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スーパー四間飛車・最新版(1) 急戦!居飛穴破り |
[総合評価] B 難易度:★★★★ 図面:見開き4枚 内容:(質)A(量)A レイアウト:A 解説:B+ 読みやすさ:B+ 上級〜有段向き |
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【著 者】 小林健二 | ||||
【出版社】 毎日コミュニケーションズ | ||||
発行:1997年2月 | ISBN:4-89563-671-2 | |||
定価:1,359円 | 238ページ/19cm |
【本の内容】 | ||||||||||||||||||||
◆内容紹介 |
【レビュー】 |
四間飛車の居飛車穴熊対策を解説した本。 振飛車が居飛車穴熊や左美濃によって駆逐されていく中で、居飛車党だった小林は振飛車党に転身し、ほぼ孤軍奮闘で戦っていた。その過程で、居飛穴・左美濃対策として発表された単行本が『スーパー四間飛車』(1993.08)。端角戦法や早桂作戦など、従来にない戦い方をいくつも披露し、四間飛車がまだまだ戦える作戦であることを示した。 その続編が本書となる。1997年時点での小林の持っている対居飛穴作戦を集約した。また、『スーパー四間飛車』では、ほぼ▲四間飛車での戦いだったが、本書では△四間飛車での戦いをメインに解説していく。 各部・各章の内容を一部チャートを交えながら紹介していこう。 |
第1部は、振り飛車のルーツと流れ。居飛車vs振飛車の戦いの歴史を紹介していく。本書のメインの第3部では、振飛車から攻める作戦が多く解説されているが、この歴史を見ていけば、居飛穴に対して振飛車から急戦を仕掛けることが自然だと分かるようになっている。 紹介されている将棋は以下の通り。(数字は西暦) 1607 大橋宗桂vs本因坊算砂、△四間飛車+早囲い▲右四間(腰掛銀ではない) 現存する最古の棋譜。まだ美濃囲いは登場していない。持久戦になった。 1966 山田道美vs大山康晴、△四間飛車+金美濃▲5七銀右+2六飛+3七桂 『将棋独稽古』(福島順喜)の仕掛けであることが『現代将棋の急所』(1969、1990再版)に示されている。 1964 丸田祐三vs升田幸三、△四間飛車▲棒銀 1968 升田幸三vs大山康晴、名人戦#5、△四間飛車▲棒銀 1966 大山康晴vs升田幸三、△四間飛車▲5筋位取り 1947? 原田泰夫vs松田茂行、△ツノ銀中飛車▲矢倉→居飛穴 居飛穴がプロ公式戦で初登場した一局とされる。 1981 田中寅彦vs谷川浩司、△四間飛車▲居飛車穴熊 穴熊の遠さを生かした強烈な寄せが印象的。 1983 大山康晴vs小林健二、▲四間飛車△居飛車穴熊 スーパー四間飛車の原点の一つである▲5六銀型のイメージを小林に印象付けた一局。 1991 小林健二vs小野修一、▲四間飛車△居飛車穴熊 「穴熊に対しては王手を掛けやすい状態にしておく」(p41)。居飛穴攻略の根幹的な考え方の一例。 1991 内藤国雄vs小林健二、△四間飛車?▲左美濃→居飛穴 7七銀を攻めるのが急所。 1992 小林健二vs平藤眞吾、▲四間飛車△居飛穴 ▲1七桂戦法の一例。 |
第2部は、「スーパー四間飛車の原点」と称して、3年半前に出版された『スーパー四間飛車』の復習を行う。 ・▲四間飛車5六銀型vs△居飛穴 ・▲5六銀型〜片銀冠〜▲6九飛〜▲4九飛 ・▲四間飛車 端角戦法 ・▲四間飛車 早桂戦法▲1七桂型 ・▲四間飛車 早桂戦法▲3七桂-▲3九玉型 ・▲四間飛車 早桂戦法▲3七桂-居玉型(※いわゆる「藤井システム」) |
第3部は、「急戦!居飛穴破り」と称して、主に△四間飛車で▲居飛穴を攻める作戦を5章に分けて解説していく。この第3部が本書のメインコンテンツである。 なお、3年半前に発表された『スーパー四間飛車』で解説されたのは▲四間飛車だった。本書では△四間飛車がメインというだけでなく、「居飛穴に組ませない急戦がプロ間での主流になっている点が3年前とは異なる」(p74)とのこと。 |
第1章は、△四間飛車での浮き飛車作戦。居飛車が▲9八香と穴熊を明示した瞬間に△4五歩と角交換を挑戦する。角交換してもしなくても、振飛車側は△4四飛から石田流の形を目指していく。広い意味での立石流といってよい。 また、この時点では、角交換後に再度▲7七角と打つような筋は載っていない。 |
▲5七銀が浮いている状態なら、2筋を受けるのが1手遅れても成立する場合があり、居飛車は初見では対応しづらそうだ。早めに2筋を突き越してきた場合は、向飛車で反撃することもできる。また、左桂を△4五桂まで跳ねて強引に攻める筋もあり、少なくとも振飛車が一方的にやられることはない。 本書で紹介されている作戦の中では、もっともアマチュア向けで勝ち易い作戦のように思う。 なお、△端角作戦は、先手が居飛穴を放棄して左美濃から銀冠に組んでくると、接点がなく指しにくい。後手は無理をせず、通常の四間飛車で戦ったほうが良い。 |
第3章はと第4章は、初期の四間飛車藤井システム。第3章は▲四間飛車、第4章は△四間飛車を扱う。 第3章は、▲藤井△井上の実戦(1995年12月22日)を参考にした手順を紹介。有名な将棋で、『居飛車穴熊撃破 必殺藤井システム』(藤井猛,日本将棋連盟,1997.08)などでも詳しく解説されているので(本書の出版(1997.02)より後ではあるが)、ご存じの方も多いだろう。 なお、小林自身は、「居玉で戦う」という発想はなかったものの、「相当有力な作戦になるだろう」(p160)と予言しており、事実その通りとなった。 |
第4章は、△四間飛車での初期の藤井システム。先手番と違い、後手番では一手の遅れがあるので、駒組みに細心の注意を払う必要が高いのは、当時から変わらない。特に、左銀の備えが遅れると、▲4六歩からの急戦があるので注意したい。 |
第5章は、6筋早仕掛け。有名な▲4五歩早仕掛け(△6五歩早仕掛け)とは全く関係がない。本作戦では、居飛車が穴熊を明示したら△5四銀と出て、銀の進出を止める▲6六歩にすぐ△6五歩と仕掛けていく。 第2章の端角作戦では、△1三角+△6二飛と大駒を設置してから仕掛けたが、本作戦では早めにちょっかいをかけていくので、一気に攻めつぶす展開にはなりにくい。一歩交換しながら銀を繰り替えたり、持ち歩を生かして2筋を押し返すような、プロ好みの展開になりがちだ。 |
本書の作戦の中から、得意戦法にしてみたいものを個人的に挙げていくと、 端角(第2章)>浮き飛車(第1章)>6筋早仕掛け(第5章) の順になる(藤井システムは、当時よりずっと研究が進んでしまっているので除外した)。10年前だったら「6筋早仕掛け」を選んだと思うが、短時間勝負のアマでは難しそうに感じた。「端角」は、「これだけ攻めれれば負けても本望」くらいに思うし、「浮き飛車」は「好きな形にできたのだから(以下略)」と思えそう。 もちろん、これは完全に好みなので、好きな形を選んでいただければ良い。出版から20年近く経った現在、これらの作戦は意外と通用しそうに思えるが、いかがだろうか?(2016Aug22) |