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■最強の駒落ち

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最強の駒落ち
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講談社現代新書(1757)
最強の駒落ち
[総合評価] S

難易度:★★★★

図面:見開き2〜6枚
内容:(質)S(量)A
レイアウト:B
解説:A
読みやすさ:A
中級〜高段者向き

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【著 者】 先崎学
【出版社】 講談社
発行:2004年11月 ISBN:4-06-149757-X
定価:840円(5%税込) 304ページ/18cm


【本の内容】
第1章 すべては
八枚落ち
から始まる
(1)9筋攻め作戦を覚えよう 将棋の基本が身につく/9筋は必ず破れるが
/すごく重要な手
18p
(2)八枚落ち棒銀戦法 やはり破壊力抜群/上手も勉強になる
(3)灘流上手必勝定跡 灘蓮照九段の豪語/後手△6五歩
第2章 定跡無用の
六枚落ち
(1)9筋攻め定跡の真実 下手を持ちたい!/六枚落ち上手の三つのテーマ
/人気のある定跡/▲5六歩をしっかり覚えよう
/正しい角の切り方/決め手は「と金」づくり
/上手の粘り△3三玉/上手最後の手段
/この手を指してほしい
54p
(2)必勝!
 1筋スズメ刺し作戦
スズメ刺し発進/空前絶後の垂れ歩/1筋は明け渡す
(3)六枚落ち矢倉戦法 「矢倉」を覚える絶好の機会/先崎流「上手の秘密兵器」
(4)六枚落ち
 四間飛車戦法
やっぱり振り飛車!/下手穴熊についての考察
/上手の玉はどこにいるべきか/一直線の攻めは難しい
/上手の「じわじわ作戦」/「美濃」を生かす
第3章 奇略縦横
四枚落ち
(1)棒銀戦法への疑問 上手に攻撃力がつく/“勝てない”定跡
/「名手」▲2三銀成/桂打ちの誘惑/一石三鳥の手
/「端攻め」と「上手の桂」の関係/棒銀が勝てない理由
76p
(2)四枚落ち
 二歩突っ切り戦法
 vs△3二玉型
「将棋大観」の功罪/二枚落ちの名定跡
/▲7二歩は下手必勝の手筋/がっちり、ゆっくり
/「対△3二玉型限定」4八飛戦法/上手の抵抗「5五歩止め」
(3)四枚落ち
 二歩突っ切り戦法
 vs△6三玉型
二枚落ちと同じ玉形/絶対の▲6九玉/金には銀をぶつけろ
/二枚落ちにも通じる至言
(4)1筋単純攻撃と
 9筋陽動棒銀
1筋単純攻撃の化かし合い/これは有力!9筋陽動棒銀
/今度は棒銀炸裂/上手「どっちでもどうぞ」作戦
/初志貫徹で大成功
(5)先崎流
 下手弱いふり向飛車
奇想天外な序盤/銀の痛打で下手必勝/香車がいない微妙さ
第4章 二枚落ち
完全制覇
(1)二歩突っ切り定跡の
 基本
定跡という「宝の山」/将棋史上に残る名手順
/△2二銀の屈辱/上手のイノチの金
/上手△4四歩型の攻防
137p
(2)二歩突っ切り定跡
─上手△6六歩への対応
▲2六角が急所/「上から重い」と「横から重い」
/上手の奥の手/(1)▲6六同角の変化/(2)▲4六飛の変化
/(3)▲6六同歩の変化/端歩の話
(3)二歩突っ切り定跡
─▲6六同歩からの指し方
イッキの攻めは難しい/力を貯めるのが正解/そっぽを攻めるな
/黄金地帯を目指せ/上から攻めろ
(4)二歩突っ切り定跡
─上手の紛れ策
△5五歩止め作戦/△1二香作戦
(5)二歩突っ切り定跡
─上手とっておきの秘策
上手も楽しむために/△7六歩圧迫作戦
/△2四歩タダ取らせ作戦/789パクパク作戦
/早繰り金戦法/「合わせの歩」は中級者必修の手筋
/2三の歩はないほうがいい/有力な早繰り金
/秘密兵器!「金銀逆形作戦」
(6)本当はすばらしい
 銀多伝
減りつつある愛用者/手厚さとセンスのよさ
/指す手がなくなる上手/美しい理想形/大きな一歩の違い
/焦らず、じっくり/勝ちたいなら銀多伝
(7)最終兵器
 「5五歩止め」
取るべきか取らざるべきか/向飛車もある
/上手「止めがい」がある/知られていない変化
/先崎流下手必勝手順/ホントの最終兵器「金で5五歩止め」
/これぞ金のメリット/なんとか天王山は死守
/下手の対策「決定版」


【レビュー】
二枚落ち以下の駒落ち技術解説書。「将棋世界」誌の連載を加筆修正してまとめたもの。

普通、駒落ち定跡書といえば「下手の勝ち方」が書かれている。もっと極端に言えば「下手の必勝法」である。そのため、上手がやや甘い手を指していたり、筋は良いが含みの少ない手を指していたりする。

しかし本書では、下手の理想的な勝ち手順を示したあと、「上手の工夫」をふんだんに公開している。それは、上手の実戦的な勝負手だったり、序盤での目くらましだったり、著者自身の新研究だったり…とにかく、下手の心理・上手の心理まで考えた指し方がたくさん書かれている。そしてその多くは、既存の定跡書には載っていない話である。

“話”と書いたが、普通の解説書にはない、先崎流の軽妙な文章も本書の魅力。読者をやる気にさせるのが本当に上手い。わたしはプロ相手の二枚落ちを一応卒業しているが、本書を読んでいると「もう一度四枚落ちをいっぱい指してみたい!」とか「二枚落ちで上手をもってゴマかして(笑)みたい!」とか、本当に思えてくる。

個人的には、興味の深い「二枚落ち/銀多伝・5五歩止め」のあたりから読み始めた。「銀多伝愛好者が減ってきているようだ」に愕然。次に「石垣流の華麗な手順が最後までは通用しない(※1)」という事実に再び愕然とした。このように、“定跡書”では味わえない“話”が満載なのである。

もちろん解説も丁寧懇切で申し分ない。辞書的な使い方は難しいが、読み物として読んでいけば非常に理解しやすい。プロ相手に駒落ち指導を受けている人と、道場で上手をよく持つ高段者は必見の一冊である。

なお、本書はなぜか書店の「将棋カテゴリ」には入っていないようだ。AmazonでもES!Booksでも、マナハウスでもキーワード「将棋」では出てこなかった。せっかくの良書なのに、将来埋もれてしまうのでは…とちょっと心配。(2004Nov26追記:Amazonでは「将棋」で出るようになりました)

最後に先崎先生。二枚落ちで△8五金に▲7八飛を推奨している本は(257P)、花村先生の『よくわかる駒落ち』(1970,2001)だけだったと思います。※2(2004Nov26)

石垣流▲6七桂まで※1 本書p264では、石垣流で▲6七桂!(右図)は△6六金▲同金△同歩▲同飛△6四歩▲6五歩に△7三桂でダメと書いてある(ここで終わっていて「(旧定跡は)何かの勘違いではないか」と言っている)が、さらに▲6四歩△同銀▲5五桂!△同歩▲同銀△6五歩▲5六飛で攻めきれるはず(参考資料『将棋手筋集(2)』)。先崎八段の方が勘違い?(2005Aug22追記)

※2
^ 棋書掲示板にて、ゲンリュウさんより。
「△8五金に▲7八飛を推奨している本はもう1冊あります。『
駒落ち必勝法 定跡なんかフッとばせ』(湯川博士,MYCOM,1985/2003)で花村流の手として紹介されていました。」(2012Jan15追記)


【他の方のレビュー】(外部リンク)
将棋雑談アレコレ(SDI)
山の医者 日々の祈り
将棋棋書ブログ
遠山雄亮のブックスペース@wiki
白砂青松の将棋研究室
Amazon.co.jp: カスタマーレビュー




【関連書籍】
 『
駒落ちのはなし

[ジャンル] 
駒落ち定跡
[シリーズ] 
[著者] 
先崎学
[発行年] 
2004年

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