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■四間飛車激減の理由

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四間飛車激減の理由
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マイナビ将棋BOOKS
四間飛車激減の理由
[総合評価] A

難易度:★★★★☆

図面:見開き6枚
内容:(質)A(量)A
レイアウト:A
解説:A
読みやすさ:B
有段向き

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【著 者】 阿部健治郎
【出版社】 マイナビ
発行:2012年10月 ISBN:978-4-8399-4445-2
定価:1,890円(5%税込) 288ページ/19cm


【本の内容】
君島俊介/構成,島田修二/編集
序章 四間飛車の変遷   18p
第1章 穴熊へ組む手順 (1)先手居飛車穴熊の組み方
(2)後手居飛車穴熊の組み方
22p
第2章 △4四銀型 (1)▲2六角型
(2)松尾流
(3)▲6八角型
(4)△9五歩型
98p
第3章 △5四銀型 (1)▲3五歩急戦
(2)▲2六角型
(3)▲3七角型
(4)▲9六歩型
(5)▲7八金型
70p
第4章 △3二銀型 (1)△4五歩型
(2)△4三銀型
(3)△4四歩・△3二銀型
40p
第5章 先手四間飛車 (1)▲6六銀型 32p

◆内容紹介
「本書は四間飛車がプロの公式戦で激減した理由を、可能な限り具体的手順で示した」(まえがきより)

旬の棋士が贈る若手精鋭シリーズ第2弾は、第41期(2010年度)新人王戦において、史上初のプロ対アマの決勝三番勝負を制し優勝、新人王となった阿部健治郎五段による渾身の一冊です。

江戸時代から愛され、指され継がれてきた(角道を止めるタイプの)四間飛車が、なぜプロの公式戦から消えてしまったのか。アマチュアではまだまだ花形戦法ですが、プロが指さない理由を分からないまま、指し続けている方も多いのではないでしょうか?
本書はこのプロとアマの「四間飛車に対する認識の差」を埋めようとする野心作。
将棋戦法史の転換を高らかに宣言する、まさに若手精鋭シリーズにふさわしい一冊です。

阿部五段が心血を注ぎ込んで執筆した一文一文、ぜひ読んでみてください。


【レビュー】
四間飛車vs居飛車穴熊の定跡書。

最近、プロの将棋で角道を止めたノーマル四間飛車をほとんど見なくなった。基本的に「勝ちにくい戦法」と認知されたからである。50年にわたってトッププロにも愛された四間飛車は、何に勝てなくなったのか。簡単に言えば、「居飛車穴熊への対抗手段が尽きた」ということになる。

総論すると、四間飛車がプロで激減した理由は、以下のようになる。

 ・四間飛車は居飛穴以外の作戦には有効。
 ・居飛穴は四間飛車に対して高い勝率を挙げた。
 ・対居飛穴には、藤井システム・鈴木システム・浮き飛車などの作戦が有力視されたが、いずれも対策されて勝ちにくくなった。
 ・対策の決定版は松尾流穴熊である。

ただし、松尾流穴熊はいつでも組めるわけではない。しかし、松尾流で牽制することにより、これまで望みがあった四間飛車の指し方までも打ち砕かれた。または、松尾流の存在によって、四間飛車側はやや無理な動きをせざるを得なくなった。ここが「四間飛車激減」の真相である。

とはいっても、正しい知識を持っていなければ、いくら結論を知っていても絵に描いた餅。その「正しい知識」を解説したのが本書である。

本書は、居飛穴に対する四間飛車のさまざまな動きがいかに対策されているかが書かれた本である。


各章の内容を、チャートや図を交えながら紹介していこう。


序章は、四間飛車の歴史について。ザッと紹介すると、以下のような流れ。

 ・戦後に大山・升田が四間飛車で活躍
 →1955〜1960年ごろ、5筋位取り対策ができた
 →5七銀左急戦と玉頭位取り
 →居飛穴、左美濃、鷺宮定跡
 →スーパー四間飛車の玉頭攻め
 →藤井システム、鈴木システム
 →松尾流穴熊(▲7八金-7金銀型)

四間飛車を激減させたのは、居飛車穴熊である。「対四間の戦型別勝率」(p14)のグラフによれば、居飛穴の勝率の高さは際立っている。松尾流に組めた場合は、さらに勝率が上昇する。

また、「年度別の四間飛車対局数」(p15)のグラフによれば、四間飛車の採用数は2007〜2008年から激減しており、これは松尾流穴熊の普及と一致する。(※松尾流の登場自体はもっと前)

すなわち、居飛穴側の動きは常に松尾流を意識したものになっている。そこで序盤に目指す形が【p24 第32図】である。


第1章は、居飛穴の組み方について。

第1節は▲居飛穴の組み方で、以下の急戦2作戦に対してどう対応するかを解説。ここをクリアすれば、まずは居飛穴には組めそう、という訳だ。

 (1)△平美濃からの△4四銀型速攻
 (2)△3五歩からの浮き飛車


ポイントは、「相手が端歩を突くか、確実に急戦をしてくるときに限り、▲6七金・▲7八金型(+▲7九銀)で迎え撃つ」(p26)こと。▲6七金では石田流を牽制できるが、△4四銀急戦がある。▲9八香では△4四銀型を牽制できるが、石田流が来る。阿部のオススメは、▲9八香で石田流を誘い、▲7八金-7九銀型で離れ駒をなくして決戦を挑む。

第2節は△居飛穴の組み方。先手の作戦はほぼ▲6六銀型に限定される(第5章で詳解)が、以下の2タイプに分かれる。

 (1)先手が1筋に手をかけない
 (2)先手が1筋に2手かけて端の位を取る

阿部のオススメは、6手目△5四歩。普通は何も考えずに△6二銀だが、立石流乱戦を警戒する。

なお、藤井システムを見せて△3二金と警戒させ、松尾流を阻止した形は第5章で解説される。



第2章は、△4四銀型。広義では「鈴木システム」といってよい。四間側からの攻撃力が高く、△5五歩から仕掛ければ主導権が取れそうで、アマには人気が高い。居飛穴側は、松尾流穴熊にはかなり組みにくいが、▲2六角まで転回することで対策できている。

 「△4四銀型に対して▲2六角と転換できれば、…(中略)…先手は作戦勝ち」(p83)
 「▲6八角型は▲4六歩と▲4八銀を組み合わせて指すのがいい」(p112)




第3章は、△5四銀型。この形は△5五歩からの仕掛けがないので、基本的にカウンター狙いとなる。

 「(△5四銀型は)攻撃力は低いが、厚みや反発力がある」(p146)
 「飛車先が通っているので、先手は松尾流に組めない」(p146)


という特徴がある。ただし、

 「△5四銀型は後手からあまり動けないので、先手は好ポジションを得ることを重視しよう」(p177)

というように、先手はいろいろな手段が選べる。

第3章-第1節は、▲3五歩急戦。△5四銀型は、後手の左辺の守りが薄いので、▲3五歩△同歩▲2四歩△同歩▲6五歩と角交換を挑む仕掛けがある。指し方としては非常に分かりやすい。後手は、仕掛けられるまでに(1)△9五歩 (2)△6三金 (3)△8二玉 (4)△8四歩の4つから2手を選んで組み合わせることになる。後手はいろいろな組み合わせを工夫できるが、「すべて先手良し」が本書の結論。攻めの好きな人は、この仕掛けをマスターすると良い。

第3章-第2節は、▲2六角型。結論から言えば、「【第32図】が実現するので先手良し。△5四銀型も▲2六角で攻略可能」となる。

第3章-第3節〜第5節は、松尾流を意図した動き。結論から言えば、△5四銀型に対しては「松尾流から▲5八飛と回る指し方は、5筋位取りも角転換もうまくいかない」(p206)のだが、松尾流にこだわらずに「矢倉風の穴熊(▲7七銀型)から駒を繰り替えれば先手は作戦勝ちを狙える」(p214)となり、これで△5四銀型も先手良しになった。



第4章は、△3二銀型。銀の動きを他の手に回し、銀の位置は居飛車の動きに合わせて決める思想である。例えば、この△3二銀は△4一銀〜△5二銀と飛の機器を通したままダイヤモンド美濃に組み替えることも可能である。

注目はp219以下の変化。『四間飛車破り【居飛車穴熊編】』(渡辺明,浅川書房,2005)のp187〜p189では先手良しとされているが、本書ではさらに奥が解説されており、「従来先手良しとされる▲4六歩の仕掛けは無理筋」(p223)と結論が変わっている。ただし、修正案がすでに提示されており、最終的にはやはり先手良しだ。

本章では、本書を象徴的する一文がある。

 「松尾流の登場で、後手は駒組みの仕方に大きな制約を受けている」(p251)



第5章は、▲四間飛車。1手の違いで四間飛車側に手段が多くなりそうではある。しかし、▲7八銀型は相手に対応する型なので先手番ではイマイチ。▲5六銀は千日手を視野に入れた型なので先手番では使えない。結局、先手番では▲6六銀型一択なのである。

その▲6六銀型では、1手の違いにより居飛穴側はより慎重の駒組みが必要。しかし、結論としては、▲四間飛車の時には後手は松尾流を望めないが、△8四角の転換から千日手含みで指せばよい。よって、▲四間飛車でも△居飛穴を倒すことができない。


以上により、先手番でも後手番でも、四間飛車が居飛穴に対抗する術が失われているのが現状である。


本書は、四間飛車vs居飛穴の本としては、秀逸の出来である。類書は下記のようにいくつかあることはある。

 2008-04 居飛車穴熊必勝ガイド,佐藤天彦,MYCOM
 2005-06 四間飛車破り【居飛車穴熊編】,渡辺明,浅川書房
 2003-06 四間飛車道場 第十一巻 居飛車穴熊,所司和晴,MYCOM

ただし、本書の内容のほとんどはすでに結論がほぼ確定したものになっており、「これは一局の将棋」や「研究対象である」のような不確定な表現は非常に少ない。もしかしたら、「四間飛車の最後の定跡書」となるかもしれない。


惜しいな、と思ったのは、藤井システムの現状がほとんど書かれていないこと。藤井システムから合流する変化については書かれているものの、システム本来の仕掛けについてはほぼ記述がない。

藤井システムの本は『中村亮介の本格四間飛車』(中村亮介,MYCOM,2010.05)で打ち止めになっていて、藤井システムでも居飛穴に組まれてしまうところまでも書かれているが、中村本ではまだ藤井システムに望みがある感じになっていた。この辺りの結論がないと、「四間飛車激減の理由」としては画龍点睛を欠いた感がある。

また、解説は分かりやすかったが、内容はかなり難解なので、各章・各節ごとにまとめが欲しかった。

本書の総合評価は迷いに迷った。『四間飛車破り【居飛車穴熊編】』(渡辺明,浅川書房,2005)の上位互換に近い形になっており、Sでも全然おかしくないのだが……。最高レベルの「画龍」であるが、「点睛」の分と、いくつかの大きめの誤植(下記参照)を考慮して、Aとさせていただく。(>_<。)


※誤字・誤植等(初版第1刷で確認): 第4章に誤植が集中している…(´_` )
p212 △「ビック4」 ○「ビッグ4」
p240 第23図 ×飛が3枚ある。 ○「▲2四歩と△2二飛を消し、▲2二とを追加する」
p247下段 ×「△2九飛には△2九飛が痛打で」 ○「▲2五同桂には△2九飛が痛打で」or単に「△2九飛が痛打で」
p249下段 ×「後手の反撃を牽制しがら指す必要がある」 ○「後手の反撃を牽制しながら指す必要がある」
p281下段 ×「137ページの変化に似ているが」 おそらく31ページか、または97ページのことと思われる。

(2014Feb21追記) 名無しさんthx!
2013年2月14日発行の初版第3刷では、上記5ヶ所はすべて修正されているそうです。p281下段は「141ページの変化に似ているが」とのこと。



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[ジャンル] 
四間飛車vs持久戦系
[シリーズ] マイナビ将棋BOOKS
[著者] 
阿部健治郎
[発行年] 
2012年

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