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■ひと目の角換わり(マイナビ将棋文庫SP)

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ひと目の角換わり(マイナビ将棋文庫SP)
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マイナビ将棋文庫SP
ひと目の角換わり
[総合評価] B

難易度:★★
  〜★★★★

見開き1問
内容:(質)A(量)A
レイアウト:A
解答の裏透け:C
解説:A
読みやすさ:A
初級〜有段向き

【著 者】 長岡裕也
【出版社】 マイナビ
発行:2015年2月 ISBN:978-4-8399-5459-8
定価:1,188円 376ページ/16cm


【本の内容】
第1章 角換わりの基本 20問 42p
第2章 棒銀 40問 82p
第3章 早繰り銀 24問 50p
第4章 腰掛け銀 96問 194p

◆内容紹介
序盤は手が広く、その中から数少ない好手を探し出すのは至難の業です。好手を一から探すのは困難なため、将棋の上達に定跡書は欠かせないものとなっています。しかし、初めて定跡書を読む方には、難しすぎる定跡書が数多く存在するのも事実です。

本書の最大の特長は、
次の一手形式で定跡を自然と身に付けられることです。通常の戦術書と比べ図面が多いため、頭の中で並べるのではなく、目で見て覚える感覚といえます。本書で手順だけなく「良い形」を覚え、まずはその形に組めることを目指しましょう。形を覚えれば、実戦でも些細な手順の違いに対応できるようになるはずです。

角換わりの最大の魅力は抜群の攻撃力です。主導権を一度も手放さず、一気に攻め倒すのが一番明快な勝ち方です。手持ちの角から繰り出される鋭い攻めを、ぜひ身に付けてください。

本書は、角換わりに不安を覚えている将棋ファンの、心強い相棒となるはずです。
初めて角換わりを勉強する方、現代角換わりの基礎を勉強し直したい方に特にお勧めします。


【レビュー】
角換わりを次の一手で解説した本。角換わりの三大戦型である棒銀・早繰り銀・腰掛け銀を扱っている。

角換わりは、相飛車で互いの合意があって初めて成立する戦型だ。また、後手で主導権を取りやすい形は少ない。そのため、角換わりで後手番を持つ人はかなりの自信があるだろうし、なかなか級位者では実現しにくい戦型である。

一方、角換わりの中には、級位者必須の攻め手筋も多く登場する。角の運用に手間のかかる矢倉と違って、角が手持ちなのでいろんな技がかかりやすい。隙があれば、いつでも技を仕掛けていける戦型であり、ある意味ではアマに向いているといえるかもしれない。

本書は、そういった角換わりを級位者でも理解できるように、基本から解説した本である。


目次の直後に掲載されている「本書の特長」(概要)を掲示しておこう。

(1)角換わりの基本的な攻め筋から、詰みまで研究している最新形まで、次の一手形式で網羅
(2)専門用語や長い指し手を極力避けている
(3)角換わりの三大戦型(棒銀、早繰り銀、腰掛け銀)の重要定跡を全て収録
(3)' 角換わりを拒否された時の戦い方も解説


このうち、(1)は確かにその通りだが、やや欲張り過ぎで発散して感じがする。(2)は実現できている。(3)は、「重要定跡を全て収録」とまでは言えない感じ。(3)'は1章にて。

〔レイアウト〕
〔右図〕のような、見開き1問1答
・問題図の下部に「ヒント」として、状況と考え方のヒントを50〜60字程度で表示
・解説は、図面2枚+260字程度。


各章の内容を紹介していこう。

第1章は、角換わりの基本。[初級〜中級]向け。有段者で「角換わりの手順は知っている」という人でも、角換わりを拒否されたときの咎め方が分からない場合は、飛ばさずに読むべし。

・角換わりになるための序盤の手順(#1〜#3)
・途中で△4四歩と角道を止められて、角換わりを拒否されたとき(#4〜#17)

→引き角から2筋歩交換を狙うのが良い
 角交換後に、焦って無理な角打ちをしないように注意
 2筋で角交換+歩交換に成功したら、囲ってから棒銀がオススメ
・角換わりが確定してから、作戦を決めるまで(#18〜#20)
→棒銀、早繰り銀、腰掛け銀に分岐する


第2章は、棒銀。[初級〜中級]向け。

・チャンスがあれば銀交換(#21〜#24)
├後手の無理な角の打ち込み△4九角に対する受け方(#25〜#26)
├銀交換後にチャンスがあれば、銀の割り打ちで金を剥がす(#27〜#28)
├後手が△3三桂と跳ねてきたら、桂頭を狙う(#29〜#33)
└銀交換後は、持ち駒の角銀歩を生かして1筋攻めや▲6一角を狙う(#34〜#35)


・後手が△2二銀と銀交換を拒否した場合(#36〜#44)
→歩交換から銀を立て直す

・後手が△1四歩と銀交換を拒否した場合(#45〜#60)
→▲1六歩から▲1五歩△同歩▲同銀!が初級者必修の[棒銀の基本手筋]。この手は、ちゃんと習わなければまず指せない手なので、これを覚えただけでも、もう中級者と言えそうだ。
├▲1五同銀に△同香が普通だが、放置された場合の攻め方(#47〜#51)は、初級者にはとても参考になる。
▲1二歩に△2二銀打のその後の攻め方(#54〜#60)は、あまり載っている本が少ない(「△2二銀打とさせて満足」という旨が多い」ので、中級者以上にも参考になる。

この章では、後手は△6三銀と腰掛け銀模様にしてくる。これは棒銀の威力と攻め方を学ぶための、レクチャー用の手順。▲1二歩の垂れ歩のあと、▲1一歩成△同銀▲8四香(△同飛なら▲6六角で飛銀両取り)の筋がある手順で、初級者用にしばしば用いられる。

ただし、角換わり棒銀で後手の正しい受け方とされているのは△7四歩〜△7三銀の早繰り銀と△1四歩〜△5四角の組み合わせ。角換わりの後手番を持てる人なら、当然この形で受けてくるはずなのだが、本章では触れられていない。

なので本章は、手筋や考え方を学ぶには良い教材だが、実戦での即戦力にはなりづらいのが残念。


第3章は、早繰り銀。[中級〜上級]向け。

・早繰り銀の成功例(#61〜#73)
→王手飛車の筋を必ず避ける
→銀交換が実現したら、敵陣への打ち込みを狙う

・早繰り銀を継ぎ歩で反撃して受け切る例(#74)
・早繰り銀を腰掛け銀で受ける例(#75〜#84)


この章では、後手がすでに△6三銀と腰掛銀模様になっている状態で、先手が早繰り銀を採用する。「早繰り銀…は、この形での採用があまり好まれていません」(p134)とある通り、早繰り銀は腰掛け銀が苦手。腰掛け銀で早繰り銀を撃退する指し方は、意外と載っている本が少ないので参考になるだろう。ライバルが早繰り銀を指してきて困っている場合には特に有効だ。

なお、プロで早繰り銀といえば、1980年代に流行した相早繰り銀だが、本章では全く触れられていない。非常に面白い変化が続出する戦型だが、確かに級位者向けではないし、現代ではほとんど指されていない戦型ではある。

ただ、この章で「早繰り銀は腰掛け銀で受けられるとなかなか上手くいかない(から主流は相腰掛け銀)」という解説をするのであれば、前章でも「棒銀は早繰り銀で受けられるとなかなか上手くいかない」というのも欲しかったところではある。

第4章は、腰掛け銀。正調角換わりの主流ど真ん中の戦型だ。


・▲腰掛け銀模様に△棒銀(#86〜#95)
 先手が腰掛け銀模様にしている(棒銀の天敵の早繰り銀がない)ので、後手番で1手遅れていても棒銀にする意味はある。第2章の内容と見比べてみてほしい。△棒銀の先手側の対策を級位者向けに解説した本は少ないので、困っている人は読む価値あり。


#96〜#180は相腰掛け銀

・△4一玉の手順ミスに▲4五銀(#97〜#102)
〔右図〕で▲4五銀と出る。△同銀に▲6三角の狙い。ほとんどの本では「▲6三角で先手良し」で終わるが本書では△同銀以外の変化もしっかりとフォローしているのは◎。

・▲右四間で攻める場合(#104〜123)
 先手が飛先保留+6六歩保留で△3三銀〔右図〕と上がってきたら、右四間で攻めるチャンス。仕掛けのタイミングと、歩を突き捨てる意思を学ぼう。#122は数年前のプロのテーマ図になっていたくらいで、本格的な戦型だ。

・後手の形をよく見ないで▲右四間にしてしまった場合(#124〜130)
 右四間で攻め切れる形は、条件が決まっており、いつでもできるわけではない。「なんでも右四間」にしてしまっている人は、形の違いを覚えよう。

・△7四歩には▲6六歩
├#132〜#136
├#137〜#138
└#139〜142

 上の3つ〔下図〕は少しずつ形が違う。攻め筋も受け方も変わってくるので、細かい違いに敏感になろう。

・後手が穴熊にしてくる場合(#143〜#148)
 穴熊がいつも得とは限らない。チャンスと見れば先攻しよう。

・先後同型(#149〜#180)
 〔右図〕から▲4五歩が先後同型の基本形。▲4五歩に△6五歩の攻め合いの形が載っているので、先後どちらを持つにしてもマスターしておきたい。

#154以降は、「世に伊奈さんあり」(歩を突き捨てる順番のごろ合わせ)で知られる、先後同型の仕掛け。もちろん、最終定跡の「富岡流」でエンディングを迎える。「富岡流」については、詳細に解説した定跡書が何冊かあるし、先後同型自体が非常に難しいので、本書でマスターしようと思わなくて良い。ここでは、流れや雰囲気を読み取ろう。


〔総括〕
本書の評価は、とても悩んだ。Bにしたのは、対象棋力が広すぎるためだ。

難しい戦型である角換わりを、級位者にも分かるように解説しようとした試みは素晴らしい。特に、かつての多くの級位者向け角換わりが棒銀だけに絞られていることを考えると、本書は何とかして腰掛け銀を理解させようとしているのがよく伝わってくる。

ただ、やはり角換わり腰掛け銀というのは、難しい戦型なのかなぁ、と思う。本書では、第2章(棒銀)と第3章(早繰り銀)は可能な限り級位者向けの解説になっているが、第4章(腰掛け銀)はどうしても有段者の話になってしまう。突き捨てが多く入ったり、わずかな形の違いによって成否が変わってくるので、そもそも級位者向けにするのは困難なのだろう。そのため、どの棋力の人に対しても、本書は中途半端になっている感じだ。

ただし、部分的には級位者にも有段者にも非常に有益で、他書ではあまり見られないような変化の解説があったりするので、余裕のある人はぜひご一読いただきたい。その場合、「あ、ここは自分の棋力は対象じゃないな」と思ったら飛ばす感じで。

思い切って、「棒銀・早繰り銀編」と「腰掛け銀編」を分けたほうが良かったのかもしれない。(2017Jan25)

※誤字・誤植等(初版第1刷で確認):
p88 解答図の▲3七歩が抜けている



【関連書籍】

[ジャンル] 
次の一手問題集(定跡習得系)
[シリーズ] 
マイナビ将棋文庫SP
[著者] 
長岡裕也
[発行年] 
2015年

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