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■イメージと読みの将棋観

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イメージと読みの将棋観
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イメージと読みの将棋観 [総合評価] A

難易度:★★★★

図面:見開き2〜4枚
内容:(質)A(量)A
レイアウト:B
解説:A
読みやすさ:B
上級〜有段向き

【著 者】 鈴木宏彦
【出版社】 日本将棋連盟
発行:2008年10月 ISBN:978-4-8197-0252-2
定価:1,575円(5%税込) 256ページ/19cm


【本の内容】
第1章 序盤戦 (1)中原、驚きの勝負術
(2)初手の戦略は
(3)2手目△3二飛の奇手
(4)居飛車穴熊に△6五歩急戦
(5)2手目△6二銀は通用するか?
(6)▲2五歩は決めるべき?
(7)いきなり筋違い角で勝てるか?
(8)後手番早石田は通用するか?
(9)角頭歩戦法は通用するか?
(10)プロに鬼殺しは通用するか?
(11)▲2四歩の先攻は本当に先手悪い?
(12)4手目△3三角戦法は成立する?
(13)阪田三吉、端歩のナゾ・その1
(14)阪田三吉、端歩のナゾ・その2
(15)向かい飛車に突っ張る△4二玉
64p
第2章 中盤戦 (1)高野山の決戦
(2)横歩取り△3八歩戦法は通用するか?
(3)右四間飛車の成否は?
(4)阪田三吉の一手損角換わり
(5)加藤一二三九段の大長考
(6)棒銀定跡の真相に迫る
(7)大山-内藤の熱戦
(8)山田定跡
(9)対藤井システムの急戦1
(10)対藤井システムの急戦2
(11)櫛田流は居飛車穴熊に攻め勝つか?
(12)ゴキ中超急戦の結論は?
80p
第3章 終盤戦 (1)鬼宗看の妙手
(2)大山-升田戦の終盤
(3)升田-大内戦の終盤
(4)阪田名人の誕生を阻止した男
(5)ゴミハエ論争の名局
(6)最古の棋譜は現代にも通じる?
(7)中原-米長、力の勝負
(8)中原-大内の名人戦
88p

・【幕間】「将棋観」読み/「将棋観」上達法あれこれ/「将棋観」勝負手/「将棋観」封じ手/「将棋観」千日手/「将棋観」理想的な時間の使い方は?
・谷川浩司十七世名人×羽生善治十九世名人 座談会−21世紀の将棋を語る

◆内容紹介
月刊「将棋世界」の人気講座がパワーアップして登場!新題を加えた選りすぐりのテーマ。また、羽生×谷川座談会も収録した。


【レビュー】
トッププロ6人の読み・大局観を詳細に解説した本。

同様のコンセプトで書かれた本に『読みの技法』(島朗/編著,河出書房新社,1999)がある。これは、当時A級棋士だった島が、トップ棋士3人(羽生、佐藤康、森内)に対して、評価の難しい局面をテーマ図として、各棋士の読みと大局観をインタビューするという、前代未聞にして空前絶後と思われた企画だった。

今回、ほぼ同じコンセプトで将棋世界に好評連載された「イメージと読みの将棋観」。本書はその講座から「最もインパクトの強かった題材を厳選し、さらに新テーマと、羽生・谷川両棋士によるビッグ対談を付け加えた」(p5まえがきより)ものである。

読みの技法』と異なる点をピックアップしていくと、

(1)トップ棋士の数が倍増(羽生、佐藤康、森内+谷川、渡辺、藤井)
 羽生、佐藤、森内は『読みの技法』にも選ばれているし、現在でもタイトルホルダー(連載当時)なので当然の人選。谷川はすでにピークを過ぎた感が否めないが、羽生世代を牽引した棋士としての選出か。渡辺は若手の旗手で竜王4連覇、かつ羽生世代とは少し異質な大局観が持ち味。藤井は振飛車党代表だ。十分な人選ではあるが、「ここまで来たら、羽生と互角の深浦、振飛車御三家の久保・鈴木大も入れっちゃってよ!」などと思ってしまう。

(2)読みよりも大局観やイメージを問う設問が多い
 特に序盤編は、初手から数手以内の局面も多く、読み云々よりも「こういう○○な局面なので、先手(or後手)を持ちたい」「先手勝率のイメージは○%」と形勢を言語化されているケースが多い。形勢を「勝率のイメージ」で表現させているのは従来の本にはあまりなかった。ちなみにプロの先手勝率は53%前後で、これは各棋士も承知しているので、序盤で互角の場合は先手勝率53%のイメージになる。

(3)古棋譜からの取材や、アマでよく指されている局面が多い
 『読みの技法』では、プロの定跡最先端や、形勢判断のかなり難しい局面が多かった。本書では江戸時代や昭和の将棋が多く出題されたり、プロの実戦がほとんどない局面(横歩取り△3八歩戦法とか)も取り上げられている。

(4)一人当たりの文章量は1/2〜1/3程度
 文章はインタビュー形式ではないので、要らない部分をかなり削ぎ落として圧縮しているようだが、それでも量は減っている。

(5)難易度はやや易しめ
 特に序盤編は、指し手を追っていくことが少ないので、読み物としてスイスイ読めていくと思う。


また、特に面白かったところ、気になったところをいくつかピックアップしておくと、

中盤編-2:「(横歩取り△3八歩戦法について)この変化は従来の定跡書にはほとんどかかれていない」とあるが、少なくとも3冊の本に書かれている。プロはあまり定跡書を読まないのかも?
中盤編-4:▲6六歩を突いていないのは、羽生「得」、森内「損」と評価が真っ二つ。
中盤編-1:羽生「後手自信なし」、佐藤「いい勝負」、森内「ひと目後手持ち」、谷川「分からない、形勢不明」、渡辺「先手(升田)はあまり強くない、陣形的に」、藤井「先手持ち」と、驚くほど評価がバラバラなのが印象深い。対局者名が伏せられているとはいえ、渡辺のコメントはまたアンチが増えそうだ(笑)。
中盤編-7:羽生「△3三銀は考えなかった」、佐藤「△3三銀以外浮かばない」この2人がガチンコすればそりゃ面白くなるよなぁ。
中盤編-8:山田定跡(四間飛車対急戦、△6四歩vs▲3五歩)。現代では四間側がこの形を避けることが多いのに、先手勝率のイメージが良くないのは驚き。
終盤編-1:宗看の妙手に辿り着いたのは渡辺だけ!(しかし読み切ってはいない)



実はわたしは将棋世界の連載を読んでいなかったので、前評判から「もうこれは読む前からSだよ!」などと思っていた。しかしいざ読んでみると、内容的にはもちろん満足しているのだが、意外とあっさりしていて、少し物足りなく感じた。

期待が高すぎたせいもあるだろう。しかし一番の原因は、「単行本でボツになったテーマが多数ある」ということだと思う。要はボリューム不足である。いや、全35テーマ+αが決して少ないとは思わない(『読みの技法』だって25テーマしかない)。ボツにしたこと自体が問題なのだ。もっともっとおいしく料理できたはずなのだ、この本は。「全収録+今回の新要素」なら、2,000円でも安いと思う。

総合的にはすばらしい良書だと思う。6人ものトップ棋士で意見が食い違うこともしばしばで、自分が持ちたい側と一人でも同意見の棋士がいれば勇気が湧いてくるし、全員に否定されれば自分の大局観を修正するのにも役立つ。プロは読みと大局観が不一致のまま戦っているのだと思えるし、何よりも読んでいて面白かった。

でも、「お腹いっぱい」ではない。高級料理店でコース料理を注文したはいいが、ボリューム不足で「え、もうデザート?!Σ(゚Д゚;)」という感じといえば分かってもらえるだろうか?(2009Mar01)

※なお、表紙もかなり地味だが、背表紙はもっと地味なので書店の本棚で見逃しそう。オリーブ色■に白抜きのゴシック文字です。




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【関連書籍】
 『
イメージと読みの将棋観(2)
[ジャンル] 
大局観
[シリーズ] 
[著者] 
鈴木宏彦
[発行年] 
2008年

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