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サンケイスポーツ特別版 藤井棋聖誕生 |
[総合評価] B 難易度:★★ 図面:ほとんどなし 内容:(質)B+(量)B+ レイアウト:A 解説:B+ 読みやすさ:A ほぼ全棋力向き |
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【著 者】 サンケイスポーツ | ||||
【出版社】 サンケイスポーツ | ||||
発行:2020年8月 | ISBN: | |||
定価:1,000円(10%税込) | 82ページ/30cm |
【本の内容】 |
・<巻頭特集 盤上の新伝説>歴史変えた棋聖戦 第1局から第4局 プレーバック=19p ・<対局インサイドリポート>棋聖戦帯同記録 〜産経新聞・中島記者〜=2p ・<インタビュー&棋聖戦一夜明け会見>Voice 〜ピークはまだ先にある〜=2p ・<「装道礼法きもの学院」 山中緑副学院長>和服着こなしちぇっく=2p ・<腹が減っては戦ができぬ>棋聖をつかんだ勝負飯診断=2p ・<速報>熱闘!王位戦=8p ・<秘蔵写真>藤井聡太の歩み 講談師・旭堂鱗林さん〜藤井聡太物語〜=4p ・<撮っておき!>Sota Fujii's Photograph=4p ・<Wインタビュー> 杉本昌隆八段 〜師匠が語る藤井棋聖の将棋愛〜=2p 室田伊緒女流二段 〜姉弟子が見た藤井棋聖〜=2p ・<ルーツに迫る>関西奨励会とは=2p ・<強さの秘密>AIと切磋琢磨=2p ・<将棋界の最高峰>八大タイトル基礎知識=4p ・<戦いの足跡>名勝負&全対局4p ・<さらなる頂へ> 立ちはだかる実力者 羽生善治/豊島将之/永瀬拓矢/渡辺明/木村一基=5p ライバルたち 千田翔太/近藤誠也/佐々木大地/本田奎/梶浦宏孝/大橋貴洸/斎藤慎太郎/八代弥/増田康宏/見泰地/三枚堂達也/菅井竜也=5p ・<スペシャルQ&A>教えて飯島先生=3p ・<故郷の恩師・文本力雄さんの願い>故郷・瀬戸市より=1p ・<女流棋士対談>室谷由紀女流三段×鈴木環那女流二段=4p ・<欽ちゃんが染谷将太が>芸能界からも祝福=2p ◆内容紹介 将棋の高校生プロ、藤井聡太棋聖は7月16日、ヒューリック杯棋聖戦(産経新聞社主催)の第4局に勝ち、史上最年少の17歳11カ月で初のタイトルを獲得しました。棋聖戦全局を棋譜、解説付きで詳報し、インタビューも完全収録しました。藤井棋聖の18年の歩みを写真と記事で振り返り、2冠を獲得した王位戦も速報します。サイン入りとじ込みポスター付き。 |
【レビュー】 |
藤井聡太の初タイトル(棋聖)獲得を特集したムック。 藤井聡太七段は、2020年7月16日の棋聖戦第4局で渡辺明棋聖を3勝1敗で破り、史上最年少の17歳11か月で初タイトルを獲得した。その3日後の7月19日に18歳の誕生日を迎えて、さらに同時進行で挑戦していた王位戦も木村一基王位を4連勝で破り、2020年8月20日に史上最年少での二冠を獲得、八段昇段となった。これら一連の出来事は、ニュースやワイドショーで大きく扱われ、「第二次・藤井聡太ブーム」となった。 本書の内容を簡単に紹介していこう。 〔概要〕 ・A4サイズのムック。 ・全ページ、フルカラー印刷。 ・冒頭に、A3サイズ弱の両面ポスター。「棋聖 藤井聡太」のサイン入り(もちろん印刷ですが)。ミシン目で本誌から切り取れます。オモテ面は棋聖戦第3局の凛々しい和服姿、ウラ面はチェック柄のシャツに満面の笑顔。 ・大きく3つに分かれている。藤井が最年少で初タイトルを獲得した「棋聖戦特集」編と、続けて二冠目を獲得した「王位戦特集」編と、「その他の記事」編となる。 ・広告は表紙ウラ、裏表紙ウラのみ。 【棋聖戦特集】 ・まず、藤井が史上最年少の17歳で棋聖を獲得した2020年7月16日の棋聖戦第4局の記事。一局の概要、[TALK](対局後の合同インタビュー)、棋譜(紙面のスクリーンショット)、祝福の声(佐藤康光、屋敷伸之、加藤一二三、瀬戸市民)、飯島栄治七段による解説、羽生善治九段の特別寄稿。写真多数。 ・続いて、第1局〜第3局の記事。構成はだいたい同じ。 ・「産経新聞 中島記者 棋聖戦帯同記」は、棋聖戦の主催紙として藤井に帯同した記者による記事。今回はコロナ禍のため、対局場が東西の将棋会館になったため、師匠・杉本昌隆八段の「ご飯をしっかり食べさせてください」という助言をベースに、食事の話が多め。 ・「Fujii's voice」は、産経新聞による単独インタビュー。棋聖獲得後に行われ、2020年7月22日付のサンケイスポーツに掲載された。自分のピークの見込みが、以前は「18歳〜25歳」と言っていたのが「24歳〜30歳くらい」と心境が変化している。 ・「Fujii's voice」の下段には「タイトル獲得一夜明け会見」で、2020年7月17日の共同インタビュー。 ・「藤井聡太 和服着こなしちぇっく」(原文ママ)は、プロの和装家が藤井の和服を評論したもの。第1局はスーツで臨んだが、第2局〜第4局は異なる和服を着ている。すべてマスク姿の和装で、なんだか新鮮。 ・「棋聖をつかんだ 勝負飯診断」は、栄養士が藤井の昼食(4局分)を評論したもの。将棋会館での出前なので、いつものタイトル戦に比べると、やや普通な感じがします。 【王位戦特集】 ・続けて、時期が近く、同時進行していた王位戦第1局(2020年7月1,2日)〜第4局(2020年8月19,20日)の記事。記事のスタイルは棋聖戦とほぼ同じだが、こちらは主催紙でないためか、棋譜と図面が全くないため、記事中の符号や棋譜の流れは本書だけではサッパリ分からない。どこか他から調達する必要あり。 ・藤井は4連勝で王位も獲得、二冠に。同時にタイトル2期によって八段昇段。 ・王位戦特集の方は、オマケだと思ったほうが良いかも。 【その他の記事】 ・「藤井聡太の歩み」は、写真多数とともに藤井の年表を掲載。節目の将棋歴などが分かる。 ・「藤井聡太物語」は、名古屋市出身の講談師・旭堂鱗林が、棋聖戦第1局〜第4局で藤井の地元・瀬戸市が歓喜に沸く様子を、講談口調のダイジェスト版で掲載。 ・「Sota Fujii's Photograph」は、藤井の幼少期から現在までのさまざまなスナップショットをショートコメント付きで掲載。 ・「師匠が語る藤井棋聖の将棋愛」は、師匠・杉本昌隆八段が藤井の話を語る。いろんな媒体で披露されているので、同じ話もあるが、棋聖を獲得したことを前提にした話題もあって、新鮮味あり。 ・「姉弟子が見た藤井聡太」は、姉弟子・室田伊緒女流二段が藤井の話を語る。これも同様に、規制を獲得したことを前提にした話題あり。「キノコ嫌い」は有名になりつつありますね。 ・「関西奨励会とは」は、藤井のプロ入り時期に関西奨励会の幹事を務めていた山崎隆之八段のコメントを添えつつ、奨励会の厳しさを紹介。 ・「AIと切磋琢磨」は、藤井が研究に活用しているAIについて、昔からの変遷を1ページで簡潔にまとめている。(記事は2ページ) ・「八大タイトルの基礎知識」は、全タイトルの概要と、前タイトル保持者、現タイトル保持者の紹介。渡辺の棋王8期以外は、超戦国時代であることが分かる。 ・「八大タイトルの在位者一覧」は、名人戦がタイトル化した以降の全タイトル保持者の表。一応、格付け順に並んでいるが、棋聖戦の本なので棋聖が一番上。 ・「飯島七段が選ぶ藤井聡太棋聖の名局10選」は、飯島栄治七段が藤井のベスト10を選出。棋譜・図面が全くないので、符号の箇所は自分の記憶を頼りに思い出すか、他から調達する必要あり。藤井の公式戦全対局の一覧付き。 ・「藤井聡太に立ちはだかる実力者たち」は、(藤井が期待されている八冠制覇に対して)今後カベになりそうな棋士たちを紹介。羽生善治九段、豊島将之竜王、永瀬拓矢二冠、渡辺明名人(三冠)、木村一基九段の5人。序列1位の渡辺の扱いが小さいような。(すでに棋聖戦で破ったから、というではなく、2020年8月15日(本誌の締め切り直前?)に名人を豊島から奪取して、序列が変わったためでしょうね) ・「藤井聡太のライバルたち」は、20代の若手強豪12人を紹介。顔ぶれは、千田翔太七段、佐々木大地五段、近藤誠也七段、本田奎五段、大橋貴洸六段、梶浦宏孝六段、斎藤慎太郎八段、増田康宏六段、八代弥七段、三枚堂達也七段、菅井竜也八段、見泰地七段。こちらは何の順かはよく分からないです。 ・「教えて飯島先生」は、飯島栄治七段が将棋のさまざまなQ&Aに答える。飯島はサンケイスポーツの将棋解説担当で、本誌の監修もしている。藤井に限定した話ではなく、「観る将」全般に向けた話。AIの評価値は?/自力で形勢を判断するには/持時間で指し方は変わる?/離席では何をしている?/棋士は何手先まで読む?/将棋の格言/プロ棋士になるには? ・「藤井棋聖のルーツ 故郷・愛知県瀬戸市」は、藤井の地元・瀬戸市がどのように将棋で盛り上がっているか。(ちなみに、東海の地方ニュースでは、藤井が活躍するたびに瀬戸市の様子が流れます) ・「室谷由紀女流三段×鈴木環那女流二段」は、YouTubeで「むろかなチャンネル」を運営する二人の女流棋士が、藤井の魅力や中継の楽しみ方を対談形式で語る。藤井のプロ1局目の相手は室谷。(笑)藤井と杉本の師弟対決(2020年6月)での鰻重と、「藤井の最後の涙」はええ話や(つД`) ・「ABEMA観戦術 将棋AIの「%」」は、ABEMAで使われているAIの「勝率表示」について。評価値ではなく、初心者でも分かりやすく工夫したそうだ。 ・「芸能界も祝福!新棋聖誕生バンザ〜イ」は、芸能人の祝福メッセージ。萩本欽一(大山康晴の頃から将棋好き芸能人で有名)、染谷将太(映画『3月のライオン』で二階堂役)の2人がメインで、サブに瀬戸朝香、桂文枝、伊藤かりん、つるの剛士。欽ちゃんてば、「垂れ目仲間」って(笑)そうだけど(笑) 〔総評〕 写真が多めの綺麗なフルカラー印刷で、将棋の内容は分からないようなライトなファンでも読みやすく作られており、出来としては良かった。将棋ガチ勢には物足りないかもしれないが、「サンケイスポーツの読者」とターゲットをハッキリ絞っているので、これはこれで良いと思う。 ただし、一部の記事には符号がたくさん登場するのにも関わらず、棋譜や図面が全くない箇所がいくつかあった。現時点では、棋譜中継などで局面が頭に残っているので状況が理解できるが、後になってから読み返すときに、一冊では完結しなさそうという懸念はある。 そういった部分をあまり気にせず、純粋に「最年少タイトル獲得・藤井新棋聖」の「どこよりも早い、保存版の特集号」として楽しめばいいのかもしれない。 ※版型が、従来の将棋ムック(B5サイズが多い)よりもかなり大きめのA4サイズなので、収納する本棚の高さには要注意です。 (2020Aug31) |