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一九八九年の挑戦者 | [総合評価] D 難易度:★★★☆ 図面:見開き0〜2枚 内容:(質)B(量)C レイアウト:B 解説:B 読みやすさ:B 上級〜有段向き |
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【著 者】 井上光晴 | ||||
【出版社】 筑摩書房 | ||||
発行:1984年11月 | ISBN:4-480-81181-8 0076-81181-4604 |
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定価:980円 | 184ページ/20cm ハードカバー |
【本の内容】 | ||||||||||||
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【レビュー】 |
小説家・井上光晴の観戦記集。 名人戦・王将戦の部はそれぞれ毎日新聞に掲載されたもの、名将戦の部は週刊文春に掲載されたもの。名人戦の観戦記は、『第三十六期名人戦』(毎日新聞社,1978)などに載っているものと同じ。ただ、オリジナルと違ってレイアウトが見開き完結型ではないため、やや読みづらくなっている。 名人戦の観戦記は、棋譜解説と情景描写のバランスが良く、非常に好感が持てた。級位者でも読んでいるだけで雰囲気がつかめるし、有段者の要求にも満足できる。また、対局者の表情もしっかり捉えているのが嬉しい。語彙も豊富で、観戦記としては良質だと思う。 一方で、王将戦と名将戦の観戦記は不満あり。文字数が名人戦の1/4程度に制限されている影響もあるが、リアルに忠実な描写よりも想像に偏った描写が多く、表現もまどろっこしい印象。本書の観戦記が書かれた時期はさほど離れてはいないので、なぜ作風が違うのか不思議。 「一九八九年の挑戦者」は書き下ろしの短編小説。本書の出版から5年後の1989年、名人戦の挑戦者になった蔦八段が、九州・雲仙対局の前夜、とある老人ホームを訪れ…というストーリー。尻切れトンボ気味に終わっているので、小説に疎いわたしは最初意味が分からなかったが、何度か読んでみると「ああ、蔦八段の○○が△△したんだな…」と推測される(←的外れかも)。本書のタイトルにもなっているのでメインぽいが、ポジション的には小説家としての余興のようなもの。 全体的にまずまず面白かったが、「他書に載ってる内容をわざわざ再編成して出版する必要あるのかなぁ…」という感じ。量も少なく、単行本化時の工夫もないので、やや不満な一冊。(2005Sep17) |