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■先手三間飛車破り

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先手三間飛車破り
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先手三間飛車破り
急戦で仕掛ける方法を徹底解説
[総合評価] S

難易度:★★★★☆

図面:見開き4枚
内容:(質)A(量)S
レイアウト:B
解説:A
読みやすさ:B
有段向き

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【著 者】 青野照市
【出版社】 創元社
発行:1988年9月 ISBN:4-422-75036-4
定価:2,300円 268ページ/20cm/H.C.


【本の内容】
第1章 後手三間飛車△4三銀型
の早仕掛け
・仕掛けまでの手順
・△3五歩の反発
・△4二飛の待機策
・▲5七銀左からの仕掛け
42p
第2章 後手三間飛車△4二銀型
の仕掛け
・△4二金受けの攻防
・△4二銀受けの攻防
・小林流の指し方
34p
第3章 先手三間飛車
対 △7三桂型の攻防
・先手▲5六銀の受け
・先手▲5六金の受け
18p
第4章 先手三間飛車
対 三歩突き捨て作戦
・対先手三間飛車の速攻作戦の分類
・9筋突き合い型
・△7五歩からの仕掛け
・先手▲8六同角の変化
・△8六歩からの仕掛け
・9筋突き越し型
58p
第5章 先手三間飛車
対 △9五歩型の基本定跡
・▲4七金の手待ち
・▲3七桂の手待ち
28p
第6章 先手三間飛車
実戦的な▲8八飛の対策
・△7三銀からの仕掛け
・△3三角からの仕掛け
14p
第7章 先手三間飛車
対 △6四銀型の攻防
・▲4七金〜▲8八角の辛抱
・▲4七金〜▲6五角の決戦
・▲5八金型での待機
・後手△5五歩のカラミ攻め
44p
第8章 先手三間飛車
対 △7五歩早仕掛け
・▲7五同歩の変化
・▲6七銀の変化
18p

◆内容紹介
なぜ先手三間飛車は攻めにくいのか?なぜ先手番と同じ攻めではうまくいかないのか?では、どういう仕掛けで攻略すべきなのか?対・先手三間飛車の急戦の仕掛けを徹底研究。自信を持って立ち向かえる、有段者必読の書。


【レビュー】
三間飛車vs居飛車急戦の定跡書。

四間飛車に比べるとややマイナーで、採用数が少なめの三間飛車。とはいえ、古くは大野源一や大山康晴らが採用していたこともあり、三間飛車に対して急戦を仕掛ける研究は徐々に進められてきた。

△三間飛車に対しては比較的仕掛けやすいものの、▲三間飛車に対しては仕掛けが難しくなるとされていた。それは現代でもあまり変わっていない様で、▲三間飛車に対しては△居飛穴を目指すケースが圧倒的に多くみられる。

しかし、先手番なら急戦、後手番なら居飛穴と、器用に使いこなせる人はそう多くはない。急戦党なら、先手でも後手でも急戦で仕掛けたい…と思うのは道理である。

そんな要望に(?)応え、▲三間飛車への急戦を追求したのが本書である。


本書では、△三間飛車と▲三間飛車に対して、船囲い急戦で仕掛ける方法が詳細に解説されている。本書の前後にも対三間飛車急戦を扱った本は出版されているが、本書の解説量と精緻さは群を抜いている。本書の後に更新されている部分ももちろんあるが、急戦党にとっては間違いなくバイブル級。

ただし、現代の本に比べて、多少読みにくい部分はある。図面配置はオーソドックスな見開き4枚型だが、解説量がかなり多いために相対的に図面が少なく、本文と図面を近接させることがあまり意識されていないので、図面を探すのに労力を食われることがある。



各章の内容を、チャートを添えながら紹介していこう。

第1章と第2章は、△三間飛車への仕掛けを解説。メインの▲三間飛車への仕掛けも、ここでの知識がベースとなってくるので、しっかり消化しておこう。

第1章は、△4三銀型三間飛車。仕掛け自体は一番楽とされる。これが基本定跡となり、「居飛車が後手の場合や、端歩で二手費やした場合に、振り飛車側の陣形が少しずつ違ってくるので、その攻略法も、少しずつ工夫をしなければならない」(p12)。

先手が▲3六歩と急戦の意思を示したら、すぐに△5二金左、また▲4六歩には△5四歩がマスト。どちらも△7二銀よりも優先度が高い。先手は角交換を目指して▲4六歩と突いていく。

本章の結論は、「△4三銀型三間飛車には、いったん▲5七銀左として、△6四歩と突かせてから▲4四歩と攻めれば先手が指せる」となる。

※ただし、この仕掛けは、現代の目で見るとやや不思議な感じがするかもしれない。長らく「振飛車には角交換」と言われ、(本章ではあっさり△4三銀と上がってくるが)△3三同銀と取れる形でも、角を交換すれば持久戦になれば振飛車の方が指しづらくなる、とされていた。しかし、角交換振飛車の発達した現代では、形によっては「角交換大歓迎」となることがありうると思う。


第2章は、△4二銀型三間飛車への仕掛け。『羽生の頭脳 3 急戦、中飛車・三間飛車破り』(1992)でもおなじみで、仕掛けの前に△2二飛と構え、▲5五歩△同歩▲4五歩と仕掛けるのが特徴。角交換後の▲8八角にどう対応するかが分かれる。


第3章以降は、本書のメインとなる先手三間飛車破り。

第3章では、まず△三間飛車への▲5五歩△同歩▲4五歩の仕掛けと同じように、▲三間飛車に対して△5五歩▲同歩△6五歩と仕掛けたらどうなるか、を検証していく。

結論から言えば、この仕掛けは成立しない。▲三間飛車では、仕掛けの前に▲4七金の一手が入っているため、△5六歩の垂れ歩が無効であり、また5八にスペースができているので、中央で銀交換するとすぐに▲5八飛と活用されてしまうのが主な理由となる。

すなわち、表紙にある「なぜ先手三間飛車は攻めにくいのか?なぜ先手番と同じ攻めではうまくいかないのか?」という疑問には、本章で答えている。


第3章で、▲三間飛車には△5五歩▲同歩△6五歩の仕掛けが通用しないことが分かった。そこで、別の仕掛けを考える。表紙の「では、どういう仕掛けで攻略すべきなのか?」という問いに、このあと答えていく。

p106〜p109に「対先手三間飛車の速攻作戦の分類」がある。▲三間飛車への有力な急戦を4つ紹介しており、第4章の中に含まれてしまっているが、これらが本書のキーとなる部分で、まず最初に押さえるべきポイントである。

4分類を簡単に紹介しておこう。
(1)▲4七金と上がった時に△7五歩と仕掛ける。

角交換狙いではなく、△9五香で一歩入手して△7六歩を実現させる。9筋で一歩入手するので、9筋の突き合いか、突き越しが必要条件となる。

この形を避けて▲5七銀と上がる(6八にスペースを空ける)と、第5章のような△6五歩早仕掛け型になる。

また、仕掛けを抑えようと▲8八飛とすると、第6章の棒銀策や、△7三銀〜△6五歩〜△6二銀の2手損△6五歩早仕掛けのような将棋になる。
第4章
(三歩突き捨て作戦)

第5章
第6章前半
(2)△5三銀左を省略して△3三角と上がり、9筋の端歩を詰めて、△7三桂から△6五歩と仕掛ける。

△3三角は、先手から角交換させて△同銀と形良く取るため。ただし先手に十分に組まれる。
第6章後半
(富沢流)
(3)△左6四銀から△7五歩と仕掛ける。

△四間飛車と比べて、▲三間飛車は2手進んでいるのを逆用し、▲4七金と上がっている方が仕掛けやすいという考え。
第7章
(左△6四銀)
(4)△7五歩▲同歩△6四銀の仕掛け。

左図から▲6七銀△6四銀なら(3)に合流するが、▲6七銀△7六歩▲同銀△7二飛▲6七銀△6四歩と指すこともできる。
第8章
(山田流ライク)

第4章〜第6章はつながっているので、チャートはまとめて紹介する。

第4章は、▲三間飛車への△三歩突き捨て作戦。7・8・9筋の歩を突き捨て、9筋で一歩入手して△7六歩と角頭に打つのが基本の狙い。

ただし、▲5八金型には三歩突き捨て作戦は成立しない。▲5八金型では、仕掛けの途中で△6七角と打てないのが理由の一つ。必ず▲4七金を見届けてから仕掛けよう。

また、三歩突き捨てといえば加藤一二三九段だが、加藤の実戦ではほとんど△4二金直▲3六歩の交換を入れて仕掛けているとのこと。本章では、「△4二金直の省略は不安だが、それでも▲3六歩を指させていないことが大きい」として、その交換がない指し方を追求していく。

さらに、△9四歩に先手が端を受けず、玉側の方に手をかける指し方も本章で解説。この形では、9筋突き越しになるため、これまで有効だった▲9六香がない。結論としては、「△9五歩と伸ばしてから△7五歩と仕掛けられれば、9筋突き合い型より仕掛けた後の戦いが楽。」となる。


第5章は、第4章を踏まえた上での、▲三間vs△9五歩型の基本定跡。

後手が9筋の歩を2つ突いたので、この端歩を無駄手にさせて中央での戦いに持ち込む意図で、▲5七銀と上がる。そうすると、仕掛けは△6五歩となり、△四間飛車▲4五歩早仕掛けと似た展開になるが、先手が4六歩-3六歩を突いていること、後手が4二銀型で9筋を突き越していることがどう影響するか。

結論は、「横からの攻め合いになると、(手が進んでいるために上がった)▲4七金はマイナス」。先手が高美濃を生かすには、玉頭戦に持ち込む必要がある。▲4七金を省略して▲3七桂でも、後手の仕掛けは成立する。


第6章は、実戦的な▲8八飛。△7三桂のないときに▲8八飛と仕掛けをいったん封じるのが骨子だが、損得勘定は難しいとされる。

△棒銀で行けば、▲7八飛と戻ることになり、先手は丸々2手損。しかし9筋の端歩2手との交換になっている計算になり、損得微妙。

△7三銀〜△6五歩〜△6二銀で、手損で6五歩早仕掛けにスイッチする手法もあるが、20世紀は手損に対するアレルギーが強く、邪道感もあったようだ。

指す人は少なかったらしいが、富沢流も有力。△4二銀型で△3三角と上がり、△6五歩と仕掛けていく。


第7章は、△左6四銀戦法。有力だが、△四間飛車への急戦と比べて2手差があり、先手は▲3六歩〜▲4七金と高美濃を完成できる。ただし、これも損得は微妙で、例えば▲4七金型のため、△7六飛と走らせたときに▲6七金とする受けがない。そこで、▲4七金以外で後手の仕掛けを待つ手段として、▲9八香も検討される。


第8章は、山田流ライクの仕掛け。△7五歩▲同歩△6四銀の順で銀を出る。ただし、後の展開は対△四間飛車の山田流とはかなり違ってくる。

結論は、「△7五歩の仕掛け自体は成立するが、後手有利を立証するのは容易ではない」。


本書では、主に▲三間飛車への急戦策を検証してきたが、なかなか居飛車有利にはならないものの、仕掛ける手段はいくつかあるようだ。現代では、▲三間飛車への対応はほとんど居飛車穴熊になっているが、とにかく早く戦いにしたい人には急戦もオススメ。もしかしたら、三間飛車党の対急戦の経験値が不足気味の現代では、実戦的にはむしろ急戦の方が有効かもしれない…?(2016May21)



※誤字・誤植等(第一版第五刷で確認)
p47下段 ×「第4図は、お互いに」 ○「第5図は、お互いに」
p82上段 ×「先手優勢なった」 ○「先手優勢となった」



【関連書籍】

[ジャンル] 
三間飛車
[シリーズ] 
[著者] 
青野照市
[発行年] 
1988年

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