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■頭脳勝負 ─将棋の世界

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(オリジナル版)
頭脳勝負 ─将棋の世界
zoom
ちくま選書
頭脳勝負
─将棋の世界
[総合評価] A

難易度:★〜★★

図面:随時挿入
内容:(質)A(量)B
レイアウト:A
解説:A
読みやすさ:A
すべての棋力向き
特に初級〜上級にオススメ

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【著 者】 渡辺明
【出版社】 筑摩書房
発行:2007年11月 ISBN:978-4-480-06392-2
定価:735円(5%税込) 222ページ/18cm
(増補文庫版)
頭脳勝負 ─将棋の世界
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ちくま文庫
頭脳勝負
─将棋の世界
[総合評価] A

難易度:★〜★★

図面:随時挿入
内容:(質)A(量)B
レイアウト:A
解説:A
読みやすさ:A
すべての棋力向き
特に初級〜上級にオススメ

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【著 者】 渡辺明
【出版社】 筑摩書房
発行:2018年9月 ISBN:978-4-480-43539-2
定価:842円(8%税込) 272ページ/16cm


【本の内容】
第一章 頭脳だけでは勝てない 偶然の少ないゲーム /集中力のメリハリ/ヤマを張る/気合で行くか、冷静になるか/封じ手の駆け引き/直観の精度/ミスと切り替え/駆け引きは対局の前から/二大戦形/出来を左右する対局の重要度/普段のトレーニング/調子の良し悪し/将棋は何歳がピークか/小学生からプロを目指す/学業と将棋の両立/趣味と息子 40p
第二章 プロとは何か 奨励会制度/私の奨励会時代/将棋にコーチはいない/プロはどうやって稼ぐか/新しいニーズ/名人戦と棋士のランク/レッスンプロの待遇/段位と実力の関係/トップと新人の実力差は/女流棋士の強さ/女流新団体/アマとプロの差/強くなる手段に困らない時代/アマからプロになった男/ブロガー渡辺
・コンピュータソフトについて
コンピューターの進化/ボナンザ戦を受けた理由/いよいよボナンザ戦/コンピューターはどこまで強くなるか
46p
第三章 将棋というゲーム スポーツを観るように将棋も/序盤は作戦を練る/バランスは相手を見て/互角でも好みはある/実利を求める中盤/方針を徹底する/勝負を決める終盤/実戦を見よう!/駒のやりとりでポイントを稼ぐ/損得だけでなく「効率」も見る/スピードが問われる/定跡と研究/一手の違いで全く新しい世界が
・代表的な棋士の紹介
現代将棋と過去の大棋士/トップ棋士たち/同世代のライバルたち/追撃する最若手と踏ん張るベテラン
52p
第四章 激闘! ・第19期竜王戦第3局(vs佐藤康光棋聖)
防衛戦の前に/開幕二連敗/「開戦は歩の突き捨てから」/存在しない局面が見える!/流れを変えた角打ち
・第78期棋聖戦第4局(vs佐藤康光棋聖)
佐藤康光再び/突然の不調/超急戦/全く予想外/盲点/自分を信用すること
38p

付録1 ルール解説 
付録2 さらに将棋を楽しむために
付録3 詰め将棋(山田康平氏提供)

◆内容紹介
頭脳はもちろん、決断力、構想力、研究者としての力量。将棋では人間の総合力が試される。だからその戦いは観ているだけで面白い。将棋の楽しみ方がわかる本。


【レビュー】
プロ将棋観戦の楽しみ方について書かれた本。

プロの将棋は難しい。多くの新聞にはプロ将棋の観戦記が毎日掲載されているが、観戦記の内容を理解するには少なくとも2〜3級くらいの棋力が必要だ。しかし2〜3級という棋力は、ある程度将棋にハマらないと到達できない棋力でもある。また、今まで“プロ将棋観戦ガイド”という位置づけで『これが最前線だ!』(深浦康市,河出書房新社,1999)や『最新戦法の話』(勝又清和,浅川書房,2007)など、プロの将棋を分かりやすく伝えようとしている棋書はあるものの、基本的に有段者クラスの棋力が必要だった。

本書は、従来の本がカバーできなかった、「ルールが分かるくらいの初心者」から「将棋にハマり出した初級〜中級者」にプロの将棋を伝えるような本である。

第一章「頭脳だけでは勝てない」では、将棋というゲームが単に真理を追究するだけではなく、人と人との戦いであることを紹介。そして、将棋の魅力と、プロ(特に渡辺)がどういうことを考えながら将棋と向き合っているかを書き綴っていく。羽生世代出現以降、「将棋は正確な読みと研究で勝つ」と信じられた時期があったが、渡辺は読みや研究だけでなく、一局の中での心理の揺れ、もしくは数日から一年を通してのメンタルのコントロールなど、メンタル面を非情に重視しているのは興味深い。この「メンタル面重視」は本書の根底に流れており、「だからこそ初心者が見ても面白いんですよ」ということを上手く伝えている。

第二章「プロとは何か」では、日本将棋連盟を中心としたプロ棋士の紹介と存在意義、そしてその絡みで2007年春の対ボナンザ戦を振り返る。ボナンザ戦についてはさらっと書かれている程度なので、詳しく知りたい人は『ボナンザVS将棋脳』(保木邦仁,渡辺明,角川グループパブリッシング,2007)か、または渡辺明ブログの過去ログを参照(ブログの方が編集が入っておらず生々しいのでオススメ)。

第三章「将棋というゲーム」では、実際に観戦記を読んで将棋の内容を見るときに、どういうところに注目してみれば面白いかを解説。初級者でも分かるような説明なので、むしろ今上達を目指して頑張っている人にオススメ。(わたしが級位者時代にこれを読んでいれば…!)

第四章「激闘!」は、渡辺のタイトル戦から2局をピックアップ。一応、棋譜付き。もちろんこの章も、初級者でも楽しめる(“分かる”ではない)ような解説になっている。手の解説はなるべく省略し、局面の流れや自分の心理状態に重点を置いている。竜王戦の方は竜王戦七番勝負第3局。─渡辺明ブログにも詳しく書かれているが、封じ手周辺の思いや△7九角(決め手)を発見したときの心理がすごくダイナミックに書かれており、ものすごく面白く読めた。

一例を挙げておこう。(一部「……」で省略)
「(封じ手の局面を考えていて)関係者との夕食を終え、風呂に行き、部屋に戻って頭の中に盤面を思い浮かべます。……頭の中で駒を動かし、必死に考えました。けれどもどうにもうまい手が浮かびません。「もうダメだ。あとは明日考えよう」。そう思い布団に入ると、ふとある局面が浮かびました。……「なんだ、存在しない局面が浮かんでるよ。さすがに疲れてるのかな」と思った直後、……になることに気が付いたのです。考え抜いた末に発見したよりも「ふと、ひらめいた」という感じでした。思わず、布団からガバッと飛び上がりました。
……翌朝九時。封じ手が開封されました。……すると、佐藤棋聖は考え始めました。それまでの落ち着いた様子とは一変、髪をかきあげ、前後に小刻みに体を揺すりながら、盤上に没頭。水分の消費量も倍以上に増えています。この様子を見て、私は「よしよし。様子がおかしい。予想していなかったみたいだぞ」と思いました。」
(p158〜160)

棋聖戦の方も同様にすごく面白い!(参考:棋聖戦5番勝負第4局。─渡辺明ブログ)こういう自戦記は読み物として、またプロ将棋の面白さを伝える術として、どんどん発表してほしいと思う。自戦記集には向かないかもしれないが、新書の形でバンバン出せばいい。

全体的に、有段者の私から見てもとても面白かったし、初級者向けにこれほど面白く書かれた自戦記は初めて見た。普段新聞の将棋欄を見ている人(案外多いらしい)には、超オススメの一冊である。棋力にかかわらず、ぜひご一読を。(2008Apr15)



【他の方のレビュー】(外部リンク)
ギズモのつれづれ将棋ブログ
将棋レビュー2.0
ものぐさ将棋観戦ブログ
本読みの記録
三軒茶屋 別館
Amazon.co.jp: カスタマーレビュー




【関連書籍】

[ジャンル] 
エッセイ
[シリーズ] 
[著者] 
渡辺明
[発行年] 
2007年 2018年

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