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小学生将棋名人戦 公式ガイドブック | [総合評価] B 難易度:★★★☆ 図面:随時 内容:(質)A(量)A レイアウト:A 読みやすさ:A 上級〜有段向き 小学生名人戦に参加したい小学生、または子どもを小学生名人に参加させたい人向け |
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【著 者】 | ||||
【出版社】 小学館 | ||||
発行:2008年3月 | ISBN:978-4-09-227119-7 | |||
定価:1,260円(5%税込) | 228ページ/19cm |
【本の内容】 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
・【付録】(1)プロ棋士について=10p
(2)小学生将棋名人リスト=4p |
【レビュー】 |
名前のとおり、小学生将棋名人戦のガイドブック。 「小学生名人戦」──。1976年から始まった小学生の将棋全国大会である。みなさんご承知のとおり、将棋は頭脳競技なので、大人と子どもの体格差が明確に出るスポーツとは違い、小学生でも相当レベルは高い。そして、いつのころからか「小学生名人戦はプロへの登竜門」と言われるようになった。歴代優勝者一覧(日本将棋連盟)を見ると、特に羽生が優勝した1982年から田村が優勝した1987年までは、現在活躍中のプロ棋士がずらりと並ぶ。 当初は東京のみでの開催だったため、地方在住者はよほど腕に自信がなければ(最低でもアマ三段くらいか)参加もかなわなかった。しかし、1998年から各都道府県での大会が行われ、県小学生名人が東日本と西日本に分かれて各2名の代表が選ばれ、計4名がNHKスタジオで決勝トーナメントを行う形式になっている。県大会の導入により、ハードルがかなり下がり、2007年の参加者は1709人にもなっている。(総参加者が3〜4倍増えた) 本書は、小学生名人戦についてさまざまな角度からまとめた初のガイドブックである。 棋譜以外のすべての漢字はルビ付きで、小学生なら誰でも読めるようになっている。写真や図、挿絵もふんだんに使われており、読みやすい。内容はバラエティに富んでもりだくさんなので、一つずつ紹介していこう。 第1章と第7章は羽生二冠と渡辺竜王のインタビュー。小学生名人戦の思い出と、これから出場しようとする小学生へのアドバイス・メッセージなど。実は、小学生名人戦に出場経験があるプロ棋士はたくさんいるが、現役タイトルホルダーで小学生名人の経験があるのはこの二人だけである。渡辺の「(みんなが得意教科は算数だというので)本当は国語が好きだったのに(意外!)僕も『算数です』と答えちゃった。目立たないようにと思って」には笑わせてもらった。 第2章は小学生名人戦の大会システムについて。県大会→東西ブロック→決勝4名の流れを解説。 第4章はタイトルと内容が少しずれていて、現役プロ棋士にへのアンケートをまとめたもの。奨励会や勉強法、大会での心構えなどを列挙。一部のデータは円グラフでまとめられている。また。第5章も似たような構成で、こちらは現役奨励会員へのアンケートをまとめたもの。奨励会員の生の声が聞ける。挿絵は意味不明なので要らないと思う。 第3章と第8章は、プロ棋士が出題する次の一手問題。レベルは二段〜四段くらいか。問題図側にはヒントと略歴、解答図側には解説と400字程度の小学生名人戦出場エピソード(コラム)。田村の「小学生のみなさんには、『本など読んでないで、指して、指して、指しまくれ!』とアドバイスしたいですね。」には倒れそうになった(笑)。小学館もよく載せたなぁ。 第6章は、大会で頻出だと思われる戦法の解説。構成・文は古作登。難易度は初段〜二段くらいか。石田流、ゴキゲン中飛車、相矢倉は分かるけど、相掛かりってあるのかなぁ。相掛かりで後手番を持つ人ってアマでは相当少ないと思われるのだが。 第9章は将棋と頭の良さの関係について。陰山メソッドで知られる陰山英男のインタビューと、片上五段(東大卒)×廣瀬五段(早大在学中)の対談。テスト勉強について、廣瀬は一夜漬け(徹夜してでも詰め込む)で、片上が寝る(諦めて寝るのではなく、睡眠時間を確保する)というのが印象的。 第10章は将棋関係のクイズ。以前紹介した『将棋パズル』やIQサプリのような問題が計26問。はっきり言って必要性が不明。Q24(「玉」という漢字をひとふで書きしてください。)が普通にできた人はすごいと思う。 第11章は、小学生名人戦熱戦譜。すべて現役棋士がらみで、1局4p。一応、総譜と簡単な解説、写真付き。 第12章は代表的な道場の紹介、将棋ソフト、ネット対局場、他の小学生大会の紹介など。 全体的に棋士の写真がたくさん使われているが、「いい表情が撮れてるな」と思った。連盟の棋士紹介の写真と入れ替えたらどうだろうか。 一部余計なコンテンツもあるが、小学生名人戦に関することはほぼ過不足なく載っている。県大会の導入以来、参加ハードルは下がっているので、級位者でも腕試しで気軽に参加すると良い。その前に、一度本書に目を通しておくことをオススメする。人生は長いが、小学生名人戦に参加できるチャンスは限られているのだから、読んでおいたほうが楽しめるというものだ。子どもを参加させたいと思っている親御さんもお忘れなきよう。(2008Jun05) ※なぜ小学館から発行されているのかというと、2008年からメインスポンサーが小学館になり、大会名が「小学館杯小学生名人戦」になったから。以前(1998〜2007)は「公文杯」だった。 |