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■矢倉3七銀分析【上】

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矢倉3七銀分析【上】
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矢倉3七銀分析【上】 [総合評価] S

難易度:★★★★★

図面:見開き8枚
内容:(質)S(量)S
レイアウト:B
解説:B
読みやすさ:B
有段〜高段者向き

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【著 者】 森内俊之
【出版社】 毎日コミュニケーションズ
発行:1999年4月 ISBN:4-8399-0077-9
定価:2,000円 272ページ/21cm


【本の内容】
第1章 △7五歩早仕掛け編 基本図以下△7五歩
(1)▲4六角△9二飛▲7五歩△同角
 ├1.▲3五歩△同歩▲同角△7二飛
 ├2.▲7九玉△4三金右▲2六歩
 └3.▲7九玉△4三金右▲3五歩
(2)▲同歩△同角▲3五歩△同歩▲同角(先後同型)
(3)▲同歩△同角▲5五歩△同歩▲4六銀△4三金右▲5八飛△5四金
 ├1.▲7六銀△4二角▲6五銀
 │├a.△5三銀
 │└b.△6五同金
 └2.▲3七桂
・参考棋譜=5
12p
第2章 △4三金右編 基本図以下△4三金右▲3五歩
(1)△同歩▲同角
 ├1.△4五歩▲5七角
 │├a.△6四角▲6五歩△7三角▲1八飛△5三銀▲7五歩△同歩
 ││▲7四歩△5一角▲4六歩△3四銀▲4八飛
 ││├△3三桂
 ││├△4四銀▲3六銀
 ││└△4四銀▲4五歩
 │├b.△5三銀
 │├c.△4四銀
 │└d.△4四銀▲7九玉△7三桂
 └2.△6四角
  ├a.▲4六角△同角▲同銀△5三銀▲7九玉△3四銀▲3六歩
  │├△4九角▲6九玉
  │├△4九角▲3七桂
  │└△4五歩
  └b.▲1八飛△3一玉▲7九玉△8五歩▲8八玉
   ├△7三銀
   ├△3四歩▲2六角
   ├△3四歩▲4六角
   ├△3四歩▲5七角
   └△2二玉
    ├▲1六歩△7三銀
    ├▲3六銀△5三銀
    ├▲3六銀△3四銀
    └▲1六歩△5三銀▲6八角△4五歩▲4六歩△4四銀右
     ├▲3六銀
     └▲4八飛
(2)△4五歩
 ├1.▲3四歩△同金
 ├2.▲3四歩△同銀
 │├a.▲3五歩△2五銀
 │├b.▲3五歩△6四角
 │├c.▲6八角
 │├d.▲3六歩△5三角
 │└e.▲3六歩△6四角
 ├3.▲4六歩△同歩
 └4.▲4六歩△3五歩
・参考棋譜=19
42p
第3章 △8五歩編 [A]基本図以下△8五歩▲3五歩△6四角
(1)▲1八飛
(2)▲3四歩△同銀▲1八飛△5三銀
 ├1.▲6五歩△7三角▲6六銀
 │├a.△8四角
 │├b.△4五歩
 │├c.△8六歩
 │└d.△6四歩
 ├2.▲5七角△7三角▲7九玉△3一玉▲8八玉△4二銀
 │├a.▲4六角△同角▲同銀
 │├b.▲1六歩△3三銀▲1五歩△2二玉▲9六歩△9四歩
 ││├▲3六銀
 ││└▲3五歩
 │└c.▲3六銀△3三銀▲3五歩
 │ ├△4三銀
 │ │├▲4六歩△4二金右
 │ │└▲4六歩△5三金
 │ │ ├▲4八飛
 │ │ └▲3八飛
 │ ├△4五銀
 │ └▲9六歩
 ├3.▲5七角△7三角▲7九玉△6四歩
 │├a.▲8八玉△8四角
 │└b.▲8八玉△6二飛
 └4.▲6八角
  ├a.△3一玉
  └b.△7三角▲7九玉△6四歩▲8八玉
   ├△8四角▲3八飛△7三桂
   │├▲4八銀
   │├▲3六銀
   │├▲4六銀△3三金
   │└▲4六銀△3三歩
   └△6二飛
[B]基本図以下△8五歩▲4六銀△4三金右▲3七桂
(1)△7五歩
(2)△7三銀▲5八飛△6四銀▲5七角△4二角▲7九玉△3一玉▲2六歩△2四銀▲1六歩
 ├1.△2二玉
 └2.△1四歩
(3)△6四歩▲2六歩△6三銀▲6八角△4二角▲7九玉△3一玉▲8八玉△2四銀
 ├1.▲2五桂
 ├2.▲1六歩△7三桂
 │├a.▲2五桂
 │├b.▲1五歩
 ││├△6五歩
 ││├△9四歩
 ││└△2二玉▲2五桂△6五歩▲3五歩
 │└c.▲3八飛
 └3.▲1六歩△1四歩
(4)△6四歩▲2六歩△6三銀▲6八角△4二角▲7九玉△3一玉▲1六歩△2四銀▲1五歩△7三桂
 ├1.▲9六歩
 └2.▲2五桂
(5)△6四歩▲6八角△6三銀▲7九玉△5三角▲2六歩△3一玉▲8八玉△2四銀
 ├1.▲3八飛△7三桂▲5五歩
 ├2.▲5五歩
 └3.▲1六歩△7三桂▲1五歩
[C]基本図以下△8五歩▲6八角△4三金右▲7九玉△7三銀▲4六銀
 ├1.△7五歩▲同歩△同角▲5五歩
 │├a.△同歩▲5八飛△5二飛
 │└b.△4五歩▲同銀△5五歩▲3五歩△同歩▲同角△4四歩
 │ ├▲3四歩
 │ └▲3六銀
 └2.△6四銀
・参考棋譜=54
104p
第4章 脇システム編 基本図以下△6四角▲4六角△7三銀▲2六歩△8五歩▲7九玉△4三金右▲2五歩△3一玉▲8八玉△2二玉▲1六歩△1四歩▲9六歩△9四歩▲6四角△同銀▲2六銀△6九角▲1五歩△同歩▲同銀△同香▲同香△4七角成▲1三歩△同桂▲4一角△1四歩▲同香△1二歩▲6三角成
 ├1.△5三金
 └2.△7三銀
・参考棋譜=3+4(本文下段)
16p
第5章 急戦・▲6五歩編 基本図以下△6四角▲6五歩
(1)△4二角▲5五歩△5三銀▲5八飛
 ├1.△5五歩
 ├2.△4三金右▲5四歩△同銀▲6六銀
 │├a.△5三金▲4六角
 │└b.△5三金▲4六銀
 │ ├△5二飛▲5五歩△4三銀▲5七銀右△6四歩▲5六銀
 │ │△7三桂▲7七桂△3一玉
 │ │├▲6四歩
 │ │└▲3七桂
 │ ├△5二飛▲5七銀右
 │ ├△5二飛▲3七桂
 │ └△3一玉▲5五銀左△5二飛▲5四銀△同金
 │  ├▲7二銀
 │  └▲6四歩
 ├3.△4三金右▲6六銀
 └4.△4三金左
  ├a.▲6六銀
  └b.▲5四歩
   ├△同銀▲6六銀△6四歩
   └△同銀▲6六銀△5三金寄
    ├▲4八銀
    └▲4六銀
     ├△3二玉▲5五歩
     └△3二玉▲3七桂
(2)△4二角▲3五歩
 ├1.△同歩
 ├2.△6四歩
 │├a.▲同歩△同角
 │└b.▲同歩△3五歩
 ├3.△7三桂
 │├a.▲3八飛△8五歩
 ││b.▲3八飛△3五歩
 │└c.▲3八飛△6四歩
 └4.△8五歩
・参考棋譜=29
52p

◆内容紹介
多くの棋士が心血を注ぐ現代矢倉の中で、とりわけ精緻を極める3七銀戦法。日々進化を続ける定跡の真理を求め、若きA級八段が一切の情緒を排し、ただ一つの基本図に全力で挑む。棋界初の本格的解析書。形勢判断記号付の詳細なチャート図、100局以上の参考棋譜収録。


【レビュー】
矢倉3七銀 基本図矢倉▲3七銀戦法の研究書。

本書の基本図は右図。飛先不突き矢倉が登場して以来、相矢倉戦ではもっともメジャーな形の一つであり、ここからの変化も膨大。プロの公式戦ではこの局面が数千局はあるだろう。本書は、その矢倉▲3七銀戦法を、妥協を許さずに徹底的に検討しようとしたものである。

現代の矢倉▲3七銀戦法の本流は、基本図から△6四角▲6八角△4三金右▲7九玉△3一玉▲8八玉△2二玉と互いに囲ってから、先手が▲4六銀-3七桂型を作っていくものである。本書では上巻ということで、その▲4六銀-3七桂の本流を調べる前に、まず傍流(?)の
その他の形を調べようとしたものである。

第1章〜第5章について、各章の内容を図面を用いながら説明していこう。

第1章・基本図から△7五歩早仕掛け

【第1章・△7五歩早仕掛け編

基本図から△7五歩

▲3七銀で右銀を左に使う順が消えたので、△7五歩は積極的な手。ただし7筋歩交換のためには先に△7三銀が普通なので、やや無理気味にも見える(先手でも▲4八銀型で3筋歩交換をするのはやや無理気味)。森内の結論は、「△4三金が入っていない形で△7五歩は無理筋、先手やや指しやすい。難しいが、▲7五同歩△同角▲5五歩△同歩▲4六銀△4三金▲5八飛から咎めに行くのがオススメ」。



第2章・基本図から△4三金右
【第2章・△4三金右編】

基本図から△4三金

△6四角とけん制してこない限り、先手は次に▲3五歩から歩交換できる。△4三金は3筋歩交換は甘受し、「先手の攻撃を受けて立とうという最も強気な手」(p62)。(1)△4五歩〜△5三銀〜△4四銀右の押さえ込みを目指すか、(2)△6四角の反発を目指す。(2)△6四角は▲4六角で先手が簡単に作戦勝ちになりそうだが、後手にも新構想がある。



第3章・基本図から△8五歩
【第3章・△8五歩編】

基本図から△8五歩

カウンター狙い。「▲3五歩と突かせてから△6四角と反撃しようという手である」(p62)。基本図から一番多い手は△6四角だが、本書に収録されている中では△8五歩に半分近いページを割いており、本書のメイン。変化も膨大だ。



第4章・脇システム基本形
【第4章・脇システム編】

基本図から△6四角▲4六角△7三銀▲2六歩△8五歩▲7九玉△4三金右▲2五歩△3一玉▲8八玉△2二玉(左図)

△6四角は▲3五歩からの歩交換を牽制しており、「とりあえず局面を穏やかにしようという手堅い手」(p62)で、もっとも多く指されている。これに対し、穏やかに▲6八角が多いが、ここで▲4六角と対抗するのが脇システム。そして左図まではほぼ一直線に進み、この後端歩の関係によっても展開が変わってくる。先手としては自分の研究手順に持ち込みやすい将棋。


第5章・急戦▲6五歩
【第5章・急戦▲6五歩編】

基本図から△6四角▲6五歩

△6四角と先手の3筋歩交換を牽制した手に対し、「にらみを利かしている角を追い払い、手得を生かして作戦勝ちを目指す」(『
矢倉道場 第四巻 新3七銀』(所司和晴,MYCOM,2002)まえがきより)のが狙い。ある意味自然な作戦ではあるが、▲6五歩を生かすか咎めるかの攻防になるので、先手が玉を固めるのは難しい。


114局におよぶ大量の参考棋譜は本書の強力なバックボーン。当然ながら森内の実戦だけではなく、プロ棋士全体の実戦から本文に関わるものが取材されている。本書を読むときは、必ずこの参考棋譜を並べること。「先手良し」とされている局面から実際は後手が勝っていることもあり、どの程度の良さなのかを実戦譜で体験することは重要だ。実際、わたしは本書の棋譜を並べたことで、矢倉戦の基礎体力は大幅に向上したと感じられた。

圧倒的な分量と、バリバリのA級八段(※数年後に森内は名人奪取、永世名人資格も獲得)による精緻な検討は、もはやそれだけで
S評価に値する。

ただ、本書の参考棋譜は残念なところが2つある。まず、
参考棋譜の解説は全くない。「先手良し」からそのまま押し切った将棋ならいいが、逆転した将棋の場合はどこがポイントだったかをつかむのは自力で検討するしかない。

次に、棋譜は総譜ではなく、本文の解説から「(以下参考棋譜○○)」となって、その
続きのみが章末に掲載されていること。「前から順番に本文を読みながら、随時棋譜並べする」のは特に問題ないが、「先に棋譜並べをしてから本文を読む」とか「本文をある程度通して読んでからまとめて棋譜並べをする」などという、いわゆる逆引き的なやり方は難しくなっている。特に分岐の階層が深い場合、棋譜の足りない部分を補うのがかなりつらく、本文中の分岐元の図を探して回ることになる。矢倉▲3七銀の場合、最初の数十手は同じ手順が続くことから省略したと思われるが、せめて基本図までの25手を省略する程度にとどめてほしかったと思う。

それらを差し引いてもやはり
Sとしておくが、現物を見ずに購入検討している場合は十分に注意してください。(2009May13)


※ところで、「下巻」は長らく出版されなかった。森内曰く、「書いているうちに結論が変わるので嫌になった」とのこと。わたしは、本書の直後に出版された『現代矢倉の思想』『現代矢倉の闘い』(森下卓,河出書房新社,1999)が▲4六銀型矢倉に対してあまりに出来が良かったので、▲4六銀を予定していた下巻が出しづらくなってしまったのでは…と邪推している(笑)。結局、10年を経て出版された『矢倉の急所』(森内俊之,浅川書房,2008.12)が▲4六銀型を扱っており、本書の下巻という位置づけになった。ただし、『矢倉の急所』は本書のような分析形式ではなく、比較的普通の定跡書形式である。

※どうして今頃になって本書をレビューしたかというと、『
矢倉の急所』の前にぜひ本書をレビューしておかなければ!と思ったから(笑)。しかしいざ取り組んでみると、その膨大な量にいささかの後悔を覚えた(苦笑)。

※役立ちメモ:
先手の基本的な考え方としては、次の選択が分かりやすい。
(1)3一玉型の△6五歩には▲同歩と取って受けにまわる。
(2)△2二玉と入城しての△6五歩には手抜きで攻め合う。
この(1)(2)を目安に考えておけば、まず間違いないと思う。
」(p117)



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棋書解説評価委員会
Capsule-Kaijuuの書評 いいたい放題
もずいろ 風変わりな将棋の部屋
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【関連書籍】
 『
矢倉の急所
[ジャンル] 
矢倉
[シリーズ] 
[著者] 
森内俊之
[発行年] 
1999年

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