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■つるの将棋七番勝負

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つるの将棋七番勝負
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つるの将棋七番勝負
アマチュア三段が挑む夢の血涙対局!
[総合評価] B

難易度:★★★☆

図面:見開き7〜8枚
内容:(質)A(量)C
レイアウト:A
解説:A
読みやすさ:A
中級〜有段向き

【著 者】 つるの剛士
【出版社】 幻冬舎エデュケーション
発行:2013年10月 ISBN:978-4-344-97756-3
定価:1,470円(5%税込) 160ページ/21cm


【本の内容】
第一番 先崎学八段 ・対局 手合割=飛車落ち
・対談 「多才」について
 余技が“将棋”に深みを与える
  −世間との感覚のズレを意識して書く
  −自分の役割を将棋の駒で考える
  −黄金世代の葛藤
22p
第二番 矢内理絵子女流四段 ・対局 手合割=角落ち
・対談 「女流」について
 女流棋士の飛躍が、将棋界の裾野を広げる
  −男女の“違い”と将棋の“差”
  −女流棋士の持つ、強さと華やかさの両面を
22p
第三番 加藤一二三九段 ・対局 手合割=角落ち
・対談 「継続」について
 勝ちを重ねたからこそ、語れる“負け”がある
  −負けを巡る、ふたつの不思議な出来事
  −倒れても、何かをつかんで立ち上がる
  −棋譜を通じて、ファンを感動させる
20p
第四番 北尾まどか女流二段 ・対局 どうぶつしょうぎ
・対談 「普及」について
 将棋を通じて、日本文化を伝えていく
  −将棋の魅力が詰まったシンプルな形
  −棋力よりも大事なことがある
  −どうぶつしょうぎは、家族をつなぐもの
20p
第五番 羽生善治三冠 ・対局 手合割=飛車落ち
・対談 「頭脳」について
 柔軟に変化し続ける思考
  −自分のテリトリーを広げていく
  −子どものうちから“物差し”をたくさん手に入れる
  −羽生先生のプライベートを大公開!?
20p
第六番 森内俊之名人 ・対局 手合割=飛車落ち
・対談 「同志」について
 “永世名人”へと導いたライバルたち
  −棋士の下地を培った10代の頃
  −最初に出会った友人が最強の棋士だった
  −一局指せば、相手のことはだいたいわかる
22p
第七番 渡辺明竜王 ・対局 手合割=飛車落ち
・対談 「世代」について
 次世代将棋−変わること、変わらないこと−
  −いつか親子で真剣勝負をしてみたい
  −子どもから好奇心の“熱”を感じ取る
  −将棋の勝敗を分けるのは棋士の総合力
21p

◆内容紹介
つるの剛士が挑む! 最強棋士との夢の七番対局・対談集!
現代を代表する最強棋士と、アマチュア三段のつるの剛士氏の将棋七番勝負をまとめた対局・対談集。

迫力ある対局の様子を、棋譜をたどりながら、写真、本人たちの感想をまじえて紹介。
こどもに大人気の「どうぶつしょうぎ」対局も。
つるの剛士氏と棋士による丁寧な解説で将棋ファンはもとより、これから将棋をはじめたい人にも必読の書。
また、普段は表れない棋士の素顔も垣間見えるテーマ別の対談も収録。魅力的なエピソードも満載。
つるの剛士氏を通して、読者自身がプロ棋士と対局するような気持ちで読み進めていくことができます。


【レビュー】
タレント・つるの剛士がプロに駒落ちで挑んだ「七番勝負」を記録した本。

つるの剛士は、さまざまな分野で活躍するマルチタレントだ。小学低学年時から芸能界入りを志し、22歳の時に「ウルトラマンダイナ」の主人公役を演じ、32歳で「ヘキサゴンU」にて“おバカタレント”としてブレイクした。(なお、高校受験時に偏差値を36から63まで上げたことが書かれており、決して“バカ”ではない)

一方、多芸としても知られ、育児番組ではまじめなイクメンとしての顔を持ち、「関ジャニの仕分け∞」では“歌うまタレント”として本職歌手の挑戦を受ける側である。その他、サーフィン・釣り・野菜作りの造詣も深く、それぞれ芸能界での仕事に役立っている。

もちろん、将棋の実力もある。25歳から将棋にのめりこみ、新宿将棋センターに通って強くなったとのこと。(同じ時期にわたしも新宿将棋センターに行ったことがあるので、ひょっとしたら本人がいたことがあるかも…?)「将棋フォーカス」の司会もこなし、現在の実力は三段だそうだ。

本書は、つるのが有名棋士7人と駒落ちで対局し、その感想戦の模様と対談を記した本である。


有名人がプロと駒落ちで対局するという企画の本は昔からあり、古くは山口瞳(小説家)、石垣純二(医師)、大橋巨泉(司会者)、安部譲二(作家)、団鬼六(作家)などが自戦記を残しているが、この企画で新刊が出るのは実に14年ぶり。

また、過去の多くの本は自戦記形式だったが、本書では「感想戦の模様を対談形式」で記している。対局者のプロによって、好手・悪手・疑問手の指摘があり、どのように指せばよかったかを教えてくれる。初級者が読んでも分かるように、投了図の解説もある。

各局の展開を概説してみよう。

●第1局 vs先崎学八段、手合い=飛車落ち
「弱い三段」や「三段格」では、プロ高段者を相手に飛車落ちでは厳しそうだが、さてどうか…?

戦型は▲中飛車。序盤は無難にこなし、上手△6五歩位取りに対して▲6八飛と寄って、左金をスムーズに玉側に引き寄せ、銀冠の堅陣を構築。その後は強気の捌きで飛を侵入させ、終盤もたついたものの見事に勝利し、「立派な三段」を認定された。

 序盤○、仕掛け◎、中盤◎、終盤△


●第2局 vs矢内理絵子女流四段、手合い=角落ち
戦型は手合いが変わったが▲中飛車。序盤のポカで角銀両取りを食らう局面を作ってしまうが、矢内はスルーした。「深読みした」との旨が書かれているが、おそらく序盤で将棋を壊したくなかったものと思われる。無難な展開になり、下手は再三の好手で勝勢まで持ち込んだが、着地に失敗。急所の成銀を王手で取られる筋を避けて、頓死してしまった。ただ、この負け方はつるのが弱いというわけではなく、アマ三段くらいがよく上手にやられるパターンかと思う。

 序盤△、仕掛け◎、中盤◎、寄せ○、最終盤△

対談で「(矢内が)いつか結婚するのか?」と訊かれて、「近いうちにそういうご報告ができればと思っているんですけどね」と答えているが、本書が出版される前(2013年9月4日)に婚約発表されちゃいました!


●第3局 vs加藤一二三九段、手合い=角落ち
手合いはなんと矢内戦と同じ角落ち。いくら御年73歳の大ベテランで全盛期の力はないとしても、まだ実力でC級1組をキープしている元名人に角落ちはないんじゃないの……。と思ったら、何かの手違いだったらしく、つるのは飛車落ちのつもりだったそうだ。

戦型は再び▲中飛車。上手から仕掛けられた△7五歩を取らず、代償がなかったため、下手は銀桂の丸損からフルボッコにされてしまった。加藤はまったく緩めなかったが、やはり角落ちと言われて発奮して(というか怒って?)いたのかなぁ。(※感想戦ではそういう感じはなかったです)

 序中盤△、(大差なので)中終盤は評価なし


●第4局 vs北尾まどか女流二段、手合い=どうぶつしょうぎ
北尾女流が創案し、普及させたどうぶつしょうぎで勝負。つるのも現在の芸能人でもっとも普及に貢献できそうな人物なので、こういうのも一興である。


さて、ここからはタイトルホルダー3連戦だ。

●第5局 vs羽生善治三冠、手合い=飛車落ち
再び手合いは飛車落ちに戻った。ここからの3局は、つるのは中飛車をやめて▲石田流に構えるようになった。その経緯は特に書かれていない。

わたしも飛車落ちで▲石田流をよく指しているが、Rocky流は玉の囲いをなるべく後回しにして左辺を充実させる。そのため、右辺は上手の玉頭位取りに耐えられるように、金無双型や▲3九玉型金美濃になることが多い。

つるの流は、▲石田流に振った後は、オーソドックスな美濃囲いから高美濃〜銀冠と発展させ、戦機を待つ。

ポイントは、美濃が完成したらすぐに(▲4六歩より先に)▲3六歩を突いて、上手の玉頭位取りを拒否すること〔右図〕。これは、本局の感想戦で羽生から伝授された秘手(?)で、第6局・第7局での下手勝利の原動力となっている。

本局では、上手の玉頭位取りを許したため、終盤のミスから玉頭戦を喫して、下手の逆転負けとなった。

 序盤○、仕掛け◎、中盤○、終盤△


●第6局 vs森内俊之名人、手合い=飛車落ち
本局も▲石田流。前局の教えを守ってしっかりと銀冠に囲い、上手の金銀が上ずったのを咎め、角銀vs金という大きな駒損ながらも強引に飛を成りこんだのが奏功し、自陣の堅さを頼りに寄せ切った。

 序盤○、仕掛け○、中盤◎、終盤○


●第7局 vs渡辺明竜王(三冠)、手合い=飛車落ち
本局も▲石田流。第6局と同様に銀冠に組み、戦機を待った。印象的だったのは、中盤でガチャガチャやった後に、▲5四歩の後ろに打たれた▲5五銀。厚み重視の棋士によく見られる手で、並の三段には指せない手だなぁと思った。これまでの駒落ち実戦集でも、飛車落ちでこういう勝ち方をした人はあまり見かけない。もっと強くなれる人だと思う。

 序盤○、仕掛け◎、中盤◎、終盤○


●つるの将棋の印象
つるのは、「きれいな振り飛車党」という印象だった。森内によれば、「決断力+慎重」の両面性を併せ持ち、筋悪さやケレン味の少ない正統派であるとのこと。

強みは、合わせ歩からの攻めなど、歩の使い方が上手く、大局観も優れていると思う。特に、駒の効率が勝れば駒損も厭わないとか、大駒に当たりをかけられてもむしろチャンスとみて攻めるとか、これまでの駒落ち実戦集で見られた下手の負けパターンにはハマらない力がある。

半面、序盤の構想力や判断力にやや弱点があるようだ。序盤を乗り切って持久戦になれば強いが、乱戦はあまり得意ではなさそう。

感想戦で、「第一感では「この手しかない!」というのが浮かぶんですけど、「いや、まだ他にもいい手があるんじゃないか」って、いつまでもくどくど考えてしまう。」(p83)というクダリがあったが、分かるわー、すっごい分かるわー(笑)

たくさん棋譜並べをすると、その感覚は消えますよ。つるのさん。


●対談の感想
つるのは、多趣味で多芸。ともすれば「器用貧乏」にもなりかねないが、つるのの場合はそれぞれがうまく有機的に絡み合い、仕事で役立っているという。

対談では、「自分の進路を決断すること」「物事に熱中すること」「一つのことを極めること」「いろいろやること」「長くやること」について、対局棋士との意見交換をしている。つるの自身の「いろいろやって、続ける」という選択が間違っていないことを確かめているようにも感じられた。


●総評
どうぶつしょうぎの1局を除くと、全6局で、駒落ち実戦集のボリュームとしてはかなり少ないのだが、つるのがあらゆる面ですごく真摯に将棋と向き合っているおかげで、ボリューム不足を感じさせなかった。

堅く、厚くしてチャンスを待って飛角銀(+歩)で厚く攻撃するのを得意とする棋風の人は、読んで損はない。わたしも、つるの流の指し方は何度か採用してみようかと思っている。飛車落ちで、「右四間も矢倉もあまり合わないんだけど、瞳流も巨泉流もRocky流もイヤ」(ぇ)という人は、シンプルなつるの流を試してみてほしい。



【関連書籍】

[ジャンル] 
駒落ち実戦集
[シリーズ] 
[著者] 
つるの剛士
[発行年] 
2013年

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