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■令和版 囲いの破り方(マイナビ将棋文庫)

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令和版 囲いの破り方(マイナビ将棋文庫)
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マイナビ将棋文庫
令和版 囲いの破り方
[総合評価]
A

難易度:★★☆
   〜★★★☆

見開き1問
内容:(質)A(量)A
レイアウト:A
解答の裏透け:不明
(電子版では透け無し)
解説:B+
中級〜上級向き

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【著 者】 及川拓馬
【出版社】 マイナビ出版
発行:2019年7月 ISBN:978-4-8399-7033-8
定価:1,447円(8%税込) 384ページ/15cm


【本の内容】
序章 囲いの破り方理想形
第1章 雁木編
第2章 角換わり編
第3章 相掛かり編
第4章 右玉編
第5章 横歩取り編
第6章 矢倉編

・【コラム】3歳の長女

◆内容紹介
本書は、囲い破りの手筋を紹介し大ヒットとなった『全戦型対応!囲いの破り方』(2014.10)の続編です。前著では矢倉、美濃囲い、穴熊、という代表的な3つの囲いを中心に囲い破りの手筋を紹介し大変好評いただきました。

当時はそれで「全戦型対応!」に看板に偽りなしだったのですが、ここ数年の将棋界の激しい変化、特にコンピュータ将棋の新戦法の波によって、これまでの知識だけでは対応できないような戦型や囲いが次々に生み出されています。

雁木、角換わり、相掛かり、右玉、横歩取り、矢倉など、さまざまな戦法においてこれまでは考えられなかったような玉形で戦う形が増えています。そして、これらの新しく生まれた囲いはいずれもバランスを重視したもので「つかみどころがない」のが共通した特長です。よって、この囲い群をどう崩したらいいかわからない、というのが現代将棋を戦う将棋ファンにとって共通の悩みとなっているのではないでしょうか。

本書はその悩みに応える一冊です。現代将棋に頻出する戦型、囲いの破り方の手筋を180個紹介・解説するものです。

及川拓馬六段の優しく丁寧な解説は健在。本書でつかみどころない現代将棋の囲いの破り方をマスターしてください。


【レビュー】
相居飛車の流行形の仕掛け方を次の一手形式で解説した本。

ここ数年は、バランス重視の駒組みが多くなる傾向にあり、囲いもガチガチに固めるよりも、広く構える陣形が多くなっている。従来の囲い破りといえば、矢倉・美濃・穴熊を中心に、しっかりと玉が囲いの中に納まっているものを終盤に崩していくものが多かったが、バランス重視の陣形に対しては、仕掛け自体が囲い崩しに直結していくものが多い。

というわけで、本書は「令和元年(2019年)時点で流行している、バランス重視の陣形に対して、仕掛け方を解説する本」となっている。つまり、「囲い崩しの本」というよりは、「駒組み・仕掛けの本」といえる。(※カテゴリを移動させました)


全体的な構成は次の通り。まず序章で、令和時代(※2019年時点と思ってください)の流行形を紹介し、特に雁木、右玉、▲6七金左型矢倉の特徴と理想的な崩し方を簡単に解説。第1章以降は、囲い別というよりは、戦型別に章を分けてあり、破り方・崩し方、変化、失敗例を次の一手形式で詳しく解説していく。

各章の前半は[部分図]で手筋を解説し、後半は[全体図]を使った問題になる。ただし、バランス重視の戦型では、盤面全体を使った崩し方になることが比較的多いので、[全体図]は単なる実戦問題ではなく、全体(自陣との関係も含めて)を意識した戦い方を学ぶことになる。


各章の内容を簡単に紹介していこう。(※問題内容の記述は私が勝手に付けたものです)



序章は、「囲いの急所と攻め方」。特に近年の相居飛車で価値が見直されて流行している雁木、右玉、▲6七銀左型矢倉(土居矢倉)の特徴と理想的な崩し方を簡単に解説する。

●雁木
・▲4七銀型(新型)雁木と▲5七銀型(旧型)雁木がある。
・バランスが良い。
・玉の位置はいろいろある。(玉の位置によって急所は異なる場合がある)
・2筋はやや弱い。(△雁木の場合)
・守りの桂を攻めに使える反面、端は弱い。

●右玉囲い
・角交換の有無に関わらず使える。
・玉の位置はいろいろある。
・玉が広い。
・金銀2枚の囲いなので、堅さはない。
・玉頭は急所。
・玉飛接近形は弱点でもある。
・7四(桂頭)〜9二(香頭)のラインも急所。

●▲6七金左型矢倉
・昭和初期の陣形が復活。
・土居市太郎(名誉名人)が得意としていた。
・バランス重視。
・2筋は薄い。



第1章は、「雁木」。新型(後手番なら△6三銀型)のバランスの良さが見直され、近年採用が増えた。

No.1〜No.25 部分図
 歩で金銀の連結を外す/棒銀/端攻め/3三へタタキ/スズメ刺し/▲7一角を狙う/▲2二歩で乱す/▲1五桂で2筋突破/▲3七銀からの仕掛け方/角を差し出す/▲3八飛から3筋の歩を切って銀を繰り出す/など

No.26〜No.45 全体図
・基本的に、自陣は▲7九玉型左美濃。一部▲8八銀型もある。
 ▲7一角を狙う/腰掛け銀+右四間飛車/▲3七銀からの仕掛け・応用(形の違いに注意)/3筋を押さえてからの指し方/△6四角の牽制には/など




第2章は、「角換わり」。基本は二枚矢倉で、近年は△4二玉型や△6二金-8一飛型が流行している。

No.46〜No.70 部分図
 銀頭をタタく/▲5六角のライン/△6二金型のスキ/2筋を桂で攻める/▲2二歩のタタキ/▲4五桂速攻/敵陣に角を打つ/▲4一角は二枚矢倉の急所/継ぎ歩/自陣角/端攻め/居玉のスキ/な

No.71〜No.90 全体図
 角換わり腰掛け銀同型(旧型)の仕掛け/△6二金型のスキ/▲4五桂速攻/角の打ち込みからB面攻撃/腰掛け銀同型(新型)の仕掛け/継ぎ歩/▲4五桂の仕掛け/など




第3章は、「相掛かり」。▲引き飛車棒銀は激減し、歩交換のタイミングを遅らせる将棋が急増。空中戦になったり、金銀を押し上げる将棋になったりと、多彩な展開が魅力的なためか、近年は相掛かり愛好家でなくても指す人が増えている。

No.91〜No.95 部分図
 端攻め/角頭のタタキ/端攻め+▲2一角/桂頭を狙う

No.96〜No.130 全体図
 5手爆弾への対応/横歩を狙って揺さぶる/▲2五飛型で▲3五歩/中原流▲3七銀/3筋の歩を詰めたとき/棒銀のチャンスを見逃さない/▲2六飛-4八金型の仕掛け/3筋の横歩取らせ/一直線棒銀の対策/飛を閉じ込める/中段飛車+▲7七桂で飛をぶつける/自陣にスキがなければ飛車切り/相手の歩の裏へ飛を回る/4筋の横歩取らせ/飛車切りで金を入手して△2八角を▲1八金で逮捕する/6二金型のスキ/▲5五角の筋/ヒネリ飛車△1三角は誘いのスキか真のスキか/5三にスキがあったら/棒銀の逆用/など




第4章は、「右玉」。昔から右玉はあり、特にアマでは「右玉党」が存在していたが、ユニーク戦法扱いの期間が長かった。近年ではバランス型陣形の再考により、右玉の価値がかなり上昇して、プロでも頻繁に見かけるようになった。

No.131〜No.140 部分図
 歩で玉頭を崩す/玉を薄くする/玉飛接近の弱点を衝く/送りの手筋/▲8五桂△同桂▲8六歩と歩を取ってから桂を取り返す/対右玉の端攻め/など

No.141〜No.150 全体図
 3筋桂頭攻め/自陣角▲5六角/一段飛車の利きがない瞬間/一段飛車を強制移動/地下鉄飛車/飛が向かい合ったら/角不換型右玉の打開/振り飛車から右玉/など




第5章は、「横歩取り」。近年は△中原囲いは少なめで、青野流や勇気流に対応した陣形をメインに扱っている。

No.151〜No.158 部分図
 ▲2一角の筋/3筋の飛と▲2二X/垂れ歩▲2三歩/金銀の頭をタタく/垂れ歩▲8三歩/▲5三桂成or不成/など

No.159〜No.170 全体図
 ▲2二歩のタタキ/歩を成り捨てて乱す/2筋の連打の歩/両桂跳ね/王手飛車で切り返す/王手で切り返す/詰めろで駒を取る/飛を詰ます/中段で飛を対向させて素抜きを狙う/両取りの前に味付け/など




第6章は、「▲6七金左型矢倉」。通常の矢倉囲いは▲6七金右だが、▲6七金左〜▲7八玉という陣形が選択肢になってきた。中央が厚くて自陣全体のバランスを重視している。まだまだこれから発展しそうな陣形のためか、問題数は少なめ。また、最後の方の5問は矢倉戦ではあるが、▲6七金左型矢倉とは無関係

No.171 部分図
 2筋が薄い

No.172〜No.175 全体図(▲6七金左型矢倉)
 2筋が薄い/4筋からシンプルな仕掛け/など

No.176〜No.180 全体図(その他の矢倉系戦法)
 ▲4五桂単騎速攻/▲早繰り銀/▲4八金+2九飛型+腰掛け銀/▲5七銀右型急戦/など




〔総評〕
従来の金銀3枚のしっかりした囲いがなくなったわけではないが、新しい流行陣形への対応の引き出しはたくさん持っていたいところ。定跡書・戦術書だと戦型別に何冊も必要となるが、本書であれば相居飛車の流行形はほぼ網羅しており、一冊で済ませられる。ただし、当然ながら「広く浅く」である点には注意。

最新のプロ将棋によく現れる攻め筋がたくさん紹介されているので、「プロの相居飛車が何を狙って仕掛けているのかよく分からない」という方にもオススメ。

ちょっと残念だったのは、「令和版 囲いの破り方」と銘打ってあるのに、流行中の囲いである「エルモ囲い」や「ミレニアム」(ほぼ20年ぶりに復権している)はノータッチだったこと。このタイトルだと、期待しちゃうじゃないですか(笑) よって、本書は「令和版 囲いの破り方 相居飛車編」だと思ってください。(「振り飛車編」が出るかどうかは知りません)


※誤字・誤植等(初版第1刷にて確認):
p151ヒント ×「▲4五桂に△4四銀と引いて」 ○「▲4五桂に△4二銀と引いて」



【関連書籍】

[ジャンル] 仕掛けの手筋 寄せ・囲い崩しの本
[シリーズ] マイナビ将棋文庫
[著者] 及川拓馬
[発行年] 2019年

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