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最強将棋21 ゴキゲン中飛車の急所 |
[総合評価] A 難易度:★★★★☆ 図面:見開き4枚 内容:(質)A(量)A レイアウト:A 解説:A 読みやすさ:A 上級〜有段向き |
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【著 者】 村山慈明 | ||||
【出版社】 浅川書房 | ||||
発行:2011年12月 | ISBN:978-4-86137-033-5 | |||
定価:1,470円(5%税込) | 240ページ/19cm |
【本の内容】 | ||||||||||||
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【レビュー】 |
ゴキゲン中飛車の定跡書。 ゴキゲン中飛車が世に出てから約15年、トッププロから若手までが指すようになってから約10年。いろいろな変化が流行しては消え、また見直されたりと、現在も状況はめまぐるしく変化している。ゴキゲン中飛車を扱った棋書も多く書かれ、変化を細かく網羅したものもいくつか出ているが、登場からの「流れ」を押さえた本はあまりなかったように思う。 本書は、ゴキゲン中飛車とその対策を、およそ「登場した順」に沿って解説した本である。 扱っている戦型は、ゴキゲン中飛車の存亡に直接関わる「▲5八金右超急戦」と、いまやゴキゲン対策の8割を占めると言われる「超速▲3七銀」がメイン。 他に、第3章にはその他の対策が比較的簡単にまとめられている。戦型は3つで、(1)玉型の自由度と引き換えに確実な飛先交換を担保する「▲7八金型」、(2)ゴキゲン相手でも組めることが分かった「居飛車穴熊」、(3)駒組み勝ちを狙う「丸山ワクチン」。 評価がほぼ確定した変化については、おおむね歴史の流れ順に解説されている。なので、時が経っても内容が古くなることはなく、ゴキゲン中飛車の全体像をつかむには絶好。なお、最新の作戦はコラムで紹介されている。 まえがきに「ゴキゲン中飛車の歴史は、たぶん、これ以上やさしく語れない。」とあるが、プロが散々研究した内容なので結構難しい。これまでの定跡書をほとんど読破してきた人でも、結構読み応えがあると思う。最初に読むときは、読み物だと思って前から順番に読むのがオススメ。逆に、探したい局面をピンポイントで見つけるのは難しくなっているが、なんとかチャートにしてみたので活用してほしい。 第1章は▲5八金右超急戦。これで居飛車が良ければ、中飛車は大きな妥協をせざるを得なくなり、指す人は激減するだろう。公式戦での実戦例は多くなくても、非常に重要なテーマである。 ▲5八金右急戦の歴史は、大きく3つの時代に分かれる。 A: ▲1一龍△9九馬▲6六香の時代(〜2002) B: ▲7五角の時代(2002〜2004末) C: ▲1一龍△9九馬▲3三角の時代(2002〜2011) (2012年現在は「後手有望、先手の新手待ち」) 特に▲7五角については、本によって「消えた理由」が違っていた。本書に書かれている「▲7五角が消えた理由」をまとめると、 (1)▲2四歩に△5四歩の変化で、奥深くまで検討された結果、後手に有望な変化が多かった。 (cf.『遠山流中飛車急戦ガイド』(遠山雄亮,MYCOM,2010.07)) (2)▲2四歩以下、△8九馬の久保新手がシンプルで、A級で後手が勝ったため、心理的に後手持ちになっている。 (cf.『久保利明の最強振り飛車戦略』(久保利明,木本書店,2011.12)) 本章では、新手が登場した年月なども書かれていたので、チャートだけでなく年表も添えてみた。参考にしてください。 第2章は超速▲3七銀。銀をすばやく4六に据えることで、自陣の構えの自由度が高まったのが大きく、さらに▲5八金右超急戦が「やや中飛車持ち」の雰囲気になっているためか、この3年くらいは猫も杓子もコレである。中飛車が5筋を捌くタイミングがいくつかの組み合わせがあるために奥が広いのも、棋士が熱中している理由の一つだ。 本章は、第1章と違って新手の登場年月はあまり書かれていないので、チャートのみにした。 第3章は、その他のゴキゲン対策。これまでの第1章・第2章と違って、主要なものだけをザックリ解説した感じになっている。 テーマ的には『速攻!ゴキゲン中飛車破り』(中村太地,MYCOM,2011.09)とかなり重なっている。目的によって選ぼう。 ・▲5八金右超急戦の全体像を知りたい → 本書がオススメ ・超速の雰囲気を知りたい → 本書がオススメ ・超速を細かく網羅したい → 中村本がオススメ これまでのゴキゲン定跡書を読んでいる人も、知見の整理整頓と最新の課題を知るためにご一読を。(2012Feb10) ※誤字・誤植等(初版で確認): p62 ×「実戦は▲5八香を選び」 ○「実戦は▲5八桂を選び」 p84 △「…木村美濃」 ○「…金美濃」 p84の形は金美濃。△6二銀→△6三銀と上がれば木村美濃になる。 p156 ×「私自身ははあまり…」 ○「私自身はあまり…」 |