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スーパー将棋講座 豪快四間飛車 ─徹底研究 対急戦 対持久戦 |
[総合評価] B 難易度:★★★★ 図面:見開き4枚 内容:(質)B(量)B レイアウト:A 解説:A 読みやすさ:B 上級〜有段向き |
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【著 者】 畠山成幸 | ||||
【出版社】 創元社 | ||||
発行:2008年6月 | ISBN:978-4-422-75111-5 | |||
定価:1,260円(5%税込) | 222ページ/19cm |
【本の内容】 | ||||||||
◆内容紹介 |
【レビュー】 |
△四間飛車の定跡書。 本書の基本図は下図の2つ。解説されているのはすべて△四間飛車だが、本書では便宜上先後逆表示ですべて四間飛車側を手前にしている。(このレビューでは先後そのままで書いています) 第1章は居飛車▲5七銀左急戦で、第1図から5種類に派生する。 (1)▲2五歩△3三角▲3五歩 (▲3五歩早仕掛け、いわゆる山田流ナナメ棒銀) (2)▲3五歩 (▲2五歩保留ナナメ棒銀) (3)▲2五歩△3三角▲9七角 (端角戦法、いわゆる山田定跡▲9七角の現代版) (4)▲2五歩△3三角▲3八飛 (鷺宮定跡) (5)▲6八金直△1二香▲2五歩△3三角▲3八飛(鷺宮定跡) (2)以外は、詳しい定跡書がかなりたくさん出ている。網羅的に見たければまず他書を読み、本書は何か別の変化が載っていないか、と参考程度に読めばよいだろう。 (2)の▲2五歩保留型は本書では34pが割かれていて、第2章の対居飛穴、対ミレニアムとならんで一番ページ数が多く、第1章のメインといえる。「仕掛け自体は三〇年前からある」(24p)とのことだが、載っている棋書は非常に少ない。手持ちの本と棋書ミシュラン内を捜索してみたが、これが載っている棋書は見つけられなかった(過去に見た記憶はかすかにあるが…)。 △3二銀型で待機している場合、▲2五歩△3三角の交換が入っているならば、第1図の△5四歩では△1二香が最強の急戦対策というのが定説であるが、本書にあるような▲2五歩保留ナナメ棒銀で仕掛けられた場合に△5三歩-△1二香型ではさまざまな不具合も生じるようだ。△5四歩型の利点は、▲5五角と打たれやすい、△5三飛と逃げる余地がある、△6四角と据えたときに△3一歩の底歩が利く(5三が開いている効果)など。本書でも角銀で飛をいじめられたときに△5三飛まで逃げて良し(p36)、△3一歩の底歩で後手一手勝ち(p50)などが出てくる。 第2章は持久戦。(1)対左美濃、(2)対居飛車穴熊、(3)対ミレニアム、そしてなぜか(4)5筋位取りの急戦型も本章に入っている。このうち、(1)(4)は他書にも載っている変化とほとんど同じである。5筋位取りを急戦タイプで解説しているのは「仕掛けるタイプのほうがマニュアル化されているので、本書で解説しやすい」(p198)って、そんなことまで暴露しなくても…(笑) 本章のメインは(2)の居飛穴対策で、いわゆる「角交換挑戦型」。△3二銀型を生かした低い構えから、相手が居飛穴を明示した瞬間(▲9八香がタイミング)、△4五歩と振飛車から角交換を挑戦する戦法で、相手が角交換してもしなくても、△3五歩から石田流を目指す。藤井システムや鈴木システムよりも使いやすい。四間飛車で対居飛穴が苦手なわたしでも、これなら使えそうな気がする(笑)。この戦法を使いたいがために、本書では△3二銀型で統一しているといっても過言ではないだろう。『四間飛車を指しこなす本(2)』(藤井猛,河出書房新社,2000)や『四間飛車破り【居飛車穴熊編】』(渡辺明,浅川書房,2005)などにも同じ戦法が載っているが、基本形に微妙な違いがある(▲5八金右と△6四歩の交換があるなど)ので、チェックしておきたい。 (3)の対ミレニアムは、▲6六角から組むパターンと▲7七角から組むパターンに分かれているが、定跡というよりは「実戦解説が2譜」という感じである。完全に組ませる前に細かい牽制していく動きや、完全に組ませた場合の終盤戦は、対ミレニアムが苦手な人にはある程度参考になるだろう。 基本的に、各戦法の要点は各節の最後のページに(こっそり)載っているので、まずそこから読んでおくとよいかもしれない。 なお、第1章は居飛車の仕掛けは5種類あるが、目次には何も書かれていないし、各節の冒頭には本文のフォントサイズとほぼ同じ大きさの見出ししかないので、目的の戦法を探すだけでも大変。自分で付箋紙を貼っておいたほうがいいだろう。第2章の方は、各戦法ごとに小口に線が引いてあるので比較的探しやすい。(2008Oct09) |