zoom |
羽生善治のみるみる強くなる 将棋 終盤の勝ち方 入門 |
[総合評価] A 難易度:★☆ 図面:見開き4〜6枚 内容:(質)A(量)B レイアウト:A 解説:A 読みやすさ:A 初心〜初級向き |
||
【監 修】 羽生善治 | ||||
【出版社】 池田書店 | ||||
発行:2010年6月 | ISBN:978-4-262-10146-0 | |||
定価:998円(5%税込) | 208ページ/21cm |
【本の内容】 | ||||||||||||||||||||||||||||
【構成・文】 上地隆蔵 【イラスト】 角愼作
・【コラム】ウソかホントか!?
将棋よもやま話 |
【レビュー】 |
将棋の終盤を初心者向けに解説した本。「羽生善治のみるみる強くなる」シリーズの3冊目。 いきなり目から鱗だったのがプロローグ。初心者は決着のつけ方が分からないことを「エンドレス状態」として3パターン紹介している。 (1)王手ばかりでエンドレス (2)駒をため込んでばかりでエンドレス (3)成駒をつくってばかりでエンドレス 確かに自分が初心者のころはそうだったわー。もうすっかり忘れていたけど。 そして現在、わが将棋部には2人の初心者がいる。彼らは中国将棋(象棋、シャンチー)の経験者なので駒の取り合いの力はかなりあるが、詰みに意識が向いていないため(さらに歩を上手く使えないため)、中段で延々と駒を取り合っていた。本書で紹介している3パターンとは少し違うが、象棋の特徴なのかもしれない。とにかく、詰みに向かうという概念を理解しないと、将棋は終わらないのである。 将棋の決着はもちろん「詰み」であり、詰みのために「寄せ」「詰めろ」「必至」がある、ということを丁寧に解説している。そして[詰み]>[必至]>[詰めろ・寄せ]であることを理解できるように、順番に解説していく。これまで読んだ入門書では、このことを上手く説明できている本は意外と多くなかったと思う。 第1章〜第4章では、それぞれのテクニックについて詳しく解説。 第1章は「詰み」について。 (1)詰みの定義 (2)詰みか詰みでないかの練習 (3)練習問題 「王手がかかっているかどうか」から教えるのは初めて見た気がする。確かに、初心者は王手がかかっているかどうかの認識が怪しいことがあり、なるほどと思った。練習問題は駒別の一手詰め6問で、各2pを使って玉の周り8マスを全て詳しく検証していく。 第2章は「詰めろ」について。必至をかけるためには、まず詰めろを知らなければならない。本書でも「詰めろなくして詰みなし」(p61)と述べている。また、詰めろは強力な手ではあるが、単なる詰めろ(必至ではない)は決め手にならないことにもちゃんと触れている。 第3章は「必至」について。 (1)必至と詰めろの違い (2)必至のパターン3つ(1.数の優位、2.複数の詰め筋、3.受け場なし) (3)練習問題 必至とは、「受けの利かない詰めろ」である。初心者にはなかなか難しいテクニックではあるが、必須テクでもある。必至を意識して指すだけで、終盤力は飛躍的に伸びると思っても良い。練習問題は各2pで詳しく解説している。 第4章は「寄せ」について。 (1)寄せの考え方4つ(1.玉を狭いほうへ追い込む、2.終盤は駒の損得よりスピード、3.守備駒を狙う、4.寄せは俗手で) (2)囲い崩しの例(矢倉・美濃・穴熊) 寄せの定義は難しいが、詰みや必至を狙う前段階と思えばよい。 第5章は「受け」について。 (1)詰めろを消す受け (2)必至&寄せを未然に受ける 初心者向けの終盤本に受けが書いてあるのは珍しいが、将棋は自分が攻めるばかりではないので、今まであまり載ってなかった事のほうが不思議なのかも。「攻める側と受ける側では視界が違う」(p145)という表現にはうならされた。 第6章は総合力問題。詰め、詰めろ、必至、寄せ、受けのどれを使うかを部分図の問題で問う。どのテクニックを使うかをヒントなしでたどり着くことの大切さを示唆している。優先度は[詰め]>[必至]>[寄せor詰めろ]であるが、最後には少し意地悪な問題もある。問題としては意地悪ではあるが、終盤を指しこなす上で非常に重要な内容が含まれているので、ぜひ自分なりにトライして、解説をしっかり読み込んでほしい。 実は、第6章の問題は私も1問だけ間違えた。パッと見で必至をかけたら、実は詰んでいたというもの。もちろん詰将棋としてみれば有段者なら1秒の問題である。巷には詰将棋本や必至本はたくさんあるが、こういう「詰めか、必至か、寄せか(または駒得か)」という本はもっとあってもよいのではないだろうか。(※それがMYCOM系次の一手問題集なのかもしれないが、部分図問題でベストを問う問題集というのはあまり見たことがない) 本書は、全体的に、編集の工夫で読みやすくなっている。 ・2色刷り ・前に出たテクニックを応用する場合、解説の中に前回の解説の該当ページが書かれている。(←これは助かります!) ・大事な話は丸ゴシック太字で強調。 これまでのシリーズ同様、「読みやすくて内容も良い」という良書である。本書も将棋部のロッカーに入れておこうと思う。(2010Jun19) ※誤植・誤字(初版第1刷で確認) p28イラスト ×「A詰め、必至」 ○「A詰めろ、必至」 ※みつなりさんより、誤植のご指摘(2013年9月25日発行版) p104の必至問題(右図)の解説: ×「この問題で▲1一飛成の捨て駒が見えたら、かなり鋭い攻めの持ち主です。以下△同玉▲同馬と進み、次に▲2二銀△1二玉▲1三香の詰みを狙っています。しかし、▲3二同馬の局面で、△2一銀と受けられると、やはり詰み筋が消えてしまいます」 ○「…以下△同玉▲3二馬と進み、次に▲2二銀△1二玉▲1三香の詰みを狙っています。しかし、▲3二馬の局面で…」 |