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現代三間飛車の定跡(U) | [総合評価] B 難易度:★★★☆ 〜★★★★ 図面:見開き4枚 内容:(質)A(量)B レイアウト:A 解説:A 読みやすさ:B+ 中級〜有段向き |
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【著 者】 中原誠 【編】 東公平 | ||||
【出版社】 大泉書店 | ||||
発行:1977年2月 | ISBN:4-278-08102-2 0076-8102-0701 |
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定価:700円 | 122ページ/21cm |
【本の内容】 | ||||||||||||
◆内容紹介(表紙見返しより抜粋) |
【レビュー】 |
△早石田の定跡と、▲升田式石田流、▲三間飛車7五歩型vs△左美濃の戦いを解説した本。 第一巻では、プロでたくさん戦われた戦型を定跡としてまとめ上げていたので、その内容は出版から40年近く経過した現在でも、微修正を施せば基本定跡として十分通用するものだった。 一方、本書の内容は少し趣が異なる。特に第一章と第二章・第三章は傾向が異なるので、チャートを添えて紹介していこう。 |
第1章は、△早石田。昔からある早石田の奇襲定跡をまとめたもの。本線は下記チャートに水色で塗った部分となる。また、本線の周辺の変化についても詳しい。この早石田定跡はいろんな書籍に出現しているので特に珍しい部分はないが、主要な変化が漏らさず書かれているので、早石田の基本をきっちり押さえておきたい人にはオススメ。 この定跡は居飛車有利だが、その有利さが非常に分かりにくい(※たとえば、『新鬼殺し戦法』(米長邦雄,山海堂,初出1974年)では、本当に居飛車有利かどうかの検証が行われている)。そもそも「▲2五歩と伸ばして▲4八銀」はリスクが高い。というわけで本書では、居飛車が安定して戦うために二つの提案がされている。 一つ目は、△3六歩と突かれたときに▲3八金と受ける。本によっては、「これで居飛車が受け切っている」という旨で書かれているものもあるが、本書掲載の後手の勝負手△4四歩!?を知っておく必要はあるだろう。 二つ目は、2筋を伸ばさずに、▲4八銀〜▲4六歩。これなら序盤は安定している。 対早石田を苦手としている人は結構多いはず。まずは本定跡を知り、そのリスクを理解した上で、自分に合った対策を採用してほしい。 |
第2章は、▲升田式石田流。これは定跡というよりも、1971年の名人戦(升田vs大山)の実戦譜がベースとなっている。▲9六角(下記チャートの2番目の図)くらいまでは有名な展開なので、一度は棋譜を追ってみてほしい。 次に、「升田式の第2型」として、途中で▲9六歩と突く型を紹介。展開によっては9筋を突き越しておく。飛交換した場合に、将来▲9四歩△同歩▲9二歩△同香▲9一飛の筋がある。近年流行した升田式ではこの型はあまり指されていないが、奇襲的に通用する可能性があるので、覚えておいて損はない。 3番目の角交換型は、石田流対策として初期からあったもの。近年の研究よりは比較的穏やかな展開で、厳しさは足りないので、参考として読んでおく程度。 |
第3章は、▲三間飛車vs△左美濃で、▲大山vs△中原の実戦譜がベース。先手はノーマル三間飛車にして、ある程度囲ってから▲7五歩と突く。本章では▲7六銀型で戦うが、石田流本組を目指すのもあるだろう。 現代では3手目▲7五歩からの石田流で戦えることが分かっているので、この型を見かけることはほとんどなく、先後どちらを持っても出番が望めないだろう。歴史上、こういう戦型があったと知っていれば十分かと思う。 |
変化の密度や解説のクオリティは第一巻と同等のレベルにあるが、題材が現代での価値がやや低いものとなっているため、Bとしておく。 ※誤字・誤植等(初版で確認): p98棋譜部 ×「▲7五飛」 ○「△7五飛」 p103 ×「△6五歩に対して△6九飛と引く…」 ○「△6五歩に対して▲6九飛と引く…」 p116ト書き ×「▲6八金のところ△7四歩も…」 ○「▲6八金のところ▲7四歩も…」 p120 ×「この時に△6三角成なら…」 ○「この時に▲6三角成なら…」 |