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■プロへの道

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プロへの道
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プロへの道 [総合評価] A

難易度:★★★★

図面:見開き3〜5枚
内容:(質)A(量)A
レイアウト:A
解説:B
読みやすさ:B+
上級〜有段向き

【著 者】 深浦康市
【出版社】 日本将棋連盟/発行 毎日コミュニケーションズ/販売
発行:2009年5月 ISBN:978-4-8399-3264-0
定価:1,575円(5%税込) 224ページ/19cm


【本の内容】
プロローグ −目標としていた先輩に勝つ−
憧れの名人との対局 −谷川名人との飛車落ち戦−
師への恩返し −天命か、師匠との決戦−
新たなるスタート
プロの厳しさ −昇級どころか降級か−
成長のとき −ひたすら技術を追求するとき−
新しい目標へ −とてつもなく長い時間−

・【コラム】思い出のワンシーン(1)〜(7)
・【参考棋譜】56局

◆内容紹介
「九州にタイトルを持って帰る」王位戦でそう公言した深浦康市は、フルセットの激闘の末、羽生善治からタイトルを奪取。見事約束を実現。昨年も羽生を退けて王位を防衛しました。
本書は、長崎県佐世保市に育った
深浦がどのようにプロ棋士となっていったかを解き明かしたものです。深浦の子どものときからの指導者が、プロになる厳しさと大変さ、そしてそれを実現していった深浦の様子を克明に記しています。
また、奨励会での熱戦譜など、深浦少年の棋譜を約60局収録。そのうち奨励会三段リーグの棋譜が40数局。プロを目指す者たちの棋譜には、トッププロ同士の戦いにも負けない熱い思いがぎっしりと詰まっています。プロ棋士を目指す子どもや、その指導者の方はもちろん、プロの片鱗に触れたい将棋ファンにも必読の書と言えましょう。


【レビュー】
深浦康市(現・九段)の修業時代を解説した本。

プロ棋士になるためには、通常は奨励会に入会し、勝ち星を重ねて昇段し、三段リーグを勝ち抜いて四段に昇段する必要がある。これまで、奨励会での苦闘を描いた作品は数多く存在するものの、現役のトップ棋士がどのように奨励会を潜り抜けてきたかを詳細に書いた本はあまりなかった。

本書は、深浦の奨励会入会から四段昇段までを詳しく解説した本である。



本書のコンテンツは、大きく以下の4つに分類できる。

(1) 「藍より青く」
深浦のアマ時代の師匠である川原潤一氏が、日本将棋連盟・佐世保支部発行の『棋楽』に書いたエッセイ。深浦の子ども時代がリアルに描かれている。

弟子入り(?)時の様子、棒銀と対振り急戦を徹底的に叩き込んだこと、小学生名人戦などの対外試合に連れて行ったこと、戦いを共にしたライバルが将棋から離れてしまったこと、プロ入りへの決意、花村(深浦のプロでの師匠)への弟子入り…などなど。


(2) 「思い出のワンシーン」
深浦の書いたコラム。(1)の「藍より青く」では、大人の川原氏から見た深浦像が描かれていたが、こちらでは同じシーンが深浦目線で描かれていたりする。


(3) 自戦記
…というよりは、自戦解説が6局。次の「参考棋譜」と基本的には同じで、節目の対局を8ページにして、解説と思い出を増量したもの。通常の自戦記のような散文形式ではなく、「(A)▲4八飛(途中1図)=飛車落ち定跡の定番である…」というような、棋譜解説形式を採用している。


(4) 参考棋譜
棋譜解説が計56局。アマ三段時代からスタートし、奨励会三段まで。中には、あの大田学との飛車落ちもある。

第16局〜第56局の41局はすべて三段リーグのもの。多い戦型は、先手番では矢倉、後手番では基本的に2手目△8四歩で矢倉・角換わり・相掛かり(先手の対応次第)、対振り飛車は左美濃持久戦。

また、対局相手には現在プロで活躍中の棋士も多数登場する。登場順に列挙すると、高野秀行、勝又清和、三浦弘行、畠山鎮、伊藤能、郷田真隆、丸山忠久、平藤眞吾、佐藤秀司、杉本昌隆、北島忠雄、豊川孝弘、飯塚祐紀、藤井猛、金沢孝史。

基本的なレイアウトは、見開き2ページで1局。図面は4〜5枚あるが、頭の中だけで並べるのは大変なので、盤駒か将棋ソフトを使って並べたほうが良い。

(3)(4)に共通しているのは、解説はシンプルで、細かい手順より考え方が重視されていること。また、まだプロになっておらず、人に見せる必要のない将棋なので、徹底的に粘ったり、場合によっては最後の一手詰めまで指していたりという、生々しさを感じる棋譜もある。深浦の「棋譜ノート」に記された当時のコメントも臨場感を増幅させる。



本書でキーとなる内容を順番に抜粋してみた。

・同時に川原氏に入門し、切磋琢磨した1コ上の先輩に勝った嬉しさ
・結果的に、それがキッカケでその先輩は将棋から離れてしまった寂しさ
・谷川名人(当時)に飛車落ちで勝った嬉しさと、その後の決意
・「15歳までに2級(以上に昇段)」という川原氏の条件
・6級で1年停滞し、Bにも落ち、昇級できず、悩んで、棋譜を記録するようになったこと
(※そのおかげで本書がある)
・その後、2級まで一気に昇級したこと。
・「彼(深浦)自身が立てた目標を一つ一つやり遂げている」(p100)
・「例会が終わって家に帰った後、『
中原流 最強左美濃』(1986)を読んで反省した」(p104)(※アマ低段者向けの本だと思うが、奨励会2級でも役に立つとは…)。
・「とにかく暇な時間を作らないように心がけました」(p122)
・「級位者の頃は、大局観や技術の習得が課題」「有段者になると…精神面の強化が重要」(p218)
・「つらくとも将棋から離れてはいけない」「精神的につらくとも将棋を好きでいる自分でいました」(p220)


将棋が強い小中学生で、「将来プロになりたいなぁ」と漠然と考えている人は、一度は本書を通読し、すべての棋譜を並べてみよう。その上で、「この道なら自分にも通れそうだ」と思えれば良し。

また、自分の子どもがそこそこ将棋が強くて、「将来プロにさせたいなぁ」と思っている親御さんも、文章部分だけでも良いので読んでみよう。単に奨励会の困難さを語った本だけでなく、実際に通過して活躍している棋士の声を聴いてみたうえで、自分の子どもに通らせる道かどうか考えてみよう。

というような条件に該当する人は、どちらかといえば稀だと思うので、我々のような一般の将棋ファンは、普通に棋譜を並べて楽しもう。持時間がアマに近い設定(級位者60分、有段者90分)なので、完璧な読み切りよりも勝ち易さ・負け難さを重視した棋譜になっていることが多く、実力upには十分役に立つと思う。

逆に、せっかくの計62局を並べないと、本書の価値は半減以下になってしまうのでもったいないです。(2016Mar20)


※当初、本書のカテゴリを「エッセイ」にしていましたが、通読してみると「自戦記」の色が濃い本でしたので、カテゴリ変更しました。m(_ _)m

※誤字・誤植等(初版第1刷で確認):
p93 中段 ×「△5九角に…」 ○「△5一角に…」
p158 棋譜 下段10行目(70手目) ×「△同歩 ▲4五銀 △同銀」 ○「△同飛 ▲4五銀 △同銀直
p164 棋譜 上段 「(A)△8六歩」⇒(A)が12手目の△8六歩に付いているが、18手目の△8六歩に付けるべき。



【関連書籍】

[ジャンル] 
自戦記
[シリーズ] 
[著者] 
深浦康市
[発行年] 
2009年

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