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■杉本昌隆の振り飛車破り

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杉本昌隆の振り飛車破り
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MYCOM将棋ブックス
杉本昌隆の振り飛車破り
[総合評価] A

難易度:★★★★☆

図面:見開き4枚
内容:(質)A(量)A
レイアウト:A
解説:A
読みやすさ:A
有段者向き

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【著 者】 杉本昌隆
【出版社】 毎日コミュニケーションズ
発行:2007年2月 ISBN:978-4-8399-2303-7
定価:1,470円(5%税込) 240ページ/19cm


【本の内容】
対四間飛車編  第1章 対後手藤井システム
(▲3五歩急戦)
▲3五歩に
(1)△3五同歩
(2)△3二金▲3四歩△同銀▲3八飛△4三金
 ├1.▲1六歩△4五歩▲3五歩
 ├2.▲1六歩△4五歩▲3三角成
[マル秘]
 └3.▲1六歩△2四歩
(3)△3二飛▲4六歩…
 ├1.▲4四同角△同飛▲2二角△7四飛
 │ ├a.▲4八飛
 │ └b.▲5七銀
(村山研究・後手9筋攻め)[振り飛車の視点]
 └2.▲5五銀△2二角▲4二飛成
(谷川流)[マル秘]
44p
第2章 対先手藤井システム
(▲藤井システム
 vs△居飛車穴熊)
(1)▲1五歩・5六銀型
 ├1.△4五歩(決戦)
 │ ├a.▲6一飛成
 │ └b.▲6二飛成
[振り飛車の視点]
 └2.△8六歩▲同歩△4五歩
   ├a.▲6四歩△7九角
[振り飛車の視点]
   └b.▲6四歩△5五歩
(5六銀を移動させる)
(2)▲1五歩・4七銀型
(△2四歩から居飛穴を目指す)
 ├1.▲3五歩△同角
 └2.▲3五歩△同歩▲6四歩△3六歩
(深浦新手)
   ├a.▲3六同銀
   └b.▲6三歩成
(3)▲4六歩・1六歩型
 ├1.△8五歩 以下居飛穴を目指す
 └2.△5五角〜△7五歩急戦
   ├a.△6四角型
   └b.▲5六金型
60p
第3章 5筋位取り(急戦) ▲2四歩△同歩に
(1)▲2三歩
 ├1.△3三桂
 └2.△4四銀
[振り飛車の視点]
(2)▲5六銀
(3)▲4四歩△3二銀
 ├1.▲3五歩△3三銀
[マル秘]
 └2.▲3五歩△3三桂
30p
第4章 ポンポン桂作戦 ・イントロダクション
・研究編
(1)△藤井システムに▲1六歩
 ├1.△6二玉(居飛穴を目指せる)
 ├2.△1四歩と端を受けられたら
 ├3.△5二金左は先手四間に近い
 └4.△6四歩は危険な手
(2)▲9六歩型
・プロの実戦編(4例)
・まとめ
28p
対三間飛車編 第5章 先手三間対穴熊
(通常の▲三間飛車
 vs△居飛車穴熊)
後手7筋を受けない指し方
・△7三歩に対する飛車の引き場所
[振り飛車の視点]
(1)▲4五歩位取り
(2)▲3六歩
22p
第6章 先手三間対銀冠
(▲石田流vs△銀冠)
後手が銀冠を構築したあと、
(1)△4二金(玉を固める)
 ├1.△2二金(銀冠穴熊)
 └2.△9二飛(千日手狙い)
   ├▲6五歩(仕掛け)
   └▲7四歩(振り飛車失敗例)
(2)△5四歩(5筋位取り)
24p
第7章 山本流石田封じ (1)▲7四歩
(2)▲6八銀△1四歩
 ├1.▲1六歩(端を受ける)
 │ ├a.…▲2二角成△同銀▲5六角(先手ハマリ形)
 │ └b.…▲5八金左
 └2.▲4八玉(端の突き越しを甘受する)
(3)▲4八玉
[振り飛車の視点]
28p

・【コラム】圧倒的な大局観/柔軟な発想その1/柔軟な発想その2/指導将棋の難しさ/居飛車にするのは

◆内容紹介
本書は振り飛車党の棋士である杉本昌隆七段が、振り飛車の破り方を教える戦術書です。急所がわかりやすいように、振り飛車が良くなる変化は“振り飛車の視点”、居飛車の奥の手は“マル秘”としてまとめてあります。実戦での勝ちやすさにこだわって解説してありますので、本書を読んで振り飛車の戦いに強くなってください。


【レビュー】
居飛車vs振飛車の戦型を解説した本。

著者の杉本は、(ほぼ)純粋振飛車党である。それなのになぜ「振飛車破り」の本なのか?杉本曰く、「振飛車の弱点を一番知っているのは振飛車党だから」だそうだ。というわけで、本書は「純粋振飛車党が書いた振飛車破りの本」である。

本書では、居飛車が有利になる変化と、振飛車が有利になる変化をハッキリ分けている。その中でも、特に振飛車側が優勢になる変化は「振り飛車の視点」、また細かい研究よりも分かりやすく実戦的な変化は「マル秘」として書かれている。ただし、解説自体はどちらか一方に肩入れしているわけではないし、プロの実戦や研究をベースにしているので「アマチュアなら通用します」というココセ本でもない。全体としてはかなり公平な視点で書かれていると思う。

各章の説明をしていこう。

第1章は、△藤井システムに対する▲3五歩急戦。タイトル戦でも何度か現れた戦型で、後手藤井システムの成否に関わる重要な変化だ。p20「藤井システム対居飛車急戦は、振り飛車が形成を損なわず、いかに局面を収めて玉を囲うか、が一つのポイントだ。」

第2章は、▲藤井システムvs△居飛車穴熊。非常に激しい戦いで、場合によっては詰みまで研究されている(例えば▲5六銀型に△4五歩の決戦など)。

第1章と第2章は藤井システムの最先端で、本書の中では一段階ほど難しいと思う。この10年間ずっと藤井システムを追ってきた人にはちょうど良いが、そうでない人はパスしてもいいかもしれない。


第3章は、5筋位取り急戦。すでにほぼ消えた戦法に近く、本書の実戦例で居飛車側を持っているのは西川慶二七段のみ。本書でも、ずっと居飛車が良くなる変化が続くものの、最後の1つは振飛車が良くなり、「やはり5筋位取り急戦は振飛車良し」の結論になる(振飛車破りの本なのに(笑))。ただ、すでにマイナー戦法になっていることもあって、実戦的には居飛車がかなりやれるのでは?と思う。

第4章はポンポン桂。別名「富沢キック」、または「桂捨て作戦」とも呼ばれる。▲4五桂と歩頭に桂を捨て、強引に角交換して飛先を突破するという、非常に単純な仕掛けだ。そのため、プロで使う人は少なく、既刊の棋書でも奇襲扱いだったり、「アマなら通用する」というスタンスだったりした。(cf.『振り飛車破りユニーク戦法』(田丸昇,創元社,2005)、『B級戦法の達人』(週刊将棋編,MYCOM,1997/2002))

しかし本書のポンポン桂は、「囲いが遅れている藤井システムに対して有効なのでは?」という思想から始まった、「現代版ポンポン桂」である。プロ高段者の実戦例もいくつか紹介されている。仕掛け方は同じでも彼我の陣形が従来と違うため、まったく別の戦型といっていいだろう。具体的には、▲5七銀(右)型になるため3七に隙ができるので、これをカバーするため▲1六歩とか▲5五角が必要になる。


第5章〜第7章は、石田流破り。

第5章は出だしはノーマル三間飛車から、▲石田流本組vs△居飛車穴熊という戦型。ここで後手が△8四飛と浮かず(7筋を受けない)、ひたすら玉を固める指し方に特化してある。▲7四歩△同歩▲同飛の歩交換に△6四銀と出るのが後手の狙い。

第6章は、対▲石田流のメインストリームになりつつある△銀冠。この章では振飛車が良くなる変化があまりなく、苦戦をうかがわせる。「振飛車破り」の本だからそれでいいのだが、実際に有効な対策が乏しいのだろうか・・・。

第7章は、新作戦の山本流。山本真也五段が開発した石田流対策で、おそらく単行本では初公開のはずである。▲石田流に対し、△4二玉+△6四歩+△6二飛と、たったこれだけで戦闘準備完了。あとは先手の動きに合わせて仕掛ける。対石田流が苦手な人でも、非常に覚えやすい戦法で、オススメである。わたしは将棋部のKさんとこの戦法を研究し、わたしが石田流側を持って一定の結論に達したが、先手が常形に組むのは難しく、かなりやっかいな戦法だと思う。自分が後手の時に、相手に石田流を使われたら今までは相振飛車にしていたが、今後はしばらく山本流を使ってみようかと思う。


全体的にプロ的な難しい変化も多かったが、研究が苦手な人でも、第4章(ポンポン桂)と第7章(山本流)だけでも読んでおくとよいと思う。(2008Jun13)


【他の方のレビュー】(外部リンク)
棋書解説&評価委員会
Amazon.co.jp: カスタマーレビュー
T's shogi blog




【関連書籍】

[ジャンル] 
振飛車総合
[シリーズ] MYCOM将棋ブックス
[著者] 
杉本昌隆
[発行年] 
2007年

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