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■四間飛車上達法

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四間飛車上達法
zoom
最強将棋レクチャーブックス
四間飛車上達法
[総合評価] A

難易度:★★★☆

図面:見開き4枚
(図面は2色刷り)
内容:(質)S(量)B
レイアウト:A
解説:S
読みやすさ:A
上級〜有段向き

【著 者】 藤井猛
【出版社】 浅川書房
発行:2017年12月 ISBN:978-4-86137-048-9
定価:1,512円(8%税込) 232ページ/19cm


【本の内容】
第1章 対抗形とは何か──駒組みの基本と隠された仕組み
第2章 攻めについて――6七銀型と棒銀
第3章 一手争いについて――7八銀型と右銀急戦
第4章 主導権をにぎったら――持久戦と6六銀型
第5章 攻めエリアを拡大せよ――5六銀型と藤井システム

◆内容紹介
四間飛車は入門者に適した戦法と言われます。ところが、形や手順を覚えても、いざ実戦では「何をすればいいかわからない」と途方に暮れることはありませんか。形や手順は覚えても、その深い意味を理解しなければ、実戦ではなかなか応用できません。

たとえば「待つ」とはどういうことなのでしょう? 「振り飛車はここで▲4六歩と突いて待つ」という表現は定跡書などでよく出てきます。でも、▲5六歩と突いて待つこともあれば、▲9八香と待つこともあります。待ってはいけないケースも、もちろんあります。
あるいは逆に、居飛車が仕掛けるとき、すぐに攻めるか、もう少し待つか、という問題も出てきます。「待つ」というのはとても深い概念で、初めて定跡に出会って、すぐに腑に落ちるように理解するのは大変です。

本書は、四間飛車の大家である藤井九段が、振り飛車(四間飛車)という戦法について一から説いた、渾身の一冊です。形や手順を丸覚えするのではなく、将棋を指すにあたって軸となる考え方が養えます。「待つ」ということもそのひとつで、ファンにとってなかなか理解しづらいポイントについて、じっくり、ていねいに語っていきます。これまで四間飛車の本を読んだことはある、でも全部は理解できなかった、という方には、特におすすめです。

この本には、将棋本には珍しく、聞き手が登場します。この聞き手が藤井九段にさまざまな疑問を投げかけ、それに藤井九段が答える中で、藤井理論が展開されていきます。対話形式の文章は読み物のように気軽に読み進めることができ、その中で自然と大事な考え方が身についていきます。

本書の内容は基礎から始まりますが、あまり聞いたことのないような考え方が次から次へと出てきます。基本的なことに潜む本質が浮かび上がってくるようです。その過程は有段者(四段レベル)にも多くの発見を与えるでしょう。これから振り飛車を学ぶ方はもちろん、これまで「なんとなく」で振り飛車を指してきた方にもおすすめです。

第1章では主に駒組みの基本を、第2章からは急戦と持久戦それぞれについて、いくつかの題材から基本的な攻防を学びます。最後は、藤井システムの原型となった積極的な指し方についてもカバーしました。

本書をマスターした方は、序盤から終盤まで、急戦に対しても持久戦に対しても、一本の軸ができているはずです。この軸さえしっかりしていれば、新しい知識や情報が入ってきても大丈夫、ちゃんと咀嚼できます。あとはその軸を太くし、どんどん磨きをかけていけばいい。伸び悩んでいる方、行き詰まりを感じている方は、ぜひ本書を読み、そのもやもやとした感じを吹っ飛ばしてください!


【レビュー】
四間飛車の考え方をメインに解説した本。

四間飛車で有段者ともなれば、急戦や持久戦の定跡をある程度覚え、どの戦型でも序盤・中盤・終盤まである程度指せるようになっているはず。ただし、定跡から少し外れると、途端に方向性に迷う人も多いだろう。

また、「序盤の駒組みが簡単」という理由で初心者にオススメされやすい四間飛車だが、「組んだ後、何を狙いに指せばよいか分からない」という級位者も多い。

本書は、そういった人のために、藤井の主観に基づく四間飛車理論を言語化したものである。これにより、未知の局面でも「どのような方針で指していけばよいか」が掴めるようになっている。


本書の進行は、講義形式。聞き手との対談風で話が進められていく。聞き手はおそらくアマ高段者だが、初段〜三段くらいを想定した聞き役になっている。

あるテーマに対して、まず一般的な考えや従来の考え方を示し、次に藤井の考えを言語化して伝えていく。さらに指し手や盤面で具体例を示し、最後に藤井の実戦例を解説してく。

盤面は2色刷りで見やすく、本文は重要な部分は強めの太ゴシックで強調されている。



各章の内容を、箇条書きで簡単に紹介していこう。わたしのコメントは緑字で書きます。



第1章 「対抗形とは何か──駒組みの基本と隠された仕組み」
・振り飛車は損なのか?
 ⇒「振り飛車戦法は美濃囲い戦法である」 (この考え方は初見ならビックリすると思います)
・▲7八銀より先に▲6八飛とするのはなぜか?
・玉側の端歩は?
・舟囲いの良さ (振り飛車本では、「美濃囲いは堅い、船囲いは薄い」ということが書かれていることが多いが、藤井は舟囲いの良さも認めている)
・振り飛車に向く人、居飛車に向く人
・左銀の位置で振り飛車の性質が変わる



第2章 「攻めについて──6七銀型と棒銀」
・攻めるとは、交換して持ち駒を増やすこと (わたしはこのように書かれた本は初めて見た。「駒落ちではどんどん駒を交換するのがよい」というのは見たことがあるが)
・▲7八銀と▲6七銀
・▲4六歩か、▲5六歩か
・攻めエリアと守りエリアでは考え方が違う (「攻めエリア、守りエリア」は、本書でたびたび登場する。よくある「形勢判断4要素(駒の損得・駒の働き・玉の堅さ・手番)」とは少し異なる思想である)
・相手の駒が遊ぶなら飛角交換でよい

[題材] 居飛車△4二銀型棒銀〔右図〕がメイン (便宜上先後逆、実際は▲6八銀型棒銀)
・最善でない攻めもやってみる (それで学ぶことがある)
・美濃の左金は臨機応変に動かしてよい (守り駒にこだわらない)
・「(互いに)簡単に持駒化させない」のが棒銀定跡 (この発想はなかった。目からウロコ)

[実戦]▲青野△藤井、2015.12、▲6八銀型棒銀vs△四間飛車
・「捌く」とは

[題材]△4二銀型-6五歩早仕掛け



第3章 「一手争いについて──7八銀型と右銀急戦」
・美濃囲いvs舟囲いの寄せ合い (本章は中終盤の講座がメイン。やや難易度が高いので、あとで復習するのがオススメ)
・「定跡知識と形勢判断能力と終盤力は密接にリンクしている」(p84) (定跡の知識は決して無駄にはなりませんよ!)

[題材] ▲7八銀型四間飛車vs△右6四銀 パート1△6四銀〜△7五歩〔右図〕 (便宜上先後逆)
・ただ角交換するだけなら居飛車が得 (「なんでも▲6五歩戦法」に対して警鐘)
→歩がぶつかった瞬間が角交換の好機
・居飛車の5筋の歩が消えると、居飛車が捌きやすい (これは意識してなかった!)
・「対抗形では玉が裸になったらまずダメ」 (中田先生からは「美濃囲いは王手がかかったらまずダメ」という感じで教わりました)
・簡単な詰めろは後手を引きやすい

[題材] ▲7八銀型四間飛車vs△右6四銀 パート2△7五歩〜△6四銀〔右図〕
・美濃の急所、船囲いの急所を踏まえて終盤講座
・攻防手を逃さない
・「ひとり終盤状態」は避ける
・攻め合いでは、一直線の切り合いから読む
・美濃囲いの(堅さに対して)過信は禁物
・しかし手つかずの美濃囲いは堅い



第4章 「主導権を握ったら──持久戦と6六銀型」
・持久戦では主導権が振り飛車に移る (居飛車が玉を固めるのを優先すると手数がかかるため)

[題材] 玉頭位取り (近年ではアマでもなかなか見かけないが、持久戦の基本とエッセンスが詰まっている)
・持久戦では共通の考え方がある
・将来の危険を早めに察知する
6六銀型が作れれば攻め手を確保できる (このあと何度も出てきます)

〔右図は玉頭位取りと▲6六銀型の一例〕

・角道を開けるタイミングに注意 (p155から、▲6六銀型を作るための練習問題あり)
・高美濃に組み替えると飛が5筋に使える (漫然と組み替えていた人は、ここを意識するとよい)
・美濃の左金は臨機応変、攻めにも使う (第2章でも出ましたね)
・失敗は成功のもと (失敗手順を考えるのは無駄にはならない。藤井でさえも、講座中に読みを修正していくことがある(p153など))

[実戦] ▲西川慶二△藤井、2000.01、▲玉頭位取り△四間飛車
・持久戦は玉型がいろいろあるが、攻撃陣はだいたい同じ (これもあまり意識したことはなかったが、確かにそうだ)
・攻めエリアと守りエリアで考えてみる
[題材] ▲6六銀型vs左美濃 (p173〜)
[題材] ▲6六銀型vs居飛穴 (p188〜)
・居飛穴の攻めエリアは広い
持久戦の基本は6六銀型 (鈴木システムの特徴というわけではなかったのね)



第5章 「攻めエリアを拡大せよ──5六銀型と藤井システム」
[題材] 藤井システム(の原型) ▲四間飛車藤井システム△左美濃3一玉型 (近年は3一玉型左美濃が流行。居飛車戦でも)
→あとで△2二玉型になって〔右図〕

・美濃囲いの桂を攻め駒として使う
・▲2五桂で△3三Xに働きかける
 →そのために▲5六銀が準備として必要 (△5五角と出られないように。持久戦の基本は▲6六銀型だと第4章で学んだが、▲5六銀型だと考え方が大きく変わることに留意して読もう)
・(▲5六銀に)△5五歩には▲4七銀引も▲6七銀もある (▲6七銀は2手損のようだが、相手の手を利用して大きく手得する。p217以下は必読)

[実戦] ▲藤井△屋敷、2002.09 ▲四間飛車藤井システム△2二玉型左美濃



最後はバッサリと終わっており、まとめはない。講義形式なので、スムーズに読み進められる分、何度か読み直すことをオススメする。

使われている題材の戦型は、よく定跡書に出てくるものではなく、対四間飛車の初期に指されていたものなど。講座用に用意したものであり、実戦にそのまま出てくるケースは少ないだろう。ただし、その題材で本書で解説された考え方は、多くが別の戦型にも応用が利くものであり、決して無駄にはならない。

むしろ、他書で定跡をしっかり学んだものの、何かいまひとつマスターできずに、「定跡を覚えて将棋が弱くなった」と感じたり、定跡の丸暗記になりがちな人は、本書を読んで目が醒める思いがすることが多いのではないかと思う。

また、三段〜四段以上の人でも、自分の考えを言語化できていない場合は、本書を読んで「あ!こういう風に言えばよいのか!」と感じるだろうと思う。

Aを付けてみたけど、Sだと思う人も多いだろうな。境目です。(2018Jan14)

※誤字・誤植等(初版で確認)
p167上段 ×「▲5五同金△同金に…」 ○「▲5五同銀△同金に…」



【関連書籍】

[ジャンル] 
四間飛車総合
[シリーズ] 
最強将棋レクチャーブックス
[著者] 
藤井猛
[発行年] 
2017年

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