんふ」 p68 「竜道(りゅうみち)」という言い方は存在する?「角道」以外は聞いたことがない。「竜筋」または「竜の利き」が妥当か。 p69 ×「その隙に相手の玉を詰ましにかかる」 → 詰みはないので「相手の玉を寄せにいく」が妥当 p70 マンガで香の田楽刺しを図解しているが、なんと香で桂と歩を田楽刺ししている。 p70 「香」のルビが「か」になっている(2ヶ所)。「きょう」が正しい。 p72 「両取り」のルビが1ヶ所だけ「りょうとり」になっている。(他は「りょうどり」) p78 図1 ▲5一金、▲5九金の配置が意味不明。 p94 舟囲い・ミレニアムが矢倉の一種であるかのように書かれている。菊水矢倉と混同している? p95 居飛車vs振飛車のイメージマンガが、振飛車穴熊vs居飛車カニ囲い。奇襲以外では考えられない囲い方。 p101 図1 △8二飛は不要。(△8二飛があるなら、▲7六歩▲7七角の2手が必要) p101 図2 △5四角は、△5五角が正しい。図では矢印(角の利き)が変な方向を向いている(△5四角が3七をにらんでいるように描いてある)。 p103 図3 △8二飛は不要。(相居飛車での居飛穴はありうるが、図のように組まれることはほぼありえない。図の陣形は対振飛車用) p103 ×「この囲みの」 ○「この囲いの」 p105 ×「図は▲3二銀まで」 ○「図は▲3八銀まで」 p110 図3 ×「図は3六飛まで」 ○「図は▲3六飛まで」 p110 図3 ×「これを受けて後手▲3六飛」 ○「これを受けて先手▲3六飛」 p135 「表面」のルビが「おもてめん」「ひょうめん」の2つあって統一されていない。まわり将棋の説明なので、「おもてめん」が妥当。 p141 「金駒(かなごま)」と( )内にふりがながあるが、ルビには「きんごま」と書いてある。 p142 「都詰め」のルビが「とづめ」となっているが、「みやこづめ」が正しい。 p143 「入玉」のルビがナ行の項目なのに「いりぎょく」となっているが、「にゅうぎょく」が一般的。「いりおう」という言い方は、昔の棋書では時折見かける。 総括すると、以下の通り。 ・誤植が大量 ・変な表現が多い (「将棋を打つ」、「詰まれる」など) ・説明がかなり古い知識に基づいている箇所がある 個人的には、ズブの素人が書いたようにさえ思えた。 将棋に興味を持って、最初に手にした一冊が本書だった人は、気の毒としか言いようがない。未来の将棋ファンを何百人も失ったかもしれないと思うと、悲しくなってくる。 本書を褒めるところがあるとすれば、レイアウトとフォント構成だけは読みやすくてよかった。しかし、上記の誤りが全て修正されたとしても、残念ながら内容が平凡で、上達の前段階としてはかなり不十分な感じなので、評価Cを超えることはない。 「もしドラ」風に言えば、「真摯さが足りない」一冊だった。関係者のうち、誰か一人でも丁寧に確認していれば、9割方のミスは修正できたはずである。このような本を世に出して金を取ったことを猛省すべきだ。 なお、2011年3月に新訂版が出版されているが、誤りが修正されているかどうかは、またいずれ確認したいと思う。(2011May19)
|