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■後手番で勝つ戦法

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後手番で勝つ戦法
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将棋最強ブックス
後手番で勝つ戦法
[総合評価] C

難易度:★★★

図面:見開き4枚
内容:(質)B(量)B
レイアウト:A
解説:B
読みやすさ:A
中級〜上級向き

【著 者】 高橋道雄
【出版社】 創元社
発行:2013年9月 ISBN:978-4-422-75141-2
定価:1,365円(5%税込) 224ページ/19cm


【本の内容】
第1章 第1章 ゴキゲン中飛車戦法 ・後手から1筋を突き合う場合
・後手が玉頭位取り
・後手が左美濃
・後手が銀冠穴熊の場合
・覚えておきたい復習問題=8問
64p
第2章 横歩取り△8五飛戦法 ・昔からある▲2六飛
・現代風の▲2五飛
・後手△7四歩型
・後手△3三角型
・▲2五飛型にならない変化
・覚えておきたい復習問題=8問
82p
第3章 相振り飛車での三間飛車戦法 ・後手が左美濃化金無双を目指す場合
・後手が美濃囲い
・後手が金無双
・後手が矢倉囲いを目指す場合
・覚えておきたい復習問題=8問
72p

◆内容紹介
「後手番になるといつも受け太刀になり、攻め倒されてしまう」「後手でも自分からどんどん動いていって戦いたい」「後手番での得意戦法を持ちたい」。そんな希望を持つ方の手助けになるのが、この一冊だ。ゴキゲン中飛車、横歩取り△8五飛、そして相振り飛車と、後手ながら積極的に動ける戦法を解説。これらの戦法をしっかりマスターすれば、もうこわいものなし。自信を持って後手番で指すことができるようになる!


【レビュー】
後手番の3戦法に関する解説書。級位者向け。

将棋は基本的には先手が主導権を握りやすいゲームである。後手番はどうしても受け身になりやすいのだが、後手でも主導権を持って戦いたいという人も多いだろう。

本書は、後手番ならではの本格的戦法で、級位者にオススメのものを解説した本である。

解説されている戦法は3つ。各章の内容をチャートを添えながら紹介していこう。

なお、本書では後手番の戦法にスポットを当てているため、棋譜や解説はすべて先後逆で表示されている(たとえば初手は△3四歩である)が、本レビューのチャートではすべて先後を元に戻しておく。


第1章は、△ゴキゲン中飛車。初手から▲7六歩△3四歩▲2六歩△5四歩の出だしで始まる中飛車で、その歴史は約15年。当初は力戦や奇襲扱いだったが、現在では△振飛車の主役である。

先手の対策はいろいろあり、現在のプロでは▲超速が主流だが、本章の前半では「丸山ワクチン+佐藤新手」からの持久戦を扱う。丸山ワクチンとは、後手が中飛車を明示した瞬間に角交換する手法のこと。また、佐藤新手とは、角交換後に▲9六歩△9四歩の交換を入れてから▲7八銀として、堅く囲う手法のことだ。なお、本書では解説を簡略化するためか、先に▲9六歩△9四歩としてから角交換している。

 〔本章で学べること〕
  ・居飛車の右金が上がったら逆棒銀
  ・p21〜 △2五桂ポン〜△3五歩〜△3七桂成(捨て)〜△3一飛から3筋突破
  ・p33 △2五桂ポンができるとき、できないとき
  ・△5五銀ぶつけの銀交換から6筋の勢力の取り合い(厚み重視の高橋らしい指し方)


また、後半では▲居飛穴を扱う。後手は5筋位取り+振り穴で対抗する。

 〔本章で学べること〕
  ・飛は△3五歩〜△5四飛〜△3四飛と捌く
  ・ちょっかいと出してから固め合う感覚





第2章は、横歩取り△8五飛戦法。初手から▲7六歩△3四歩▲2六歩に△8四歩と突けば、ほぼ横歩取りの出だしになる。一歩損の代償に、後手が先に堅い囲いと攻撃形を作りやすい。

この戦法も歴史は約15年で、トッププロに居飛車党が多いこともあり、タイトル戦でも数多く指されている。一時期、集中的に研究されてコピー将棋のような世界になった後、新山ア流の脅威によって廃れかけたが、新対策が出てきたり、△5二玉型中原囲いや△8四飛型の再検討などで大幅に世界が広がったため、現在でも指されている。

本章では、後手は△8五飛+△4一玉型中原囲い。先手は中住まい(金開き型)を採用している。

 〔本章で学べること〕
  ・p82 △4二玉型の中原囲いはリスキー
  ・p86 安易に守りに歩を使わない
  p107 △2五歩と打って先手の飛車を押さえるのは、▲2八飛と引く形の時だけ
    (▲2九飛と引ける形では効果が薄い)





第3章は、相振飛車。初手から▲7六歩△3四歩▲6六歩と角道を止めてきたときに、△3二飛とする。相振りでの△三間飛車はスピードがあり、先手よりも先に仕掛けやすい。

相振飛車の歴史は古いが、かつては力戦とされていた。急速に注目されるようになったのはここ10年くらいで、一時期はトッププロや居飛車党がやたらと相振りを指していたこともある。最近はややブームが沈静化した感じがあるが、▲振飛車の攻略が苦手な人にはオススメの戦法だ。

本章では、飛の位置は▲向飛車vs△三間飛車。玉型は、後手は美濃囲いで固定、先手は美濃、金無双、矢倉を扱う。後手の指し方はほぼパターン化されていて、覚えやすい。

 ・早めに3筋の歩を交換して△3四飛と引く。
 ・玉型は△7一玉型美濃囲い。
 ・角道を止めず、△3三銀〜△4四銀〜△3三角とセットして、将来△3五銀と出る。
 ・2筋の歩を伸ばすかどうかは先手の陣形次第。


なお、攻撃形は戸辺流(『戸辺流相振りなんでも三間飛車』(戸辺誠,MYCOM,2009)の第3章)と似ているが、玉の囲いなどはかなり違っている。本書の方がいい意味で大雑把だ。

 〔本章で学べること〕
  ・相振りでの美濃崩し基本形を実戦で実現させる
  ・金無双を端攻めでつぶす
  ・矢倉に組まれる前に4筋を突き上げる





なお、各章末にある「復習問題」は、本書では完全に“復習”であり、本編を補完する内容はほぼない。



第1章のゴキゲン中飛車、第2章の横歩取り△8五飛ともに、この15年でプロの最先端で戦われており、それがゆえに定跡書が非常に難解になっている。本書は、基本的な狙いを確認するには有用だ。

半面、細かい変化を網羅しているわけではないし、一直線の変化が書かれているわけでもないので、「手順を暗記して一発入れてやろう」という使い方はできない。むしろ、戦い方の流れを重視し、「こういう感じなら後手でも自分の力が出せるな」という方向に持っていきたい。

どちらにしても、本書だけでゴキ中や△8五飛を指しこなすのはちょっと厳しい。

一方、第3章の相振り編はなかなか参考になりそうだと思う。先手の指し方がちょっとおとなしすぎるきらいはあるものの、後手の陣形が分かりやすく、破壊力も防御力もある。どのレベルまで通用するかは分からないが、かなりいい線まで行きそうだ。

相振飛車が好きな人や、「なにかいい作戦があれば相振りを指してみたいなぁ…」と思っている人は、第3章だけでも読んでみてはいかがだろうか。

「(初段を目指す人が)後手で勝つ戦法」のチョイス的に、ゴキ中と△8五飛戦法がちょっと微妙なので総合評価Cとしたが、勝ち方の例としては解説は悪くない。本末が逆気味だが、本書の戦法をある程度指してみた後に読んでみると、「こうやって指すのがいいのかぁ」ということが分かるかと思う。その場合はBになるだろう。(2013Oct11)


※誤字・誤植等(第1版第1刷で確認):
p49 「銀冠」に「ぎんかん」とルビが振ってあるが、「ぎんかんむり」と読む方が一般的。なお、会話の中では「ぎんかん」もよく使われているので、間違いではない。



【関連書籍】

[ジャンル] 
総合定跡書
[シリーズ] 
将棋最強ブックス
[著者] 
高橋道雄
[発行年] 
2013年

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