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文春e-book うつ病九段 |
[総合評価] S 絵:B+ ストーリー:A+ 構成:A+ キャラ:A |
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【著 者】 先崎学/原作 河合克夫/マンガ | ||||
【出版社】 文藝春秋 | ||||
発行:2020年4月 | ISBN:978-4-16-391200-4 | |||
定価:1,100円(10%税込) | 207ページ/21cm |
【本の内容】 |
第1話 異変が起きた日 第2話 休場届 第3話 入院生活 第4話 病棟で出会った面々 第5話 祝・退院 第6話 詰将棋が解けない 第7話 墓前での誓い 第8話 体験記 ◆内容紹介 「頑張らないで、先ちゃん!」――西原理恵子(漫画家) うつ病で将棋が指せなくなったプロ棋士がドン底から現役復帰するまでの軌跡を綴ったベストセラー体験記をコミカライズ! 文春オンライン連載で、累計564万PVの大反響! 47回目の誕生日の翌日から、日に日に朝が辛く、夜は眠れなくなった。転がり落ちるように不安感にとらわれて将棋が指せなくなったプロ棋士・先崎学九段。 すぐにうつ病と診断され、入院。「もう自分なんか終わりだ」といううつ病ならではの弱気な考えと「自分には将棋しかないんだ」というわずかに残った気力での考えが頭の中でぶつかり、そのたびに暗黒の世界へ沈んでいく……。 人生で最も辛く長かった入院生活を終え、退院したが、朝コーヒーを買いに行くだけで寝込んでしまう。いつ将棋を指せるような状態に戻れるのか?果たして「前の自分」を取り戻せる日が来るのか……? ◆◆◆“うつヌケ”のヒント満載!◆◆◆ ○規則正しい日課で生活リズムを取り戻す ○うつ病患者に多い「貧困妄想」に要注意 ○散歩は“うつ”にとって何よりのクスリ ○「必ず治ります」短いメッセージほど効果的 ○お見舞いには「みんな待ってますよ」の一言を |
【レビュー】 |
先崎学九段のうつ病体験記『うつ病九段 プロ棋士が将棋を失くした一年間』をコミカライズしたマンガ。 先崎九段は、A級経験もある一流棋士で、また多才な棋士でもある。特に文筆方面に優れ、将棋界を描いたエッセイ本が多数出版されているし、将棋の技術を分かりやすく伝えるのも上手い。皆からは「先ちゃん」の愛称で呼ばれている。 そんな「先ちゃん」が、2017年9月から半年余り、対局を休場した。 後から分かったのは、先ちゃんはうつ病と闘っていたということ。私たちがテレビで見る先ちゃんの笑顔からは、とても想像できないようなことだった。 その先ちゃんが、闘病の顛末を綴ってくれたのが『うつ病九段 プロ棋士が将棋を失くした一年間』。それを漫画化したのが本書となる。 本書p200にもあるように、「うつ病回復期の患者がリハビリを兼ねて書いた本」は非常に珍しく、「うつ病患者への偏見を取り払う意味でも価値がある」(p200)。うつ病は比較的身近な病気でありながら、回復者はあまり語らないことが多く、周りの人も気を使うので、罹ったことのない人には実態が分かりづらいのだ。 本書では、あくまでも「先ちゃんのケース」であるものの、実体験が圧倒的なリアリティで描かれる。 一方で、劇画調ではなく、マンガ調の絵柄で描かれているおかげで、読んでいる側としては必要以上に深刻にならず、一気に読み通すことができた。(あまりにもリアルすぎるタッチで描かれていると、読んでいる側がつらくなったり、夢に出てきたりするのだ) うつ病は、ある日突然訪れる。 あなたにも、わたしにも、周りの人々にも、だれもが罹りうる病気なのだ。 発症から回復期までを、私たちに分かる形で示してくれたことは、ホントにありがたい。先ちゃんだからこそ、できたことなのだと思う。 この本は、先ちゃんのことも将棋のことも全く知らない人を含め、全ての人に読んでほしい一冊だ。 もし、自分が当事者や関係者になったとき、「そういえば先ちゃんは……」と思い出すだけでも、あなたは(私は)きっと、ずいぶんと助けられることだろう。 先ちゃん、この本を書いてくれて、ホントにありがとう。みんな待ってたよ! (2020May23) 先ちゃんが監修した『3月のライオン』第11巻の巻末読み切り「ファイター」って、先ちゃんのエピソードがベースなのかな… |