新・プロの将棋シリーズ(1) 加藤流最強三間飛車撃破 |
[総合評価] C 難易度:★★★☆ 図面:見開き4枚 内容:(質)B(量)B レイアウト:A 解説:B 読みやすさ:B 中級〜上級向き |
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【著 者】 加藤一二三 | ||||
【出版社】 毎日コミュニケーションズ | ||||
発行:2004年6月 | ISBN:4-8399-1540-7 | |||
定価:1,365円(税込) | 224ページ/19cm |
【本の内容】 | ||||||||||||||||||||||||||||
・【コラム】十段戦の事など/巡礼旅行(1)/巡礼旅行(2) |
【レビュー】 |
三間飛車対居飛車急戦の定跡書。 加藤は対振飛車の急戦において、さまざまな仕掛けを創り出してきた。対三間飛車に対してもその功績は大きく、「三歩突き捨て」など数多くの定跡を残している。 本書は、対振飛車急戦の大家・加藤が対三間飛車の急戦を一冊にまとめたものである。 第1章は基本的な▲3七桂型。本書の中で一番多くのページが割かれているが、「(特に△2二飛からの定跡を)私は重視していない」(『加藤流振り飛車撃破』(加藤一二三,MYCOM,2003)p175より)とのこと。実際、実戦編に出てくる▲3七桂型は2局とも▲5五歩位取りとのミックスである。 第2章は▲3七桂を跳ねずに▲4五歩と仕掛ける形。仕掛けの順は▲4五歩〜5五歩〜3七桂。加藤の見解は「私はこれまでに指そうと思ったことはない。」(p82)とネガティブ。 第3章は△7五歩▲同歩△6四銀を狙いとする仕掛け方。意外とありそうな▲同歩の場合の変化(p85)は『羽生の頭脳 3 急戦、中飛車・三間飛車破り』(羽生善治,日本将棋連盟,1992)よりも詳しい。 第4章は△三間飛車が早めに△3五歩と突き、先手の急戦を防ぐ指し方。居飛車が穏やかに指せば石田流本組に収まると思われるが、本書では早めに▲4六歩と突いて石田流を牽制し、△3四銀と受ける展開を解説。 第5章は三歩突き捨て。本章では△9五歩と突き越した形の解説で、対大山康晴の実戦譜がそのまま定跡になっている。9筋を突き合った形については、実戦編で2局解説されている。 第6章は対△三間飛車の棒銀。加藤といえば棒銀(笑)。最初から飛車が3筋にいるので、▲四間飛車に棒銀を仕掛けた場合と同じ形になる。本書では▲1六歩を省略して攻め合い勝ちした例を解説。 本書には変化チャートが付録されているのだが、これが非常に探しづらい!各章の内容は章末や巻末に載っているわけではなく、変なところにある。右表にチャートの場所をまとめておいたので、付箋を貼っておけば少しは探しやすくなると思う。また、チャートは窮屈に折りたたまれていて、かなり見づらい。どちらもページ数を抑えるための工夫なのだろうが、ユーザーフレンドリーではない。 また、図の番号が通し番号でないのもマイナス。具体的には、例えば第6図の局面に戻って変化を解説するとき、次の図はまた第7図なのである。この結果、番号が同じ図面がたくさん出てきて、再掲時にどこまで戻ったか分かりづらい。同じ見開き内に、番号が同じ(もちろん局面は違う)図面が出てくることもあった。 あとは、加藤の文体が非常に独特。典型的なのは「私は△7二飛と寄った。すると先崎五段は▲4五歩と突いてきた。私は、△3三角と引いた。すると先崎五段は▲8五桂とはねてきた。…」(p211)という感じで、指し手の進行を文章で言い直すのである。これは定跡編も実戦編も同様。これは好みが分かれると思うが、わたしは紙面を無駄に使っている感じがするのであまり好きではない。 正直に言うと、本書の内容なら前述の『羽生の頭脳 3 急戦、中飛車・三間飛車破り』か『先手三間飛車破り』(青野照市,創元社,1988)を読んだ方が良いかな…と思う。「加藤の三間飛車破り・勝局集」だと思えば、マァイイカ。(2010Jan17) |
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