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メイドシステム 真実のゾーン! | [総合評価] B 難易度:★★★☆ 図面:見開き4枚 (カラー) 内容:(質)B(量)C レイアウト:A 解説:B 読みやすさ:A 中級〜向き |
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【著 者】 レベル8 若瀬紺/イラスト | ||||
【出版社】 (電子書籍) | ||||
発行:2019年7月 | ISBN:- | |||
定価:275円(10%税込) | 80ページ/約18MB |
【本の内容】 |
◆内容紹介 YouTubeで話題沸騰!「メイドシステム」を解き明かす一冊。天使の笑顔に惑わされない「逆襲」の盾とは?ページ数は80。この狭間で、あなたの知識が変わります。 ■“知”の扉が開かれる! メイドシステムとは……「7八銀、7九角から繰り出される総合戦法」。YouTuber(ユーチューバー)の、『将棋メイドゆい』さんが編み出した衝撃の戦法です。 メリットは、超高速で未知の局面に変わること。定跡から解放され、100%指せるので流行に左右されることはありません。しかも、あらゆる戦法に対応し、あらゆる奇襲を受けません。 相手の指し方しだいではこちらから奇襲をかけることも可能で、知らず知らず指していると、気づかないうちにハマってしまう…。そんなドリーム戦法です。 では、それを咎めるために「どうすればいいか?」――これにお答えしたのが本書です。 第1章、第2章でメイドシステムのメリットや狙いを見ながら、第3章では対処法を提示。最終的にあなたの中に「答え」を立体化させます。 つまり、本書はメイドシステムを無理強いする本ではありません。サブタイトルにもある「真実」。未知を“知”に変えるのが、本書の大きなテーマです。 たくさんの時間はいりません。一般棋書の半分にも満たないページ数で導く、Level8式・Kindle棋書。第6作―。 <<反響の声、続々! >> 「メイドシステムの!本が出てる!!!」(将棋メイドゆい様) 「2回棋譜並べしました」(YouTube/原始棒銀チャンネル) ※電子書籍としては不要な情報を含んでいる場合があります。 ※端末の縦横回転で、単一ページ表示/見開きページ表示の切り替えができます。 ※『Kindle for PC』での2ページ表示に対応しています。 |
【レビュー】 |
メイドシステムの戦術書。 「メイドシステム」とは、YouTuber「将棋メイドゆい」さんの創案した戦法。「初手▲7八銀〜▲7九角から繰り出す総合戦法」(=相手がどのように来ても対応できる)というものである。嬉野流と似た雰囲気を持つ作戦であるが、似て非なるものである。初めて見たら、面食らうことは間違いない。 ところで、通常はこういった戦術書は、「この戦法はこんなに優秀ですよ、使ってみてライバルを倒そう!」というスタンスを取るものであるが、本書は「メイドシステムの基本から対策まで」を示すものとなっている。 本書の内容をチャートを添えながら紹介していこう。なお、本書では各章のタイトルは付けられていない。 |
第1章は、メイドシステムの基本について。8筋逆襲の基本、相手が飛先交換してきたときの対応、一直線棒銀への対応などを扱う。 ・「メイドシステム」は、初手から▲7八銀〜▲7九角と指す。(※「嬉野流」(うれしのりゅう)は、▲6八銀〜▲7九角のオープニングで、狙いの一つは鳥刺し) ・ユニークなオープニングのおかげで、戦法の流行り廃りはすべて無視できる。相手の奇襲もなくなる。 ・コンピュータの評価値はあまり気にしなくてよい。 ・嬉野流とは8筋の考え方が根本的に異なる。左銀が8筋に使えるので、逆襲のカウンターが頻出する。 ・主な狙い筋は、「2筋歩交換」、「引き角+早繰り銀(右銀)」、「(相手の飛の)コビン攻め」など。 ・相手が一直線棒銀なら、相棒銀で対抗する。先に飛先を破られて龍を作られてしまうが、左辺を収めて「後の先」で有利になる。 |
第2章は、メイドシステムの△飛先交換保留型について。 ・後手が飛先交換をいったん保留する場合。 ・メイドシステム側は、角を働かせるため、5筋の歩を突く必要がある。後手はその歩をかすめ取ることを狙っているが、先手は歩損を承知で5筋の歩を突くことになる。 ・横歩(▲5六歩)を取られても、銀の進出でカバーして、早繰り銀の攻めを狙う。(アルファゼロ流と似た発想) ・▲8八歩〜▲8七銀!と出られるのが、メイドシステム特有の手段。 ・後手が飛先交換後に横歩を取らない場合も、早繰り銀の攻めを狙おう。 ・対△中飛車には、▲6六歩〜▲6七銀〜▲8八飛の「メイド向かい飛車」が有力。 ・対△三間飛車、対△四間飛車には、飯島流引き角戦法か、音無の構えのような駒組みが有力。 |
第3章は、メイドシステムの咎め方(!)について。 ・第1章の「8筋逆襲型」の、その先を調べる。 ・2手目△3四歩に対して、▲8筋逆襲型はメイドシステムの狙い筋の一つではあるが、後手としてはちゃんと受けが利く。 ・後手の△7四歩〜△7三桂が良い構えで、先手の8筋逆襲を受け止めることができる。(ただし、結構綱渡り的な変化もあって、気を抜けない) ・先手は8筋逆襲を狙わず、「左美濃+引き角+早繰り銀」にするのが一案か。 |
【総評】 わたしはまだネット将棋でメイドシステムに出会ったことがない(嬉野流には結構な確率で出会う(苦笑))のだが、本書を読んで「こんな面白い指し方がまだあるのかー」と感嘆した。 3手で作戦が決定し、相手の奇襲を封じ込め、相手のどんな指し方にも対応できる「総合戦法」という点ではメイドシステムと嬉野流はよく似ているのだが、「(まさかの)8筋逆襲の筋がある」、「展開によっては堅く囲える余地がある」というのは思想的にも決定的に違うところ。 本書では、メイドシステムの序盤のさわり(ただし重要変化)と考え方が示されているのみで、分量的には通常の棋書の1/3〜1/4程度(ページ数80とあるが、実質的な解説は60ページ弱くらい)で、解説も意図的に端折ってあるため、メイドシステムの全体像はまだ見えてこない。 ただそれでも、類書も少なく、コスパを考えた場合に「読んで得したな」と思った。この分量での評価Bは、かなり高めだと思ってください。 続編があるらしいので、今から楽しみにしています。(現時点でリリース済みですが) (2020May17) |