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■超攻撃的振り飛車 新生・角頭歩戦法

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超攻撃的振り飛車 新生・角頭歩戦法
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マイナビ将棋BOOKS
超攻撃的振り飛車 新生・角頭歩戦法
[総合評価]
A

難易度:★★★★

図面:見開き4枚
内容:(質)A(量)A
レイアウト:A
解説:A
読みやすさ:A
上級〜有段者向き

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【著 者】 西川和宏
【出版社】 マイナビ出版
発行:2017年11月 ISBN:978-4-8399-6276-0
定価:1,663円(8%税込) 216ページ/19cm


【本の内容】
序章 角頭歩戦法の概要   8p
第1章 ▲2五歩急戦 第1節 角交換後△2二飛
第2節 角交換後△3三桂
44p
第2章 △5四歩型急戦 第1節 ▲6八玉型
第2節 9筋突き合い後の▲2五歩
第3節 ▲7八金型
32p
第3章 持久戦編 第1節 ▲4八銀から持久戦
第2節 ▲7七角の自陣角から持久戦
第3節 ▲8八同玉の変化
第4節 ▲9五歩型
第5節 角交換拒否型
56p
第4章 先手角頭歩突き戦法 第1節 3手目▲8六歩
第2節 3手目▲1六歩
第3節 後手角頭歩VS角交換
14p
第5章  実戦編 第1局 島本亮五段戦
第2局 大石直嗣六段戦
第3局 北島忠雄七段戦
第4局 佐藤秀司七段戦
第5局 森信雄七段戦
第6局 安用寺孝功六段戦
56p

・【コラム】(1)関西将棋会館棋士室 (2)10秒将棋@ (3)10秒将棋A (4)負けた後の過ごし方

◆内容紹介
本書は、自ら角頭の歩を突いて後手番ながら積極的に攻めていく、斬新な振り飛車の序盤戦術を西川和宏六段が解説したものです。

角頭歩戦法自体は古くから指されていますが、それをより洗練させ、現代将棋にマッチさせました。

ただの奇襲ではない奥深い攻防を味わってみてください。


【レビュー】
角頭歩戦法の戦術書。

かつての角頭歩戦法は、▲7六歩△3四歩と角道を開け合った後に▲8六歩!と突く奇襲戦法で、米長邦雄がよく指して広め、書籍(『角頭歩戦法』)も出ている。非常に面白い筋がたくさん出てくる戦法ではあるが、△4四歩と角交換を拒否されると先手の方が駒組みに苦労するとされ、プロでは長く消えた戦法となっていた。

それが角交換振り飛車の時代を経て、考え方が変わるとともに、新しい工夫が施されて、「奇襲・挑発ではない後手番の戦術」として通用する作戦として復活してきたのである。

本書では、後手番での新しい工夫で生まれ変わった角頭歩戦法をメインに、先手番での角頭歩戦法の補足を含めて解説していく。


本書の内容をチャートを添えながら紹介していこう。


序章は、「角頭歩戦法の概要」
角頭歩戦法のポイントを簡単に紹介する章となっている。本格的な解説は、後の各章にて。

・初手より▲7六歩△3四歩▲2六歩に△2四歩!(右図)が△角頭歩戦法の出だし。
・すぐ▲2五歩には、角交換して飛交換を迫る。(⇒第1章)
・▲6八玉△5四歩と一呼吸おいてからの▲2五歩にも、角交換して飛をぶつける。△5四歩は▲6五角の筋に備えている。(⇒第2章)
・▲6八玉△5四歩▲7八玉には、角交換して▲2六歩vs△2四歩の形の向かい飛車にして持久戦にする。(⇒第3章)
・低い美濃囲いで飛交換を目指す。
・先手が△2五歩の仕掛けを警戒した駒組みでも、後手は飛を動かしやすい。
・角交換を避ける▲6六歩には、△4四角が本書の推奨。△3三桂の余地を残せる。ただし細心の注意が必要となる。(⇒第3章)




第1章は、「▲2五歩急戦」
△角頭歩戦法に対し、先手は当然▲2五歩と行きたい。そのタイミングは5通りある。もちろん、後手はすべてに対策を持っている。本章では、5手目に▲2五歩と突く展開を解説する。

(1)角交換後△2二飛
・5手目にすぐに▲2五歩としてきた場合、△同歩▲同飛に△8八角成▲同銀と角交換して△2二飛とぶつける。
・▲同飛成は、互いに飛角歩を持つが、後手の方が良い陣形にしやすい。
・▲2四歩は、乱戦になりやすく、非常に難解ではあるが、「先手が単調な攻めになるのに対して後手は技を掛けやすく、うまく指せば後手がやれる」(p29)との見解。
・▲2三歩は、△4二飛▲7七銀△1四角以下、局面を収めれば後手まずまず。


(2)角交換後△3三桂
・すぐの▲2五歩に、△同歩▲同飛△8八角成▲同銀に△3三桂もある。
・面白い変化ではあるが、後手の苦労も多そうで、本書では第1節の△2二飛の方を推奨。




第2章は、「△5四歩型急戦」
先手が5手目に▲2五歩を見送り、何か一手指して、後手が6手目△5四歩と突いてから、▲2五歩と仕掛けてくる形を解説する。

(1)▲6八玉型
・△2四歩に▲6八玉△5四歩の交換を入れてから▲2五歩と仕掛けてくる形。
・△5四歩は▲6五角に備えており、「新生角頭歩戦法」のコアとなる一手。(※この手法は、のちに△ダイレクト向かい飛車にも取り入れられた)


(2)9筋突き合い後の▲2五歩
・△2四歩▲6八玉△5四歩に、9筋の歩を突き合ってから▲2五歩と仕掛けてくる形。
・飛交換になったとき、▲9五歩△同歩▲9二歩△同香▲9一飛が先手の狙い筋。角交換振り飛車系ではよく出てくる筋。
・▲9五歩をいったん無視して△3三角が面白い。角を合わせて9筋を同様に攻められるが、再度の角交換で△3三銀型になるのがミソ。△2二龍と引いて受ける余地ができる。
・ただし、ゆっくり攻められると、後手は駒損で自信がない。
・よって、9筋の突き合いを入れるのは後手にとってリスキー。9筋の位は諦めよう。
⇒以下の展開は、第3章第4節にて。


(3)▲7八金型
・8八にヒモを付けて、角交換に強くする狙い。
・一瞬激しくなったあと、駒組みに戻りがちで、バランスが取れている。




第3章は、「持久戦編」
先手が▲2五歩と仕掛けずに▲7八玉とすれば、△8八角成〜△2二飛と2筋を受けて、角交換向かい飛車の持久戦になる。

・2筋の歩が対抗し、左銀が中央に使えているのが、通常の角交換向かい飛車と異なるところ。

(1)▲4八銀から持久戦
・先手が無策だと、好機に△2五歩から飛交換を狙える。
・慎重な駒組みでも、4筋から仕掛けの権利を得て、後手が十分戦える。


(2)▲7七角の自陣角から持久戦
・▲7七角で後手の駒組みを牽制する作戦。
・後手は△3三角と打ち合って、もう一度角交換しておく。
・後手から見て手損になるが、後手は千日手歓迎で先手からの打開を待つ。


(3)▲8八同玉の変化
・角交換に▲8八同玉と取る作戦。玉のコビンが開いているが、堅く囲いやすいのが先手の狙い。
・後手は△2二飛だと、第2節の展開より損なので、先に△3三桂とする。
・▲2三角or▲5三角が怖いが、どちらも対策できている。


(4)▲9五歩型
・第2章第2節で、9筋の突き合い後手リスキーだったため、9筋を受けずに角交換〜向かい飛車〜▲7七角△3三角の打ち合い〜▲9五歩となる。
・後手は9筋を圧迫されているので、穴熊を目指して持久戦にする。


(5)角交換拒否型
・△5四歩に▲6六歩と角交換を拒否する作戦。(※かつて、▲角頭歩戦法には△4四歩の角交換拒否が決定版とされていた)
・後手は飛先を受けずに△4四角!が面白い。▲2五歩は上手く行かないので、持久戦になる。




第4章は、「先手角頭歩突き戦法」。ただし第3節は後手番の角頭歩戦法の話。

(1)3手目▲8六歩
・昭和の角頭歩戦法。
・この作戦を本格的に扱った本が、米長邦雄の書いた『角頭歩戦法』(初出1974年)。
・ただし、米長本では▲7六歩△3四歩▲8六歩に△8四歩▲2二角成△同銀▲7七桂が基本の形で、本書ではこの変化は扱わない。
・本書では、4手目△8四歩には▲5六歩として、後手番の形を応用できるとしている。
・4手目△4二玉がメインテーマで、そこで▲8五歩!が面白い一手。ただし、大人の対応をされると先手イマイチのようだ。


(2)3手目▲1六歩
・3手目に▲1六歩と駆け引きする形。
・△1四歩なら、後手は居飛穴に組みにくい。(ただし、相振り飛車になると先手が損をする可能性がある)
・ただし、1筋を突き合うと、強気の対応で大駒交換になったときに、端から手を作られるのは第2章第2節と同様。先後の違いで後手が居玉だが、やはり角頭歩側が無理筋のようだ。


(3)△角頭歩vs角交換
・△角頭歩戦法で、△2四歩にいきなり▲2二角成と角交換する展開。
・このタイミングでは△同銀の一手なので、△2二飛のぶっつけがない。
・2筋歩交換に△2四歩!を知っていれば大丈夫。
・「後手番の角頭歩戦法」なのに、なぜ第4章に含めたのかは謎。



〔総評〕
奇襲とされてきた角頭歩戦法に新たな命が吹き込まれ、後手番の作戦として立派に通用するというのが素晴らしい。序盤の数手で作戦が決まるため、しっかりとマスターすれば本書と同じ展開になる確率はかなり高いし、考え得る序盤の展開もしっかりと網羅されている。得意戦法の候補としては有力だろう。

また、角頭歩戦法自体が載っている本はかなり少ないため、実戦でやられて「イヤだな…」と感じたなら、本書はマスト。特に、角頭歩戦法の知識が米長本のままだと結構大変な目に遭うのではないだろうか?居飛車党で初手▲7六歩の人は、読むしかなさそうだ。



※誤字・誤植等(初版第1刷で確認):
p46上段棋譜 ×「△3三桂 ▲2八飛」 ○「▲2八飛」



【関連書籍】

[ジャンル] 奇襲・超急戦
[シリーズ] マイナビ将棋BOOKS
[著者] 西川和宏
[発行年] 2017年

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