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■必殺!19手定跡 英春流〈かまいたち〉戦法 居飛車編

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必殺!19手定跡 英春流〈かまいたち〉戦法 居飛車編
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裏表紙
三一将棋シリーズ
必殺!19手定跡
英春流〈かまいたち〉戦法 居飛車編
[総合評価] B

難易度:★★★★

図面:見開き2〜4枚
内容:(質)A(量)A
レイアウト:B
解説:B
読みやすさ:B
上級〜有段向き

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【著 者】 鈴木英春
【出版社】 三一書房
発行:1990年4月 ISBN:4-380-90211-0
定価:1,600円 234ページ/19cm


【本の内容】
第1章 必殺19手定跡 英春流の世界
(1)一直線型 (2)左右分断型 (3)横歩取らせ型
80p
第2章 総合戦法への旅立ち 英春流のルーツを探る/居飛車・かまいたちの陣
/△6二銀の発見/総合戦法への旅立ち
66p
第3章 各戦法VS英春流 (1)矢倉 (2)矢倉中飛車 (3)角交換-上 (4)角交換-下
(5)雁木 (6)右玉 (7)飛先交換早繰り銀 (8)飛先交換腰掛銀
(9)ひねり飛車 (10)腰掛銀速攻
80p

◆内容紹介(はじめにより抜粋)
本書では、英春流の世界である「必殺19手定跡」をメインに、そして、どのようにして英春流が完成されたのかを示す「総合戦法への旅立ち」と、持久戦になった場合の「各戦法vs英春流」の三部に分けて紹介しようと思う。


【レビュー】
英春流・対居飛車の解説書。

英春流は、著者の鈴木英春(すずき・えいしゅん)氏が開発したユニーク戦法である。先手番では▲7六歩△○○○▲4八銀、後手番では▲7六歩△6二銀という出だしが特徴。奇襲的な要素もあるが、相手がどのように来ても対応できる「総合戦法」を標榜している。わずかに損な部分もあるようで、プロで指す棋士は少ないが、羽生が若手時代に連採したこともある。

前著『必殺!かまいたち戦法 英春流のすべて』(鈴木英春,三一書房,1988)で記された「英春流・かまいたち戦法」は対振飛車用で、「駒がぶつからないうちに相手を斬っている」のが名前の由来。一方、本書の「19手定跡」は、英春流の対居飛車での序盤定跡で、初手から10手前後で激しく駒の取り合いが行われ、3つの主要変化ではいずれも19手で優勢になる、というところから名付けられている。


各章の内容と、対居飛車の英春流の概要をザッと紹介していこう。

第1章は、序盤の19手で優劣が決まる激しい展開。相手が居飛車で、序盤に飛先交換をしてきた場合のみ成立する。基本定跡的な部分は冒頭の3pだけで、あとは実戦解説(16局、総譜)になっている。



チャートを見れば分かるとおり、「一直線型」と「左右分断型」では、ゴキゲン中飛車の超急戦とよく似た展開になる。なお、本書の出版当時はゴキゲン中飛車は存在しなかったが、似た筋を解説した本はもっと以前からある(例えば『横歩取り空中戦法』(内藤国雄,弘文社,1974)など)。

また、「横歩取らせ型」では、一歩損を甘受して手得を主張する指し方。後手が横歩を取って飛を8二に戻す間に、先手側は一歩の代償と引き換えに7手の手得になる。


第2章は、英春流のルーツについて。著者は奨励会時代には英春流を指しておらず、退会後に開発したとのこと。

19手定跡の類似変化は『将棋大観(上巻)』(木村義雄,誠文堂新光社,1947)に記されている。このことは、著者自身も執筆時に初めて気がついたらしい。修行時代に読んだ『将棋大観』から知らず知らずのうちに吸収していたようだ。なお、将棋漫画『5五の龍』(つのだじろう,中央公論社,1978〜80)によれば、奨励会員は香落の勉強が必要なので、『将棋大観』を読み込むのはデフォだった。

本章での実戦例は3局で、英春流のプロトタイプのもの。また、読み物部分が多く、特に「総合戦法への旅立ち」は、著者が奨励会を退会してから英春流を完成するまでのミニ戦記で、棋譜・図面はない。英春流という戦法自体に興味がある人は、読み飛ばしてもよいかと思う。ただし、「居飛車・かまいたちの陣」は英春流のコツが書かれているので、一応読んでおきたい。

第3章は、対居飛車で19手定跡にならず、穏やかな展開になったときの実戦解説で、全10局。相手の形は様々であり、英春流側も臨機応変に対応する必要があるが、目指す形は基本的に同じ。

 先手:▲7六歩〜▲4八銀〜▲5六歩〜▲5七銀〜▲7八金〜▲6九玉〜菊水矢倉〜四手角
 後手:△6二銀〜△3二金〜△4一玉(状況に応じて△5四歩〜△5三銀)〜菊水矢倉〜四手角

 ・相手の飛先交換は防がなくてよい。
 ・囲いは菊水矢倉が基本だが、できれば銀冠への組み替えを狙っていく。
 ・▲5七銀(△5三銀)が序盤の守備の要で、駒組み完了後には攻めの尖兵になる。
 ・角交換時の△4九角(▲6一角)には注意。菊水矢倉の7六(3四)は弱点になる。実戦例3、4を参照。



指し始め図が前のページにあるので、脳内ではちょっと読みづらいが、実際に棋譜並べをしてみたらあまり気にならなかった。全29局を並べてみたところ、魅力も難しい点もあって、とても面白い戦法だと思う。わたしが感じた「英春流の特徴」を列記してみよう。

 ・自陣の形はだいたい同じで、序盤は指しやすい。
 ・相手にとっては経験の乏しい形になる。
 ・19手定跡にハマれば、楽に勝ちやすい。
 ・超急戦以外は定跡には頼れないので、卓越した大局観が必要。
 →実は「アマ向き」ではなく、「プロで修行した人が使えるアマ向きの戦法」なのでは。
 ・明快な狙いがあるわけではないので、戦機をつかむ力が必要。


自分自身は、「ちょっと使いこなすのはキビしいかな…」と思った。逆に、本書を読んだことで基礎知識が入ったので、相手が英春流をやってきても、「何だこれは?!」と頭に血が上ったり、大局観が狂ったりすることはなくなるだろう。

悔しい負けをなくすために読んでおきたい本だ。もちろん、英春流使いには必修の一冊。


※誤字・誤植(第1版第1冊で確認):
p30 ×「痛痕の逆転負け」 ○「痛恨の逆転負け」
p36棋譜 ×「▲5三桂成△同銀」 ○「▲5三桂成△同金
p70 ×?「英春流が独断の戦法であるならば」 ○「英春流が独善の戦法であるならば」
p152 ×「注告を受けた」 ○「忠告を受けた」



【関連書籍】

[ジャンル] 
ユニーク戦法
[シリーズ] 
三一将棋シリーズ
[著者] 
鈴木英春
[発行年] 
1990年

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