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■手筋の隠れ家

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手筋の隠れ家
zoom
週将ブックス
手筋の隠れ家
[総合評価] B

難易度:★★★★

図面:見開き3枚
内容:(質)B(量)A
レイアウト:A
解説:B
読みやすさ:A
上級〜有段向き

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【編】 週刊将棋
【出版社】 毎日コミュニケーションズ
発行:2010年4月 ISBN:978-4-8399-3492-7
定価:1,470円(5%税込) 224ページ/19cm


【本の内容】
第1章 居飛車編
(テーマ1〜65)
(1)取らせて働く遊び駒
(2)1カ所でも主張点を作る
(3)飛車成りだけは許さない
(4)?桂さばき?で強気チャンス
(5)角に狙われた金は逃げる
(6)攻めると決めたら徹底強気
(7)大駒を持てば方針が立てやすい
(8)端不突きの美濃には強気攻め
(9)成銀で玉頭制圧
(10)囲い未完成の敵とは強く戦う
(11)穴熊の端は受け過ぎくらい受ける
(12)石田流が動く前に攻めろ
(13)桂捨てで敵攻撃陣を崩す
(14)多少の犠牲を払っても大駒の働きが大事
(15)急所に厚みを作る
(16)高美濃の桂頭は狙い所
(17)角の犠牲で攻めをつなげる
(18)美濃囲いのコビンは急所
(19)受けに迷ったら大駒を抑える
(20)4枚の堅い矢倉にはB面攻撃
(21)端攻めの勝負手を事前に消す
(22)駒の損得より飛車の効率
(23)一方的に攻められる局面を作らない
(24)無理気味でも相手の理想形は阻む
(25)不利と思ったら単純な攻め合いは避ける
(26)部分的な定跡手順に誘う
(27)2枚の馬を自陣に引かせない
(28)飛車攻めで局面打開
(29)優勢な時ほど単純に行け
(30)6四馬は天王山の位置
(31)成果を上げた攻撃銀を守備に
(32)飛車が直射している瞬間に強襲
(33)香の反撃で継ぎ歩に対応
(34)金を除去して厚み築く
(35)桂は狙いを決めてから跳ねる
(36)遊び駒候補は相手にしない
(37)自陣に危ない駒を渡さない
(38)右玉には強く攻め合う
(39)大駒の活用が先決
(40)相手の思惑を外す
(41)強気の注文には強気で対応
(42)固めて主導権を取る
(43)8筋反撃は玉頭位取りの権利
(44)歩の入る攻めを選ぶ
(45)4枚矢倉にはB面攻撃
(46)反撃含みの受けを探す
(47)中段飛車で攻めをけん制
(48)遊び駒に触らない攻め
(49)先手を取れない斬り合いは避ける
(50)皮を切らせて、大駒をさばく
(51)作ったと金は使え
(52)飛車の位置で勝負手を決行
(53)変則手で局面を打開
(54)食い付いて寝技を許さず
(55)歩の巧技で局面をリード
(56)一挙の駒得を狙わない
(57)意表を突く、泥縄の受け
(58)飛車2枚より馬2枚
(59)不備な陣形を狙って強攻
(60)相手の絶好打を消す
(61)形を乱して流れを変える
(62)玉頭戦の戦い方
(63)▲3五角は好位置
(64)攻め駒を責める受け
(65)飛車も考えようでは香車
131p
第2章 振り飛車編
(テーマ66〜107)
(66)重い瞬間=大チャンス
(67)危険な駒の処理を急ぐ
(68)優勢の時こそ激しく攻める
(69)多少無理筋でも主導権を握る
(70)穴熊の金をはがせ
(71)見慣れない形で粘る
(72)穴熊では1手前に受ける
(73)役目を果たした銀は受けに使え
(74)陣形が整うまでは辛抱
(75)相穴熊では相手に手番を渡さない
(76)敵の攻撃陣を攻める
(77)堅さを生かして豪快に
(78)?敵陣を薄く?が実戦的好手
(79)飛車のさばきを重視する
(80)戦いの場所を作る
(81)飛車をさばけば分かりやすい
(82)迷った時のウサギの耳
(83)玉頭金で急戦封じ
(84)平成の新手筋▲7八銀
(85)嫌みな空間を埋める
(86)自陣の邪魔駒を消去
(87)駒得で妥協しない
(88)一段金には▲3五歩
(89)左桂のさばきも時と場合
(90)局面打開の桂高跳び
(91)待ち受けている裏をかく
(92)出遅れをとがめ、速戦即決
(93)飛車の働きを大差にしない
(94)勝負手は玉頭戦が効果的
(95)複数の駒を残す
(96)安全な玉の位置を探す
(97)▲5五歩で混戦に持ち込め
(98)拠点は早めに活用する
(99)4四銀・2二角の瞬間をつけ
(100)粘り強い4八玉型
(101)歩切れは香で責めろ
(102)自陣を整備し攻めの再構築
(103)馬寄りに好手順あり
(104)相振りは攻めの主導権が重要
(105)駒の損得より分かりやすい局面
(106)1手前に受けて緩やかな流れを作る
(107)5五銀の存在が大きい
85p

◆内容紹介
本書は将棋の中盤から終盤にかけて、勝ちやすさということにスポットを当てた戦術書です。「駒の損得より飛車の効率」、「優勢なときほど単純に行け」といったテーマを全部で107つ、見開き2ページで解説しています。
将棋は方針をしっかり立てて指すのがとても大事なことで、本書ではそのために役立つ考え方と手筋をたくさん紹介しています。使える手筋の数々を身につけて、ぜひ実戦に役立ててください。


【レビュー】
実戦的な好手について解説した本。週刊将棋に連載された「手筋の隠れ家 勝ちやすい次善手たち」を単行本化したもの。

タイトルに「手筋の隠れ家」とあるが、あまり知られていない手筋を解説した本、というわけではない。また「勝ちやすい次善手たち」とあるが、次善手ばかりを解説した本でもない。

もちろん、中にはそういうテーマもあるが、本書は基本的には「実戦的な最善手」を解説している。たとえば、やや優勢な中終盤で、以下の2つの手があったとき、どちらを選ぶだろうか?

 A.ギリギリの攻め合いでも勝てそうだが、少しでも読み抜けがあると逆転し、取り返しのつかない手
 B.相手の攻撃力を削ぎ、自分の防御力を増して確実に勝てる手


また、やや劣勢な中終盤で、次のような場合にはどうだろうか?

 A.ジリ貧になりそうだが、最善の受けを続けていく手
 B.正確に対応されれば負けが早まるかもしれないが、上手くいけば逆転できるかもしれない手


もちろん、どちらが正しいかは局面によって違うと思うし、棋風によっても違うだろう。しかし少なくとも本書では、どちらもBを選択する。つまり、「優勢なときには確実に勝てる手(実戦的な最善手)」「劣勢なときには少しでも勝負になりそうな手(=勝負手)」を解説していく。一部のテーマでは「粘り方」や「裏定跡」のようなものも散見される(テーマ83「玉頭銀で急戦封じ」は四間飛車vs棒銀の裏定跡、テーマ88「一段金には▲3五歩」は三間飛車vs急戦の裏定跡)。

本書の基本構成は以下のとおり。なお、各テーマは見開き完結。
 (1)冒頭(見開き右側):格言風のタイトル
 (2)見開き右上:テーマ図(ほとんどが中盤〜中終盤)
 (3)テーマ図の状況説明と形勢判断
 (4)パッと見える候補手(2〜3種)の解説
 (5)実戦的な好手の解説

本書の評価はBとしたが、人によってAにもCにもなると思う。「今まで経験的に得てきた感覚を言語化してくれた!」と思えれば高評価。半面、テーマによっては、相手の失敗によって勝負手が奏功している場合もあり、「○○が相手の判断を誤らせた」という解説になっていることもあるので、「相手がミスしなかったらダメじゃん」と思えば低評価。

つまり、一冊丸ごと使えるというわけではない。使えるかどうかは、テーマごとに自分の感覚・大局観と照らし合わせていく必要があるだろう。個人的なお気に入りテーマは以下の通り。

 テーマ13「桂捨てで敵攻撃陣を崩す…矢倉戦で、玉側の桂を捨てることで相手の攻撃態勢を崩して先攻する。駒損で玉の守りも薄くなって理論的には悪そうだが、実戦的には先攻できる利が大きい。
 テーマ24「無理気味でも相手の理想形は阻む…相手が数手後に理想形になることが分かっていれば、多少無理気味でも動いた方が良い。
 テーマ44「歩の入る攻めを選ぶ…歩がたくさん入れば攻めのバリエーションが増える場合が多い。これは私も思っていたことで、言語化してもらった感じ。
 テーマ72「穴熊では1手前に受ける…相穴熊で金銀をたくさん持っているなら、受け過ぎと思えるほどでも穴熊の壁を構築すると勝ちやすい。
 テーマ95「複数の駒を残す…テーマタイトルは若干言葉足らずで、解説どおり「複数の種類の持ち駒を残す」が正しい。これは他所でも聞いたことがある原理で、迷ったときにこの格言に沿って指すと、不思議と上手くいくことが多かった。
 テーマ96「安全な玉の位置を探す…中盤で一段落付いた場合、とにかく金銀の塊に玉を寄せていくのが良い。

特にテーマ72は、相穴熊で相手の玉を寄せに行かず、自陣の穴熊にもう一枚金を埋めて鉄壁にし、相手の戦意を喪失させるというのがとても印象に残っている。良い悪いは別にして、「ああ、将棋部のH.T.さんなら絶対こう指すだろうなぁ」と思いながら読んでいた。

情報の真贋判定、取捨選択は自分しだい。テーマによっては他書で述べられていない貴重なものもあるので、一読してみてはいかがだろうか。(2010May20)

※誤植・誤字(初版第1刷で確認)は見つかりませんでした。
※疑問点:テーマ93の変化で、△7五銀のところで△6五銀と桂を取れば決まってしまうのでは?(▲同歩は角を素抜かれる)
※本書の講座を執筆していた新井田基信氏は、連載中の2010年2月19日に急死。享年48歳。連載は、週刊将棋2010年2月24日号掲載の第110回でストップした。本書に載っているテーマが107なので、残り3テーマは死蔵になってしまうのだろうか。ちなみに本書のテーマ107「5五銀の存在が大きい」は、週刊将棋では第108回なので、1回分だけボツになった回がある。(※バックナンバーを保管していないので確認不能)
※新井田氏は、「週刊将棋編」の名義で出版された棋書を多数執筆している(※本書を含め、スタッフ名の中に名前が書かれていることがほとんどないので、どの本を執筆したかは関係者以外は知ることができない)。週刊将棋編の棋書は、プロがなかなか書かないような冒険的な内容も多く、ハズレもあるが面白いものが多かった。故人のご冥福をお祈りするとともに、氏が棋書界に遺した功績に感謝します。
※テーマが似ている棋書:
東大式将棋必勝法』(東京大学将棋部,ごま書房,1978)
大覇道伝説』(週刊将棋編,MYCOM,1991)



【関連書籍】

[ジャンル] 
大局観・形勢判断 格言 勝負手・逆転術 その他の手筋
[シリーズ] 週将ブックス
[著者] 
週刊将棋
[発行年] 
2010年

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