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■疾風 谷川将棋

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疾風 谷川将棋 疾風 谷川将棋 [総合評価] A

難易度:★★★★

図面:見開き4枚
内容:(質)A(量)A
レイアウト:A
解説:A
読みやすさ:B+
上級〜有段向き

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【著 者】 谷川浩司
【出版社】 日本将棋連盟
発行:1983年7月 ISBN:4-8197-0101-0
定価:1,800円 237ページ/22cm/H.C.


【本の内容】
第一部 対中飛車編 ・実戦の前に ─基本の再認識─ =3p
第1局 内藤国雄九段戦
第2局 大内延介八段戦
第3局 大内延介八段戦
第4局 森安秀光八段戦
第5局 森けい二八段戦
第6局 内藤国雄王位戦
第7局 森安秀光八段戦
第8局 大山康晴王将戦
第9局 星田啓三七段戦
第10局 真部一男七段戦
第11局 伊藤果五段戦
第12局 山中和正七段戦
76p
第二部 対四間飛車編 ・実戦の前に ─基本の再認識─ =4p
第13局 小林健二六段戦
第14局 森安秀光八段戦
第15局 佐藤大五郎八段戦
第16局 西村一義七段戦
第17局 勝浦修八段戦
第18局 大山康晴王将戦
第19局 森安秀光八段戦
第20局 森安秀光七段戦
第21局 長谷部久雄七段戦
第22局 木下晃五段戦
第23局 大山康晴王将戦
第24局 森安秀光八段戦
第25局 米長邦雄棋王戦
第26局 伊藤果四段戦
第27局 河口俊彦五段戦
第28局 木村義徳八段戦
108p
第三部 対三間飛車編 ・実戦の前に ─基本の再認識─ =4p
第29局 淡路仁茂六段戦
第30局 劔持松二七段戦
第31局 中田章道四段戦
第32局 木村義徳八段戦
第33局 木村義徳七段戦
第34局 淡路仁茂五段戦
39p
  番外編 第35局 内藤国雄九段戦 6p

・【付録】谷川浩司名人記録=3p

◆内容紹介(はしがきより抜粋)
私は、四段当時まで振飛車ばかり指していた。が、五段になった頃から、180度転換して、居飛車を好んで指すようにした。(中略)自分に向いている戦法をさがすために始めた居飛車、攻めの将棋が私に合っていて、当分は、居飛車党で続けていこう、と思っている。

対振飛車では、(中略)私自身の好みとしては、やはり急戦である。玉の囲いは簡単にしておいて、一手でも早く仕掛け、隙あらば、一気に潰してしまう、というパターンである。押さえ込む攻めより、捌き合う攻めの方が好きなので、対中飛車には3八飛戦法、対四間飛車には4六銀戦法、というのが得意戦法である。共に、飛角銀または飛角桂で、軽く攻めることができるのが特徴である。(中略)

本書は「振飛車破り」の本なので、特に仕掛けに重点を置いた。


【レビュー】
振飛車破りの自戦記集。谷川のデビュー早々の1977年から、名人になる直前の1983年までの実戦から、急戦調で振飛車と戦った将棋を、計35局自戦解説している。



はしがきに「一手でも早く仕掛け」(p2)、「押さえ込む攻めより、捌き合う攻めの方が好き」(p2)とあるように、このころの谷川は持久戦調を目指さず、できるだけ急戦調での将棋を好んでいた。

大山の言葉に「一度目のチャンスは見送る」というのがあるが、谷川はそれに反発するように(?)、「一度目のチャンスで仕掛ける」(p12)をモットーとする。ただし、仕掛けが早いということは、十分に力を溜めてからではないので、結構長い中盤戦になりやすく、相手の棋風によっては厚み重視の陣形再構築を進めていることも多い。

それでも、序盤・中盤・終盤のいずれにおいても、「チャンスがあれば踏み込む」という姿勢は一貫している。



本書は、振飛車側の戦型別に三部構成となっている。各部の冒頭では、「実戦の前に ─基本の再認識─」と題して、簡単な定跡講座がある。姉妹書の『青野流近代棒銀』(青野照市,日本将棋連盟,1983)と比較すると、非常にシンプルな講座になっているので、本書だけで基本定跡をマスターするのは難しい。

本書で出てくる戦型は、例えば「羽生の頭脳」シリーズを読むとよく分かる。逆に、定跡の結論を知っている人は、「これにて○○良し」が生きた実戦でどの程度の差になっているのか、本書の棋譜を並べると理解が深まると思う。

棋譜を並べるときは、将棋ソフトを使うのがオススメ。本書の場合、解説量が比較的多い割に、図面が見開き4枚しかないので、頭の中だけで図面を想定するのは大変な時がある。また、リアル盤駒で並べていると、解説の局面が少しとんだときに盤上の駒を戻すのが少々難しい。将棋ソフトでそのページにある棋譜を並べてから、下段の解説に合わせて局面を巻き戻せば理解しやすい。



本書の35局を下記のリストアップしておくので、興味のある戦型があれば並べてみてほしい。

〔第一部 対中飛車編〕
ここで「中飛車」といえば、角道を止めて、居飛車の急戦に対しては△3二金と上がる形のこと。「風車」も含まれる。当時ゴキゲン中飛車はまだない。
[講座] ▲4六金戦法、▲4五歩早仕掛け、▲3八飛戦法
  対戦相手 (主に)居飛車の作戦 対局日 棋戦 コメント
第1局 内藤国雄 ▲3八飛戦法 1980.03.10 王座戦 △9五歩突き越し型。筋良く指し過ぎて逆転負け。
第2局 大内延介 △7二飛戦法 1981.11.16 名将戦 ▲風車型中飛車。本譜の△8六歩〜△8五歩〜△同桂の仕掛けが有力か。
第3局 大内延介 ▲3八飛戦法 1982.09.28 名人挑決リーグ △風車型中飛車。第2局と同じ攻め方だが、先後のわずかな違いで変化が異なる。中盤以降の指し手の勢いが際立つ一局。
第4局 森安秀光 ▲3八飛戦法 1981.06.22 オールスター戦 △風車型中飛車。▲2四歩〜▲2五歩の継ぎ歩に森安は△2三金!
第5局 森けい二 △7二飛戦法 1981.11.10 昇降級リーグ1組 ▲7九金型
第6局 内藤国雄 ▲3八飛戦法 1983.04.05 日本シリーズ ▲3八飛にいきなり△4五歩
第7局 森安秀光 △7二飛戦法 1982.05.20 十段戦 △7二飛に▲6八金
第8局 大山康晴 ▲4五歩早仕掛け 1982.11.18 棋聖戦  
第9局 星田啓三 ▲4五歩早仕掛け 1980.12.11 十段戦  
第10局 真部一男 ▲5筋交換型中飛車 1982.10.26 棋聖戦 先手が序盤で5筋歩交換→後手が相中飛車で反発→先手は手薄な8筋に転戦したが、無理筋
第11局 伊藤果 △5筋交換型中飛車 1982.09.13 NHK杯 風車阻止のため、序盤で▲6六歩とした将棋
第12局 山中和正 △中飛車穴熊
▲角田流6六角
1979.12.21 昇降級リーグ3組 ▲6六角〜▲8八銀〜▲7七桂で9筋を直接攻める。地下鉄飛車ではなく、▲9七銀〜▲8六銀と行く



〔第二部 対四間飛車編〕
[講座] 右四間飛車、▲5七銀左戦法、▲左4六銀戦法、棒銀戦法
  対戦相手 (主に)居飛車の作戦 対局日 棋戦 コメント
第13局 小林健二 △左6四銀 1982.10.15 棋聖戦 p90「大きな駒の交換後は、その持ち駒を有効に使うために、先手を取るのが重要
第14局 森安秀光 △左6四銀 1982.07.22 名人挑決リーグ  
第15局 佐藤大五郎 ▲右4六銀 1981.07.24 昇降級リーグ1組  
第16局 西村一義 △右6四銀 1981.06.30 昇降級リーグ1組 △6四銀に▲7八銀(出戻り銀)だったので、△7三桂〜△8四飛型となった
第17局 勝浦修 ▲右4六銀 1981.10.09 十段戦 後手は△3二金型で対抗
第18局 大山康晴 △右6四銀 1981.05.07 王位戦 銀を出る前に△7二飛と寄っている
第19局 森安秀光 ▲右4六銀 1981.05.22 十段戦 第18局と同様に、▲3八飛〜▲4六銀。手数180手の泥沼将棋に
第20局 森安秀光 ▲左美濃
+右4六銀
1979.11.30 王座戦 これも157手の長手数に。
第21局 長谷部久雄 ▲左美濃
+右4六銀
1980.07.22 昇降級リーグ2組 準急戦にしたが、再仕掛けを焦ったため不発。
p142「(形勢が)悪いと認めればすぐに開き直るのが、私の特徴
p144「玉頭戦は、駒の量の勝負なので、駒をためこまずに、ベタベタと打ってゆくのがポイント
第22局 木下晃 △右5三銀
+7二飛
1981.06.12 王将戦 仕掛け前に△7二飛と寄っているが、鷺宮定跡ではない。△1三角と出るという、定跡書ではあまり見かけない珍しい作戦
第23局 大山康晴 ▲右5七銀
+3八飛
1982.05.10 王位戦 p157「形勢が良い場合は、駒を惜しまないことが大事
第24局 森安秀光 ▲4五歩超早仕掛け 1982.08.20 十段戦 谷川の研究手。△7二銀を先にする美濃囲いに対し、8二に打ち込みの隙があるということで、船囲い基本形からいきなり▲4六歩〜▲4五歩と仕掛けていく。定跡書ではあまり見かけない仕掛け。
〔右図〕で△3三角なら▲4五歩△同歩▲3三角成△同銀▲8二角が狙い。本譜の△7一玉なら、2二角が浮いているのでやはり▲4五歩と仕掛ける。
第25局 米長邦雄 ▲5七銀左
〜▲3五歩
1982.10.12 十段戦 リーグ戦の消化試合だったためか(?)、定跡通りの展開。
第26局 伊藤果 △右四間
+左美濃
1978.03.17 昇降級リーグ4組 △5五銀からいったん銀交換
第27局 河口俊彦 △右四間
+左美濃
1979.11.16 昇降級リーグ3組  
第28局 木村義徳 △四間穴熊
▲角田流6六角
1982.08.06 棋聖戦 第12局との違いは、▲8六歩〜▲8七歩で銀冠の余地を残しつつ、▲9六銀〜▲8五銀を狙っているところ


〔第三部 対三間飛車編〕
[講座] (▲3七桂早仕掛けからのバリエーションとして)▲4五歩早仕掛け、▲5五歩早仕掛け、
(1筋の突き合いがあるときの仕掛けとして)端攻め(1)(2)
  対戦相手 (主に)居飛車の作戦 対局日 棋戦 コメント
第29局 淡路仁茂 急戦 1980.01.25 連盟杯 右桂を跳ねずに▲2四歩〔右図〕〜▲4五歩〜▲5五歩の仕掛け。△7二銀と締まる前に開戦したい、という意味。
有力ではあるが、本文には「(▲2四歩を入れずに)単に4五歩、同歩、5五歩(が正着)だったかもしれない」(p196)とあり、「最初の2四歩、同歩が余計だったために無理筋となったが仕掛け自体は成功していると思う」(p201)ともある。
第30局 剱持松二 △三間穴熊
▲3七桂
1980.11.06 昇降級リーグ2組 p204「(急戦で)穴熊を負かすには、有利になっても急がないことが大切
第31局 中田章道 ▲腰掛銀 1977.12.13 昇降級リーグ4組 現代ではほとんど見ない作戦。詳細は下記↓を参照。
第32局 木村義徳 ▲腰掛銀 1982.01.08 棋聖戦 第31局、第32局ともに右四間ではない。腰掛銀から▲6六歩と突き、6筋位取りを見せて△6四歩と突かせ、6筋歩交換をして〔右図〕、駒組みに進展性を持たせる。持久戦気味の将棋。

歩交換後に△6四歩と打ってくれれば、居飛車作戦勝ちになりやすそう。現代ならこの作戦はほとんど忘れられているので、実戦的な有効性は高そうだ。

ただし、本書では2局とも簡単に△6四歩と謝ることはせず、6筋への反発や、手持ちの一歩を利用して石田流本組から2筋逆襲が来た。

p216「悪い将棋が良くなったら、強気で押しまくる
第33局 木村義徳 △独走銀模様 1979.02.10 棋聖戦 ▲5七金と上がって独走銀を牽制し、結果的には5筋位取りになった。
第34局 淡路仁茂 △鳥刺し 1977.12.27 棋聖戦  


〔番外編〕
  対戦相手 (主に)居飛車の作戦 対局日 棋戦 コメント
第35局 内藤国雄 △阪田流向飛車
+筋違い角
1981.07.11 名将戦  
(2016Mar29)

※誤字・誤植等(第1刷で確認):
p36 ×「昇降級リーグ戦3組」 ○「昇降級リーグ戦1組
p204 ×「そのためでめる」 ○「そのためである」



【関連書籍】
 『
青野流近代棒銀
 『
森安流四間飛車

[ジャンル] 
自戦記
[シリーズ] 
[著者] 
谷川浩司
[発行年] 
1983年

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