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■将棋・序盤完全ガイド 相居飛車編

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将棋・序盤完全ガイド 相居飛車編
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マイナビ将棋BOOKS
将棋・序盤完全ガイド 相居飛車編
[総合評価] S

難易度:★★
   〜★★★

図面:見開きMAx4枚
内容:(質)A(量)A
レイアウト:S
解説:A
読みやすさ:A
初級〜中級向き
(有段者までOK)

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【著 者】 上野裕和
【出版社】 マイナビ
発行:2013年3月 ISBN:978-4-8399-4656-2
定価:1,554円(5%税込) 256ページ/19cm


【本の内容】
第1部 序盤の基礎知識 第1章 相居飛車初めて講座
第2章 相居飛車の各基本図までの手順
 
第2部 相居飛車の歴史を振り返る 第1章 相居飛車の歴史
第2章 相居飛車を理解するためのキーワード
 
第3部 相居飛車、主流戦法の紹介 第1章 矢倉―これぞ将棋の純文学
第2章 角換わり―攻め切るか受け切るか、白熱の攻防
第3章 一手損角換わり―手損の意味を根本から揺さぶる新作戦
第4章 相掛かり―▲2六飛型と引き飛車、二つの顔を併せ持つ
第5章 横歩取り―食わず嫌いは無用!最もスリリングな戦型
 

◆内容紹介
「面白過ぎて電車を乗り過ごした」
「とにかく分かりやすく、将棋盤と駒なしで読めた」
「この本を読んでもう一度将棋を勉強しようと思った」

将棋書籍の歴史を変えた画期的名著 第2弾!!
将棋の序盤を、その戦法の歴史から解説し、指す将棋ファンだけでなく観る将棋ファンからも絶大な支持を得た『
将棋・序盤完全ガイド 振り飛車編』(2012.10)の姉妹作です。今回は「相居飛車編」と題して、居飛車5大戦法[矢倉、角換わり、一手損角換わり、相掛かり、横歩取り]を完全網羅!! 戦法の変遷から最新定跡まで学べる、楽しく、かつためになる一冊です。
さあ、再び序盤戦術探求の旅に出よう!!


【レビュー】
現代相居飛車の歴史や背景を解説した本。

史上空前の「プロの将棋を分かりやすく解説した棋書」に成功した、前著『将棋・序盤完全ガイド 振り飛車編』から5ヶ月。早くも「相居飛車編」が発行された。

相居飛車は、アマでの出現率は比較的少ないものの、プロでの局数は多く、「あまり指したことはなく、観戦専門」の方も多いと思う。また、自分で指すという人でも、相居飛車の全戦型を指しこなせる人は稀で、戦型の知識に偏りがあるのが普通だ。つまり、相居飛車の全体像を語れる人は相当少ない。

本書は、現代将棋のプロの序盤(相居飛車)の意味を、級位者でも分かるように解説した本である。


全体的なクオリティは、前著同様に高くて素晴らしい。本書で施されている「工夫」は前著と同様なので、前著レビューの一部を以下にコピペしておく。

(ここから)

本書では、「見る将棋ファン」がプロの指し手を分かるように書かれており、基本的な対象棋力は5〜10級。10級以下でも何とか読める。また、上級者や有段者でも目からウロコの内容が満載である。

また、読者が読みやすいように、下記のようなさまざまな工夫がされている。一つ一つは小さな工夫だが、効果は大きく、非常に読みやすかった。

 ・本文中で「第1図(←)」のように、初出の図面がある方向を矢印で示している。
  おそらく棋書では初めての工夫だが、該当図面に一瞬で目が届くので、ものすごく読みやすくなっている。

 ・重要なキーセンテンスは、太字ゴシック体で強調している。
  これ自体はよくある工夫だが、本書ではTV番組「世界一受けたい授業」に匹敵する頻度で使われている。さほど重要でない文も強調されているが、著者として声を大きくしたいところであり、メリハリを感じられる。

 ・各部の初めには「概要があり、どのような構成で解説していくが書かれている。
 ・各章・各節の初めには、これから何を解説するかが短くまとめられている。

  この工夫によって、頭の中の使用メモリが適切な量になるようにパーティションが設置され、内容がスコンスコンと入ってくる気がした。

(ここまで)




各部・各章の具体的な内容を紹介していこう。

第1部-第1章は、序盤の基礎講座。
 ・序盤の基本 (『振り飛車編』の内容を抜粋)
 ・「相居飛車」とは何か?
 ・相居飛車の戦型分類(5つ)
 ・相居飛車の特徴(6つ)

 →対抗形といろいろ違う!! 対抗形と相居飛車の比較を交えて説明していく。

第1部-第2章は、各戦型の基本図までの手順。
 ・戦型が決定するまでのプロセス
 →ポイントは、飛先歩交換の有無。


第2部-第1章では、相居飛車の歴史を振り返る。非常にザックリとした流れになっているので、各戦型に詳しい人には物足りないかもしれないが、全体像を把握することができる。

 〔矢倉〕
  ↓▲2六歩型の24手組
  ↓飛先不突き矢倉
  ↓▲4六銀-3七桂

 〔角換わり〕
  ↓木村定跡
  ↓ (千日手になりやすい)
  ↓▲2六歩型で千日手を打破
  ↓升田定跡の流行

 〔相掛かり〕
  ↓▲2六飛型
  ↓▲2八飛型の流行

 〔横歩取り〕
  ↓内藤流△3三角
  ↓中原囲い
  ↓△8五飛
  ↓新山ア流

 ・この項では、「内藤流・中原流に不足していたもの」という観点で解説が進むのが分かりやすい!

 〔一手損角換わり〕
   2003年誕生の若い戦法


相居飛車5戦型のうち、矢倉・角換わり・相掛かりが「後手が追随する戦法」、横歩取り・一手損角換わりが「後手から誘導できる戦法」として分類されているのも分かりやすかった。

第2部-第2章は、相居飛車のキーワード。
 ・飛先保留で技術革新
   「歩が下がるたびに技術が進歩した」は、他の人に説明するときも使えそう。
 ・相居飛車でも玉の堅さを重視
 ・角交換を考慮して駒組みする

   この2つは現代将棋全体にかかわるキーワード。
 ・後手は専守防衛傾向に
   これは相居飛車特有。


第3部は、相居飛車の主要5戦型ついて。各章とも、以下のような構成を採っている。

 ・戦法名
 ・特徴
 ・指される頻度
(←『振り飛車編』では、ここは「流行の理由」だった)
 ・基本定跡
 ・先手の理想
 ・後手の理想
 ・歴史
 ・最新形(2013年2月現在)


第3部-第1章は矢倉。▲4六銀-3七桂戦法がメインストリームだが、戦型は多岐にわたる。

 〔主な戦型〕
 ・24手組とスズメ刺し
 ・飛先不突き矢倉
 ・▲4六銀-3七桂型
  ├基本の攻め筋
  ├△専守防衛
  ├▲矢倉穴熊
  ├△森内流(△8四歩-△9五歩)
  ├宮田新手▲6五歩
  └現状
    └(最新)91手定跡
 ・▲3六銀型を目指す攻防
 ・森下システム
 ・加藤流
 ・早囲いと藤井流
 ・後手の工夫
  ├矢倉中飛車
  ├右四間飛車
  ├阿久津流急戦
  └左美濃
 ・(補足)3手目▲6六歩からの矢倉


第3部-第2章は角換わり。棒銀・早繰り銀・腰掛け銀の「三すくみ」の原則は覚えておこう。ただし、これらは1手違えば崩れることがある。

 〔主な戦型〕
 ・棒銀
 ・早繰り銀
 ・腰掛け銀
  ├木村定跡
  ├後手、右桂跳ねず
  ├▲2六歩型右四間
  ├同型(升田定跡)
  ├△6筋位取り
 → 千日手打開の原理を分かりやすく解説。
  └待機策復活(△4二金型〜郷田新手△7五歩)
    └(最新)飛車切り定跡
 ・(補足)2手目△3二飛対策のため、▲2六歩△8四歩▲7六歩から角換わりになることがある。


第3部-第3章は一手損角換わり。

 〔主な戦型〕
 ・腰掛け銀
 ・棒銀
 ・早繰り銀
 ・4手目角交換(▲7六歩△3四歩▲2六歩△8八角成)
  └(最新)2012/11▲渡辺△丸山(竜王戦)

    ▲早繰り銀から▲3四歩△同銀と取り込み、▲3六歩と控えて打って次に▲3五銀を狙う形。

第3部-第4章は相掛かり。

 〔主な戦型〕
 ・5手爆弾(
▲2六歩△8四歩▲2五歩△8五歩▲2四歩)
   p196の△同銀よりも△同飛の方が後手にとってよいのが定説。これはいくつかの他書にも書かれている。ただし、古い本では△同銀のみを書いているものもある。
 ・引き飛車棒銀
 ・ガッチャン銀

   p202に、銀をぶつけたときの音について、「実際は(ガッチャンではなく)シャリンという音がする」と主張する若手に対して「放っておきましょう」とややネガティブに書かれている。ただし、この件の元ネタは『将棋は歩から 上巻』(加藤治郎,東京書店,1970/1992)のp211〜211で、某教授から指摘を受けて(氏は「チャリンチャリン」と表現している)、加藤は「一本取られた」という旨を記している。どうでもいいことなのだが、実際の衝突音は対象物の材質、形状、大きさ、衝撃の強さによって変わってくるので、誰かが銀で銀を作って(ややこしい(笑))検証してくれるのを待つしかないだろう。
 ・ひねり飛車
 ・中原流▲3七銀
 ・▲3七桂戦法
 ・引き飛車棒銀
 ・引き飛車棒銀の対策(3つ)
  └(最新)△8五飛〜△9五歩


第3部-第5章は横歩取り。p223に戦闘ゾーンと守備ゾーンの図示があり、これがとても分かりやすい。

 〔主な戦型〕
 ・△4五角戦法、相横歩取り、△3三桂戦法
 ・内藤流△3三角
 ・中原囲い
 ・△8五飛
  ├▲中住まい
  ├▲6八玉型
  ├山ア流
  ├▲3筋攻め
  └新山ア流
 ・△5二玉型中原囲い
 ・△8四飛の見直し
  ├(最新)▲1七桂
  └(最新)△2三銀


さて、本書は『振り飛車編』の続編。前著を読む前は大した期待をしていなかったので、その出来栄えに驚くことになったが、今回はどうだったろうか?

結論から言えば、「期待を裏切らないクオリティ」だった(前回は「いい意味で期待を裏切ってくれた」だった)。やはり、時間がなくても読めるところまで読もうとしてしまう。

さすがに今回は前著ほどの衝撃を感じたわけではないが、「相居飛車を纏め上げるのは難しいかもしれない」と不安を感じていた。何しろ、相居飛車の本を書くのは難しく(しかも売上の期待値が低そうだ)、これまでも振飛車編だけで終わったシリーズは数多い。それだけに、今回も同等のクオリティを保ったことに拍手を贈りたい。

  「プレッシャーに耐えて、よくがんばった!」(笑)

特に第2部-第2章の「キーワード」は、現代の相居飛車を理解するためのスペシャルキーである。これまで、「相居飛車に興味があって勉強してみたけど、何だかよく分からなかった」という人には、新しい扉が開かれるかと思う。

居飛車党で行きたい人には、何はなくとも必読の一冊で間違いない。(2013Jun10)



【関連書籍】
 『
将棋・序盤完全ガイド 振り飛車編

[ジャンル] 
相居飛車総合
[シリーズ] マイナビ将棋BOOKS
[著者] 
上野裕和
[発行年] 
2013年

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